第六話 嘗ての戦士達
何処にでもいるはずの女性、桜間依乃里はひょんなことから戦士となった。依乃里は仲間になった蓮葉雨幸、新原桐菜と共に自身を戦士へと導いた謎の女性を探す。そしてその女性が社交ダンス教室の講師、黒崎真理紗であることを突き止めるが、真理紗は四年前に失踪し行方がわからなくなっていた。依乃里は社交ダンス教室の真理紗の同僚の女性に真理紗を連れて帰ることを約束する。そして気持ちを新たにした三人の前に嘗ての戦士と名乗る少女、赤園風布花が現れるのだった。
「私の名前は赤園風布花、14歳。嘗て皆さんと同じ指輪の力で戦っていた者です。」
「「「はい?」」」
嘗ての戦士と語る赤園風布花の言葉に、依乃里、雨幸、桐菜の三人は首を傾げてしまう。しかし三人は少しするとそれが有力な情報であることに気が付く。
「「「……え~~~~!」」」
三人は大きな声で驚いてしまい思わず風布花に詰め寄る。
「いつ、いつ戦士になったの⁉」
「この力のことも知っているのですか⁉」
「ていうか何を踊ってたの?⁉」
「ちょっと皆さん、一遍に聞かれると……。」
風布花は詰め寄ってくる三人に戸惑ってしまう。
「そ、そうだよね。ごめんごめん。」
「つい取り乱しました。」
「いかんいかん、年下相手に。」
三人はなんとか落ち着きを取り戻し、改めて風布花に問い掛ける。
「それじゃあ、あなたの知っていることを聞かせて。これからどこか落ち着ける場所に行こうか。」
「はい、よろしくお願いします。」
そして一同は場所を変えるのだった。
一方その頃、ダークサイレンスの面々はボードクローの死に少し怯えを感じていた。
「おい、何でボードクローは死にやがった?」
「さあ。しかし所詮僕達も死にゆく運命にあるということですね。」
ブラクスはボードクローの死に疑問を抱いていた。彼らは自身らが生命体ではなく、死など訪れないと思っていたためボードクローの死は中々にショッキングだった。クリークも冷静にブラクスに答えるが、内心少し怯えていた。
「んがぁ~。」
「……ったく、スノアの奴は相変わらずお気楽だな。仲間が死んだってのによ。」
そんな中でも大きないびきをかいて寝るスノアに、ブラクスは呆れてしまう。
「ほらスノア、いつまでも寝ている場合ではありませんよ。」
「ん~?ああクリーク、おはよう。」
クリークがなんとかスノアを起こし、スノアは漸く起きる。呑気に答えるスノアにブラクスは怒り狂ってしまう。
「スノア!ボードクローが死んだんだぞ!」
「ボードクローが?ホントに~?」
スノアはボードクローが死んだという事実にも呑気に答える。そんなスノアに、ブラクスは更に怒る。
「ふざけんな!お前もたまには人間界へ行きやがれ!」
ブラクスはスノアにそう叫んで蹴り飛ばす。
「は~い。」
スノアはブラクスに蹴り飛ばされながらもマイペースを崩すことなく人間界へ赴くのであった。
依乃里達は風布花を連れてとあるレストランに来ていた。そして風布花は四年前の戦いの一切を三人に話していた。
「つまり、四年前にダークストーリーズという組織が世界を支配しようとしていたと……。」
「それで、あなた達は星座、宝石、童話の力を使ってホロテイルジュという組織として戦っていたと……。」
「宝石は12個あって、戦士も12人いたんだ……。」
「そういうことですね。」
三人は風布花から話を聞いて整理する。そして風布花と解釈が一致すると、三人は気が抜けてしまう。
「ふぅ~、終わった~!」
「中々難しい話でしたね。」
「25回も聞いちゃったよ~。」
「すみません、中々説明が難しいもので。」
三人は風布花から聞く四年前の戦いの話の複雑さに中々理解できず、何度も繰り返し聞いてしまった。
「ていうかふぅちゃんって四年前は小学生でしょ?それであんな大変な戦いしてたのすごいよね~。」
「まあ、はい。あの……、ふぅちゃん?」
桐菜は風布花が当時小学生でありながら戦っていたことに感心するが、風布花は突然言われたふぅちゃんというあだ名に困惑してしまう。
「ああ風布花ちゃん、桐菜ちゃんは人にあだ名をつけるのが好きみたいだから。私も10歳くらい離れているけどあだ名で呼ばれてるし。」
「ああ、なるほど……。」
依乃里は桐菜があだ名好きであることを説明し、風布花も何となく理解する。そして今度は風布花が依乃里達に真理紗のことを尋ねる。
「それで、依乃里さんに指輪と花を渡したという黒崎真理紗さんという方は失踪したきりなんですよね?」
「そうなの、突然私をダンスに誘ったらと思ったらこれを渡して消えちゃって。」
「そうですか。その人が何か知っていそうなんですが……。」
風布花は真理紗が情報を握っていると予測すると同時に、真理紗に会えないことを残念に感じる。そんな中、雨幸はふとあることに気が付く。
「あの、風布花ちゃん達がダークストーリーズっていう組織を倒したのが四年前ですよね?そう言えば真理紗さんが失踪したのも四年前って言っていました。これって偶然でしょうか?」
「マジ?もしかして黒崎真理紗って四年前の戦いと関係あるってこと?」
雨幸は風布花が戦っていた時期と真理紗が失踪した時期が一致していることに気が付く。それを聞いた桐菜も驚いて真理紗が四年前の戦いと関係があると推測する。
「私達は真理紗さんのことを知りません。でも私も真理紗さんが私達の嘗ての戦いと無関係ではないと思います。」
「そうだよね……。」
風布花も真理紗が自分達の戦いと関係があると感じていた。それを聞いた依乃里はますます真理紗に会えない歯痒さを感じる。
「依乃里さん、真理紗さんが戦士として戦っているのは私も同感です。真理紗さんは何か指輪をしていませんでしたか?」
「指輪ねぇ……。」
風布花は真理紗が戦士なら指輪をしていると考え、依乃里に尋ねる。依乃里は真理紗と出会ったのが本当に突然だったため指輪もうろ覚えだったが、何とか真理紗の指輪を思い出す。
「あ……、何か思い出してきた……。多分、紫の宝石……。」
「それ、アメジストの指輪です!真理紗さんはきっとアメジストの戦士ですよ。」
風布花は依乃里の話を聞いて真理紗がアメジストの指輪の戦士であると推測する。
「それじゃあ今日はこの辺で。また連絡しますね。」
「うん、ありがとうね。」
そして依乃里達と風布花は別れを告げ、その場はお開きになるのだった。
「四年前の戦いか……。」
帰り際、依乃里は自身の戦いより前にも戦いがあった事実に改めて驚いていた。
「そんな戦いがあるなんて知らなかったですよね。」
「うん、世の中知らないことだらけだなぁ……。」
雨幸と桐菜も改めて四年前の戦いに対し不思議な気持ちになる。そして依乃里は少し風布花達に羨ましさを感じていた。
「それにしても星座と宝石と童話か……、いいなぁ~。」
「ダンスは厳しいですからね……。」
「ふぅちゃんって赤ずきんちゃんの力を使ってたんだっけ?きっと可愛い戦士だったんだろうな~。」
三人は風布花の戦士としての姿を想像し、溜め息を吐いてしまう。
「しょうがないですね、きっと悪の組織によって対抗する力が違うんですよ。」
「うん、多分そんな感じだよね。」
雨幸は自身らの力がダークサイレンスに対抗するものだと推測し、依乃里も同意して少し暗い気分になる。
「ま、これからダンスを頑張ればなんとかなるでしょ。」
「桐菜ちゃんは踊れるから言えるだろうけどさ……。」
桐菜は楽観的に捉えていたが、未だダンスに関しては満足に踊れない依乃里と雨幸にとっては憂鬱だった。
「はぁ……、私達もそろそろ帰ろうか。」
「はい。」
「そうだね。」
依乃里は少し溜息を吐く。そして依乃里達三人も別れを告げ、この場は解散するのだった。
「はい、そうなんです。指輪が復活して、新しい戦士が戦っているんです。」
その夜、風布花は誰かに電話を掛け、依乃里達のことを話していた。
「じゃあまた週末に。その人達も都合がつけば紹介します。」
風布花はそう言って電話を切り、寝床に着くのだった。
そして休日が明け、依乃里はいつものように会社で上司に怒鳴られながらも仕事に明け暮れていた。依乃里は戦士になってから非日常の生活を送っているような感覚になりながらも、私生活自体は大きく変わることがなかった。
「こら桜間!いつになったら外回りに行くんだ!」
「す、すみません!今すぐに!」
依乃里はいつものように上司に怒鳴られ、外回りに行く。そして雨幸や桐菜もそれぞれの大学や高校で講義や授業を受けていた。三人は戦士となった今でも変わらぬ日常を過ごしていた。
「はぁ……。」
「かったる~。」
雨幸と桐菜も変わらぬ日常に溜め息を吐いてしまう。三人は戦士となって以来、変わり映えのない日常に張り合いがなくなっていた。
「ま、平和が一番なんだけどね……。」
依乃里はそう言って外回りに励むのだった。
その夜、依乃里の携帯電話が鳴り響く。
「ああ、はいはい。」
依乃里はお風呂上がりの状態で慌てて電話を取る。
「もしもし?」
「依乃里さん?赤園風布花です。」
「あ、風布花ちゃん。こんな夜中にどうしたの?」
電話の相手は風布花だった。風布花は依乃里に週末の予定について問いかける。
「依乃里さん、今度の週末空いていますか?ちょっとお会いして欲しい人がいまして。」
「会って欲しい人?」
依乃里は風布花の言う会って欲しい人という言葉を聞き返すが、何となくどんな人か察知する。
「もしかして、四年前に風布花ちゃんと一緒に戦っていた人?」
「はい、一度会って欲しくて。」
「わかった、雨幸ちゃんと桐菜ちゃんにも声掛けるね。」
二人はそう言葉を交わし、電話を切る。
「前の戦士か……、どんな人なんだろう?」
依乃里は四年前の戦士に会うことに内心わくわくするのだった。
そして週末、風布花は依乃里、雨幸、桐菜を連れてとあるカフェに向かって歩いていた。
「これから四年前の戦士に会うんでしょ?楽しみ~。」
桐菜は四年前の戦士に会うことにはしゃぐ。
「風布花ちゃん、これから会う人はどの指輪をされていたんですか?」
「はい、前のダイヤモンドの戦士とアメジストの戦士です。」
「私と同じ、ダイヤモンドの戦士……。」
「それに、あの黒崎真理紗と同じアメジストの戦士か……。」
雨幸は風布花にこれから会う人がどの指輪の戦士か尋ねる。風布花がダイヤモンドとアメジストの戦士であると明かすと、依乃里らはどことなく緊張感を覚える。そして風布花は桐菜を軽く睨みつけて言う。
「それと桐菜さん。」
「はい?」
「桐菜さんの誰にでも砕けた態度を取ったりあだ名をつける性格はわかりますが、これから会う人は桐菜さんよりもずっと年上の方ですし、何より初対面でもそのような態度を取る人を嫌うのでくれぐれも気を付けて下さい。」
「え⁉あ、は~い。」
桐菜は風布花の言葉でそれまではしゃいでいた態度とは一転して大人しくなってしまう。
「態度に厳しい人、ということですか?」
「ある程度仲良くなれば厳しいことは言わない人です。しかし度を過ぎた無礼な態度には厳しいですね。」
「そ、そうなんだ……。」
雨幸と依乃里もこれから会う人に少し緊張感を覚える。そんな会話をする内に、一同は目的地であるカフェに辿り着く。
「ここです。」
「ここか……。」
依乃里、雨幸、桐菜の三人はそのカフェのおしゃれな雰囲気に少し押されてしまう。そんな三人を構うことなく風布花は店に入る。
「あ、ちょっと風布花ちゃん。」
三人は慌てて風布花を追いかけるように店に入るのだった。
四人が店に入ると、白い清楚な服を身に纏った茶髪のショートカットの女性が手を振って出迎える。それを見た風布花はそれまでの冷静な佇まいから一転してあどけない笑顔を浮かべる。
「美姫さ~ん!」
「風布花ちゃ~ん!」
風布花ははしゃいでその女性に駆け寄り、抱き着こうとする。しかしカフェの店員が風布花の頭を押さえて睨みつける。
「お客様、他のお客様のご迷惑になるので店内を走るのはご遠慮いただけますでしょうか?」
「う~、林檎さんのいけずぅ……。」
風布花はそのカフェ店員に止められて不貞腐れてしまう。
「全く風布花ちゃんは、美姫さんの前だと節操ないんだから。」
「いいじゃないですか林檎さん、せっかく美姫さんに会えたんですし。」
そのカフェ店員は風布花を睨みつけるなり説教をするが依乃里達にはそれがよくわからなかった。そして風布花を出迎えた女性もカフェ店員に説得のようなものをする。
「ちょっと林檎ちゃん、そんなに警戒しなくてもいいじゃない。」
「ダメですよ美姫さん、何かあったら美姫さんが大変なんですからね。」
「まあ、それはそうなんだけど……。」
カフェ店員は何かを警戒しているようで、女性にも注意する。そして風布花はカフェ店員が離れると改めて依乃里達を案内する。
「それじゃあ依乃里さん、雨幸さん、桐菜さん、こちらにお願いします。」
「あ、うん。」
「失礼します。」
依乃里達は少し印象の違う風布花のはしゃぎ具合に戸惑いながらも席に着く。そして風布花と出迎えた女性、依乃里達三人で向かい合う。
「皆さん、こちらが先代ダイヤモンドの戦士の桜名美姫さんです。」
「桜名美姫です。あまり年齢は言いたくないけど、33歳です。」
「あ、そうなんですか……。」
風布花は女性を紹介する。女性の名は桜名美姫というようで、依乃里は自身よりも年上の人が戦士として戦っていたことに少し驚いてしまう。
「えっと、私は桜間依乃里です。今のダイヤモンドの戦士、ローズレーザーです。」
「私は蓮葉雨幸です。ペリドットの戦士、ベリースパークラーです。」
「新原桐菜で~す。ガーネットの戦士、チェリーエッジです。」
「うん、みんな宜しくね。」
一同は一先ず自己紹介を済ませる。依乃里は自身よりも年上の人が戦っていた事実に少し安心感を覚えていた。
「今33歳ってことは、戦っていた当時は29歳ってことですか?」
「ま、まあね……。」
「何か、親近感が湧きます。私みんなと結構年が離れていて少しプレッシャーを感じていたんです。」
「そうなんだ……。」
依乃里は美姫に親近感が湧くことを明かすが、美姫は少し戸惑っている様子だった。
「でも、私達も結構年齢高い人多かったし依乃里ちゃんもそんなに気にするような年じゃないよ。」
「ああ、そう言っていただけるとありがたいです。」
美姫は嘗ての戦士達が年齢の高いメンバーで構成されていたことを明かすと、依乃里は自身の年齢の高さをコンプレックスに感じていたのが少し和らぐ。
「依乃里さん、やっぱり最年長なの気にしていたんですね……。」
「いのりっちも私達とかなり年が離れているからなぁ……。」
雨幸と桐菜も依乃里が年齢を気にしていたことを知り、少し申し訳なさを感じる。そして先ほど風布花を止めていたカフェ店員が現れる。
「雑談はこのくらいにしておいていいんじゃないですか?私達も聞きたいことがあるんですし。」
「そうだね、林檎ちゃん。」
カフェ店員も何かを知っているようで、美姫に話しかけると風布花の隣に座る。
「私も丁度手が空いたから座らせてもらいます。私は鈴木林檎、28歳。前のアメジストの戦士でした。」
「あなたが、アメジストの戦士……。」
カフェ店員は鈴木林檎と名乗り、アメジストの戦士だったと明かす。依乃里達は少し緊張感を覚えながら林檎を見つめると、林檎は話し始める。
「まず私達がダークストーリーズの親玉に当たるママーハハという怪物を倒した後、指輪は全て光と化して消滅し、力も全て消滅したんです。だからまた指輪が復活していることも疑問ですし、それに新しい組織のダークサイレンスというのも気になるんです。あなた達が知っていることを全て話して下さい。」
「は……、はい。」
依乃里は林檎の圧に押されそうになりながらも林檎の質問に答える。
「正直私達もこの力については知らないんです。ただ花がこのフラヴァイスっていう機械になって、ダンスを踊ったら姿が変わることしかわからないんです。ダークサイレンスは現れる度に騒音を出して暴れる怪物の組織で、指輪をしていなきゃ騒音に耐えられないんです。」
「なるほど……。」
依乃里は知っている全てを林檎に話す。そして依乃里は美姫にふと疑問に感じていることを尋ねる。
「あの、美姫さんが前のダイヤモンドの戦士だと言うなら私が今しているダイヤモンドの指輪を嵌められるんじゃないですか?」
「え?あぁ……、うん。」
依乃里は美姫がまだ戦士の資格を持っているのではないかと感じていた。そうすれば美姫に戦いを任せて自身が戦いから降りることができるのではないかという密かな期待を膨らませていた。そして依乃里は美姫に指輪を渡す。
「んっ……、ダメだ。」
「そんな……。」
しかし美姫は指輪を嵌めることができなかった。それは美姫が既に戦士の資格を失っているということだった。依乃里は少し落胆してしまう。
「依乃里さん、もしかして美姫さんが戦士になれるとしたら戦士を辞めようと思ってたんですか?」
「私達を巻き込んでおいてそれはないよいのりっち。」
「あ……、ごめん。」
雨幸と桐菜にはそれを見透かされてしまい。依乃里は少し申し訳ない気持ちになる。
「私も力になれなくて申し訳ないけど、今の戦士はあなた達ってことみたいだね。」
美姫も指輪を嵌められないことを少し残念がっていたが、それでも希望を依乃里達に託すように言う。
「そうですよね……。」
依乃里は美姫の言葉に少しプレッシャーを感じる。
「やっぱり真理紗さんに会って話を聞くまでは依乃里さん達に戦いを任せるしかないってことですね……。」
風布花は以前戦っていた自分達がいても今の戦いに関しては黒崎真理紗に聞かないといけない状況であると感じる。林檎はふと真理紗の名前に反応する。
「黒崎真理紗、確かその人から指輪を貰ったんですよね?」
「はい、突然現れて。」
「その人が四年前、私達がダークストーリーズを壊滅した時に失踪したと……。」
林檎も真理紗が何か知っていると感じるが、美姫がふと考えを話す。
「でも、その真理紗って人も巻き込まれただけなんじゃないかな?ほら、私達の力の先駆者だって力の源の詳しいことまではわからなかったわけだし。」
「そうなんですか?」
依乃里は美姫達でも自身らが使っていた力の詳細までは知らないことに驚く。
「うん、考えられているのは宝石が悪の組織と戦うために導いているってことくらい。だからその真理紗って人も戦いに巻き込まれて焦っているだけかも知れないかな、あくまで憶測だけど。」
「なるほど、それじゃあ真理紗さんも仲間を増やそうと必死だったってことですね……。」
依乃里はずっと真理紗が全てを知っていると思い込んでいたが、真理紗も自分達と同じく巻き込まれた側だという可能性に少し真理紗にも同情するのだった。
一方その頃、とある公園にテントが並んでいた。この公園はホームレスの溜まり場となっている公園だった。そこにスノアが訪れる。
「ふ~ん、住居や職業が不定っていうのはこういうことなんだね~。」
スノアは人間界のことをある程度調べていたらしく、ホームレスというものに興味を抱いていた。そしてスノアはテントを開け、ある一人の男性に話しかける。
「ねぇ、君は働かないの?」
「あ?お前気持ち悪い恰好してるな。」
「ま、君達にとっては怪物だからね。」
スノアは相手の気持ちを考えるつもりもなく問いかける。男性はスノアの姿に少し不気味さを感じるが、特に動じることはなかった。
「俺は別に働く気はねぇよ。この世界に絶望しているようなものだからな。」
「ふ~ん、絶望ねぇ……。」
スノアはそう言った後、男性の髪を無理矢理引っ張って顔を近付ける。
「いいねぇ、その堕落した考え方。怠惰、それも立派な人間の悪意だからね。」
スノアは満面の笑みでそう言うと、男性の頭に手を翳す。
「じゃあその悪意、僕に頂戴。」
「な、何だと⁉う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
スノアがそう言うと男性は黒いオーラに包まれ、そこから悪意の怪物、マリスが現れる。
「いいマリスが産まれたよ。ありがとうね、どこの誰か知らない人。」
スノアは気絶する男性にそう言うとマリスを連れてどこかへ去るのだった。
「美姫さん達と会ってもらえればまた何かわかると思ったんですが、やっぱり難しいですよね……。」
風布花は謎が増えるばかりの話し合いに申し訳なさを感じていた。
「そんなことないよ、風布花ちゃんが美姫さん達を紹介してくれただけでも心強いし。」
「そう言って頂けると嬉しいです、依乃里さん。」
依乃里は風布花を庇うように話す。風布花も依乃里の言葉は嬉しかった。しかしそんな時、またしても騒音が鳴り響く。
「うっ……!」
「まさか……!」
「この騒音が……!」
美姫、風布花、林檎、そして店内にいた人全てが耳を塞ぎながら倒れこむ。
「美姫さん!」
依乃里は慌てて美姫の元に駆け寄る。
「依乃里ちゃん……、何かいびきのような騒音が……。」
「いびき?」
「聞いたことのない騒音ですね。」
「まさかまた新しい幹部?」
依乃里ら三人は美姫から聞いたいびきという言葉が初耳で、新しい幹部の出現を疑う。
「とにかく行こう!」
「はい!」
「オッケー!」
そして三人は店を出てダークサイレンスの元に急ぐのだった。
「あれは!」
「やっぱり新しい幹部だ!」
三人が辿り着いた先にはスノアがマリスを引き連れて暴れている姿があった。
「あれ~、もしかして君達が戦士って奴~?」
「そういうあなたも、ダークサイレンスの幹部だよね?」
「僕の名前はスノア、宜しくね~。」
スノアはマイペースな口調で話しかけ、自己紹介をする。
「スノア、少し弱そうな響きですね。」
「ま、墓石に刻むためにも覚えておいてあげるよ。」
「みんな、行くよ!」
雨幸と桐菜が挑発的な態度を取った後、依乃里の合図で三人はフラヴァイスを振り下ろして開き、口元に持って行く。
「バラ!ダイヤモンド!フラメンコ!」
「スイレン!ペリドット!ベリーダンス!」
「サクラ!ガーネット!日本舞踊!」
三人がそれぞれ叫ぶと、フラヴァイスから音声が流れる。
「Let's Dance!」
「踊るよ!」
「踊ります!」
「踊っちゃうよ!」
三人はそう叫ぶとそれぞれダンスを踊る。やがて三人は戦士へとその姿を変える。
「情熱の舞姫、ローズレーザー!」
「妖艶の舞姫、ベリースパークラー!」
「美麗の舞姫、チェリーエッジ!」
「情熱のメロディー、響かせてあげる!」
三人は名乗り、スノアとマリスに立ち向かうのだった。
「このままじゃ……、何とかしないと……。」
「無理だよ風布花ちゃん、ここは依乃里ちゃん達が何とかしてくれるまで待とう?」
風布花は責任感からか苦しみながらも店を出ようとするが、この動けないほどの騒音で美姫は動かないよう風布花に言い聞かせる。
「いいえ、また新しい敵が出たんです。このまま何もしないわけには……。」
風布花はそう言って美姫の反対を押し切り何とか店を出る。そして数歩進むがやはりこの騒音の中で立つことなど困難でまた倒れこんでしまう。
「私もまた宝石に選ばれることが出来れば……!」
風布花がそう言った瞬間、遠くで光る物を見つける。
「あれは……?」
風布花はその光が気になり苦しみながらもそこまで向かう。すると風布花はあるものを見つける。
「これは……!」
一方その頃、戦士となった三人はマリスと戦っていた。
「バイレ・デ・フローレス!」
ローズレーザーはフラメンコを踊って無数の花びらを降らせ、マリスに直撃させる。
「エクスプロシオン・デ・フローレス!」
続いてローズレーザーはフラメンコを踊って爆発を起こし、マリスを吹き飛ばす。しかしマリスに対しては決定打に欠けていた。
「ダメだ、いまいち決まらないよ。」
「せっかくいのりっちが新技出したのにね。」
「それにスノアという幹部も中々手強いです。」
チェリーエッジとベリースパークラーもスノアに苦戦していた。
「ふふ~ん、ボードクローを倒したと言っても大したことなさそうだね~。」
スノアは余裕綽々な態度を取りローズレーザー達を挑発する。
「くっっ……、こんなところで……。」
ローズレーザーが悔しさを噛み締めた時、風布花がそこに駆けつける。
「皆さん!」
「風布花ちゃん⁉」
「マジ⁉」
「騒音は大丈夫なのですか?」
三人は風布花が騒音の中現れたことに驚く。
「理由は後で話します。三人で敵を囲って必殺技を放って下さい!」
「わかった!」
三人は風布花の言葉の通りスノアとマリスを三人で囲み、逃げ道を塞ぐ。そして三人は一斉に構える。
「レーザーストライク!」
「ベリースラッシャー!」
「鋭刃の舞!」
三人は一斉に必殺技を放ち、マリスは消滅してしまう。しかしスノアはギリギリのところで持ちこたえていた。
「なるほど、ボードクローを倒したというのも強ち嘘じゃないみたいだね。ここは退いてあげるよ。」
スノアは三人の攻撃に手ごたえを感じながらも余裕気な態度を崩すことなく退散する。そして騒音は止み、三人は元の姿に戻るのだった。
「皆さん、お疲れ様です。」
「風布花ちゃん、何で騒音の中でも平気だったの?」
三人の元に歩み寄る風布花に、依乃里は騒音の中で動いていたことを尋ねる。すると風布花は左手を見せ、そこには金色に縁どられた真珠の指輪があった。
「あ、指輪!」
「風布花ちゃんも再び資格者となったのですね。」
「なら百人力じゃん!」
風布花は嘗て自身が戦士として身に着けていた真珠の指輪を発見し、再び嵌めることに成功していた。それは風布花が再び戦士の資格を得たことを意味していた。三人は風布花が仲間になることに喜ぶ。
「はい、これで私も皆さんのお役に立てます。」
風布花も三人と同じように喜び、みんなで美姫達の元に戻るのだった。
「まさかまた風布花ちゃんが戦士になれるなんてね。」
「またみんなと一緒に頑張ってね風布花ちゃん。」
「はい、美姫さん。」
林檎と美姫も風布花が指輪の資格を得たことを喜んでいた。美姫は風布花を応援する。
「美姫さん、美姫さん達の分まで頑張ります。」
「林檎さんも、見守っていて下さい。」
「うん、頑張ってね。」
依乃里と雨幸も、美姫と林檎に改めて戦士として世界を守ることを誓う。そして三人は新たに戦士として戦う覚悟を決めるのだった。