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第零話 離ればなれになったら、もう一度会えるように。
「アリア。」
「なに?お母さん?」
「もしアリアの大切な人が遠くへ行ってしまったらどうする?」
「追いかける。」
「そうだよね。もう一回、会いたいよね。」
「もしお母さんがいなくなっても、アリアは幸せになってね。」
「うん?お母さん、どこか行くの?」
「私は、月に帰るの。」
「月に?お家はここだよ?」
「ごめんね。アリアは自分らしく生きてね。私みたいに、義務感に縛られないで。」
母の目には涙が浮かんでいる。
そのあと、お母さんは、「遺伝子のおまじない」をしてくれた。
その日から、母が帰ってくることはなかった。
「どうして……」
「……きっといつかおまじないがあなたを救う。大切な人ともう一度会えるおまじない。」
「ごめんね。こんなことしかできなくて。」
「ごめんね。」