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エルカリム  作者: Pixy
第一章 悪徳領主編
14/94

第14話 『スナイパー』

闇の中には何か隠れている気がするものだ。

それは正しい。

 キラ達が盗まれた剣を取り戻すべく、盗賊団『黒蜘蛛』を追ってフォレス共和国を発ったその頃、盗賊の根城であるゴーストタウンの近くにある村では、ちょっとした騒ぎが起こっていた。

「も、もう勘弁してください!これ以上麦を取られたら、冬を越せません!」

 ここにも黒蜘蛛団は手を出しており、村を襲わない条件として領主に収める年貢とは別に、収穫した麦や金品を要求していた。

 どれもこれもガラの悪い顔つきをした盗賊達の中央に立つ女が一人。30代くらいに見えるその女は、抗議する村人を鼻で笑った。

「あんた達、いつからそんな偉そうな口が利けるようになったの?殺されたくなかったら、ありったけ出しなさい!」

 村人に盗賊に抵抗する力はなかった。

 渋々、せっかく収穫した麦の束を盗賊に差し出す住人達。

 そんな時、黙って従っていた村人の中から、若者が飛び出して声を荒げる。

「メリーは?!もう今週には返してくれる約束だろ?!」

「はぁー?ああ、部下がオモチャにしてたあの娘ねぇ。とっくに処分したわよ、ボスはもう要らないって言うし」

 ショックで打ちひしがれる若者をあざ笑うように、女は続ける。

「まあ、用済みになった後で痛めつけてやったら、いい声で鳴いたわねぇ。最期は犬の餌にしてやったわ」

「お、お前ぇぇーっ!!」

 激高して女に掴みかかろうとする若者だが、周りの盗賊達に取り押さえられてしまう。

 すると女は、身動きできない若者に手をかざすと呪文を唱え始めた。

「う、うぅ……」

 最初は抵抗しようとしていた若者が、見る見る衰弱して力を失っていく。

 相手から体力や魔力を吸い取る、闇の呪文の一種だった。

「あたし達『黒蜘蛛』に逆らうってどういうことか、教えてやるわ」

 なおも体力を吸収し続ける女魔術師。

 だが、完全に吸い尽くして殺す前に術を解いた。

「もういいわ、離しなさい」

 盗賊が手を離すと、衰えてぐったりとした若者は地面に倒れ込む。

 その無抵抗な相手目掛けて、女の容赦ない蹴りが次々と叩き込まれた。

「いい?!あたし達に逆らったら!こう!いう!ことに!なんのよ!」

 他の村人達も助けに入りたいのは山々だが、今逆らえば次は自分がああなることが目に見えていたため、手出しできずにいた。

「なに?誰も助けてあげないわけ?そりゃそうよねぇ、誰もこんな風に痛めつけられたくないでしょうよ!」

 村人が抵抗できないのをいいことに、嬉々として若者に暴行する女魔術師。

「あっははははは!!雑魚を教育してやるのってほんっと楽しいわ!」

 女は見せしめとして、これまでも何人もこうやっていたぶり倒し、時に殺していた。

「……あの女の趣味には付き合いきれないぜ」

 一方的に若者をいたぶる女を見て、流石の盗賊もぼそりとこぼす。

「おい、聞かれたら大変だぞ。あれでも、ボスのお気に入りの幹部なんだからな」

 もう動かなくなった若者をひたすら暴行し続ける女の下に、別の盗賊が駆け寄ってくる。

「カミッラさん、ボスからの新たな指令です」

 若者を踏みつけたまま、部下から渡されたメモと地図に目を通すカミッラと呼ばれた女。

「ふぅん、大口の仕事はうまく行ったみたいね。こんなしみったれた村の収入なんかより、よっぽど金になりそうだわ」

 若者に興味を失くしたカミッラは、村から搾取した麦と金品を部下に持たせ、撤収していった。

 村人達は急いで若者を助け起こそうとしたが、カミッラの容赦ない暴力の前に、彼は既に息絶えていた。


 それから二日が経過し、キラ達は馬車で黒蜘蛛団を追っていた。

 ユーリが持ってきた地図によれば、盗賊がアジトに使っているゴーストタウンはもう目の前だ。

 一行はその手前で馬車を停め、徒歩で慎重に敵地に乗り込むことにした。

 打ち捨てられ、廃墟と化した無人の町は荒れ果てていた。吹き抜ける風が不気味な音を立て、枯れ草を揺らす。

 夕暮れも近くなり、まさに幽霊でも出てきそうな雰囲気だった。

 ルークはその光景を見て、かつてカイザーの下で革命の準備を進めていた時、反政府軍との会合で似たようなゴーストタウンを訪れたことを思い出していた。

 レジスタンスにしろ盗賊団にしろ、反社会的勢力が身を潜めるにはうってつけの場所というわけだ。

 敵襲に備えつつ廃墟を探索したキラ達だが、そこに人の気配はなかった。昨夜まで何者かが生活していた痕跡は残されているが、今は無人の状態だった。

 盗品の保管庫と思しき倉庫も空になっており、目的の剣も見当たらない。

「一歩遅かったかのう?」

 馬車を飛ばして最速でアジトに急行したものの、どうやら盗賊団は引き払った後のようだった。

「となると、次の問題はあの剣をどこに運んだか、ですね」

 ルークはあくまで落ち着いてそう言った。

 魔法剣であると知らなくとも、宝石で装飾された宝剣だ。さぞかし高く売れることだろう。

「仕方ないわね。一旦馬車に戻って、ユーリとの合流を待ちましょう。盗賊団の取引相手も彼なら把握しているはずだわ」

 盗賊との盗品売買に手を染めるような連中は、裏で悪名が立っているものだ。

 そしてそういった者達の情報は、裏の住人であるユーリなら分かるはずだとソフィアは考えた。

 彼はこのアジトに先行しており、現地で落ち合う予定だった。馬車を使った分、キラ達の方が先に着いているのかも知れない。

 ここでユーリと合流し、それから次の行き先を考えるべきだと一行は来た道を戻ろうとする。

 だがその帰り道、ディックは途端に強烈な眠気に襲われた。

「う……。何か、めっちゃ眠い……」

 そのまま、ディックはその場に倒れ込んでしまった。

 慌てて仲間が駆け寄るが、眠っているだけのようだ。

「これは、一体……?」

 首をかしげるルークだが、今度は見る見る全身が痺れていくのを感じ、思わず膝をつく。

「ルークさん?!」

 心配して近付こうとするキラを、ルークは辛うじて動く左手で制した。

「来てはいけません!これは……魔法による攻撃です!」

 魔法剣士としてある程度魔法にも詳しいルークは、すぐに魔術師から攻撃されているのだと察知した。

 一口に魔法と言っても、ルークのように相手を殺傷する呪文ばかりではない。相手を眠らせたり、身体を麻痺させたりといった術も、立派なジャンルとして存在している。

 動けなくなったディックとルークの二人を庇うように、ギルバートとメイが前に出る。

 メイは戦斧を構え、接敵に備えた。

「ディックさん!起きてください!」

 キラは眠りこけているディックを揺り起こそうとするが、彼は一向に目を覚まさない。

「キラ、無駄よ!魔法で眠らされた場合は、しばらく目覚めないわ!」

 ソフィアもすぐに戦闘態勢に入る。

 まず銀製の杖を目の前に構え、手を離すと杖はそのままソフィアの前で宙に浮いた。

 そして空いた両手で魔術書を開き、右手を本にかざすと風に吹かれたようにページが次々とめくられていく。

 浮かせた杖で体内の魔力を増幅、制御し、魔術書にあらかじめ封じられた術式を解放することで呪文の詠唱を省略。これがソフィア流の戦い方だった。

 まずはルークとディックにかけられた術を解除しようとしたのだが、その足元へ投げナイフが打ち込まる。

「……っ!どこから?!」

 直撃は避けられたものの、集中が乱れたせいで詠唱は中断されてしまった。

「本当に来たぜこいつら。ボスの予想通りだ」

 廃墟の物陰から次々と、武装した盗賊達が姿を現す。

 そしてその奥には、カミッラと呼ばれていた女が立っていた。

「あたし達に喧嘩を売るなんて、よっぽどの馬鹿みたいねぇ。ボスの指示通り、ここで始末させてもらうわ!」

 ギルバートとメイが斬り込み、カミッラを護衛する盗賊と戦っているその間に、部下に守られながらカミッラは呪文を唱え、術を完成させる。

 ギルバートに向けて放たれたその術は、相手の精神を混乱させ、敵味方の区別をつけなくするという厄介なものだった。

 判断力を奪われたギルバートは、敵と戦っているつもりでメイに向けて攻撃してしまう。

「くっ……!」

 闘気術の重いパンチを何とか受け流すメイだったが、そう長くは持たないだろうことは想像に難くない。

 その間にもカミッラは、今度は動けないルークとディック目掛けて術を行使する。体力と魔力を吸い取る、闇の魔法だ。

 相手の行動を妨害する術に、生命力を吸い上げて徐々に衰弱死させる魔法。嫌がらせのようなそれらの術は、カミッラという女の性格の悪さを顕著に現していた。

 動きを封じられた状態でジワジワと生命力を吸い取られ、衰弱していく二人。

 その間にも、混乱したギルバートと戦わざるを得ないメイも追い詰められていく。

 戦局を持ち直すためにも、解呪の術を急ぐソフィアだが、そんな彼女に向けて、カミッラは部下の盗賊をけしかける。

「ほら、後は雑魚だけよ。さっさと蹴散らしなさい!」

 カミッラは術で敵を無力化することを専門にしていたが、トドメはいつも部下任せだった。

 部下の盗賊は盗賊で、無抵抗な相手を殺すだけでいいので楽はできたが、不満がないわけでもない。

(やれやれ、俺達がいくら働いても、手柄は全部カミッラのものなんだよなぁ……)

 だが幹部であるカミッラに、下っ端が逆らえるわけもない。

 不満を抱えつつも、盗賊達はキラとソフィアに迫る。

 キラは術をかけるまでもなく恐怖で動けなくなり、ソフィアはソフィアで前衛が倒れた今、自力で白刃戦を行えるような戦闘技術は持ち合わせていない。

 魔法剣士ではないソフィアは、一番の弱点を突かれた形となる。

(奇襲されたとは言え、まずいことになったわね……!)

 接近戦が苦手な魔術師にとって、敵を押し留めてくれる前衛を潰されるというのは、最悪の事態だ。

 そんな時、色々とポケットに詰め込んできたことを思い出したソフィアは、右手で懐の中を探る。

 そして目当てのガラス瓶を手にした彼女は、それを迫りくる盗賊相手に投げつけた。

「うわっ?!な、何だこりゃ?!」

 瓶の中身は、引火性の高い魔法薬だった。

 万が一、呪文を唱えている猶予がなかった時のための自衛用にと持ってきた、言わば爆薬に近いものだ。

 敵に接近戦を挑まれた時を想定し、爆薬のような爆発力は持たせていない。自分や味方まで爆風に巻き込まれる危険性を考慮してのことだ。

 だが瓶が割れて中の燃える薬液を被った盗賊達は、火達磨になってのたうち回った。

「次はこれよ!」

 今度ソフィアがポケットから取り出したのは、小さな角笛だった。彼女はそれを盗賊目掛けて、力の限り吹く。

 次の瞬間、角笛の先端から炎が吹き上がり、近付こうとした盗賊達を襲う。

 簡単に炎の術が発動するマジックアイテムで、言わば火炎放射器のようなものだった。

 欠点は炎が届く範囲が短く、近距離でないと牽制にしかならない点。

 そしてもうひとつ、炎を出すのに詠唱はいらないが、一度火を噴くと再充填まで数分かかる。

「大丈夫?!」

 ソフィアが道具で何とか盗賊を押し留めている間に、混乱中のギルバートを振り切ったメイが駆けつけ、キラとソフィアの護衛についてくれた。

 一人だけとは言え前衛が戻ってきたことで、僅かながらソフィアに詠唱の猶予が与えられる。

 仮にも賢者の称号を得た最高峰の魔術師、不利な状況が重なったとしても、そのチャンスを逃すソフィアではない。

「やられるばかりだと思わないことね!」

 解呪を一旦諦め、魔術書をめくると新たな呪文を唱えるソフィア。

 彼女の頭上にいくつもの魔法陣が浮かび上がり、そこから白い光線が迫りくる盗賊目掛けて発射された。

『魔法の矢』と呼ばれる基礎的な破壊呪文で、威力は据え置きだが素早く詠唱でき、かつ精密攻撃が可能という利点があった。

 本来は一発ずつ発射するものだが、上位の魔術師であれば複数を同時発射することも可能だ。

 魔法の矢にはある程度の追尾性があり、ソフィアが反撃に転じたと分かって回避しようとした盗賊達も、避けきれずに次々と光線に貫かれていく。

(急いだせいで狙いが甘かった……!)

 光線にやられた盗賊も、全部が致命傷というわけではない。

 そもそもの威力は低いため、本来ならば頭部や心臓といった急所を的確に狙うことで弱点を補うのだが、今のソフィアに同時発射しつつ全員の急所に狙いを定める余裕まではなかった。

(雑魚相手なら大火力の呪文で焼き払いたいけれど……!)

 近くには硬直して動けないキラに、身体が麻痺したルークと眠ったままのディックも居る。

 下手に威力重視の魔法を撃てば、彼らが巻き添えになってしまうだろう。

 術で動きを封じられた二人が、事実上の人質のような状態になっていた。カミッラはその辺りも含めて、計算尽くのようだ。

 頼みの綱の前衛は敵の先制攻撃でほぼ壊滅、丸裸になったソフィアにはカミッラが手下をけしかけ、雑魚を一掃しようにも仲間を巻き込む危険があり大魔法が撃てない。

 この状況に、ソフィアはどう動いていいか分からず、混乱していた。

 何せ、ソフィアはこれが初の実戦だった。彼女は研究を主とする学者肌の魔術師であり、カミッラのような戦闘職タイプとは畑が違う。

 知識や魔力では賢者のソフィアが勝っていたが、実戦経験や場数ではカミッラが圧倒していた。

(こういう時こそ落ち着くのよ、私。まずは群がる雑魚の数を減らして、余裕を作ってから味方の解呪を……)

 初陣のプレッシャーに圧されつつも、平常心を保つよう自分に言い聞かせ、ソフィアは魔法の矢による反撃を続ける。

 カミッラが引き連れてきた部下は、それほど大勢ではない。

 ある程度数を減らせば波状攻撃もできなくなり、解呪の呪文を唱える時間的猶予が作れるとソフィアは考えた。

「チィッ、使えない連中ね。なら、こうよ!」

 ソフィアに手こずる部下に苛立ったカミッラは、そのソフィア目掛けて吸収の術をかける。

 盗賊に気を取られてカミッラの存在をほとんど忘れていたソフィアは、術で防御することもままならず、生命力を見る見る吸い取られていく。

「随分と膨大な魔力を持ってるじゃない。ぜーんぶ吸い尽くしてやるわ!」

 魔力は余裕があっても、自信のない体力はあっという間に限界に達する。

 運動した直後というわけでもないのに息が切れ、ソフィアは立っていることすらできずに膝をつく。

 呼吸をすることさえも苦しく、とても呪文の詠唱が行えるような状態ではなかった。

「すぐには殺さないわ。あたしはね、自分よりきれいな顔した女が大っきらいなのよ。親でも見分けがつかないくらいに刻んで、殺すのはそれからねぇ!」

 勝利を確信したカミッラが嗜虐心に満ちた笑みを浮かべた、その時だった。

 どこからともなく飛来した一本の矢が、カミッラの足を射抜いた。

「ぎゃああああ!だ、誰か助けに来なさいよ!」

 致命打ではないものの、立っていられず倒れ込むカミッラ。

 吸収の術も、集中が途切れたことで中断されてしまった。

「カミッラさん、大丈夫ですかい?!」

 部下の盗賊が攻撃の手を止めて駆け寄り、助け起こそうとするも、今度はその盗賊の頭に新たな矢が突き刺さる。

 幹部であるカミッラを敢えて殺さずに助けを呼ばせ、寄ってきた部下を餌食にする。

 言わば、カミッラは散らばっていた標的を一箇所に集めるための”釣り餌”だ。

「どこからだ?!」

「見えねぇ!相手は何人なんだ?!」

 戦闘中に既に日は落ちており、周囲は薄暗い。

 盗賊ならば夜目が効くはずだが、そんな彼らでも射手がどこに居るのか、見つけることができないでいた。

 倒れたカミッラも暗視の術を自分にかけて周囲を見渡すが、どこにもキラ達以外の敵は見当たらない。

(居ない?!そ、そんなはずは……!カモフラージュしてどこかに潜んでいるはずなのに!)

 混乱に陥る盗賊達をあざ笑うかのように、次から次へと見えない射手からの正確無比な射撃が襲いかかる。

 暗闇は本来、盗賊側の土俵のはずだが、彼らでも敵の位置や数は把握しきれず、一体何に襲われているのかも全く分からなかった。

「あ、あんた達!早くあの狙撃手を何とかしなさいよ!」

 足を射抜かれただけのカミッラは元気だったが、部下にしてみればいくらそう言われても見えない敵に対してどうしようもなかった。

 その時、正気に戻ったギルバートの鉄拳と、麻痺が解けたルークの剣が、困惑する盗賊達を襲う。

「こいつら、動けたのか?!」

 追い打ちをかけるかのような攻撃に、対応が遅れて押し込まれる盗賊。

「私にも意地があるわ……。賢者をナメないことね……!」

 ソフィアは体力の限界で倒れ込む直前、ギリギリで解呪の術を完成させてルークとギルバートにかけていたのだ。

 ルークは身体が動くようになり、ギルバートも敵味方の認識が正しく行えるようになった。

 そして見えないところからは謎の弓兵の矢。

「これ、やべぇだろ……」

「くそっ、あの女と心中はごめんだ!」

 カミッラは性格の悪さから、部下からも嫌われていた。

 盗賊達はもうどうしようもないと分かると、足に矢を受けて動けないカミッラを置いて、一目散に逃げ出した。

「ちょっと、あんた達?!あたしを置いて逃げるなんてどういうつもりよ?!」

 カミッラはヒステリックに叫ぶも、一度怖気づいた部下達は振り向きもせずに逃げていく。

 だが目に見えない謎の狙撃手は非情にもそれを許さず、一部は足を射抜くことで逃げられないようにし、残りは頭を矢で貫いて一人残らず始末した。

 敵は居なくなり、夜のゴーストタウンにキラ達だけが残された。だがキラ達は警戒を解かず、身構えたままだった。

 ソフィアも改めて魔力のシールドを張り、狙撃手の矢が自分達に飛んで来ないか警戒している。

(この射撃は恐らく……)

 ルークにはある種の確信があった。彼の読み通り、狙撃手はキラ達に攻撃を仕掛けてくる気配はない。

 やがて、暗闇の中から一人の人影が歩み寄ってきた。

 ルークの知る限り、暗闇での狙撃は完全に不可能な芸当ではない。何故可能なのかは不明だが一人だけ、それができる人物を知っている。

 ソフィアの作った魔法の照明が、謎の狙撃手の姿を照らし出す。

 灰色のフードと外套に身を包み、弓を持った男。つい先日に見た顔だ。

「ユーリさん、やはりあなたでしたか」

 彼とは現地で落ち合う予定になっていた。

 馬車に乗った分キラ達の方が早く着いてしまったようだが、そこにようやくユーリが追いついた形だ。

「彼は味方です」

 ルークは剣を収めつつ、ユーリを知らないギルバート、ディック、メイに敵ではないことを説明した。

 ソフィアは彼を知らないわけではなかったが、闇夜に狙撃などという芸当ができるとまでは知らなかったようだ。

 目の前の男が今回の協力者のユーリであることを知った仲間達は警戒を解き、それぞれ矛を収めた。

「災難だったな。状況は?」

「剣は運び出された後でした。そして私達を消そうと盗賊が待ち伏せを」

 ルークはメイの傷を手当てしながら、簡単にさっきの戦闘に至るまでの経緯を説明した。

「取引先の候補はいくつかある。絞り込みが必要だな」

 以前と変わらず抑揚のない声で話しつつ、ユーリは暗闇に倒れている盗賊の一人を引っ張ってくると、ロープで縛り上げた。

 今回の待ち伏せを指揮していた盗賊団の幹部、カミッラだった。わざと足を射抜いて、そのままトドメは刺さず生かしておいたのだ。

 更に相手は魔術師ということで、呪文が唱えられないよう、猿轡の代わりに口にボロ布を丸めてねじ込んでおく。発声を封じられれば、魔術師は実に呆気ない。

 他にも数名、わざと殺さないでおいた盗賊がいる。皆足をやられて逃げるに逃げられず、そのまま拘束された。

「詳しい話は明日、こいつらから聞くとしよう」

 その姿を見ていたギルバートは、敵ではないと頭では理解しつつも内心警戒していた。

 ルークから聞いた話で、革命戦でカイザーの戦力として共に戦ったとは聞いていた。だがフードの奥から覗く鋭い眼差しは、本能的に警戒心を煽る。

(奴には危険な臭い……戦火の臭いが染み付いておる。そのせいか)

 常に戦場の中を渡り歩き、命のやり取りを日常として生きていれば、こんな姿に落ち着くのか。

 想像以上に危険な男だと判断しながらも、今はそれが敵でなかったことにほっとした。

「ルークさん、もう大丈夫なんですか?」

 恐怖で固まっていたキラが恐る恐るルークに問いかける。

 麻痺の呪文をかけられ、吸収の術で体力を吸われたが、外傷は特に負っていない。

「私は問題ありません。それより、キラさんこそ怪我はありませんか?」

 キラは頷いて答えた。

 仲間が必死に守ってくれたおかげで、追い詰められていてもキラは無事だった。

「今日はもう休もう?」

 まだ緊張が解れない様子のキラに、メイがそっと語りかける。

 盗賊との激しい戦いで全員が消耗していた。一行は拘束した捕虜を連れて馬車に戻ることにした。

 二度目の襲撃を警戒しつつ、いつもの野営のように火を起こそうとする一行。

 するとソフィアは、火打ち石を持ち出すまでもなく、無詠唱で小さな魔法の火を発生させ、焚き火に着火した。

「うわ、便利だなおい」

 火打ち石を持ち出そうとしていたディックは、思わず声を上げる。

 このアジトへ急ぐ間は、馬車を最速で飛ばしてきたため、道中で火を起こす機会もなかった。

(さすがは賢者、と言ったところか。あのくらいの下位呪文なら、詠唱すら完全に省略できるのか……)

 薪を運んできたルークは、冷静にその光景を見つめていた。

 いくら彼が魔法剣士として呪文を短縮していると言っても、完全に無詠唱では初心者向けの術すら完成させられない。

 それに、ルークが扱えるのは風の呪文のみで、それ以外は習得できなかった。

 戦闘では初動で遅れを取ったものの、改めて賢者と呼ばれる最高峰の魔術師の力を垣間見たルーク。

 その間にも、焚き火の周りに仲間が集まり、携帯食を焼き始める。

「はぁ……。川か池でもありゃ、魚が釣れたのによぉ」

 ぶつぶつと文句を言いつつ、ディックは干し肉にかじりつく。

「狩りができる余裕があれば、食糧を補充しておきたいところじゃな」

 ここまで急ぎ足だったため、食事はフォレス共和国で買った携帯食のみで来ていた。

 もっと時間に余裕があるなら、現地で新鮮な野菜や動物の肉を調達するという手もあったのだが。

「少し、ユーリと二人で話をさせてもらってもいいかしら?」

 食事を終える頃、ソフィアがそんなことを言い出した。

 ユーリも黙って頷く。

 二人は馬車から少し離れ、話し始めた。

「用件は?」

「あなた、あの盗賊団の首領が狙いだと言っていたわね?やはり追うのよね、彼らを」

「無論だ」

 それを聞いたソフィアは、ユーリにひとつ提案を持ちかけた。

「私達も盗賊団を追うわ。そこで、追加の依頼をしたいの。本来の依頼のついでで構わないわ」

 ユーリは黙って続きを促した。

「キラという少女が一緒にいるの。栗色の短い髪の子で、あなたの知り合いのルークの連れよ」

「知っている。以前見たことがある」

 最初は革命戦の時、最近ではソフィアの工房が襲われた時に一緒に居たのを少しだけ見た。思えば革命戦の時も、ルークはキラを必死で庇っていた。

 一匹狼の傭兵であるユーリには、何故身を挺してまで庇うのか、ルークの心境は理解できなかった。

「キラの護衛を頼みたいの。彼女に危険が迫ったなら、全力でそれを排除してちょうだい」

 ソフィアもユーリとの付き合いは長いが、傭兵であることは知っていても本格的に仕事の依頼をするのは今回が初だ。

 ユーリの方も、少し考えた上で受諾に必要な情報を聞き出した。

「報酬は?」

「いつもあなたに売っている薬、あれを出すわ。毎回薬代が馬鹿にならないでしょう?」

「期間は?」

「キラは失った記憶を探して旅をしているわ。できればあの子の旅が終わるまで護衛して欲しいけれど、いつ仕事を終えるかは任意で構わない。期間中は報酬の薬を渡し続ける。これでどうかしら?」

 ユーリは廃屋の壁にもたれかかりながらしばし考えた。

 ルークだけでなく、賢者ともあろう者がここまで入れ込むキラとは何者なのか?一見するとただの娘のようだが、何か事情があるに違いない。

 彼の勘が危険な臭いを感じ取っていた。

「何故、護衛の必要がある?」

「あの子が、類稀な才能を持つ……異能者だからよ。キラはやがて歴史を動かす存在になるかも知れないわ。何としても守らなくてはいけない。だから私もこうして彼女の側についているの」

 異能者というワードはユーリも聞き覚えがあった。あまりいい思い出はない。

 ひとつため息をつくと、彼はこう答えた。

「……首領を殺るまでは元々の依頼を優先させてもらう。その後は一月につき銀貨200枚の追加報酬をもらう。この条件でいいなら請ける」

「契約成立ね。前金代わりに渡しておくわ」

 握手を交わすと、ソフィアは懐から『劇薬注意』のラベルの貼られた薬入れを取り出し、ユーリに渡した。

 彼が工房を訪ねてきた時に渡した物と、同じ薬が入っている。

「キラの護衛、しっかり頼むわよ。信用しているから」

 傭兵と言えば金次第で裏切るという印象を持たれがちだが、実際は信用第一で下手なことをすれば、もう仕事の依頼が来ないということもあり得る。

 何より今回は金銭報酬ではない。ソフィアは彼の生命線を握っていることを知っていた。

 ユーリは黙って頷き、二人は仲間の待つ馬車へと戻っていった。

「ようお二人さん、お喋りは済んだのか?」

 茶化すようにそう言うディックに、ソフィアはいつもの調子で答える。

「ええ。彼を護衛として雇ったわ。盗賊団を倒した後も戦力になってくれるわよ」

 その言葉にルークは少し驚いた。

「雇った?傭兵として雇用契約を結んだということですか」

 何せユーリの腕はルークがよく知っている。

 あのカイザーが重用する程の傭兵を雇うとなれば、かなりの契約金が必要になるはずだ。ソフィアがいくら旅の資金を多めに持ってきたとは言え、それで賄えるとは思い難い。

「長い付き合いだもの。そのよしみよ。……と言うわけで、よろしくお願いするわね」

 沈黙を保つユーリに代わって、ソフィアが仲間達に挨拶した。

 ルークも彼のことは革命戦で共に戦ってある程度知っていたが、どこまで信用できるかは未知数だった。

 下心でついてきたディックよりは信じられるかも知れないが、どんな行動を取るのか注意せねばならないと考えていた。

 それぞれ自己紹介を済ませた後、一行は交代で見張りをしながら休憩した。幸い何事もなく夜が明けた。

 朝を迎えた彼らは、携帯食で簡単に朝食を済ませると、次の行動のために動き出す。

「お前らの行き先はどこだって聞いてんだよ!さっさと言えオラッ!」

 昨夜拘束した捕虜であるカミッラに、尋問を開始する一行。

 ディックは凄まじい剣幕で怒鳴り散らすが、カミッラはふてぶてしい態度で取り合おうとしなかった。

「はんっ。あんたみたいな、小便臭いガキに話すことなんてないわね」

「ちょっと待てこら!ガキって何だガキって!俺はこう見えてももうにじゅう……」

 軽くあしらわれるディックをどかして、ユーリが前に立った。

「俺に代われ」

 ディックとは打って変わって無言の威圧感を放つユーリだが、それでもカミッラは屈しようとしなかった。

「次はあんた?ふん、頭巾で顔を隠した臆病者なんて怖くもないわ。うちのボスの方が百倍……」

 鼻で笑うカミッラに、ユーリは何も言わず鳩尾へ拳を叩き込む。

 前のめりに倒れ込むカミッラの髪を掴んで頭を持ち上げると、いつも通り感情のこもらない冷たい声で話しかけた。

「俺の質問にだけ答えろ。お前達の首領はどこへ向かった?」

「ふふふ……南の島よ。げふっ?!」

 薄ら笑いを浮かべるカミッラの横顔に、ガントレットをはめた左腕のフックが炸裂する。

 痛みに目を白黒させるカミッラの胸ぐらをつかむと、鋭い眼光で相手の目を睨みつけて再度同じ質問を繰り返す。

 弱者をいたぶり殺すことが趣味だったカミッラだが、因果応報と言うべきかここに来て立場が逆転した。

 相手が女だからと甘く見て、手心を加えるようなユーリではない。口を割らせるための容赦ない拷問がカミッラを襲う。

「お前達の目的地は?」

「あ、当ててみなさいよ」

 一向に喋ろうとしないカミッラを、ユーリは淡々と痛めつけていく。

 カミッラは村人などを暴行する際、力加減をせずによく相手をなぶり殺しにしていたが、ユーリはそんなヘマはしなかった。

 致命傷にならず、かつ情報を喋れるだけの体力を残した上で、耐え難い痛みを与える。

 その様子を見ていたギルバートは呟いた。

「……プロの尋問じゃな、あれは」

「プロってああいうことすんのか。こっわ」

 すぐ横で見ていたディックはかなり引いていた。

 戦うことは得意で好きだったが、それと拷問とはまた別物だ。

 殺さない程度に相手を痛めつけて精神力を削ぎ落とすその技術は、見ていてあまりに痛々しいものだった。

「どこで習ったかは知らんがな。さて、ワシらも見物しとらんで手掛かりを探すとしよう」

 ギルバートとディックも他の盗賊の尋問に取り掛かる。

 するとユーリが尋問しているカミッラが、締められた鶏のような悲鳴をあげた。とうとう指の骨をへし折られたようだ。

「おいお前。喋らなかったらあいつに任すぞ」

 ため息混じりにディックは縛られた盗賊にそう言った。

「お、俺のポケットの中……」

「ああん?」

 恐れをなした盗賊の呟きに、ディックは警戒しつつ彼のポケットの中を探った。

 出てきたのは、折り畳まれた紙だった。

「なあジジイ、あいつこんなもん持ってたぞ」

「どれ……」

 ギルバートはその紙を広げて目を通した。

 そしてそれを手に、カミッラの尋問を続けるユーリの下へと向かう。

「盗賊の一人が持っていたものじゃ。どう思う?」

「…………」

 それを見たユーリは唐突に腰の剣を抜くと、それまで尋問していたカミッラの左胸を一突きにしてしまった。

 急所への一撃は紛れもなく致命傷で、そのまま彼女は絶命する。

 悪行の限りを尽くしてきた黒蜘蛛団の幹部カミッラは、ここであまりにも呆気なく生涯を閉じたのだった。

「ど、どうしちまったんだよいきなり?!何が書いてあったんだ?」

 盗賊から剣を引き抜いたユーリは、開いた紙をディックに投げてよこした。

「奴らの目的地が分かった。こいつらは用済みだ」

 ディックが見てみると、それは年季の入った地図だった。

 このアジトから北上したところにある都市に、印がつけられている。

「交易都市、ファゴット……?ここがあいつらの行き先なのか」

 ディックとギルバートは知る由もなかったが、その街は黒蜘蛛盗賊団と盗品の売買を行っている取引先のひとつとして、リストに上がっている場所だった。

 確信を得たユーリは捕虜を次々と始末していく。生かして帰して敵の戦力を補充させる理由もない。

「この辺りでは有名な大都市じゃな。馬車で向かえば3~4日で着くじゃろう」

 どうも黒蜘蛛一党はその街に向かったようだ。

 行き先がはっきりして安心したのも束の間、キラの必死な叫び声がギルバートとディックの耳に飛び込んだ。

「待ってください!殺さなくったっていいはずです!!」

 血まみれの剣を握るユーリと、地面に土下座しながら命乞いをする盗賊との間に、キラが割って入っていた。

 勇気を振り絞っての行動だったのだろう、キラの目には涙が浮かび今にも泣き出しそうだ。

「頼む、俺たちはお頭の命令でやっただけなんだ!逆らえなかったんだよ!頼むから見逃してくれぇ!」

 両手を広げるキラの後ろで、盗賊は必死に命乞いを続けている。

 その二人の様子を、ユーリはただ冷淡な眼差しで見つめていた。

(これと似たような状況、私も経験したことがある……)

 三人の構図を側で見ていたルークは、革命戦に王城で皇帝にとどめを刺した時の状況を思い浮かべていた。

 あの時、ルークはキラの懇願を跳ね除けて皇帝を殺害した。その後のキラの怯えた様子は今でも鮮明に覚えている。

 人の死、そして血に恐怖しパニックに陥った彼女。

 あんなことはもう繰り返すまいとあの時誓った。

(皇帝と違い、あの盗賊の死に戦略的意義はない)

 そう判断したルークは、キラに助け舟を出すことにした。

 盗賊に同情したわけではないが、もう泣きじゃくるキラは見たくなかった。

「ユーリさん、全員殺す必要もないのでは?キラさんの頼みを聞いて頂けませんか」

 ルークはあくまで冷静に説得しようとした。

 それを聞いたユーリは、渋々といった様子で剣を腰の武器ベルトに収めた。

 ようやく分かって貰えたかとキラは胸を撫で下ろすが、その時だった。

「馬鹿が!もらったぜぇ!」

 土下座していた盗賊は隠し持っていたナイフを抜き、一番近くにいたキラに襲いかかった。

 彼女を人質に取ってこの場から逃げ切ろうと言うのだ。

(しまった、間に合わない!)

 急いでキラを庇おうとするルークだが、今一歩の距離で届かない。ルークの脳裏に最悪の事態が過る。

 だが盗賊がキラを捕らえるよりも早く、彼女の次に盗賊に近い位置にいたユーリが動いた。

 目にも留まらぬ早さで懐の隠し短剣に手を伸ばし、振り抜きざまに盗賊の首筋の動脈を切り裂いた。そして抜く時と同じ早さで短剣を仕舞う。

 そのあまりの早業に、その場に居た全員が一瞬何が起こったのは分からなかった。

 首の動脈を切られた盗賊はキラを捕まえることなく、大量の血飛沫をあげながら倒れた。もう起き上がってくることはない。

「ひっ……いやぁぁぁ!!」

 おびただしい流血を見たキラは、ルークが皇帝を殺した時のように恐怖でパニックを起こしてしまい、その場にうずくまって泣き出してしまった。

「キラさん!」

 駆けつけたルークは泣きじゃくるキラの背中を撫でて落ち着けつつ、横目でユーリに視線を移した。

(あの速さは一体……?鍛えていたとしても考えられない反射神経だ。完全な不意打ちに、敵の動きを見てから先手を取るなどとは……)

 暗闇で狙撃する目と言い、先程の超反応と言い、尋常ではない。

 鍛錬でどうにかなる領域を超えているとルークは思った。一体どこでどんな戦闘訓練を受けたと言うのか。

 その佇まいに、ルークは自分と同じいわくつきの存在のような気がしてならなかった。

「大丈夫、もう安心だよ」

 メイも加わり、キラも徐々に落ち着きを取り戻し始めた。

 だがパニックの引き金となった張本人と言っていいユーリは、関心なさそうに既にその場を離れていた。

「さっきのは見事だったわ。護衛としての役目もちゃんと果たしてくれているようね」

 出発の準備を整えるユーリに、一部始終を見ていたソフィアがそう話しかけた。

「仕事をしたまでだ」

 相変わらず無愛想に答える彼に、ソフィアはひとつため息をついた。

「ええ、それはいいのだけれど。次からは、あの子の心理面にも気を配ってもらえるかしら?すっかり怯えてしまっているわ」

 ユーリは作業の手を止め、ソフィアを一瞥する。

「……この先も、そんな甘いことを言いながら旅を続けるつもりか?戦場はそう甘くない」

 冷たく突き放すようにそう言うと、ユーリは再び作業に戻った。

(確かにユーリの言うことも一理あるわ。相手がプロの凶悪な盗賊団である以上、今後も血を見ることは避けて通れない。キラはそれに耐えられるかしら……)

 彼の様子では、ユーリは依頼通りキラの生命の危機は全力で排除してくれるようだが、精神面の面倒まで見てくれる気はないらしい。

『それは仕事の内ではない』とでも言いたげだ。

 盗賊団を倒した後も、あの魔法剣を狙ってどんな輩が襲ってくるか分かったものではない。より激しい戦いを強いられることもあるだろう。

 ソフィアは今後も旅を続ける上で自分がしっかりしなくてはいけないと、覚悟を改めた。

 キラが泣き止むのを待ってから、一行は新たにソフィアが雇い入れたユーリを仲間に加えて馬車に乗り込み、次の目的地である交易都市へ向けて北上を開始する。


To be continued

登場人物紹介


・ソフィア

混乱したっていいじゃない。初陣だもの。


・ユーリ

殺戮者のエントリーだ!

暗闇から一方的に狙撃とか汚いなさすが忍者きたない。

弓は最強武器だと古事記にも書いてある。

隠密弓だ、隠密弓は全てを解決する。


・カミッラ

悪の女幹部。

地方でブイブイ言わせてたら、もっと怖いニンジャに捕まってインタビューされた。

インガオホー。

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