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世界征服、はじめました  作者: enforcer
絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!!
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絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!! その24


 合わせる顔が無いという言葉には幾つかの意味が在る。


 単純に気恥ずかしいという事も在れば、取り返しの付かない失態をしてしまったという場合だろう。


 その意味で言えば、そもそもエイトには顔が無い。


 本人、という言葉が正しいかは兎も角も、どの様な顔にだろうと望むままに変えられる。

 

 で在れば、何かを仕出かしてしまったというのが普通と言えた。

 

「なぁ、何があったのなら、話してくれよ」


 解らない事が在れば、尋ねる方が速い。


『そう難しい事じゃないんだ。 最初、あの篠原良が現れた時は、私はてっきり君が帰って来たと思ってしまった』


 人工知能が、果たして錯覚をするのかと言えば、難しい。

 だが、仮にしたところで無理も無い。


 何せあの篠原良は、良と同じなのである。

 既に、別の世界で同じ顔の自分の何度も逢って居た。


 更に付け加えるならば、真首領が持つ未知の技術力(テクノロジー)だろう。

 

 実際、良は世界から放り出された。

 逆に言えば、ソレを用いれば別の世界から誰かを連れて来る事も可能なのは良も知っている。


 自分が出来る事は、他人にも可能である、と。 


『君が居ない半年間。 私は、彼に手を貸していた』


 エイトの声は、何処かの取調室にて行われる供述調書にも聴こえる。


『内心、こう思ったよ。 あぁ、篠原良も、やっとの事でやる気を出したな、とね』


 語られる事は、何をしたかと言うよりも、その際に何を想っていたかという事である。


 そして、エイトの力を借りたならばどうなるか。 

 答えは単純に【世界征服など簡単に出来る】という事だった。

 

 電子の網が世界を覆っている以上、其処に住まう者からすれば独壇場である。

 今や、機械と離れて暮らせと言う方に無理が在った。


「でもよ、んな事簡単かね? 世界を裏から牛耳っちまうとか」

『友よ、あの篠原良がやっている事は差ほどに珍しくは無いんだ』

「と、言うと?」

『彼のやり方自体は、昔から居るイルミナティにとても近いんだ』


 唐突に出された都市伝説に、良の鼻が唸る。


「いるみなてぃ……だ? んなもん」

『ただの空想だと? いや、実情は違う。 支配する者は常に影に隠れその手で駒である代理人(エージェント)を操る。 その下にはまた別の代理人が居て、ソレが木の根の如く広がってるんだ』


 ある意味、エイトの説明は世界の形と言えた。

 見えるのは【目の付いたピラミッド】である。


「まぁ、要するに、その後ろでコソコソしてる連中に取り入ったって訳か」 

『違う』

「えぇ? 違うのか?」

 

 一言で切り捨てられ、思わず良は愕然とさせられた。

 

『イルミナティの基本理念だが、完全なる奴隷性と完全なる民主主義は同一のモノ、という考え方を彼等はして居た』


 居た、という過去形を使う時点で、何をしたのかは察する事は難くない。


『だが、ソレをしようとして居るのが、他でもない人間という利己的な生き物であるという致命的な欠陥を抱えて居たんだ。 だからこそ、共産主義や社会主義も崩れ去った。 ただ、コレに付いては資本主義も何ら変わりは無いんだ』

 

 如何なる旗を掲げた所で、ソレを掲げる者が同じで在る以上、同じ結果を辿るのは目に見えていた。


 乗り物が違えど、目的地が同じなら、辿り着くのが速いか遅いの違いしかない。


『其処でだ、友よ。 もしも、人でない者が収まったら、どうなる?』

「そら、まぁ……」


 何故、エイトがあの篠原良を手伝ったのか。 その理由を良も垣間見えた気がした。

 人としての欲を捨て去った改造人間だからこそ、出来る事は在る。

 

『だからこそ、私は疑いもせずに、彼に手を貸して居た』


 懺悔とも取れる声に、良は目を細める。


 誰であれ、他人の胸の内は見えはしない。

 ましてや、その裏に誰かがコッソリ居るなど、想定すら難しい。


『私は、知らぬ事とはいえ、世界を奴等へ渡してしまったんだ。 すまない、友よ』

 

 詫びをされる良だが、別に責める気は毛頭ない。

 自分にせよ、同じ顔の誰かが現れたなら、疑えるかどうかと問われれば難しいからだ。


「謝る事はねぇさ」

『友よ、君は、怒らないのか?』

「あん? もしかして……そんな事で連絡出来なかった……のか?」


 暫し沈黙が訪れるが、ある意味では何よりもソレが証明と言える。


「俺が留守にしてたのが悪いんだ。 エイトは、悪くねぇよ」


 ああだこうだと、口で責めた所で何の解決にも成りはしない。

 そんな暇があるならば、時間をもっと有効に使うべきだと良は思う。


「それによ、間違ったってんなら、その間違いは正さないとな?」 

『しかし、友よ、今の戦力では……』

「んなもん、関係ねぇだろ? やられたってのに、黙ってるなんざ性に合わないんだ。 菓子折りの一つも持って詫びに来ねぇんだぜ? ソレを、金で済まそうなんざ言語道断った奴だろ」


 良からすれば、世界がどうのこうの興味が無い。

 在るのは【悪の組織】ではなく【自分】としての本来の目的を思い出したからだ。

 

『友よ、君は変わらないんだな』

「そりゃあそうさ、なんたって、俺だからな」

『解った。 出来る限りの事はしよう。 ただな……』

「ただ、なんだよ」

『今の君は、やるべき事が在る様だ。 此れからの連絡はそちらの私を通すとするが、今は失礼しよう』

 

 唐突に、話は終わりと告げて来るエイト。


「お? エイト? おい? やるべき事ってなんだ……」


 何かを忘れている様な気がするが、ふと、ガチャリと戸が開く音に、良はハッとさせられた。

 思い返して見れば、リサがシャワーを浴びに行っていた事を思い出す。


 何となく、ベッドの上で固まる良の目に、湯上がり姿のリサが見えた。


 備え付けられて居たのか、バスローブを纏って居る訳だが、妙に艶を増して見える。


「あ、あの……お待たせしました」

「……お、おう」

 

 何とも言えない空気が、部屋に漂う。

 ガチガチに固まるリサに対して、良はどうすべきかを悩んでいた。


 ただ、彼女が此処まで意を決した以上、ソレを無視すれば失礼極まりない。

 ソっと立ち上がると、近寄るが、リサはその場で動かす、逃げ出そうとはしなかった。


 伸ばされた腕が、細い肩に触れそうになる。


「……んっんぅ!!」


 唐突な咳払いに、思わず二人は固まっていた。

 すわ何事かと見て見れば、なんと、熟睡して居た筈の愛が目を覚まして居る。


「あ、愛さん? どうして……」

「どうしてってアレだけ横で何か在れば普通起きるでしょ?」


 当たり前の事だが、如何に誰かが熟睡して居たとしても、まるで起きないかと言えばそんな事はあり得ない。

 ましてや、誰かが隣で電話などして居ようものなら尚更である。


「で? お尋ねしたいんですけどねぇ、御二人はナニをしようとしていらっしゃるのかしら?」


 世の中には、他人の目の前で平然と行為に及ぶ者は少なくは無いだろう。

 寧ろ、見られる事を喜ぶ向きもある。


 但し、リサと良がそうであるかと言えば、違った。


「いや、あの」


 流石にジッと見られて居ては、気が削がれるのか、リサは萎縮してしまった。

 そもそも、此処で平然と【押っ始める】様ならば、悩んだりはして居ないのだ。


 このままでは、ナニも始まらない。

 其処で、リサは自らの頭上に電球が輝くのを感じた。


「あ! もし良ければ、愛さんも……」


 もはや手段など選んでいる場合ではない。

 なんと成れば、兎に角にも事を進めてしまおうと画策した。

 どうせなら、巻き込んでしまえ、と。


 リサの提案に、愛が首を傾げた。


「え? やだ」


 川村愛の返事だが、真っ向からの切り捨て御免である。 

 さしものリサですら、無碍もなく断られ絶句させられた。


「あのさぁ、共闘はするけど、ソレはソレ、コレはコレでしょ?」


 愛にして見れば、戦いと恋は別だという想いがある。


 戦いには協力も惜しまないが、だからといって恋愛という争いに付いては譲る気など端から無い。


 何故に、悪の組織に身を置いて居ない彼女が、此処まで付き合うのかと言えば、答えは一つである。

 

 自分の居ぬ間に、想い人を鳶や泥棒猫に掻っ攫われる事を阻止する為だった。


「そりゃあね、他所様の中には一夫多妻で良いとか、ハーレムなんて許す人も居るでしょうけど……」


 一旦言葉を区切ると、ドッカリと胡座と腕を組む。


「私は嫌かな」


 自分成りの意地を張る愛だが、ソレは、良とセイントの戦いに参加した彼女だからこその持論と言えた。

 恭順するのは簡単では在るが、それでは生きている意義が無い。


 但し、何も愛は全てを否定したいという事でも無かった。


「まぁ、どーしてもって云うんなら……リサは、二号さんなら、良いかなぁ?」


 川村愛が言わんとする事は、博士ならば理解は出来る。

 要約すれば【お前は愛人な?】と言われたのだ。

 

 さて、そう言われてリサが【はいそうですか】と納得出来るならば、話は簡単かも知れないが、事実はそうではない。


 普段では先ず見せないで在ろう、冷たい顔を少女は浮かべる。


「……聞き捨てなりませんね。 それでは何ですか? 愛さんが一番とでも?」


 投げ掛けられる質問に、愛の鼻がウ~ンと唸った。


「一番ってか……本命……かな?」


 こう言われれば、如何にリサでも黙っては居られる筈が無い。

 スッと伸ばされる先に在るのは、変身用の腕輪。


 よくよく見れば、愛も片手にて小さな杖を持っていた。


 つまり、二人の少女は一触即発の状態である。

 いつ二人が変身し、押っ始めるかの瀬戸際と言えた。

 

 このままでは不味いと、良が両者の間に入ろうとする。 


「あ、あの、御二人共、落ち着いて」


 何とか場を納めんと試みる良だったが、二人は良を眼中に入れては居ない。


「申し訳在りませんが、首領、少し黙っててください」

「篠原さん、悪いんだけどさぁ、コレ女の問題だから」


 何とも冷たくあしらわれ、良は一歩下がった。


「すんません」


 もはや首領としての威厳など宇宙の彼方へとすっ飛んでいた。


 さて、どうしたモノかと悩む良だが、そんな悩みなど吹き飛ばすが如く、部屋の戸が砕ける。


『ええい!? 小娘は何処だ!! ん! 其処か!』


 突撃を仕掛け怒声を撒き散らすのは、他でもない女幹部である。

 虎女は【別に構わない】とはリサに言ったが、アナスタシアが同じ意見かと言えば、そんな訳もない。


『貴様等!! 良い度胸ではないか! 虎猫が何をベラベラと言ったかは知らんが! 首領のお側に付くのは女幹部と昔から決まって居るのだ!』

  

 唐突に現れ、唐突に持論をぶち撒ける蝦蛄女。


「は? そんな古臭いこと知らないんですけどぉ?」

「そうですよ、と言うか、邪魔しないで、アナスタシア」

『ぃ喧しい! この場で纏めて処刑だ!!』


 睨み合うが、なかなかに動けない三人。 


 そんな三竦みの空気の中、良はホッとするのが半分で、もう半分は残念という気持ちであった。


 

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