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世界征服、はじめました  作者: enforcer
絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!!
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絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!! その15


「さぁてね、何処から話したもんか」


 悩む橋本に、良顔を向ける。


「出来れば、橋本の知ってる限り、最初っからお願いしますわ」

「最初からか……まぁ、アレだ……俺と篠原が、餅田とかとバタバタしてただろ?」


 橋本が云ったのは、超人餅田に纏わる一連の出来事であった。 

 具体的に言えば、橋本が良に助力を頼んだ事が始まりである。


「あぁ、そういや、あん時は忙しかったっすね」

「まぁな、ただ、俺は随分と前に感じるよ」


 半年間という期間を、長く想うのか、短く感じるかは人による。

 但し、良が居ない間に、様々な出来事が在ったと云う事を鑑みると、橋本にとっては長い日々だったのだろう。


「で、俺が飛ばされた後、何があったんです?」


 問われた橋本は、スッと目を上に向けると、鼻から長く吐き出していた。


「なぁ、篠原。 お前さん、経済新聞とか、読むか?」

「は? あぇ、いや、ま~まぁ、読むときも在りますけど?」

 

 実のところ、経済云々に関して云えば、改造されて以来とんとご無沙汰である。

 思い返すだけでも、忙しい日々を送っていた。


 戦いに次ぐ戦い、終わったと思ったら、直ぐに次が現れる。

 つまりは、他の事に頭を向けている余裕など無かったのだ。


 良の反応に、橋本は苦く笑った。


「まぁ、その調子じゃ読んだ事ねぇんだろが、まぁ俺もそんなもんさ」

「いやま、で、新聞がなんなんすか?」


 若干ムッとする良だが、橋本にしてみればその反応は懐かしいモノと言える。

 世界で名を馳せた【篠原良】ではなく、自分の知っている彼なのだ、と。


「新聞って事が重要じゃあないのさ。 問題なのは経済って奴だ」


 そう言われても、良はいまいちピンと来ない。

 ソレが見てとれたからか、橋本は話を続ける。


「ハッキリ言って、それまでの世界経済は結構ガタガタでな、正直危うかったらしいんだわ」


 余り正確な説明でないのは、橋本自身も詳しくないからだろう。

 ただ、この話で重要なのは如何にしてあの篠原良が今の地位に就いたかにある。


「でだ、お前さんがどっかにぶっ飛ばされてから、奴が急に現れた事に成るな……でだ、奴が何をしたのか」


 いよいよ、核心に入るのかと思う良の前で、橋本は瓶を少し傾ける。


「まぁ、こっからは俺の想像なんだがな、奴は本来の悪の組織らしく動いたんだと、俺は思う」

「はい?」


 困惑する良に、橋本はチラリと目を配った。


「なぁ、解るだろ? お前さん達なんだが、俺から見ても悪の組織には見えないぜ? (ワル)ぶっちゃ居るがな」


 そんな指摘は強ち間違いでもない。

 首領である良からして、首領らしさが皆無であり、その事についてはアナスタシアは常々頭を痛めて居た。


 良が首領に成る前の組織だが、その頃は確かに悪の組織らしさが在った。

 いきなり一般市民を拉致し、承諾も無しで改造を施すなど、正に沙汰の限りだろう。

 人権など端から考慮されず、体を変えられてしまうのだ。


「俺はさ、ソレが悪いとは言わんぜ? ただな、もしだ、篠原が本気で世界を取ろうとしたら、どうなる?」


 橋本の問い。

 篠原良が本気に成ったなら【世界征服は可能か?】という質問。


 恐らくは、出来る出来ないで言えば、出来てしまう。


 戦力的には申し分は無く、客分の魔法少女抜きにしても、悪の組織がその気に成りさえすれば不可能ではない。


 そもそも改造人間が人間に擬態しているのは、ソレを生かして潜入をする為であった。

 そして、一度懐に踏み込まれたならば、改造人間を止める術が無い。 


 仮に、戦車や重武装のヘリコプター、在らん限りの大砲や携帯ミサイル等を用意すれば、或いは止められるかも知れないが、その様な備えをしている者は先ず居なかった。


 国家すら超える財産が在ろうとも、札束は盾や鎧に成りはしない。


 やろうとさえすれば、その日の内に企業の頭を抑えられるだろう。

 そうした事から解るのは、あの篠原良は【ソレを実行した】という事に成る。


 国家の歯車と言える企業を抑えたならば、次はソレを管理している者を抑えに掛かる。


 その際、暴力を用いた占領も可能ではあるが、あの篠原良は別のやり方を選んだ。


 ソレは【情報の開示】である。

 以前に、自分と同じ顔の者が何をしたのか、に付いてはリサに見せられて居た。


 企業、銀行とを抑えたなら、次は公的権力を抑えに掛かる。


 その際、全て開示されてしまえば、政府への信頼は地に落ちるのは想像に難くない。


 目に見えない筈の人と金の流れ全てが曝される。


 基本的な人間の心理として、自己保存欲求が在る以上、私心を捨てて誰かの為に尽くすといった事が出来る者は稀である。

 

 そして、その為政者ですら人間ならば、自分の為に尽力する事は別に不思議でもない。


 しかしながら、かといってソレが赦されるかと言えば、無理がある。


 我が身可愛さに仕出かした事全てが暴露されたなら、其処が何処の国であれ、民衆が声を挙げるだろう。

 これを防ぐには、苛烈な独裁政治が必要だが、そんな国は多くはない。


「でも、そんな簡単ですかね?」

「うん? 何がだ」

「ある程度は、色々出来るとは思いますけど、ソレだけじゃ……」


 果たして、良は自分が人心を掌握出来るのかを考えた。

 其処で、良はハッと成る。

 既に、同じ顔が何をしていたのかは、既に見ていた。

 

「そういや、なんか、色々出してた様な……」

「そうだ、ウソかホントかは知らんが、隠匿されていた技術の開示もやったんだ、奴はな」


 敢えて【新技術の発表】といった形でなく【隠されていた技術の公表】という形にしたのには、意味がある。

 只でさえ、裏の人事や金の流れで致命傷を与えられて居た政府からすれば、ソレは正にトドメと言えた。


 もはや如何なる言い訳も通らず、弁明すら聴いては貰えない。


「ソレだと、国はガタガタに成りませんか?」


 いきなり頭を潰されては、巨大な蛇ですら死ぬ。

 良の疑問に、橋本は苦く笑った。


「其処が奴の巧妙なところなんだよなぁ……な、篠原。 偉い人ってどう思う?」

「はい? お偉いさんっすか? そらまぁ、なんか、どっかの血筋だとか、スゲー大学出てるとか」


 酷く抽象的な良の意見に、橋本は頷いた。


「ま、大方はその通りさ、でだ、其処で大事なのは、肩書きってこったろ? ソイツがホントはどうなのかなんざ、誰も見やしないさ」


 人が先ず見るのは、その人の外見である。

 であれば【本当の中身がどうなのか?】といった事は先ず考慮もされないだろう。


 肩書きという看板(ブランド)さえ用意出来れば、モノの価値は数倍に跳ね上がる。


 全く同じカバンが二つ在ったとしても、片方に有名な名前を入れさえすれば、元の価値以上の付加価値が付けられる事は珍しくは無い。

  

 そして、恐ろしい想像が浮かんだ。

 

 肩書きなど、後から幾らでも継ぎ足せる。


 ならば、適当な人間を引っ張って来て【看板】を張り付ければ簡単に【偉い人】を造り上げる事は可能だった。


 ある程度の立場に収まれば、快適な生活が約束される。


 ソレを味わってしまえば、もはやその人物は良い暮らしを捨てられなくなる。

 そうすれば、幾らでも裏から操る事は可能と言えた。


「でだ、世間は篠原良って奴をどう見るか? 政治の裏を暴き出し、隠されていたモノを掘り出して、ソレを皆様の為にどうぞと出す」

「そりゃ、まぁ……」


 理解が出来ない訳ではない。 ただ、口に出したくなかった。

 代わりに、橋本が苦く笑った。


「あの人は凄い、篠原良は万年に一人の英雄様って訳だ」


 端的ではあるが、ソレは巷での評価を現して居た。


「そんな、モンすかね?」

「そらそうさ、いけ好かねぇ為政者だの、薄汚い権力者が跋扈するぐらいなら、優しい独裁や慈悲深い支配を人は好むもんだ」

「独裁やら支配なんて、誰も望まんでしょ?」


 訝しむ良に、橋本は顔を向ける。


「そうか? 誰だってこうは言うぜ? 運命なんて決まってない、自分の道は自分で決める……とは言え、そんなモン大抵は虚勢さ。 誰だって本心は楽したいっと思うもんだ。 漠然とした自由なんかより、暖かい庇護が恋しくなる。 そんな奴の前に、神様みたいな優しい奴が現れたら、コロッと落ちるのも無理はねぇよ」

 

 意外な形では在るが【篠原良による世界征服】は既に成されていたのだ。

 良は苦虫噛み潰した様な顔を浮かべるが、ふと、在る事を思い出す。


 橋本のポンと出した【神様】という言葉。


 ソレに付いては、良も忘れようにも忘れられない。

 話した所で信じては貰えないかも知れないが記憶には焼き付いている。


 誰も居なくなった宇宙(ソラ)の果てで見た、寂しげな顔を。


「橋本さん」

「あん?」

「俺が、神様に会ったって言ったら……信じますか?」


 急に突拍子も無い質問に、橋本は怪訝な顔を浮かべた。


「篠原、お前どうした? いや、確かに俺は例えとして神様とは言ったけどよ、そんなモン居るわけねぇだろ?」

「ま、そう思いますよね? 普通なら。 でも俺、別の世界に飛ばされた時に、チョイとだけ会ったんですよ」


 良の声に、橋本は一瞬相手の正気を疑った。

 ただ、良が世界から放り出された事は知っている。


 もしかしたら、この宇宙の何処かに、そんな誰かが居るのかと考えた。


「なぁ、ソレは、彼奴等は知ってんのか?」


 問われた良は、首を横へと振る。


「いえ、彼奴と逢ったのは……俺だけみたいです」

 

 嘘を付いている顔ではない。

 鼻を唸らせながらも、橋本は息を吸う。


「だったらよ、なんだって俺にだけ話すんだ?」


 訝しむ橋本に、良は軽く笑う。


「そらまぁ、橋本さんは友達(ダチ)ですから」


 ポンと出された一声に、橋本は何とも言えないモノを感じた。

 口で表現するのは難しいが、人でなくなっても捨ててはいない大切な何かを。


「やっぱり、お前さんが俺の知ってる篠原良だわ」


 互いに思う所は在るが、この場には良と橋本以外にも居ることを二人は失念している。


「あ! あんな所に居た! 良さん!? 何してんですか!」

「もう! 折角の宴会だってのに!」

「首領! 主賓が欠席はいけませんぞ!?」

「ほら、篠原さんも!」


 あっという間に、四人掛かりで引きずられて行く悪の首領。

 そんな情けない姿に、橋本は笑っていた。


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