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世界征服、はじめました  作者: enforcer
絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!!
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絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!! その13


 ひとまず、窮地から脱した悪の組織。

 だが、それは文字通りに一時の事に過ぎなかった。


 本部である基地を制圧どころか、そのまま敵に奪われてしまった。

 つまりは、今の悪の組織は丸ごとが宿無しである。


 危機を脱したとは言え、問題は山積みであった。

 

  *


「どうしたもんかなぁ」


 餅田のお陰で、愛と戦闘員達の負傷は治せはする。

 それだけでも幸いと言えなくもないが、良は組織を預かる立場であった。 

 

 もしも、組織を率いない無頼の独り者ならば、或いは今一度敵本拠地に殴り込みを掛けるという無茶も出来ない訳ではない。

 ただ、それは余りに無策無謀で在ろう。


 先の戦闘に関しては、敵方が出して来たのは単なる警備員である。

 無論、未知の装甲服と小銃こそ持っては居ても、ソレだけならば普通の国の軍隊と差はそれほど無い。


 にも関わらず、被害は多かった。

 

 仮に大幹部達だけを率いて戦って居たならば、慌てて逃げ出すという事は無かったかも知れない。

 

 それでも、全てはタラレバ話に過ぎなかった。

 出さなかっただけで、警備員以上の戦力が居ないという保証など無い。


 つまりは、リサの進言に従って撤退したことは間違いでもなかった。


 しかしながら、いま良が考えねば成らないのは行き先である。

 如何なる技術にて、バスが空を飛んでいるかはともかくも、何処へ行くべきか。


 そう考えると、何処へ行けば良いのかが解らない。


 無論、世界は広い。 

 地図上で見れば狭くも感じたとしても、実際には想像以上に広大である。

 いこうとすれば、何処へでも行けるだろうが、それ故に悩む。


「どうすっか」


 思わず、良はバスの天井をチラリと見た。

 実際には、バスの屋根の上に備え付けの【次元移送機】の方を向いている。


 異界のリサが作り上げたその性能に疑いは無く、実績も在った。

 唯一の問題点としては、行き先が不明という点だろう。


 一瞬【ソレを使ってはどうか?】と想ったが、直ぐに首を横へと振っていた。

 

 可能性だけを考えれば、或いは別の世界に行けるかも知れない。

 理想を言えば、真首領などそもそも存在しない世界へと。


 だが、逆に言えば、とんでもない場所へと飛ばされる可能性は否めない。


 下手をすれば、理想とは真逆の、終わり掛けた地球へと放り出される可能性も在った。 

 

 首領である以上、自分の勝手で仲間をそんな不確かな賭けには乗せられない。

 第一、負けたまま逃げ出すなどしたくないという想いも在る。


 かと云って、何処へ行くべきなのか。


 腕を組んでウンウンと鼻を唸らせる。 そんな良のポケットから、着信音が響いた。


「お? なんだ…」


 何事かと、携帯端末を取り出す。

 其処で、映し出される画面を見てみると【橋本】と在った。


 思い出して見れば、自分は元居た世界に居る筈でなのだ。

 あれやこれやと重なった結果、その事を良は失念していた事を思い出す。


 考えて見れば、何もかも独力でどうにかする事も大事かも知れないが、他者を頼るということは別に恥ではなかった。


「……もしもし、橋本さんっすか?」


 駄目で元々、通話を繋げた。 


『よう、お前……篠原良……だよな?』


 電話をするには、ご挨拶な橋本の声だが、理由は直ぐに想像が出来た。 

 彼が篠原良を疑うのも、無理はないのである。

 

 何せ、この世界には二人の篠原良が居た。


「そうっすよ……この前、手伝ったでしょうが」


 良の声に、向こうからフゥと息を吐く音がした。


『その分だと、どうやらソッチは、俺の知ってるお前さんらしい』


 思い返して見れば、良が居ない間に、この世界では半年が過ぎている。

 その間に、何が起こっていたのかは、余り想像したくない事でも在った。


「すんませんね、ご無沙汰で」

『おう、マジだぜ。 つーかよ篠原、何処へ行ってたんだ?』


 問われた所で、どう話すべきか迷ってしまった。

 言葉にすれば【異世界に飛ばされてました】なのだが、果たして信用して貰えるかは怪しい。

 だが、下手に隠した所で意味が無い。


「信じられない話かも知れないんけどね、俺ら、ちょっと別の世界に飛ばされてました」


 率直に打ち明けると、数秒間返事が無かった。 ただ、直ぐにフゥムと唸る音がする。


『にわかには信じられねぇが、今の現状見てると、ホントらしいな。 な、だったら、もう会ったのか、彼奴には?』


 具体的に誰とは云わないが、その顔は思い当たる。


「会ったって云うか……実のところ、さっきまで殴り込みしてました」

  

 仕出かした事の結果に関して、良は省いていた。

 劣勢故に、這々の体で逃げ出したと在っては悪の組織が廃ってしまう。 

 

『マジかよ……ってか、で、どうした?』

「え? いや、まぁ……あ、ソレよりも、頼みたい事が在ってですね」

『知ってる。 匿えば良いんだろ?』


 云うよりも速く、橋本は答えを出していた。

   

「あ、はい。 でも、なんで?」

『何で俺が知ってるのか? ちょっとな。 依頼人の名前は出せないが、頼まれてんだよ、助けてやってくれってさ』


 職業柄か、ソレを頼んだ者の名前を明かそうとしない橋本である。

 それでも、何となく良には思い当たる節が在った。


 今連絡をしても、繋がるかは解らないが、それでも、解る事もある。


「で、申し訳ないんすけど、お願い出来ますか?」

『あぁ、前はコッチが助けられたからな。 とりあえず、コッチの場所送るから、なんとか来れるか?』


 行けるかどうかで云えば、そうは難しくはない。

 改造バスの航続距離がどの程度かはハッキリしないが、今は賭けるしかなかった。

 

 サッと座席から立ち上がると、良は組織の面々に目を向ける。


「皆、聴いてくれ」


 そんな声に、誰もが良を見た。

 ついさっきの事を考えると、意気消沈しているのも無理はない。

 だが、それで終わる様では悪の組織を名乗れるモノではない。


 一度負けたと、何度も立ち上がり、足掻く事に価値が在る。 

 だからこそ、良は【不撓不屈】の四文字を贈られていた。


「今から、少し離れた所へ行く。 もし、この場で降りたい奴が居たら、申し出てくれ」


 敢えて強制しないのが良の主義であった。

 悪の首領としては間違いかも知れないが、だからと言って簡単に性分は変えられないモノである。

 とは言え、自分の勝手に組織を巻き込むのはお門が違う。 


 あくまでも【誰かに云われたから】という事はしたくなかった。


 そんな良の声に、座っていた愛が軽く笑って見せる。

 背中の傷に関しては、既に塞がれて居る為か、その顔に辛さは無い。


「篠原さん、そんなのさ、今更でしょ?」

 

 誰云わずとも、少女の云わんとしている事は解っていた。

 降りろと云われて降りると云う様な者ならば、この場には居ない。


 それを表すためにか、アナスタシアが立ち上がった。


「首領! 我々……いえ、私にその質問は無用です!」


 敢えて自分の意志を強調する女幹部だが、この時の格好は痴女紛いの格好よりマシである。

 着替えるのを忘れていたとも言えるが、かえって真面目に見えた。


 だからか、虎女もフフンと鼻を鳴らす。


「そうそ、ソレに今更行くとこなんて無いでしょ?」


 口ではそう言うが、その気になれば、道は幾通りも在るだろう。

 カンナにせよ、やろうとすれば、ソレが何にせよ生計を立てていく事は容易い。

 元々が見栄えするのだ、道は幾通りも開ける。

 

 にも関わらず、そんな数多の可能性を蹴ってまで付いて行こうとするのは、彼女の意志の現れと言えた。


 虎の声に、後ろの方に控えていた餅田の手が挙がる。

 実際には体の一部を上へと伸ばしているのだが、挙手には見えた。


「篠原はん! なんでもええねんですけどぉ、わて、腹ぁ減っとりますねん」 


 事実として、一番の活躍を見せたのは餅田で在ろう。 

 万能細胞である身体の一部を他者に与える事によって、負傷の修復が可能なのだが、それをするとなると、餅田は身を文字通り削らねば成らない。


 負傷者が多ければ多いほど、消耗も激しかった。


 そして、空腹を訴えるその言葉からは、裏が透けて見えている。


【ああだこうだとゴチャゴチャ考えず、先ずは実行せよ】と。


 声を聴いてか、愛の隣で様子を見ていたリサも良へと目を向けた。


「良さん、皆、ああ云ってますから」

 

 迷いが生まれた時、誰かがソッと背中を押してくれるのは有り難い。

 一歩踏み出すにせよ、最初の一歩が一番怖いのだ。


 だが、仲間の声に、良は迷いを吹っ切った。 


「解った……ありがとな」


 実に首領らしくないが、その声には篠原良らしさが在った。


 クルリと踵を返すと、ソッと無人の運転席へと近付く。

 普通の運転ならば、或いは良も出来るが、今の状態のバスをどう動かすのかなどチンプンカンプンであった。


 ソッと片手を挙げて、受話器に見立てて耳へと当てる。


「エイト、行き先、解るか?」

 

 良の問い掛けに、手を当てた耳がチリチリと震える。


『ああ、どうやら太平洋を横断せねば成らないらしい。 少し時間は掛かるが、我慢してくれよ』 


 通常の飛行機ですら、太平洋横断飛行は半日掛かる。

 その筈が、この空飛ぶバスならば【少し】で済むと云う。

   

「未来の技術に万歳ってな。 でも良いのかね」

『気にするな、昔に在っただろう? 車を改造したタイムマシンが空飛ぶ映画がね』 


 云われて見れば、思い出せる。 

 ただ、良からすれば意外と言えた。 見るのではなく、実際に乗っているのだ。


 思わず、笑いそうになる良の背中を見ていた愛が、ウンと鼻を鳴らす。


「あの……スッゴい今更何ですけどぉ、このバス……誰が動かしてるんです?」


 素朴な疑問だが、少し余裕が生まれれば誰でも思うであろう疑問を少女は呈していた。

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