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世界征服、はじめました  作者: enforcer
絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!!
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絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!! その10


 さて、無事に敷地内に潜入を果たしたとは言え、実のところまだ何も始まっていない。

 それどころか、悪の組織一同は唖然とすらさせられていた。


 見慣れた筈の場所は、今やその姿を変えてしまっていた。

 

 大型車の通行までを考慮した道路に、十分な広さを確保している歩道。

 更には、景観美化の為にか、至る所に気が植えられ、まるで公園の様である。


 そして勿論だが、其処には時折人が居て、道を走る怪しげなバスを見ては怪訝な顔を見せていた。


   *

 

 本来の基地の位置へと近付けば近付く程に、景観が違った。

 建物が増え、特に秘密基地が在った筈の場所には、巨大な社屋が見えてしまう。


 ソレを目の当たりにしたからか、良は眉を寄せていた。 


「なんだ、アレは?」

 

 余り大声では言えないが、思わずそう漏らす。

 建物の形その物は、かなり洗練された形と言えるが、観光に来た訳ではない。


 帰って来たはずが、まるで違う場所に居る。   

 当然の如く、誰もが言葉を失っていた。


 そんな中、ハンドルを預かる戦闘員が在ることに気付く。


「首領! アレを!」

「おん?」

 

 見てくれと云わんばかりの声に、良は前方を見てみる。

 すると、どうやら誘導灯を持った誰かが立っていた。


 軽く頭上にて左右へ振っている事から【止まれ】と云いたいらしい。

 

 但し、それを行う者は普通の格好ではなかった。

 その形は、まるでSFに出て来る装甲服(パワードスーツ)を想わせる。

 

「どうしましょう?」


 そう尋ねられた良は、軽く笑った。


「まぁ、堅気カタギの皆さんに迷惑掛けちゃ良くねぇわな?」


 見た目がどうであれ、轢き殺せ、という指示を出さないのが良らしくも在った。

 今までそんな首領に付いて来た戦闘員も、それは承知している。


 静かにブレーキを踏むことに因って、バスはその場へと止まった。


 回っていたタイヤが止まるのに合わせて、誘導灯も下ろされる。

 その代わりに、背中から物騒なモノを取り出すと近付いて来た。


「おいおいおい、鉄砲だと?」 

 

 良の云う通り、見えるのは黒光りするのは突撃銃(アサルトライフル)で在った。


「首領!」


 背中からアナスタシアの声が響く。

 そんな声に、良は振り向こうとするが、その際に見えたのは、いつの間にかバスを取り囲む様に現れた一団の姿であった。


「……まぁ、そら目立つよなぁ……」


 今更ながら、改造車両が目立つ事は否めない。

 如何に警備員の一人を誤魔化せたからといって、それで終わりではなかった。


   *


 一定の距離を保ったまま、怪しげなバスを取り囲む警備員らしき者達だが、顔を含めて全てを覆うヘルメットのせいか、表情は窺えない。


 ただ、者達に混じって、まるで場違いな背広姿が歩いてくる。

 コツコツと靴音を響かせる者だが、見えるその顔は、篠原良であった。


 そして、当然ながら、車の中から外は見えている。

 背広姿の篠原良が足を止めるなり、降車口が開かれた。


 中から一人が降りてくるのだが、この際、銃を持った警備員達は少しだけ互いを見合う。

 その理由は、顔を見せたのも篠原良だからである。


 私服姿の良と、背広姿の良が対峙する。

 お互いに顔を見合わせるのだが、先ずはと口を開いたのは、背広の方だった。


「困るなぁ……ウチは外来の見学会なんてやってねぇんだぜ? 然も、アポ無しかよ?」


 響く声は正しく良のモノであり、その口調もまた、本人と云って差し支えない。

 そんな声を受けてか、私服姿の良もフンと鼻を鳴らした。


「へぇ、そら悪かったぜ。 でもよ、本来此処はウチの土地だった筈なんだがなぁ」


 二人の周りから見れば、実に奇妙極まりない。

 何せ、二人の篠原良が同じ顔、同じ声で話しているのだ。


 双子と言えばそう見えなくもないが、実情は違う。


「で、一応聴いて置いてやるんだが、あんた、誰だ?」


 私服の良が発するこの質問も、不思議なモノと周りは聞こえる。

 まるで鏡に話掛けている様にしか見えないのだ。 


 ただ、問われた良は鏡に映っている訳ではない。

 

 スッと背広のポケットに手を突っ込むと、低く笑った。


「そら、コッチの台詞だぜ? そっちこそ誰なんだ?」


 質問に対して、また質問が返ってくる。

 

「聴いて驚くなよ? なんと俺は……悪の組織の首領、篠原良さ」


 聴く者に因っては、この自己紹介は冗談としか言えない。

 堂々と他人の目の前で【悪の首領】を名乗ったのだ。


 だからか、背広姿の良が笑った。


「ははぁ、そりゃあ奇遇だな? なんとさ、俺も篠原良ってんだ、とんだ偶然だよな?」


 お互いに自己紹介が済んだからか、互いに前へと出る。

 ギリギリ手の届かない位置にて、二人は足を止めていた。


「聴いて良いか?」

「おう、どうぞ?」

「此処ら辺には、確かウチの基地が在ったのは筈なんだが、知らねぇかい?」


 問う声に、背広姿はウーンと鼻を唸らせる。

 

「さぁてな? 此処はウチの本社兼用の工場だからなぁ? まぁ、どっかに何か在った様な気はするんだが……どうだったか?」


 困っているというよりも、あから様にはぐらかしているのは明白だろう。

 

「ま、コッチからもちっと聴いて良いか?」

「ほーん? なんだい?」


 受け答えする、という態度ではないが、それでも背広姿は少しだけ顔を前へとやった


「なぁ、幾ら出せば辞める?」

「お?」


 首を傾げる良に対して、ポケットから手を出すと肩を竦めて見せた。


「今時な、ドンパチなんて時代じゃあないのさ。 でまぁ、幾らなら良い? 買い取ってやるぞ? 丸ごとな」


 素直に出された言葉を飲み込むならば、背広姿は金を出すという。

 そして、その代わりに【首領を辞めろ】と言っていた。

 

 本気なのかを探ろうと、良はフンと鼻を鳴らす。


「ほほぅ? じゃあ何かい? 俺様が千兆って言ったらくれんのか?」

 

 冗談のつもりなのだが、背広姿は笑うどころか目を丸くする。


「千兆? たったのそれっぽっちで良いのか? 鼻くそみたいな額だぜ。 どうせなら、もっとふっ掛けて来ると想ってたが……」


 どうやら、反応を見る限り背広の良は本気で驚いて居るらしい。

 確かに、数字という事だけで言えば上は幾らでもある。


「……で? どうすんだ? ドル? 円? 仮想通貨か? ま、なんでも良いが」


 口調から察するに、本気で払うつもりは在るらしい。

 それは、途方もない資金力を匂わせる。


 ただ、良は金の無心に来た訳ではない。


「おい、あんたがホントに篠原良なら……俺が金で転ぶと想うのか?」


 良がそう言うと、背広姿も目を合わせた。


「いんや、そんな訳無いわな? でもよ、俺は云われてんだよ」

「誰にだ?」


 尋ねられた背広姿は、ニヤリと笑う。


「決まってんだろ? 真首領様だよ」


 様をつけるという時点で、良は見える自分が違うモノとハッキリ認識出来た。

 もしも自分ならば、冗談でも相手を様付けしようとは思えない。


 何も言わない良に、サッと背広の袖が上げられる。


「おいおい、そんな怖い顔すんなよ。 真首領も詫びてんだぜ? いや、まさか別次元に放り込んでやっても、自力で帰って来ちまうんだからな。 大した評価だぞ?」


 自分と同じ顔の後ろに、真首領がチラリと見え隠れする。 

 その実態を見たわけではないが、うっすらと。

 

「でまぁ、そんなこんなでな、お前さんを潰すのは止めて、お互いにウィンウィンな関係にしようやって訳だ。 それに俺も、そっちが子分を大事にしてるのは解ってる」


 背広の語る【WIN(ウィン)WIN(ウィン)】だが、基本的には企業間、もしくは事業間で用いられる用語である。


 互いに潰し合うのではなく、寧ろ協調し、互いに勝ちを取る。 


 場合によっては、願ってもない申し出と言えるだろう。

 戦いを止めるだけでなく、使い切れない金をくれるという。

 

「そらまた……魅力的な申し出だぜ」


 そう言うと、良は息を少し吐き、また吸い込む。


「だがな、向こうから仕掛けて置いてだ、端金で手打ちにしましょうなんざ出来ねえ相談だな」


 申し出を蹴飛ばす良に、同じ顔はフーンと唸る。


「それで、と? どうすりゃ満足して頂けるんでしょうかね?」

 

 傍目には、下手に出ているとも言えるが、口調はそうとは言えない。

 寧ろ、明確な警戒が含まれていた。


「決まってんだろ? 一発ぶん殴ってやるってな。 約束もしてる」


 誰と約束をして居るのか、ソレについては背広姿は知らないのか首を傾げた。


「ま、どうしてもやりたいってんなら……仕方ないわな?」

「良いのかよ? 世間で有名なお人が、喧嘩とかしちまってさ?」

「良い人やってるとな、肩がこっちまうんでね、偶には運動も必要だろ?」 


 良の声に、同じ顔はネクタイを緩めると、背広の上着を脱ぎ捨てると、放った。


「オーダーメイドなんでな、汚れては困る」


 汚れて困るという割には、平然と地面に放り捨てている。

 実際には、動き辛いからだろうが、そんな事は良の知った事ではない。


 申し合わせたかの如く、二人の良は構えを取っていた。


「「変……身」」


 眩い光を放ちつつも、瞬く間に姿を変える。

 光が収まれば、二人の姿は見えるが、全く同じでもない。

 

 片方の良はと言えば、朝焼けの空を想わせるのに対して、もう一人は全く違う。

 全身が黒に覆われ、血管の如き線が至る所に走っていた。


 以前に、自分から送られた外套マントを翻す。

【不撓不屈】の四文字を背負う良は、目を細めていた。


『なんだ、その色は? 真っ黒けじゃあねぇか』


 自分の色の評価に、黒色の手が持ち上がる。

 スッと兜が下を向くことから、手を見ているらしい。


『そうか? 別にどんな色してたっておんなじだろうに?』


 そう言うと、落ちていた兜が上がる。


『そっちこそ、なんだよ、そのマントは?』

『贈り物さ、格好いいだろ?』


 黒い兜からは、フゥと息が漏れ出る。


『まるで……古臭い正義の味方だぜ』


 価値観の違いは、互いの違いを示していた。


『おっと? どうやら、やっぱり俺達は気が合わねぇみたいだな?』


 良の声を合図に、改造バスの窓の全てが開かれる。

 中からは、今まで黙っていた悪の組織が外へと飛び出していた。

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