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世界征服、はじめました  作者: enforcer
絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!!
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絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!! その8


 女幹部から提示された場所だが、意外に遠い。

 勿論、行けない程に遠いという訳ではないのだが、徒歩となると時間が掛かる。


「あーもう、パッと飛んで行ければ良いんだけどなぁ」


 そんな愛の発言は、魔法少女だからだろう。

 事実として、他人の目さえ気にしなければそれは可能だ。


 ただ、世間体として大っぴらにする事は憚られる。


『自重してくれよ?』


 良にしても、改造された体を利用すれば自動車に匹敵するほどで走ることは出来る。

 但し、出来るからといってすべきかと問われれば、難しい。

 

 緊急時ならいざ知らず、天下の大来で堂々と力を見せ付ける事を厳に戒めていた。


「まぁまぁ、少しだけですよ」


 リサの声に、愛もウーンと唸る。

 

「うんまぁね、散歩だと思えば良いかな?」

「散歩ってか、一応偵察なんだけどね」  


 気楽な愛に、カンナが突っ込みを入れる。

 偵察とは言え、既に普通に店に入って食事をして居る時点で偵察と呼べるのか怪しいが、とりあえずは問題は無い。


 一度話が始まると、三人は其方に集中が向く。

 その間に、良はと言えば耳を少し擦っていた。


 厳密に言うと、果たしてどうやってエイトが自分の中に居るのかすら理解が及ばない。

 見えない妖精や精霊か、はたまた電子の幽霊なのか、例えようとすれば呼び名幾つもの上がるだろう。


 ともかくも、良は意識を自分の内側に集中させる。

 

『よう、さっきは悪かったな。 余計な邪魔が入った』


 軽く声を掛ければ、耳の辺りがチリチリと感じる。

 微細に振動して居るらしいが、原理は良も理解していない。


『それは、構わないよ。 さて、話を続けるとだな、此方の世界の私なんだが、どういう訳かコンタクト(接触)に応じてくれない』


 聞こえる声に、良は鼻を唸らせる。


 接触を試みたという時点で、居るか居ないかで言えば、居るという事になる。

 しかし、それに応じてくれないという事が良は引っ掛かっていた。


 何らかの事情にて、電話に出られないという事は人間でも往々にして在る。


 その場合、幾つかの理由が考えられた、


 先ずは、極単純に寝ていて気付かないというモノだが、エイトが眠るかと言えばそれは怪しい。

 次点として考えられるのは、連絡が出来ない状態、もしくは逼迫して居るという事も考えられた。

 

 となると考えねば成らないのは、その理由である。


『どういうこった? 電話も出れねーってのかい』


 果たして、電話という概念が正しいかはさて置き、良は尋ねた。


『いや、向こうも気付いては居た筈さ。 ただ、君の言葉を借りるなら、着信を拒否された……という所かな?』


 エイトのソレは、分かり易い例えである。 だからこそ、余計に疑問が湧いた。

 何故に連中を絶っているのか。


 同じエイトである以上、向こうも在る程度の力を備えて居る。

 その上で言えば、下手な軍隊程度では止められない筈だった。


『なんだか、とんでもねぇ事に成っちまってるみたいだな』


 前を行く三人は、余り気にした様子も無く喋りに夢中である。 

 在る意味では気楽とも取れるが、逆に悩ましい。


 まだ全容の何も見えていないのに、事態の重さを良は感じていた。

   

   *


 変わってしまった街を離れ、集合地点へと向かう。

 その間にも、やはり街中の至る所に張られた自分と向き合わねば成らない。


 動画と違い、ただのポスターは動きはしない。

 逆に言えば、其処に映っている顔がじっくりと見ることが出来た。

 

 他人に見せるモノなのだから、ムッとして居るよりは笑っている方が写りは良い。

 ただ、幾つか在る全てに置いて、映る篠原良は目を開けたまま笑っていた。


「あ! あんなとこに留まってる!」


 そんな声に、良も目を向けた。 


 やはりと言うべきか改造されたバスは嫌でも目立っている。

 もしも、あんなモノで街中を走ろうモノなら、直ぐ様サイレンが響き渡るだろう。


「やれやれっと、久々に歩いたら疲れちゃった」

「え? 疲れます?」


 改造された者は基本的に疲労を感じたりはしない。

 だからか、リサが怪訝な顔を見せる訳だが、カンナの鼻がフンと鳴った。


「気分的なモノって在るでしょ?」

「それは、まぁ」


 確かに、気疲れというモノは改造人間にも在った。

 体力的には消耗は無くとも、精神は疲れる。


 その意味で言えば、良も確かに疲労を感じていた。


「ね? 首領」

   

 同じ者としてのカンナの声に、良は頭を縦に振って見せた。


『まぁな、特に俺は……ヘロヘロに成りそうだわ』


 戦いの最中ですら、決して弱音を漏らさない良ではあるが、仲間の前ではそうでもない。

 街での出来事は、良の気力を奪っていた。


「うんまぁ、篠原さんは、特に……ねぇ」


 共に歩き、色々と見ていたからこそ、そんな愛の言葉にはリサとカンナも同意が出来る。

 偶々似た人物とすれ違った所の話ではない。


 そのまんまの篠原良が、この世界には居る。

 それこそ本人でなくともその辛さは感じ取れた。


 自分ではあるが、全く違う自分が、多大な評価を受けている。


 それは、気分を重くさせた。


 何せ世界から【あ、もう間に合ってます】と言われている様に感じてしまう。

 誰かから言われた訳ではないが【自分は果たして必要なのか?】と。


 だからか、リサが慌てて良の手を掴んでいた。


 ハッと成る良に、少女は笑う。 自然な笑みで。


「大丈夫ですよ。 良さんが本物だって、私達知ってますから」


 リサの一言は、良を元気付けるには十分と言えた。

 例え世界から否定されても、たった一人でも誰かが自分を信じてくれる。

 

 幸か不幸か、良を信じる者は一人ではなかった。


 空いている片手を、愛が掴む。


「そうだよ! 大丈夫!」

  

 そう言う愛は、至極真面目な顔を見せていた。 真摯な目が、嘘ではないと語る。

 

 二人に囲まれる良だが、背後は空いていた。

 そして、その隙を虎が見ていない訳もない。 


『うおっと!?』


 ガクンと良が揺れるが、ソレは背後からカンナが抱き付いたからである。

 

 負ぶさる様に抱きつけば、必然的に体が密着した。

 自由奔放な虎が自身を押し付けるという事は、それだけ相手を信用して居るかという証明でもある。


 恥が無いという訳ではなく、そんなモノは気にしていない。


「ちょ!?」「カンナ!?」


 年上を呼び捨てはどうかとも想われるが、それだけリサと愛にすれば虎の行動は問題と言えた。


 では、呼ばれた本人はどうなのかと言えば、目を細めてムフフと笑う。


「なに? 恥ずかしがってやらないのはソッチの勝手でしょ?」


 まるで【やった者勝ち】とでも言わんばかりだが、間違いでもなかった。 

 するしないに関しては、その全ては本人に委ねられている。 ソレが何で在れ。

 

「一つだけ教えといてあげるけど……待ってたってご馳走はありつけないから」


 虎女の忠告に、愛とリサの目が良を見た。

 ジッと見詰めて来る二人の視線と、背後に被さる虎。


『……参ったね』


 降参を意味する言葉ながらも、声は嫌そうなモノとは違う。 

 仮にソレが敗北と言えるならば、ソレは良にとってみれば心地良い敗北と言えた。


 しかしながら、四人は在ることを失念している。


 もしも、この四人だけで観光にでも来ているというのであらば、或いは微笑ましい光景と言えるかも知れない。

 問題なのは、それは他人から見えているという事だ。


 一行が目指すバスだが、無人ではない。

 それどころか、バスの横では珍妙なバスガイドが腕を組んで仁王立ちをしていたのだ。


「ほーうほうほうほーう? 随分と、楽しそうですね? 人を居残りさせて置いて」


 何時もで在れば、猫撫で声など出さない女幹部だが、時々出す時も在った。

 そしてソレは、怒りを覆い隠す時で在ろう。


 笑ってこそ居ても、身体から湯気の如く立ち上る怒気は隠せていない。


「あ、やば」

  

 云いながらも、良の手を離そうとはしない愛である。

 リサにせよ、顔をピクピクとさせる女幹部が怖いのか、より強く良の手を掴む。


 どん尻に控えしとなる虎だが、ヒョコッと首を首を動かしていた。

 

 三方を囲まれ、逃げ場が無い良は、フゥと息を吐く。


『……あぁ、またお説教三時間コースかなぁ……』


 本人以外誰も知らないだろう恐怖に、良は思わずそう零した。


  *


 大幹部による首領へのお説教云々はともかくも、偵察隊は本隊と合流を果たす。

 結果から言えば、幾つかの情報は得られた。


【この世界には、本来の篠原良とは別の篠原良が居る】 


 一言で表せばそうなのだが、事はそう単純ではない。

 携帯端末(スマートフォン)を用いた調査でも、かなりの事が解る。


 若くして財を為した者は他にも居たが、別の篠原良のは少々事情が違った。


 件の【篠原コーポレーション(社団法人)】だが、その事業は多岐に割っている。

 そして、その幅は見る方迷う程に多い。


 特に際立った功績だがそれが幾つか在る。


【燃料】【医療】【食糧】の三つだった。


 あれやこれやと調べるリサを、良がソッと覗く。


「なぁ、どうだ?」


 バスにさえ乗れば、顔を隠す理由は無い。

 それ故か、不安げな顔が見えてしまっている。


 良の声に、リサはウーンと鼻を唸らせた。


「なんて言うか……こう、特別悪い事はしてませんね」

「へぇ、そうなのな」

 

 良の声に耳を傾けながら、リサは画面に目を通す。

 

「……でも、こんなの」

「お?」


 自分が見ているモノが信じられないのか、リサはソッと端末を良へと見せる。

 

「何だこりゃ? めどべっど……って、なんだ?」


 いまいち理解が及ばない良に、リサは顔をしかめた。


「細かい説明を省くとですね……なんでも病気が治せる機械……でしょうか?」


 分かり易い説明である。 しかしながら、だからこそ、良の鼻が唸った。

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