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世界征服、はじめました  作者: enforcer
絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!!
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絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!! その7


 街の人間達は、大して気にもして居ないのか、画面に流れる映像など見向きもしない者の方が多かった。

 対して、良達四人はと言えば違う。


 特に良は、見慣れた筈の同じ顔が、全く違う事をしている事に目を疑うしかない。

 内心では【悪い夢でも見ているのではないか?】と想いたくもあるが、夢にしては出来過ぎている。


 困惑する良の見ている先では、篠原良が会談を受けていた。


『お聞きしたい事は沢山在りますが、先ずは貴方が成した業績に付いてお尋ねしたいのですが? 篠原コーポレーションの最高責任者(CEO)として』


 司会の声に、画面に良は苦く笑った。


『あー、先ずは訂正させて頂きたい。 よく他方でも云われるのですがね、責任者とは言え、何も私一人で全てを成した訳ではないんですよ』


 そんな説明に、司会は身を少し乗り出すと、眉を上げて見せた。


『と、仰いますと?』


 促す声に、画面の良は肩を竦めた。

 

『いえ、ですからね、私自身は、どちらかと申せばただの看板の様なモノなんですよ。 例えばですが、あれやこれやといった研究開発、施工運搬などは、私一人で出来るモノじゃない。 寧ろ、顔すら出さずに見えないながらも頑張ってる人達のお陰なんです』


 若くして成功したという紹介で在ったが、変な癖の強さが無い。

 だからか、司会もハハァと、息を漏らす。


『……あー、それは、しかし、篠原さんは随分と謙虚でいらっしゃる。 他の方などは、結構自分自慢が多いものですが? どうだ、俺は凄いんだ、と』


 探りを入れる声に、画面の良は手をスッと軽く挙げた。


『それこそ勘違いだと思いませんか? もしですよ? 私に限らず、その人が独力で何かされてるのならば、それでも良いですがね。 屋台や、個人店舗など。 でも、会社ってそういうモノではないでしょう?』


 身振り手振りを交えながら、言葉を交わす。 

 在る意味では【好青年】と見えなくもない。


 ただ、良はそんな同じ顔をした人物に強烈な違和感を感じていた。


『では、貴方に取っての会社とは?』


 問う声に、スッと顎に手を触れる。


『別に難しいモノではないと想いますよ? ただ、志同じ者達が集まって、一つの目標に向かって各自が努力し合い、結果を出す。 というモノかと』 

『なるほど……ま、言わば、グループやサークル活動の延長、という事ですか?』


 簡単な例えに、片手が軽く振られた。

 

『いえ、それでもただの仲良し倶楽部という事ではないんです。 それこそ、集まってお喋りと遊びでは仕事に成りませんからね。 結果が伴わないと、意味が在りません。 だから、皆で頑張るんです。 私は、その為の防波堤に過ぎません』


 出された答えに、司会はウームと唸った。


『いやはや、なんだか私……貴方の会社に移籍したくなっちゃいますよ。 こんな事言ったら後で大目玉でしょうけど』

  

 軽く笑う司会に、画面の良も笑って見せた。


『……まぁまぁ、其処は、コンプライアンス(法令厳守)が在りますからね。 ただ、私達は来る者は拒まず、というモットーも、在りますが』


 司会の冗談を、軽く御茶を濁す。


『えぇ、本気に取っちゃう人が出て来ますよ? そんな事仰っていると』


 茶化す様な声にも、寧ろ軽く微笑み返す。


『構いませんよ? どんな人が、どんな特技を持っているのか、誰にも解りませんよね? 人間、意外なことを得意として居る人は多いんです。 だったら、そんなお宝を掘り出して磨いてやらねば勿体ないでしょ?』

 

 街の一角で、そんな声が響いていた。


   *

 

 一連の会話を見ていた愛が、フーンと鼻を唸らせた。

 全ての話を飲み込んだ訳ではないが、それでも感じ入ったらしい。


「なんか、あの篠原さんって……凄いんですね」

 

 月並みな感想に、良は難しい顔を浮かべていた。

 ただ、その顔はサングラスとマスクに隠されている。


『どうだかな……』 

 

 如何にも好青年といった画面の向こうの姿に、良はそれを訝しむ。

 何故ならば、見える特徴が在った。


 ジッと同じ顔を見ている良に、リサがチラリと目を向ける。


「何か……在るんですか?」


 問われた良は、顎をしゃくった。


『彼奴は、目ぇ開いたまんま嗤ってたぜ』

 

 人が笑うという事は、顔の表情筋が作り出すモノである。

 経緯がどうであれ、人は笑える。


 但し、その笑いにも例外は存在した。

 

 顔の筋肉を操作する事で、笑顔は作り出せる。


 その際、人間は目の周りの筋肉までは意識が向かない事が多い。   

 何故ならば、大抵の人間は相手の口を見ているからだ。

 

 唇の形如何に因って、笑っているかを判断してしまう。


 ただ【目は口ほどにモノを言う】という格言も在った。

 

 本当に笑っている人間ほど、顔の筋肉を意図して操作する事は難しい。

 逆に言えば、口だけが笑っている人間は笑って居ないという事になる。


 そして、画面の向こうの良は、目は笑って居なかった。


   *


 街の散策に戻ろうとするものの、目新しい発見はそう多くはない。

 一つ違いが在るとすれば、街の至る所に【良の顔】が在ることだった。


『しっかし、なんだってこう……』


 自分ではない自分が、其処に居る。

 それだけならば、或いは良も驚きはしなかっただろう。

 

 既に経験は在るのだ。


 しかしながら、今回は以前とは違い、世界がおかしくなっている気がした。

 

 当たり前の話だが、そう簡単にはポスターや看板は張っては貰えない。

 賃料を払いさえすれば、そうしてくれる場合も在る。

 或いは、それをさせるだけの人脈か、心酔させるだけのカリスマ性。


 全く同じ顔をしながらも、得体の知れない何かが在る。


「でもホントに、篠原さんが有名に成っちゃったみたいですよね?」


 気軽な愛に、カンナはフンと鼻を鳴らす。 

 

「なんか、いけ好かないんだよねぇ……」


 具体的に何がどうとは言わないが、何かを感じ取ったらしい虎女。

 本能がそうさせるのか、良はコッソリと胸を撫で下ろす。


 仮に【まぁ! 素敵!】と言われてしまうと首領としての立つ瀬が無い。


 そんな中、良のポケットから着信音が響いた。


『おっと、すまん』


 三人に断ってから、携帯端末(スマートフォン)取り出すと、画面を見る。

 其処には【アナスタシア】の名が映し出されていた。


『はい、もしもし?』


 軽く声を掛けると『首領!? 大変です!!』と声が掛かる。

 女幹部の焦りから、どうやら彼女も同じモノか、はたまた何処かでポスターなりを見たのかも知れない。


『落ち着けって、どうした?』

 

 良が声を掛ければ『すみません、取り乱して』と返ってくる。


『其方に在るかは解らないのですが、首領の顔が……大量に』

『あぁ、知ってるよ。 ソッチも見たんだろ?』

 

 街を軽く散策するだけでも、あれやこれやと見たのだから今更で在ろう。 


『そうですか、ならば、此方へ合流出来ますか? 今すぐに基地へ帰還し、先ずは体制を整えるべきかと』


 居残り食らった件はともかくも、女幹部なりに焦っているのだろう。

 ああだこうだと喚かれるより、ソレは彼女の有能さを示していた。


『おう、そうだな』

『では、待機位置を其方へ送りますので、お早く』


 端的な説明と共に、通話が切られた。

 

 此処で解るのは、アナスタシアが居残りを忘れる程に、別の事を危惧している事の証明だろう。


 電話を終えた良に、三人が目を向ける。


「誰からです?」

 

 リサの素朴な疑問。 

 当たり前ながら、電話の相手はして居る本人以外には見えないモノだ。


『アナスタシアだ。 とりあえず切り上げて帰って来いってよ』


 内容を簡潔に告げる訳だが、三人の反応は芳しくない。


「えぇ~……まだ全然見て回ってないんですけどぉ?」

  

 年頃故か、愛にしてみれば散策半ばで打ち切られるのを嫌がる。 

 とは言っても、本来四人は街の偵察が目的であった。


 休日に出掛けた訳ではない。


『頼むよ、我慢してくれ』


 良から頼まれれば、愛もムゥと唸りはするが露骨には嫌がらない。


「……じゃあ、次も篠原さんの奢りですからね?」


 少女なりの妥協案に、今度は良が思わず唸らされる。

 首領とは言え、使える現金は其処まで潤沢ではないのだ。

 

『わぁ、もう、わかったよ』

「じゃあ良いです」


 軽い言葉と共に、愛はリサとカンナに向き直る。


「ねね、次は何食べようか? さっきお蕎麦だからぁ、次は中華? フレンチ?」

「えぁ、急に言われても……でも、何が良いかなぁ」


 早速とばかりに、次の献立を考え始める愛に、リサも乗せられる。

 出来ればゆったりとさせてやりたくもあるが、そうも言っては居られない。


 業を煮やしたアナスタシアほど恐ろしいモノはないと良は知っている。


『まままま、お二人様、そういうのは後でゆっくり決めてさ、今は、ね?』


 悪の首領とは思えない低姿勢で頼む良に、リサと愛も渋々ながら頷いてくれた。

 この間、カンナは静かにして居たが、寝ている訳ではない。

 

 良が電話して居る間も、二人の小娘がああだこうだと話す間も、ジッと画面の向こうの篠原良を見ていたのだ。

 何かボロを出さないか、と。


『カンナ、行こうぜ』

「はいはい、全く……お姉さんってのも楽じゃないよ」 


 軽いお茶を濁すカンナだが、その彼女でも一つ気付けていない事がある。


 大きなモノに目が向いてしまうと、小さなモノを見落としがちであった。


 街には、防犯の為か至る所に監視カメラが備え付けられて居たが、その全てが、四人を撮影して居た事には、終ぞ虎ですら気付かない。


『それでは篠原さん、本日はどうも有り難う御座いました!』

『いいえ、此方こそ、この様な機会を設けて頂き有り難う御座います』


 場を去る四人の後ろでは、奇しくも会談(インタビュー)が締めくくられていた。

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