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世界征服、はじめました  作者: enforcer
絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!!
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絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!! その5


「あぁ……そういや、在ったなぁ」


 良自身も、忘れた居たが、思い返せば印象的な出来事と言えた。

 その次に訪れた世界にて余りに忙しかったからか、忙殺されていたと言える。 

 

 それでも、思い返して見れば、改造人間にとっては興味深い話でもあった。


「え、何々? 何の話?」


 異界の良と餅田の一件の際、カンナは所用が在って席を外していた。

 その為、リサと良が【何の話】をして居るのかは知らない。


「えっとぉ、餅田さんがね、アッチの篠原さんに少し体を分けたんだよ」


 その場に同席していた愛の説明に、カンナは興味津々である。


「で? どうなったの?」


 此処で愛も鼻を唸らせる。

 当人が一騎当千の魔法少女とは言え、格別に何かに詳しいという訳ではない。

 

 つまり、具体的な説明を求められてもソレが難しいのだ。


「んー、とね、ご飯食べてた」


 少女なりの端的な説明。 その内容は、見たままを語っただけである。

 それでも、虎女の期待を裏切ったモノではない。

 寧ろ、自分を含めた改造人間達への新たな希望と言えた。


「そっかぁ……ご飯かぁ」


 食事という概念とは、カンナもかけ離れて久しい。

 とは言え、別に産まれながらの改造人間という訳でもなかった。


 長い間にすっかりと忘れていたが、彼女自身も普通に物を食べていた頃は記憶に残っている。


 そしていざ思い返せば【食べる】という当たり前の感覚は懐かしいモノであった。


「ね、首領! 食べれる様に成ったらさ、何食べたい?」


 思い付いてしまうと、それは湧き上がる。

 カンナに限らず、普通の人間にも素朴な疑問だが、されてみるとコレが深い。


「んぁ? 何食べる? そうだなぁ……」

 

 死ぬ前に食べるのが最期の晩餐ならば、新たに食べるモノはなんと呼ぶべきか。

 呼び名云々よりも、いざ【何が食べたい?】と問われると悩む。

 

 すっかり忘れていたあれやこれやといった食べ物が、陽炎の如くチラつく。


 腕を組み、必死に鼻を唸らせる。

 どうせなら、アレもコレも食べたいという根源的な飢餓感が良の中には残っていた。


「そんな悩まないでよ、食べれる様に成ったらさ、食べに行こ、皆で」


 そんなカンナの言葉だが、コレに関しては愛とリサにも不意打ちと言えた。

 それこそ、アナスタシアの如く【二人で】等と言おうモノなら、即座に邪魔をしてやろうとすら身構えていたのだ。

 

 スッと顔を向けると、片方の眉をヒョイと器用にあげてみせる虎女。


「なに? 二人共さ、すっ惚けた顔して」


 肩透かしを喰らった二人からすれば、思わず気が削がれる。


「え、あいや、別に……」「……何でもないですけど」

 

 皆で行こうと言われてしまえば、逆に文句を言えないものである。

 

「ま、とりあえずなんか食べなって」


 二人の何とも言えない反応に、良は片手を挙げた。


「あ、すんませーん!」

  

 挙手と共に、店員を呼んだ。


   *


「あーい、お待たせしました~」 


 良とカンナは何も無しというのもアレだからか、お為ごかしの為に瓶ビールと日本酒一合がお通しと共に提供される。


 対して、若き少女達の前には、それぞれが頼んだ品物が並ぶ。


「はい、其方は天盛りね」


 リサはと言えば、天盛り蕎麦。

 一人前の食事としては量も熱量(カロリー)も十分だろう。


 逆に、愛の前にはあれやこれやと並ぶ。


「はい、天丼、カツ丼、合い盛り二枚に、鴨南うどんとカレーね!」


 先ずはとばかりに、丼モノが数種類、うどんと蕎麦の合い盛り。

 そして、トドメとばかりに湯気を放つ種物とカレー南蛮。


「いただきます」「いっただっまきまぁす!」


 それぞれ箸を取る訳だが、食べる速さは段違いであった。

 伸びる事を避ける為か、先ずはとばかりに暖かい麺を持ち上げる愛。


 一回に口に放り込む量が、二人では差が大きい。

 

 リサがチュルチュルといった程度ならば、愛ばズバズバだろう。

 在る意味対照的な二人に、良とカンナは微笑ましいと見ていた。


「じゃあ、コッチもちょっとだけね」

「お、そうだな」

 

 アルコールも飲む事は出来るが、良は酒を呑んでも酔う事はない。

 それでも、味と香りは解る事から気分は味わえる。


 グラスに注がれたビールだが、白い雲の冠を頂き、黄金の液体には泡が浮く。

 手に取るなり、グッと一息にグラスを空にした。


 酔う事は無いとは言え、なかなかに喉に当たる炭酸や、鼻に抜ける風味は格別とも言える。


 プハァと息を吐く良に、カンナは自分の分をチビリと飲んでいた。


「ねね、首領、もう一杯」

「おぉ、すまん」


 その後も、良とカンナの二人は互いに酌をし合うのだが、コレばかりは愛とリサも邪魔しない。


 一見する分には、水商売のお姉さんがお客様の応対をして居るのか、または派手な彼女と地味な彼氏の世話をして居るとも見える。


 普段ならば、憤慨ものの光景ながら、愛とリサは口を挟まない。

 何故ならば、改造人間にとって所詮飲み食いは【おままごと】に過ぎないからだ。

 

 幼子が、あれやこれやを空想にてやって遊ぶ。

 二人にとっては、如何にモノが本物でも、同じ事である。 


 人ではない二人が、必死に人の真似事をする。

 

 今は、異界で見た光景に望みを掛けて、この場を譲っていた。


  *


「ご馳走さま」

「うーん……腹八分にしとこうかなぁ、健康の為にもね」


 リサは普通だが、対して愛の前には空になった容器がズラリと並ぶ。

 それだけ食べてと太らないのかと問いたくなるが、今更だろう。

 

「さぁてと、それじゃあ、会計して来るわ」


 率先して動く良だが、何かを忘れている気がする。

 ソレは、壁を見て思い出す事になった。


 何故かと言えば、店の壁にも街で見たポスターが飾ってある。

 

「……大丈夫、だよな?」

 

 自分の顔が飾ってあるという時点で、不安には成るが、問題ではないと判断した。

 もしも【指名手配の顔写真】が良ならば、慌てたかも知れないが、そうではない。


「すんませーん! お勘定お願いしま~す」

「はいはい、ちょっと待ってくださいねぇ」


 店員は言いながら金銭登録機(レジ)を操作しようとする。

 その際、チラリと良の顔を窺った。


「あら、そういえば貴方……」

「え? どうかしました?」


 すわ自分の顔に何か付いてるかと言いたくなるが、ソレよりも速く、店員は店の壁を指差す。


「あ、やっぱり! やっだもう、篠原良さんでしょ?」


 当然と言えば、そうかも知れない。

 店員からすると、店の壁など毎日嫌という程に見返す。

 で在れば、ポスターが記憶に焼き付いても不思議ではない。


「ちょっとすいませんけど」

「え? あ、はい?」

「サインとか……貰えませんかね? 後、写真とかも」 

 

 有名人に成った記憶は良には無いが、店員からすれば見た顔である。

 

「いや、えっとぉ」


 いきなりの【サインと記念撮影】に、良は困惑してしまう。

 別に有名人がお忍びで食事に来た訳ではない。


 困る良に、三人が慌てて駆け付けていた。


「すみませーん」

「うちのお兄さん、ソックリでしょ?」

「いやほんとに、よく間違えられるんですよ! ねぇ?」

 

 三人からそう言われれば、店員もウーンと鼻を鳴らすしかない。


「あらら、そうなの? でも、ホントに良く似てますけど?」

「えぁ、まぁ、よく、言われますんで」

 

 下手に言い訳もせず、手早く会計を済ます。

 

「はい、ありがとう御座いましたぁ」


 店員の挨拶はともかくも、持っていた現金が使用できる。

 ソレはつまり、此処が良の知っている世界で在ると示していた。

   

   *


「なんだかなぁ、食べたの忘れそう」


 軽く、五、六人前は飲み食いした割には、そんな事を言う愛である。

 だからか、カンナが嘆息を漏らす。


「あんなに喰ったでしょうがぁ、でも、どうしよっか?」


 愛の健啖家なのはさて置き、彼女にとっても良の事は気掛かりと言えた。

 何せ、適当に店でも、先程の始末である。


「とりあえず、バスに合流して、戻ります?」


 それぞれに意見を出し合い、ウーンと鼻を鳴らす三人。


 其処で、当の良は軽く笑った。


「大丈夫じゃあないかなぁ? だってほら、ソックリさんで通ったし」


 気楽な性格故か、余り頓着した様子を見せない良である。

 但し、実のところではソレは不安の裏返しでもあった。


 確かに、蕎麦屋では誤魔化せはした。

 それでも、果たして何処まで通用するかどうか言えば怪しいモノである。

  

 四人はそれぞれに思案するのだが、其処へ「あ!」と声が掛かった。


「篠原さんだ!」

 

 バッと声の方を見てみれば、其処には数人の女性が居た。

 パタパタと駆け寄るなり、良へと寄る。


「篠原さんですよね? やっぱりそうだ!」

「あの、ちょっとだけ写真とか駄目ですかぁ?」


 懸念は、そのまま形と成ってしまった。


「いや、俺は……」


 篠原良である事に間違い無い。 だが、それなのに名乗れないという。 

 

「お願いしますよ、ちょっとだけ、ちょっとですから」


 グイグイといった圧力に、改造人間ですら気圧された。

 知らぬとは言え、まるで知人といった様子の女性達。


 もしも、この場に良だけならば、或いは彼も困り果てただろう。

 幸か不幸か、良は一人ではなかった。


「ちょーっと失礼しますねぇ」「はいごめんなさーい」


 そう言うのは、カンナと愛である。

 ガッと良の両脇を掴むと、作り笑顔のまま引きずり始める。


 そして、残ったリサが女性達に頭を下げていた。


「あ、似てますけど、違うんですよ。 アレ、家の兄なので、すみません」


 ペコペコと頭を下げると、離れる三人に追い付く。


「……なに、アレ?」「…さぁ?」


 残された女性達は、首を傾げていた。


 

   

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