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世界征服、はじめました  作者: enforcer
絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!!
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絶体絶命!? 悪の組織壊滅の危機!! その4


 在るであれば、街中を歩いて居てもそうは目立つモノではない。

 ただ、街に来た時点で、四人は言葉を失っていた。


「え? 何コレ? どういうこと?」


 そんな第一声を発したのは、川村愛である。

 彼女の目には、見慣れぬ街が映っていた。


 パッとでは、其処までの変化は無いと言える。

 半年間程度で新しく成る場合も無くはないが、其処まで多くはない。


 四人が目を疑ったのは、街の至る所に在る電光掲示板や、ポスターの類だった。

 勿論、ソレだけならば或いは四人は驚かないかも知れない。

 但し、映っている者が異様なのだ。


 そして、其処に見えるのは【篠原良】である。


「え? 何? 誰?」

 

 当の本人からすれば、何故に自分の顔が映っているのか甚だしい疑問でしかない。

 よく整えられたヘアースタイルに、パリッとした衣服。


 ポスター脇には【皆で築く明るい未来!】と文字が踊る。

 

 一見する分には【篠原良が選挙にでも出馬した】という風に見えた。


「なんだコレ? どうなってんだ?」


 思わず、ポスターを壁から剥がして睨む。

 当たり前の話だが、良にして見ればこんな写真を撮った記憶は無い。


 にも関わらず、何故か良の顔が街には見えた。

 三人の内、組織に属していない愛は、チラリと良を窺う。


「えっとぉ、篠原さんって、なんかしました?」


 見える顔がそっくりどころかそのまんまである。

 だからか、愛は良に尋ねるが、尋ねられても答えられない。


「いやいやいや、違うからね? つーか、なんなんだ、コレは……」


 当惑する様子に、嘘は見えない。 其処で、愛はリサとカンナに目をやった。


「ね、どう想う?」


 そう問われた二人にしても、見に覚えなど無かった。

 寧ろ、悪の組織の首領が顔を堂々と晒している方が問題である。


「どうって、愛さん。 私達、ずっと一緒に居たでしょうに」

「ねぇ、こんなん撮ってる暇なんて無かったし」


 組織の二人からしても、良の動向は知っていた。

 地球から放り出された後、帰る為に奔走していた事は記憶に新しい。


「とにかく、少し探りましょう」


 先ずはと、リサがそんな事を呟いた。 


 この場で四人でなんやかんやと話していても埒は明かない。

 ならば、自分達で確かめねば成らず、その為の偵察隊であった。


「でも、大丈夫かな?」


 何時もの虎らしく無いカンナだが、他の二人にしても彼女が言わんとして居る事は理解は出来た。

 ハッキリ言って、今の良は何をして居なくとも目立ってしまうかも知れない。


「モノは試しですよ!」


 ヤケに覇気があるリサの声に、愛とカンナですら気圧される。

 無論其処には【自分達が居る】という意志が在った。


 意気揚々と前を行くリサ。

 こうなると、まるで何処かのRPGの様に三人は続いてしまう。


 ただ、最後尾の良は、チラリと窺いつつも、耳に手を当てた。


「……エイト、聞こえるか……」


 ボソッとそう言うと、耳にジワリと振動が走る。


『聞こえてるよ、友よ。 余り喋れる状況ではなさそうだが、恐らく、調べろと云うんだろ?』


 以心伝心というべきか、皆まで言わずとも、エイトは返事をくれた。


「頼む」

『任せろ』


 短い会話だが、それで通る。

 流石に、良も自分の中に別の誰かが居るとは言い辛いモノが在った。


 その理由は出逢いに在る。 

 とてもではないが、アナスタシアを含めた四人には聴かせられないモノだった。


   *


「うーん……」

 

 街を散策するのだが、良は鼻を唸らせる。

 何故ならば、自分達が居ない間に、街には見慣れぬ看板が増えていた。


 そして、良が鼻を唸らせる理由だが、書いている言葉に在る。


【篠原工業】という文字。


 ソレだけを見れば、何処かの会社の名前と見えなくもない。

 ただ、ソレは一つではなかった。


【篠原燃料】【篠原電工】【篠原食品】


 見れば見るほどに、自分の名字が印されていた。


「なんかさ、したの?」

「何もしてねぇって、そんなの知ってんだろ?」


 ごく素朴な疑問を呈するカンナに、良は首を横へと振った。

 全く持って、見に覚えなど無い。


 覚えが無いにも関わらず、自分の名前と顔が街中に在る。 

 良からすれば、またしても違う世界に迷い込んだ気分にさせられた。


 消えた時間に戻って来られる筈が、いざ蓋を開けて見れば半年が過ぎている。

 

 此処で奇妙なのは、高々半年で何をどうしたら此処まで変わるのか、と云う事だった。


「どうしましょっか?」


 立ち止まって居ても何も始まらない。 

 リサの声に、愛の手が挙がる。


「はい!」

「はい、川村さん」

 

 生徒を指差す様に良が促すと、愛は自分の胃の辺りを撫でた。


「こんな時に言うのも何なんですけどぉ、何か、食べません?」


 場違いかも知れないが、間違いでもない。

 何せ、改造人間とは違い魔法少女は燃費が悪い。


 本人の体格とは無関係に、栄養が必要であった。


「あんたさぁ……でもまぁ、コレも偵察の内かなぁ」


 とりあえずは咎めようとするものの、カンナは考えを変えた。

 単に歩いて居るだけでも、偵察には成るが、店舗を見て回ると云う事も意義は在る。


 もしも、自分達が違う世界に来てしまったのであれば、その証明にも成るだろう。


「よし! 決まり! じゃ、なんか見付けましょ!」

 

 行き先が不明では、誰もが不安に駆られる。

 だが、例えソレが休憩の為でも、行き先が決まれば自然と心は落ち着きを取り戻す。


「そう言えば、私も……」


 愛ほど直接的には言わないが、リサも生身である以上は栄養が必須であった。

 そんな彼女に、愛が肩を組む。


「じゃあ、篠原さんの奢りって事で」

「へ? 俺の?」

「忘れてません? 奢るって約束?」


 思い返せば、良は愛の確かに約束をしていた。

 その際には【何でも奢ってやる】と言ってしまっている。

 

 そして、一度言ってしまった以上、男に二言は無いと云う格言も在った。


「……はいはい、解りましたよ」


 吐いた言葉は飲めないという以上、良はフゥと息を吐いた。


   *


 さて、いざ飲食店を探すと成るが、コレがまた問題である。

 店が無いというのも問題が在るだろう。

 逆に、今四人が居るのは街であり、飲食店を見繕うのには大して苦労はしない。


 其処で問題なのは【何処で何を食べるのか?】であった。 


 御飯物、麺類、パンと、主食だけでも数がある。

 こうなると、愛とリサが選ぶのだが、二人もなかなかに迷いが在った。


 体感的には数日振りとは言え、離れていた事に変わりはない。

 つまり、何を最初に食べようかと、目移りがしてしまうのだ。

 

「え~……どうしよう? 何が良いかなぁ」


 少し歩けば何でも在るという事が、かえって少女を悩ませた。

 仮に麺類と決めたとしても、その先はまた広いのだ。


 ラーメン、パスタ、蕎麦、うどんと、探せば幾らでも見付かってしまう。


「ねね、リサは何が良い?」

 

 迷った時は、仲間に頼る。

 愛の問い掛けに、リサは少し鼻をウーンと唸らせた。


 自分達二人は何を食べても良いが、良とカンナは別である。

 二人共に、改造人間なのだから、食べる意味が無い。


 だからか、良が慌てて手を軽く振って見せた。


「あ、俺達に気兼ねしなくて良いぞ?」


 するなと言われると、余計に気になると云うのが人情というモノだろう。

 こうなると、リサも迷いが生まれてしまう。

 

 其処で、一計を案じた。


「えーと……じゃあ、あの辺で!」


 パッと指差すが、実のところ見て決めた訳ではない。

 山勘というか、偶然に任せて見たのだ。


 その結果だが、なんと偶々【蕎麦屋】という暖簾(のれん)が見えた。


   *


 リサがパッと決めた店。


 其処は有り体に言えば、何処かの街にも一つは在るであろう老舗である。

 

 様々なモノが出現し、隆盛し、衰退していくというのが主な飲食店だが、中にはしぶとく生き残る店が在る。

 地元に根付き、上手く常連客を掴んだ事で、世間の流行り廃りといった波風に揺られない。


 其処は、そんな店であった。


「いらっしゃいませ、何名様ですか?」


 如何に熟練者といった接客の声に、良は指を四本立ててみせる。


「あ、四人でお願いしま~す」 

「あーい、彼方の空いてるせきへどぞ~」


 多少ぶっきらぼうでは在るが、寧ろ、その対応は良に懐かしさを感じさせた。

 何故ならば、今まで通ってきた世界では、有り得ないモノだからだ。

 

 思わず【帰ってきたんだ】と感じさせてくれる。


 明いていた座席へと掛ける四人だが、リサと愛、良とカンナがそれぞれ卓を挟んだ並ぶ。

 当然なのか、愛がジッと対面のカンナを見ていた。


「えっとぉ、何でこの並びなんですか?」


 至極当然と良の隣を確保したカンナだが、単純に隣に座りたいというのが半分であり、残り半分は別の意図があった。


「だってさ、あたし達たべないもん」


 ポンとカンナは言い放つが、流石にその一言には愛も口を閉ざしてしまう。

 食べようとすれば、食べられなくは無いのだが、それは意味が無い。


 其処で、慌てて良がリサと愛に品書きを差し出す。


「あ、いやいや、コッチに構わずにさ、好きなもん頼んでくれ」


 何とか場を和まそうとする良に、リサは目を落とす。

 既に知っている筈なのだが、居たたまれない。


 思わず、お茶を濁す為に品書きへ目を通す。


 その中で、リサは【ちからうどん】という項目に目が止まった。


 その品物自体は、大して珍しくは無いのだが、乗っている具に目が引かれる。

 基本的に、掛けのうどんか蕎麦に、餅を具として乗せたモノだ。

 

 其処で、在る一つの事が思い出させる。

 かつて、異界にて出逢った別の良は、餅田から体細胞を分け与えられていた。

 

 その結果を、リサは見ている。

 其処では、本来食べ物を必要としない筈の良が【腹が減った】と言ったのだ。


 実際に内部を詳しく調べた訳でないが、何かしらの変化を与えたのは間違い無い。


「あの……私、想ったんですけど」


 唐突なリサの声に、皆が目を向ける。


「憶えてます? 別の世界の良さんが、餅田さんから少し身体を分けて貰った事」


 そんな声に、良はすっかり忘れていた事を思い返していた。

 

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