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世界征服、はじめました  作者: enforcer
誰も居なくなったソラの果てにて
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誰も居なくなったソラの果てにて その2


『んぁ?』


 現れた一匹の生き物は、一見すると猫にも見える。


 ただ、よくよく見れば違った。


 猫よりも太い体躯に、体毛にはソレらしい縞模様(ストライプ)。 

 ソレは、正しく子虎であった。


 思わず、虎という事からカンナを頭に思い浮かべてしまう。


『おいおい、いったいソイツは何処から……』


 今まで居なかった筈の生き物が、何故か此処に居る。

 慌てる良だが、子虎は取り合わず、座っている自分の方へと向かうと、その膝に乗った。

 

 ヨチヨチとした動きながらも、気に入る体勢を見つけ、丸まる。

 白い手に撫でられるのが気に入ったのか、子虎は膝の上で欠伸を漏らしていた。


「何処から、て云われてもな。 ちょっと、呼んで見たんだ」

『あん? その、虎をか?』 


 問われたからか、色の無い良は微笑みながらも子虎を撫でる。

 撫でられる虎だが、気持ち良さげに目を閉じ喉を鳴らしていた。


「大丈夫だよ。 戻してやれば、どうせ直ぐに忘れちまう。 時空を超えるすんげー大冒険の筈だが、今だって、コイツは大して気にしてないんだ。 言葉にすりゃあ、珍しい場所に居るって程度だ」


 丸く成った子虎だが、そのまま寝入る。 直ぐに、その姿は消えていた。


 思わず、良は立ち上がる。


『お、おい? 彼奴はどうした?』

「ん? そら何時までもこんな所に置いたって仕方ないだろ? 只でさえ、何も無い。 だから、お帰り願ったのさ」


 手品かと見紛うが、タネを見抜けないのならば手品かどうか解らない。


『なんで……』

「なんで? なんかやればいいって云っただろ? だから、ちょっとだけ、な」


 何処まで何を出来るとは云われていない。

 果たして、見える自分は何が出来るのかと良は考えた。


『そんだけスゲェ力が在るなら、人助けでもすりゃあ良いだろうに? 何処だって行けんだろ?』


 悪の組織の首領が【人助け】を勧めるのもどうかと思われるが、とりあえずとして質問を投げ掛ける。

 ソレに対しての答えだが、軽い鼻笑いと溜め息であった。 


「もうやったよ。 それこそ、嫌気がさすまで……な」

『あん?』

「お前はこう思ってるだろ? どうせスゲぇんなら、なんだって出来る、何処へ行ったって良いってな」

『違うってのか?』


 無色の良は、小さく首を横へと振った。


「だからさ、云っただろ? ホントに何度も何度も、飽き果てるまでやってみたんだ。 もしかしたら、何か変えられるんじゃないか……ってな」

 

 そう言うと、両手の人差し指が立てられる。


「こう、困ってるAをだ、責めてるBから助けるだろ?」


 言葉と共に、片方の人差し指が下がる。


「でもな、暫く経つとさ、今度は弱ったBが助けてって言い始めるんだよ」


 下げられていた人差し指が持ち上がり、代わりに逆の人差し指が下がる。

 

「わぁ、Aが攻めてきた助けて~……ってな。 でだ、仕方ないから今度はBを助けるだろ? そうするとどうなると思う?」


 問われた良は、少し頭を巡らせる。

 

『そら、またAが助けて言い出すんじゃないか?』

「そうだ、その繰り返しだ。 だが、もしどちらかを滅ぼしたとしよう。 それなら、もうAとBは争わないと想うだろ?」


 上げられる内、片手の人差し指が下がる。


 争う両方のどちらかが居なくなれば、それは道理で在る。

 何せ争うべき相手が居ないのだから。


「でもな、違うんだよ」


 そう言うと、今度はまた人差し指の伸ばされた。


「なんとな、今度はどっからともなく違うCって出てきちまうんだわ」


 実際には指を上げ下げしているだけなのだが、良には何かが見えた。

 数えるのも馬鹿らしい年月の最中、終わらない戦いに明け暮れる何処かの世界。


 何時しか、一つの戦いが終わり、どちらかが滅んだとしても、また代わりが現れてしまう。


「でな、やっぱりそのCを倒したとしよう。 じゃあどうなるか」


 そう言うと、また人差し指を立てながら笑う。


「なんと今度はDってのが出て来るんだ。 どうだ? コレじゃあ終わらんよな」


 終わった筈の戦いに、また新たな勢力が現れて戦いを始める。


 正にソレはいたちごっこであった。 何度繰り返しても、ソレが終わらない。

 例えに出されたアルファベットは二十六文字だが、別の呼び方をすればそれこそ無限大だろう。


『じゃあ、終わらないのか?』

「いいや、終わるさ」

『あん?』

「周り見てみろって」


 見ろと云われても、とてもではないがお世辞にも風光明媚とは言い難い。

 何も無い空間に、大きなブラックホールが二つと小さな星が一つだけ。


 色の無い自分の言葉が正しいならば、コレが宇宙の全てという事になる。


「むかぁし昔に居たんだな。 わー大変だ、生き物が多過ぎで宇宙が困っちゃうとか云ってたが、どっちにしても宇宙は終わるんだ。 十個のクッキーを1個ずつ食べるのか、5枚まとめて食べるのか。 多少は速い遅いは在るがな。 結局の所、みんな暇だから戦いたくてうずうずしてたんだろうよ? 口実が欲しいだけさ」


 まるで全てを見て来たかの様に語る自分に、良は言葉に詰まった。

 何がどうしてそうなったかは定かではないが、自分とはかけ離れた自分。


『……そういや、地球は?』


 どうせなら、思い付いた事を尋ねてみたい。

 好奇心も在るが、半分は探求心でもある。


 そんな良の質問に、色が無い自分はウンと鼻を鳴らす。


「地球? あぁ、此処のなら、とっくの昔に蒸発したよ」

『じょう、はつ?』

「知らないのか? そっちの時間軸で言えば、二、三十億年もすれば、太陽が赤色膨張してな、太陽系の殆どは消えるんだ。 残りはまぁ、外にすっ飛んでくか、膨らんだ太陽に飲み込まれるにせよ、結局の所、彼処は何も無くなる」


 意外な程に、呆気なく終わるという事実に、良は言葉を失った。


「そう気にすんなって、銀河系だってくっ付いて爆発もすれば、それこそ恒星が役目を終えるってだけの話だ」

『そんなもん……なのか?』

「意外か? まぁ、人の目からすればドデカい話に聞こえるだろうが、結局の所大きさがデカいのかチッサいかの違いしかない。 極端な話をすりゃあ、太陽たってマッチの火と同じで、火が点いても、何時かは燃え尽きるんだよ、多少の時間は掛かるがな」


 見た目にはそう変わらない自分だが、途方もない何かを感じさせる。


『なぁ、なんだってソッチはそんな事に成っちまったんだ?』


 どうせなら、自分が辿ったで在ろう経緯が気になる。

 ただ、問われた自分は、苦く笑った。


「悪いが、俺が来た道を話すには、とってもじゃあないが時間が足りないよ。 話し半分に成る前に、そっちの寿命が来ちまう」


 スウッと、息を長く吸うと、それを長く吐き出す。


「でだ、物凄~く大ざっぱに要約すると、色々在り過ぎたのさ」


 まるで、力尽きたとでも云わんばかりである。

 何でも出来る筈だが、態度から見えるのは【何もしたくない】という答えだった。


『なぁ、さっき虎出して見せたろ? だったら、新しい宇宙の一個や二個、創れそうな気がするんだが?』


 問われた良は、背中を椅子に預けて目を閉じる。


「いやまぁ、そらぁな。 ちょちょいのちょいって、出来るんだが……」

『が? なんだよ』

「創って遊んで……また壊す……で、また創る……飽きるんだよなぁ、その内さ」


 奇妙だが、良からすると色の無い自分は砂場の子供に見えた。

 最初の内は、あれやこれやと試して見ようとする。


 其処には何の制限も無い。 何をしようと、何を造ろうと、誰も止められない。


『で? 今は何もしてないってか? つーか、だったら何で俺を呼んだんだ?』 


 見える自分が、果たして神と呼ばれる【何か】と同一なのかは解らない。

 ただ、そんな自分に呼ばれた理由を良は知りたかった。


「ん? 偶々……聞こえちまったからな。 お前、祈ったろ?」


 云われて見れば、そんな記憶も無くはない。

 未来の地球から戻ろうとした際、確かに少しは祈っていた。


『あぁ、まぁ確かにちっとはな。 でだ、俺に何か用が在んのか?』


 今更ながらに、何でも可能な自分に呼び出される謂われが思い付かない。

 全てが可能ならば、そもそも他人が必要なのかという疑問すら浮かぶ。


「云ったろ? ちょっと、話したかったってさ」


 話したい、そう言われても疑問は残る。

 果たして色の無い自分は何処まで何が出来るのか。


 仮定として、俗に言う全知全能で在れば、良が何を云うのか知っている筈なのだ。


『話したいつってもよ、どうせ俺が何て云うのか……知ってんじゃあないのか?』

 

 そんな素朴な疑問に対しての応えは、苦笑いである。


「あぁ、俗に言うアレだ。 神は賽子サイコロを振らないって奴だな」


 そう言うと、白い手が持ち上がる。

 少し指を擦って見せれば、いつの間にかその指には賽子が在った。


『おい、またどっから……って質問には意味が無いか』


 今更、手品かどうかを確かめる意味が無い。

 その場で造りました、と云われても、嘘だと見抜く事が難しいからだ。


「どうやって振ったって、どんな目が出るのか知ってるし、出そうとすれば出せるんだ」

『はぁ、そら便利だな』

「便利かぁ、まぁ、便利過ぎってのも、考えもんだろうなぁ」

『そんなモンかね?』


 良の声に、賽子が投げられる。


「……ピンゾロ」


 そんな声に合わせてか、放られた賽子は二つ共に一の目を出していた。

 特に凝った投げ方をした訳ではないにも関わらず、云った目が出る。


「な? つまんねーだろ?」

『やっぱり便利じゃねぇか、だったら……』

「人助けに使えって云うんだろ?」


 賽子の時と同様に、良が何かを云う前に答えを出してみせた。


「わかんねーだろうなぁ。 ちょっと助けるだろ? そうするとどうなると想う? 最初の内は多少は感謝してくれはすんだ。 でもな、直ぐにまた助けて~って来るんだぜ?」


 何処まで何をしていたのか、それを知る術はない。

 ただ、解るのは虚しさである。


「段々とな、助けられるのが当たり前に成ってくる。 するとだ、次はこう云われんだ。 何でもっと速く何とかしてくれないんだってな。 何でも出来る癖に、とかな。 やってる方がアホらしく成るだろ、んなもん」


 何故かは解らないが、良にも見えるモノがある。

 どれだけ必死に成ったところで、最後は感謝どころか批判されてしまう。

 

 神というべきかは解らないが、その空しさだけは伝わっていた。

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