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世界征服、はじめました  作者: enforcer
嘘か真か、理想の世界!?
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嘘か真か、理想の世界!? その12


 少しずつだが、確実にモンハナシャコの動きは弱まっていた。

 まるで、コレで全て終わると様に。


 程なく、完全に動きは止まる。


 その間に、良が出来たのは見守る事だけだった。


『おーけい……この野郎……』


 静かにそう言うと、良は軽く両手を挙げる。

 

『いい加減に出て来い!!』


 抑えていた分の怒りが、一気に噴き出す。


『テメェ!! 喧嘩すんなら自分でやれや!!』


 良からすれば、相手の真意が解らない。 

 何故かは解らないが、この世界の良はひたすらに自分とは違うやり方を選んでいた。


 如何なる理由にて、そんな事をして居るのか。

 其処までを想像出来る程に冷静では居られない。


『何だってこんな真似しゃがんだ!? この野郎……』

 

 怒りに頭を沸騰させていた良だったが、ふと、在ることが引っ掛かる。


 この世界の自分だが、床に転がるアナスタシアの複製品を【突貫作業で作った】と言っていた。


 つまりは、慌てて用意したという事になる。


 考えて見れば、当たり前の事だが、組織の者達を捕まえるのには、方法は幾つか考えられる。


 極一般的に、白旗でも挙げながら【やぁ、皆さんこんにちは、仮想現実は如何?】と柔らかい対応は可能だろう。


 しかしながら、そんな事で悪の組織が捕まえられるので在れば、苦労はしない。


 事実、組織を異界から運んだバスには傷が多く付いていた。


 つまりは、相手は別の【何か】を持っている事になる。


 それこそ、大幹部三人を向こうに回し、変身可能な戦闘員に博士、魔法少女に超人という全員を相手にするのは、良ですら不可能であった。


 それだけの大戦力を持っているのは、明らかだろう。

   

 にも関わらず、何故かこの世界の自分は敢えて良を怒らせる様なやり方を選んでいた。


『おい、どういうつもりだ?』


 怒りを胸に秘め、今は声を落ち着かせる。

 よくよく考えてみれば、複製品のリサの事もまた、同じく良を怒らせるやり方と言えた。

 

 ただ、それは心理的に相手を追い詰めるやり方ではあるが、戦略的には大いなる間違いを仕出かして居る。


 相手に勝つという事は、言葉道理に単純ではない。

 

 最高の勝ち方が在るとすれば、ソレは【最小の被害で最大の戦果を挙げる】という事にある。

 一切の無駄を出さず、資源を節約しつつ相手だけを一方的に疲弊させる。

 

 であれば、今の相手のやり方は戦略的に間違っている事になる。

 わざわざアナスタシアやリサの複製品用意するだけ、時間と資源の無駄に過ぎない。


 ただ、良を抑えつけたいなら、もっと効率的なやり方は幾らでもある。


『……ワザと俺が嫌がるやり方をしてやがるのか? どういうつもりだ?』


 相手の真意を探るのも、また戦い方である。

 がむしゃらに猪突猛進するだけが戦いでもない。


 其処で、相手の流儀に合わせて、敢えて良は自分のやり方を曲げていた。


 放たれた質問だが、返事が無い。

 

 無言という事は、全く意味が無いという訳でも無かった。


 返事を返さないという時点で、何らかの理由が考えられる。

 

 第一に、単純に答えたくない。 

 第二に、答えられない理由が在る。


『……そうかい。 まぁ、良いさ』


 そう言うと、良はチラリとアナスタシアの偽物を見る。


『云いたくないなら、聞き出してやるぜ』


 相手に如何なる理由が在るにせよ、それ自体は良とは無関係である。

 良からすれば、例え偽物とはいえ、アナスタシアと戦わされた事を怒っていた。


   *


 部屋の構造自体だが、がらんどうな箱に過ぎない。 

 見ようとすれば、隅から隅まで見渡せる。


 其処で、階段なり昇降機(エレベーター)の類を探す。


 しかしながら、それらしいモノは見当たらない。


『なんだよ……どうやって上へ行けってんだ?』


 調べはするが、無いモノは無い。

 ただ、ふと良が在る床に触れた所で、ソレが動いた。


 ゴクンと鈍い音と共に、床が下がる。


『……うおっと』


 慌てて乗るが、良を乗せた床の一部分は下と向かう。


『ほ……随分とまぁ、余計な仕掛けを拵えやがるぜ』


 そう言う良を乗せた床は、ただ、静かに下へと降りていった。


   *


 細工も装飾も無い其処を抜けると、見えるのは真っ暗闇。

 増幅すべき光が無ければ、如何に改造人間でも見通せない。


 ただ、空気から其処が広いとは体感として感じられた。


 程なく、昇降機だったモノは床と一体となる。

 其処で、良は両手を広げた。

 

『オッケー……次は何だ? それとも、もう出し物はお終いか?』


 そんな良の声に答える様に、部屋の床や天井が光り出す。

 そうして見えたのは、虎女であった。


『……アナスタシアの次は、カンナか』


 見える虎女だが、やはり姿形は同じでも、色は違う。

 素組みのガレージキットの如く、色が無かった。


『なぁ、もう良いだろ……そろそろ真意を明かしたらどうなんだ?』


 良からすれば、如何に偽物とはいえ戦いたくない。

 先程戦ったアナスタシアの複製品にせよ、倒れるまで戦うことを止めなかった。

 見える虎女にしても、同じ事が想像に難くない。


 良のうんざりといった声に、空気が揺れる。


~そっちこそ、どうやったら止めるんだ?~


『あぁ?』


~リサを殺して、アナスタシアも殺した。 まだ足りないのか?~


 相手が云わんとしている事は、良にも解らないではない。

 戦いを続けるという事は、いつかは仲間を失う可能性を否めなかった。


 今までが奇跡的だっただけ、というのが正しくは在る。


~なぁ、もう止めようぜ? これ以上、仲間の死ぬところが見たいのか?~


 問い掛けられた良が、今度は押し黙る。


 死ぬところが見たいのかと問われれば、見たい訳も無い。

 しかしながら【見たくない】と答えるならば、相手の意見を飲む事になる。


~お前が止めるって一言だけ云えば終わる事だろう?~

 

 そんな指摘は、強ち間違いでもない。

 良が止めると云えば、戦いは終わる。


 相手の軍門に下り、あの夢を受け入れるだけの事と言えた。


 そしてソレは、非常に魅力的に思えてしまう。

 戦いという非日常から離れて、夢物語に身を委ねる。


 だが、良はソレを選びたくなかった。

 

 止めるつもりならば、今までに幾度もその機会は在ったと言える。


 大首領との戦いの際に限らず、そもそも身体を改造された段階でも、それは出来た。

 自らを捨て、相手に委ねる。


 一見すると素晴らしい事に思えなくもない。

 自分を委ねるという事は、宗教に入信する様なモノである。

 

 神という絶対の存在の言葉を鵜呑みにし、それを盲信すれば良い。

 全ての是非も、良し悪しも、神が決めてくれる。


 だが、良は神を知らなかった。 また見た事もない。

 見えもせず、存在すら確かでないモノを信じる。

 

 そしてそもそも、その教義を書いたのは他でもない、他人である。


 何もかも打ち捨て、頭を空にして自分を捧げる。 それは良には出来ない相談であった。


 背中に【不撓不屈】を背負う以上、膝を折るのは死ぬ時と決めていた。


『そうかい、ま、だったら……止める訳にゃあ行かねーなぁ』


 落ちていた兜が、グンと持ち上がる。


『云ったろう? 彼奴等と会って、もし、彼奴等が夢の中に居たいってんなら、俺は止めないさ。 それこそ、自由なんだからな』

 

 この時、良は嘘を言っては居ない。

 もし仮に、組織の面々が【仮想現実に居たい】と望むならば、それを止めるつもりは無かった。


 その前に【どうしたいのか?】を聴きたい。

  

 だからこそ、良は自分の夢を捨ててまで此処まで来ていた。


 良の声に、部屋の空気が唸る様に揺れた。

 

~寝た子を起こすなって、云われたこと無いか?~


 問われた良は肩を竦める。


『さぁてね、生憎と子供を持った事は無いんでな』


~それだって叶うぜ? 夢の中だけどな~


 誘う声に、良はふと在ることを思い出す。


 ソレは、この世界に来る前の異界に居た自分。

 全く同じ筈なのに、少しだけ違いも在った。


 その違いは、餅田との接触である。 

 今のところ首領で在りながら、良は餅田の可能性全てを知っては居なかった。


 本人の剽軽さに加えて、如何にも巨大な餅といった見た目に翻弄されてか、細かい事には目がいっては居ない。


 そんな餅田から、身体を分け与えられた鬼神だが、良とは違う意見を呈していた。


 改造人間には必要無い筈の栄養を欲し、酒を飲み、それだけに留まらない。

 具体的に何をして居たのかを見ては居ない為に詳細は省かれていたが、側に居た女性と過ごした際に、端的に【良かった】とだけこぼしていた。

 

『……そっか、そういや、まだ試してなかったわ』

 

 ひょんな切欠から、まだ試して居ない可能性を良は見出す。 

 そして、その可能性を確かめるには、やるべき事は一つしかない。


『どうしても俺を止めたいんなら、やり方は知ってんだろ?』


 返答なのか、部屋全体から溜め息が響く。


~そうかい、なら、仕方ないわな~


 響く声を合図に、虎女の複製品は構えを取った。

 

 低く体勢を落とすなり、その場から駆け出す。

 その素早さだが、本物と見紛うばかりであった。


 上体を前へ前へと倒そうとすれば、普通は前のめりに倒れてしまう。

 だが、その落ちた上体が持ち上がる程の強く踏み出す事で、虎女は倒れず前に行ける。

 

 これが普通ならば、或いは良も圧倒されたかも知れないが、既に一度カンナとは対峙していた。


『よっしゃ来い!』


 力士の如く、腰を深く落とした構えにて、虎女の速度を受け止める。

 

 速度が速度だけに、虎女の体当たりは良の体を後ろへと下げるのだが、それだけに留まらない。


 相手を受け止めながらも、同時に相手の勢いを生かした持ち上げる。

 良が用いたのは、プロレスで云うところの【ブレーンバスター】だった。

 

 持ち上げる勢いそのままに、相手を地面へと叩き落とす通称【脳天砕き】である。


 マトモに決まれば、装甲の薄い虎女では耐えきれない。

 が、唐突に何かが横槍を良へと入れた。


『……んが!?』


 技の最中ともなれば、他の事に意識を裂く余裕は無い。

 横っ腹に一撃を受け思わず掴む手を緩めてしまった。


 スルリと抜け出し、着地を決める虎とは対照的に、転がる良。


『なんだ……いきな……り?』


 思わず、悪態を吐きそうになる良は言葉に詰まる。

 自分が投げを仕掛けた虎女とは別に、この場にはもう一つの虎が居た。

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