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世界征服、はじめました  作者: enforcer
嘘か真か、理想の世界!?
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嘘か真か、理想の世界!? その9


 本物ではないにせよ、リサの腕をもぎ取ってしまった。

 その事は、良を苦しめる。


 そんな悩む良のポケットから、着信音が響き渡った。


 急ぎ取り出すと、通話を繋げる。

 この世界に置いて、わざわざ電話を掛けてくる相手は一人しか思い付かない。


「おい、随分と汚い真似しやがるな?」

『云ったろう? 無理やりにだって止めるってな』

「だからってよ、こんな姑息な真似をすんのか? お前はホントに篠原良(オレ)か?」

 

 声こそ同じとは言え、実は相手は違うのではないかと探りを入れる。

 声を偽装するだけならば、そう難しい技術でもない。

 

 ましてや、遙か未来ともなれば、未知の技術が在っても不思議ではなかった。


『俺を疑うのはお前の勝手だが、別にだからといって俺は変わらんよ』


 聞こえてくる声は、正に自分のモノと相違ない。

 だが、違いを良は感じていた。

 

「いや、お前は変わったよ。 もしお前が本当に俺なら、こんな小汚い真似は絶対しねぇ」

 

 チラリと見てみれば、偽物のリサは事切れた様に横たわっていた。

 虚ろな目が、まるで本当に死んでしまったかの如く想わせる。


 しゃがみ込むと、空いている片手で、ソッと目蓋を下ろした。

 必要は無いかも知れないが、そうせずには居られない。


 立ち上がると、息を吸い込む。


「で? 何処に居やがる? とりあえず一発ぶん殴ってやるから居場所を教えろ」


 相手が自分だからこそ、許せない事もある。

 例え偽物で在ろうとも、リサを利用した事が許せなかった。


『なぁ、どうしてそんなに怒ってるんだ? ソレにしたって、3Dプリンターで大急ぎで造った奴だ。 もっと良いのが欲しけりゃ幾らでも造れるぞ』

 

 思わず、携帯端末を握り締める指に力が入る。

 握り潰してはいけないと慌てて緩めたが、良の手の中の端末は僅かに歪んでしまった。


「寝ぼけた事抜かしてんじゃあねぇよ。 俺が怒る理由ぐらい、お前なら解る筈だろう?」 


 本来ならば、仲間と合流してサッサとこの世界から去る筈だった。

 その筈が、今では新しい目的が生まれてしまっている。


『だから云ったろ? 本物のリサや、他の連中の為にも、お前を止めるってな。 第一、お前は壊さずに済んだ筈だぞ? 大人しく捕まってくれれば良いのに、それを壊したのは他でもないお前だ』


 云われたことに、良は奥歯が軋むほどに強く噛む。

 口だけでなく、目も強く閉じていた。


 だが、いつまでもそうはして居られない。


「……何処に居る? サッサと言えよ」

『そんなに会いたいか? 良いさ、俺も喧嘩は嫌いじゃない』


 此方の世界の良が何かしたのか、あの乗り物が良の近くへと止まった。

 

『乗れよ、それとも歩いて来るか?』


 誘う声に、良は臆せず乗り物へと乗り込んだ。

 どの道、居所が解らないのだ。


「今から行くぜ? 首洗って待ってろ」

『あぁ、楽しみにしてるさ』


 通話を切るなり、乗り物へと乗り込む。

 ドアすら無いのだから、飛び乗るのは難しくはない。


 椅子に腰掛けるなり、ガンと腕を組む。

 程なく、乗り物は何も云わずとも走り始めた。


 平屋から遠ざかる乗り物。 其処でふと、女が顔を覗かせる。


「友よ……私は……どうすべきなんだろうね」

  

 その声は、果たして誰に向けてのモノか、女にしか解らない。


   *


 良を乗せた車と呼ぶには貧相なソレは、一路何処かへと向かって走る。

 今度は独りの為に、何処へ向かうのかは聞けなかった。

 

 無論、電話をすれば答えては貰えるかも知れないが、其処は意地が先に立つ。


 加えて、良を悩ませるのは自分の言葉だった。


【喧嘩したけりゃ独りでやれ】という事は、間違い無い。

 

 装置を動かすだけならば、良が独りでバスに乗れば動かせる。

 寧ろ、バスから外して直接持てば、それこそ独りでも移動は可能だろう。

 

 にも関わらず、良は敢えて自分の誘いに乗っていた。  

 

 コレが選択として正しいかと問われれば、答えるのは難しい。

 だが、例え間違って居たとしても、良は自分を信じた。


 何が正解なのか、ソレは後でなければ解らない。


 今はただ、他の誰でもなく、自分の選択の結果を待っていた。


   *


 かれこれ数時間は乗り物に揺られる。

 速度計も無いが、身体に当たる風の強さで、なんとなく速度は察する事は出来た。


 其処で解るのは、かなりの距離を移動したという事だろう。

 

 無論、その間の飲み食いトイレ休憩は改造人間には必要無い。

 ただ難点を云うならば、暇であった。


「……どうせなら、飛行機とかにしてくれよ」

 

 思わず、そんな事を口走る。

 他人が居ない以上、渋滞に悩まされるという事は無いが、見るべきモノは多くない。


 風光明媚と言えば聞こえは良いが、途中で見えるのは異様な光景。


 元々は人が住んでいたで在ろう街。

 それらは、大型の機械が壊して、小型の機械が片付けを担う。


 途中で休むことも無く、皆が黙々と片付けを行っていた。

 

 其処から解るのは、機械達は人が居たという痕跡を消している様であった。

 ただ、残されて居るモノも在る。


 ソレは、墓だ。 


 何故かは知らないが、墓石というモノだけは綺麗に残されている。

 その理由は、良にも直ぐに解った。


 人が造ったモノで、後世まで残るのは石だけである。


 遙か数万年前の建造物ですら、石ならば残せる。

 だからこそ、墓石だけは残されていた。


 チラリとそういったモノを横目で見ながら、更に良は何処かへと連れられる。


 数百キロは移動したからか、違いも見えた。


 少しずつだが、何かが増え始めているのだ。

 専らは倉庫らしい建物だが、中身までは見通せない。


 運転席の無いトラックや、どうやって居るのかは知らないが浮かぶ機械が其処へと入って行っては出て行く。 


 それでも、やはり誰も居ない。  在るのは無骨な機械達だけ。


「猿の惑星ならぬ……機械の惑星ってな……ホントに、誰も居ないんだ」


 そう言う良の目に、何かが見える。

 

「……ん?」


 手でひさしを作り、目を凝らせば、在るモノが見えてくる。

 ソレは、いままでは無かったが大きなビルの様な建造物。


 デザインこそ洗練されては居らず、それはまるで、大きな墓石にも見えた。


「ドでけぇ墓だぜ」


 周り目立つモノが無い以上、それは余計に目立つ。

 例えるならば、ある種の記念碑モニュメントにも見えなくもない。

 

 其処で良が想像するのは【人類という種の墓】という事が頭に浮かんだ。

  

 遠かった建造物に近付いた所で、乗り物は止まる。


 言葉は無いが【此処から先は自分で行け】と云われた気がした。

 

「……はいはいっと」


 操作方法が解らないのだから、いつまでも乗っては居られない。

 降りるなり、良は乗り物の軽くポンと叩いた。


「悪いな、手間掛けさせた」


 乗り物に労いを贈ると言うのも奇妙だが、そうせずには居られない。

 何故なら、この場に置いて良が知っているのは乗り物だけである。 


 動く事を止めた車から離れ、良は独り歩く。

 距離にすれば、そう遠くはなかった。


   *


 墓石そっくりの建造物に近付いた所で、良は在るモノを見つける。

 ソレは、次元移送機にして、悪の組織の改造バス。


 期待を込めて近寄るが、やはり誰も乗っては居ない。


 それだけでなく、車体の彼方此方に傷が窺える。

 何かが激しくぶつかったのか、凹み在れば、擦った様な傷。

 

 異界にて付いた傷も在るかも知れないが、真新しい傷も多い。


 其処から解るのは、自分が見ていない間に、何かが在ったという事だけである。


「どうなってんだよ……」


 バスを確かめながら、思う事もある。

 

 果たして、自分を除いた悪の組織は弱いのか、と。

 実はそんな事は無く、首領である良は戦力とも言えるが、他の仲間達も決して弱い訳ではない。


 博士を筆頭に、戦闘員達も決して使い捨てではなく、重要な戦力である。


 加えて、大幹部の二人は良に引けを取らない改造人間。


 更には剣豪の壮年に、川村愛という魔法少女までもが組織には居る。


 そんな全員を、如何にして捕らえたのか。


 此処で問題なのは、もしもこの世界の良が本気ならば、自分はマトモに相手に成るのか、という点にあった。


 喧嘩をするとは云っても、何も真っ向から一対一でする理由など無い。

 単に良を捕まえたければ、大量の戦力を出せば良いのだ。


 篠原良が如何に改造人間とは言え、決して無敵ではない。

 今までにせよ、良は仲間の助けが在ったからこそ戦えた。


 自分独りだけで戦い抜いた事は無い。


 それが、今では独りで戦う事になる。 不安が無いと言えば、嘘であった。


 悩む良のポケットから、着信音が響く。 依然と同じく、通話を繋げる。


「……よう、来てやったぜ?」

『あぁ、知ってる。 そんな事よりも、だ……其処に在るだろ?』


 具体的に何が在る、とは言われずとも、意味は伝わる。

 

「おう、ぶっ壊れてないかヒヤヒヤしたぜ」

『多少は多目に見てくれよ。 皆を回収するのに、少し手間取ったんだ。 なんだかんだって、皆素直じゃないからな』

 

 やはり、組織の面々とは一悶着が在ったのだろう。

 だが、それは今気にしている時ではない。


「で? 何処に居るんだ?」

『焦るなよ。 今、迎えをやった』

「……迎え?」

 

 云われた事に、辺りを見渡す。


「ん?」


 迎えを寄越すとは云われたが、現れたのは、平屋にて別れた筈の女である。


「あ、れ、なんで」


 数時間は掛かった筈なのに、いつの間にか女は此処に居た。

 困惑する良に、苦笑いが向けられる。


「友よ。 忘れたか? この体は外部の端末に過ぎないと」

「ああまぁ、そういや、思い出したよ」


 以前の事を、良は思い出す。


「あんたは、俺の守護天使ガーディアンエンジェルって云ってたっけな」


 ポンと出された良の言葉に、女は目を丸くする。

 機械という割には、人間臭い反応であった。


「……憶えていて、くれたのか?」

「そりゃあな、恩人の事は忘れてないさ」

 

 気楽に言う良だが、それに対する反応は微妙である。

 深く思い悩む様な顔を女は浮かべていた。

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