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世界征服、はじめました  作者: enforcer
嘘か真か、理想の世界!?
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嘘か真か、理想の世界!? その2


 三人寄らば姦しいとも云う。 では四人も集まればどうなるか。

 一見する分には騒がしくもあるが、良に取っては居心地は悪くなかった。


 しかし、何かがおかしい事には気付いてもいる。

 

 常識的に考えれば、奇妙な点が多過ぎであった。

 

 三姉妹の年齢構成に、若過ぎる母親。

 仮にカンナを二十程度とすれば、アナスタシアは彼女を何歳で身ごもったかを疑いたくなる。


 ただ、だからどうしたという考えも頭には浮かんだ。

 せっかくの朝食を、つまらない考えで無駄にすべきではない、と。


「……うま」


 ズズっと味噌汁を一口含んだ所で、良は思わず口からそんな声が漏れた。


 そんな息子の感想が聞こえたからか、母はフフンと笑う。


「当然だろう。 良もそこそこ料理をするが、私には及ばん」

「まぁ、ね……そら母さんには……」


 軽く笑いつつ、アナスタシアへ賛辞を贈る。

 コレだけを見れば、大したことでは無いのだろう。


 それでも、違和感が拭いきれない。

  

 難しい顔を見せる良を見てか、カンナが母親へと顔を向けた。


「なぁんかさ、良ちゃんの調子悪いみたい」


 義理とはいえ、兄をちゃん付けで呼ぶ事から、カンナの性格を表していた。

 長女の声に、アナスタシアはウームと唸る。


「そうか、ならば仕方ない。 今日の買い物は…」

「あ、私が、看病しとくよ」


 母親の言葉を遮る様に、カンナは自分の行動を決めてしまう、

 そうなると、妹達も目に見えて色めき立った。


「は? いやいやいや、看病なら私でも良いじゃん」

「そうですよ、別にカンナ姉さんじゃくても」


 愛とリサの妹二人からの声だが、カンナは動じない。

 テーブルに頬杖つくと、流し目で妹二人を見渡した。


「だぁめ……だってあたし、バイトとかで疲れてんだもん。 それにホラ、働かざる者、喰うべからず……ってね」


 勝ち誇った様な姉の声にリサと愛がグヌヌと唸った。

 三姉妹の何とも言えない光景に、良はフゥと息を吐いていた。


   *


「疲れたんでしょ? 寝とけば?」


 そんなカンナの声に、良は自室にてベッドに横に成っていた。

 買い物やら何やらの雑用に関しては、母親と妹二人の担当。


 別に疲れては居ないのだが、良は天井を見ていた。

 見慣れている筈なのに、そう感じられない。


 その理由を考えていた所で、ガチャンと部屋のドアが開けられた。


「おん?」


 すわ何事かと目を向ければ、合図ノックもせずに入って来るカンナ。

 性格故か、それとも別の理由か。

 彼女は良を見るなり、ツっと小さく舌を打った。


「なあんだ、寝てて云っといたのにぃ」


 私服は派手なカンナだが、家に居る時は無造作(ラフ)な格好である。

 ティーシャツにジャージと、頓着が無いのが窺える。


「あー、なんか用か?」


 作法の無さを咎めたくも成るが、一応彼女は【看病役】という事も在る。

 良が問い掛けると、カンナは鼻でムフフと笑った。

 

「えー? あー、ほら、お熱計ってみようとか」


 本来、病人の体温を計るのであれば、然るべき物を用いる。

 その筈が、カンナは手ぶらであった。


 猫を想わせる足取りにて、良のベッドへと近寄ると、ストンと座る。


「さてさて、それじゃあ、体温計りましょうね~」


 似非看護士といった口調のカンナに、良は戸惑う。

 彼女の動きだが、ソッと猫が飼い主に寄る様に近付くと、手を良の額へと当てた。


 元々の体温が高いのか、ほのかに暖かい。


「ふぅん? 熱は……無いみたい」

「いや、そらそうだろ」

「まぁまぁ、そのままそのまま」


 自分は健康である示そうとする良の横へ、カンナはゴロンと寝てしまう。

 それだけでなく、グイグイと身を寄せてくる。

 

 その様は、正に猫を想わせた。

 

「な、なんだよ」


 慌てる良に、カンナはジッと目を向けてくる。


「あのさぁ、なんか想わないわけ?」

「なんかってなんだ」


 良の認識からすれば、兄妹をどう思うかと問われれば、家族と答えるだろう。


 時々ながら、リサや愛までも勝手に布団に潜り込んで来る事も在りはした。

 冬場など、もはや日常茶飯事であり、幼い妹に困らせられている。

 

 だが、歳が近いカンナと成ると少し事情は違う。

  

 家族とは言え、実際に血の繋がりは無い。

 つまりは、兄妹と云うよりも、男女を意識してしまう。


 チラリと見てみれば、今のカンナは実に目のやり場に困る。

 カンナがうつ伏せ寝の状態に加えて、良は見下ろす形。


 あからさまに強調される胸の谷間に、うっすら光を反射する唇。

 端的に、非常に魅力的に見えた。


「気付いてないかもだけどさ、チラチラ見てたでしょ?」


 指摘され、慌てて顔を逸らす良に、カンナはムフフと鼻で笑った。


「良いんだよ、ワザとやってんだから」 

 

 確信犯である事を隠さずにそう言うと、カンナは動く。

 寝ている相手へ乗っかるのは難しい事ではない。

 

 良が避ける間も無く、義理の妹は良の上で乗ってしまった。


 寄り添うどころの話でなく、密着ともなれば益々感じるのは相手の感触。

 細身でありながら、適度に柔らかい。


「おい、カンナ」

「んん? なに?」

「いや、なにじゃなくてだな」

「なんだよぅ」


 猫は飼い主に甘える際、近寄って身体を擦り付ける。

 カンナもまた、そうした。 そうなると良にしても堪らない。


 何せ自分の上に乗った彼女がグイグイと身体を押し付けて来る。

 柔らかいモノが形を変える感触など、もはや理性を失い掛ける程だ。


 いっそのこと、道徳心だのなんだのを放り捨てて欲望に全てを任せたい。

 事実として、良の両腕はピクピクと蠢いていた。


 頑なに兄妹で在ろうとする良に、カンナはムッと唸ると頬を膨らませる。

 一見怒っている様にも見えるが、眉はハの字を描く。


「あのさぁ、女の子が此処までしてんだよ?」 


 流石に不満が限界を迎えたのか、もはやカンナは自分の要求を隠さない。

 それを受けてか、良の腕は彼女を抱き締めた。


「みゃ!?」


 流石に驚いたのか、カンナも声を少しだけ漏らした。


 ただ、良にしてもいきなり臀部を鷲掴むなどという暴挙は犯さない。

 背中と頭を、ソッと抑える様にする。


 そうしながら、良の手がカンナを宥める様に撫でていた。

 すると、僅かだが身体が震えるのが伝わる。


 先ほどまでとは打って変わって、カンナはフゥと悩ましい息を吐いて体の力を抜いて良へ自分を預けてしまった。


 こうなると、少し大きい猫の様なモノと言えなくもない。 


 時節は春であり、春眠暁を覚えずの言葉通り、寒過ぎず暑くもなかった。

 背中を撫でながら、良の指が虎の毛を想わせる髪を梳いた。


「なんか、凄く良いかも……このまんま寝ちゃいそう」


 惚けた様にそう言う妹の頭を、良の手がまた撫でる。

 気持ち良さげに鼻を唸らせるが、カンナは口を開く。


「ね、聞いても良い?」

「ん?」   

「今更解ってると想うんだけど、愛とリサもさ、良ちゃん狙ってんだよ?」


 言わずもがな、である。


 そもそも幼児か小学校低学年ならばともかくも、それなりの年齢である二人が、果たして兄の布団に潜り込んで来るのか。


 それは、少し考えれば答えを出すのは難しい事ではない。

 無論の事、二人は【寒かった】もしくは【寝ぼけて居て】という言い訳をしている。


 だが、相手を意識しているのでなければ、行動の理由の説明に成っていない。


「……良ってさ、誰が好きなの?」


 問われれば、実に答え辛い。

 仮に良が誰かを好きに成るのかと問われれば、在る意味自然な事である。


 一つ屋根の下で、男女が長く居れば、互いに意識し会うのは自然な反応と言えた。


 答えない良に変わって、カンナは息を吸う。


「お母さんだってさ、あたし達の前じゃカッコ付けてるけどぉ、実際意識しちゃってるのバレバレなんだよね」


 義理の母親ですら、良を意識している事を長女はバラしてしまう。


「カンナは、口が軽いなぁ……」

「べっつにぃ、あんなんで隠してるとか……ね」


 そう言うと、カンナは目を閉じた。


「でもね、あたし、別に良いと思うんだよ」

「何をだ?」

「だからさ、皆で、仲良しってのも……」


 一旦言葉を区切ると、カンナは身体を動かす。

 寝心地の良い体勢を求めて居るのだろう。


 暫くはもぞもぞと動いていたが、気に入ったモノを見つけ出したのか落ち着く。


「……ライオンだってさ、雌をいっぱい侍らせるでしょ? 良いよ、別にあたしは」 


 カンナは良に対して、自分の家族と関係を結んでも構わないとすら言ってのける。

 それは果たして本音なのか、冗談なのか、良には解らない。


 とは言え、それは在る意味では魅力的な事に思えてしまう。


 但し、そう考えた所で、良は在ることに気付いた。

 とてもではないが、現実とは思えそうもない。


 何故に此処まで、世界が自分に取って都合が良いのか。

 その理由は何なのか。


 そう考えた時、見てみれば、カンナの顔が直ぐ近くに在った。


「お、おぃ……」

 

 何を云う前に、カンナが良の頭を抱える様に抱いてしまう。

 暫くの間、兄妹の間に会話が途切れた。


 スッと離される唇だが、感触の名残は鮮明である。


「まぁ、別に良いとは云ったけどぉ、やっぱりさ、一番って在るじゃない?」


 そう言うと、カンナの指先が良の唇を撫でた。


「皆には悪いけど、あたしが最初だから……」


 接吻(キス)にて、火が入ったのかカンナの体温が上がっていた。

 それは、他でもない密着している良だからこそ解ってしまう。


 このまま、兄妹の間で何かが起ころうとしていた。

 そんな時、ドカンとドアが開かれる。


「あー!? 居ないと思ったら! やっぱり此処に居た!」


 絶叫寸前とも取れる声を張り上げるのは、妹の愛。

 そんな彼女を押し退け、母親が顔を見せる。


「貴っ様!? この泥棒猫! おかしいとは思ったが、やはりか痴れ者が!?」


 果たして、アナスタシアの言葉は娘に向けるモノとして正しいのかは定かではない。

 ついでとばかりに、リサもちゃっかり顔を見せていた。


「カンナ姉さんの裏切り者……」


 妹二人と母親に、長女は露骨に舌打ちを漏らす。


「まぁったくもう……いい雰囲気だったのにぃ」


 姦しいを通り越す四人に、良は何かを感じた。

 見たことが無い筈なのに、懐かしい。


 其処で、良は引っ掛かりが在ることに気付いた。

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