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世界征服、はじめました  作者: enforcer
戦慄の作戦! 地球からの追放!?
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戦慄の作戦! 地球からの追放!? その30


「どういう事だ……コレは?」


 信じられない光景に、軍団の指揮を任せられた少年は呟く。

 魔人を倒す為に、国中から集められた勇者達だったが、まるで歯が立たない。  


 それどころか、戦い以前に大人も子供の喧嘩以上の差が在る。

 目を剥く少年の隣では、やはり副官の女騎士が、馬上で体を震わす。


「……信じられない……伝説の通りなんて」


 書物を読み漁った彼女だからこそ、解ることも在る。

 過去の誰かが書いたであろう伝説の数々。


 誇張されたモノや脚色されたモノも多かったが、一つの共通点は在った。


 それは【シノハラリョウは英雄を喰らう怪物である】という点である。

 

 にも関わらず、文書には【魔人は倒れた】という記述は残されていた。


 大いなる矛盾なのだが、過去の伝記やお話には、どれ一つとして【如何にして倒した?】という記述は無い。


 つまりは、少年と女騎士の目の前で、伝説が繰り返されて居た。


   *


 一国すら滅ぼせる程の力を持っていた筈の軍団は、もはや見る影もない。

 次から次へと打ち倒されてしまい、立っている方が少なかった。 


「こんな馬鹿な」 


 勝てると踏んだからこそ、誰もが参戦した。

 その先に在る栄光を掴めると信じて。

 

 だが、いざ蓋を開けてみれば結果はまるで逆でしかない。

 魔人二人が率いる黒装束と戦闘員にしても、並みの兵卒とは違った。


 中でも際立って目立つのは、モンハナシャコと虎である。

 数居る英雄や勇者を歯牙にも掛けないどころの話ではなく、虫でも払うかの如く散らされる。


 余りの光景に、目を奪われる戦士の耳に、足音が響いた。


『……馬鹿はテメェ等だ』


 困惑する戦士に、魔人の一人が声を掛けた。


『インチキな力なんぞに頼ってるからそうなんだよ。 薄皮一枚引っ剥がせば、ただの雑兵の寄せ集めだろうが』


 嘲笑う良だが、その姿は正しく伝説の魔人に相違ない。

 そんな魔人の背中へ、誰かがぶち当たる。

 

 僅かだが、魔人の身体が揺れた。


 話している隙に、背後から戦士の連れが襲い掛かったのだ。


「やったか!?」


 勝ちを確信する戦士だが、魔人は倒れない。

 それどころか、くるりと振り返った。


『おいコラ、背中から刺すとか、それが英雄様のやり方か?』


 刺された割には、痛がるどころな歯牙にも掛けて居ない。

 事実、岩すら突き通す筈の名剣は、良に触れた時点で単なる(ナマクラ)と化していた。


 欠けた刃先を見て、信じられないといった顔で浮かべるのは、女である。


 脅えた顔に、魔人の兜からは舌打ちが漏れた。   

 腕を伸ばして、襲って来た相手を引き寄せる


『女に手ぇ上げるのは、俺の主義じゃねぇ……だが』


 そう言うと、頭を後ろへと引き、腹筋の勢いを足して相手の兜へと自分の額をぶつけた。

 単純な頭突きながら、その威力は恐ろしいモノがある。


 実際、魔人の一撃を食らったら女は白目を剥いて居た。


『……頭なら良いだろ? 手じゃないからな』 


 戦いに参加した以上、相手にも覚悟は在るモノと良は決めていた。


【殺そうとするのだからこそ、殺されても文句は言わない】と。


 手を離せば、女は糸が切れた人形の如く地面に倒れる。

 また一人を倒した魔人は、クルッと振り向いた。


『おう、悪かったな……ちょっと待たせちまったみたいでよ』


 兜から漏れ出る二つの目らしき部分が僅かに赤く煌めく。

 体格こそ大きくはないが、それでも戦士を射竦めるのは十分であった。


『どうしたんだ英雄(ヒーロー)? 悪の大魔王は目の前だぜ?』


 兜から吐き出される言葉に間違いは無い。

 伝説そのままの怪物が、戦士の前に立っていた。


 その大きさ自体は伝説通りではなく、寧ろ人間と大差は無い。

 

 だが、何を差し置いて恐ろしいのは、今まで培った何もかもが通じ無い事にある。

 

 目にも止まらない高速の剣技、岩すら寸断する剛の剣。

 それらは、幾多の魔物を打ち倒した。


 その筈が、魔人には一切合切が意味が無い。

 手も足も出なければ、何をして良いのかすら解らなく成る。


『おい、ブルってる場合か? 勇者らしく最期まで戦えよ。 ラスボス戦に逃走なんて許されねぇだろ?』


 テレビゲームという概念を、相手が理解して居るのかを良は考慮して居ない。

 

 言い方を変えるので在れば【相手を逃がす気は無い】であった。


 百戦錬磨の戦士だったが、冷や汗が滴り落ち、歯の根は合わない。

 そんな戦士の顔に、装甲に包まれた拳が打ち込まれた。


   *


 バタバタと倒れていく軍団は、もはや指で数えられる。

 そんな中、外套マントを揺らめかす鬼神が、相手の最後尾へと辿り着いて居た。


 混乱の最中でも背中の【不殺不敗】の四文字は鮮やかに映える。


 指揮官を護る筈の兵は、もう居ない。

 

『よう、馬から降りろ。 ソイツ等には関係は無い』


 鬼神からすれば、用が在るのは喧嘩を売って来た者だけである。

 乗り物代わりに使われているだけの馬に手を出すつもりは無かった。


 指揮官の少年は、思わず唾を飲み込む。

 今ならまだ、急ぎ逃げ出せば逃げ切れるのではないかと思えた。


 鬼神に関して言えば、其処まで動きは速くはない。

 目で追えない程の速さで動くのであればともかく、走る速度は自ずと解る。


 少年がグッと手綱を握り締めた所で、鬼神の顔を顔を覆う兜から見える光が窄まった。


『おい、まさか……仲間見捨てて逃げ出そうなんて思ってねぇよな?』


 図星であるからか、指揮官の体がブルッと震えるのが見て取れた。


『一応は殺すなって言いつけて在るからな。 死んじゃ居ない筈だぜ』


 実際、鬼神と首領が率いる者達は誰一人として相手を殺しては居なかった。

 多少の手傷を負った者は否めないが、それでも致命傷ではないのは、圧倒的な戦力の差を示している。


 指揮官の少年と護衛の騎士に出来るのは、戦うのか逃げるかの選択だけだった。


「逃げよ、カタリナさん」


 もはや上品ぶったり、騎士道を説いている時ではない。

 自分を大事に思うのならば、少年の声は寧ろ当たり前のモノだった。


 対して、名を呼ばれた騎士だが、既に意識の半分は失せていた。


 戦う事も忘れ、逃げる事すら浮かばない。

 

 どうにも成らない圧倒的な恐怖に曝され、ただ何も考えられず、動けない。

 言葉にするのであれば【死に体】であった。


「……ひゃ!?」

 

 唐突に、女騎士が声を上げる。

 隣の指揮官である少年が、女が跨がる馬の尻を蹴ったのだ。


 馬からすれば、誰の指示であるかは関係が無い。

 外部からの衝撃に、身体は自然と反応してしまう。


 立ち上がった馬から、騎士が落ちる。

 握り締めるべき手綱を緩めていたのだ。


 地面があっという間に近付く中、女騎士は目を閉じ頭を庇う。


 だが、来る筈の衝撃が無い。

 恐る恐る目を開けて見れば、女の鎧を魔人が掴まえていた。


『よぅ、また会ったな?』


 同じ様で在りながら、声を掛けてくる魔人には違いが在る。

 一番分かり易い違いは、外套の有無であった。


「どうして……」

『あ?』

「どうして、私を助ける?」

 

 弱々しい声に、兜から漏れ出る光の片方が窄まる。

 それは、片方の眉だけを動かして居るようにも見えた。


『さぁてね、見捨てられて可哀想だからかな』


 そう言うと、良は在る方を示す。

 手を放された騎士が慌てて見てみれば、在るものが見えた。


 自分を見捨てて一目散に逃げ出す救国の英雄の後ろ姿と、それを猛然と走って追い掛ける魔人が纏う赤い外套の揺らめき。


 そんな光景に、騎士は何もかも忘れて見入っていた。


   *


 全速力で走る馬に果たして人間が追い付けるのか。

 無論の事、普通の人間では死ぬ気で走った所で追い付ける筈もない。


 ただ、指揮官を追うのはただの人間ではなかった。

 

 かつて別の世界では悪の組織の首領で在りながら、異界に置いては魔王とも称される者である。

 

 必死に馬を駆る少年は、慌てて後ろを振り向いた。

 副官を囮として放り出してしまったが、その結果が目に映る。


「……嘘だ」


 重い筈の鎧を身に纏いながらも、馬に劣らない速度にて追い付いてくる魔人。

 

『こんの……くそったれがぁ!! 待てコラァアアア!!』

 

 走る速度を落とすことなく、寧ろそれを生かして魔人が地面を蹴った。

 宙空にて膝を縮める。


『……ィダァ……キィック!!』


 一瞬、魔人の足の裏が見えたと思った所で、少年の意識は失せた。


  *


 気絶して居たのか、少年はピシャリと頬を叩かれる感触にハッと成る。

 

「……痛」


 顔面から背中に掛けて走る痛みが、一気に意識をハッキリとさせた。

 痛みに呻きつつ、目を開けて見れば、見えるのは異形の魔人。


『よう、坊や? お目覚めかな?』


 逃げ出そうにも、何処かを痛めたのか少年の体は主の云うことを聞いてくれない。 


『女を囮にした隙に逃げ出すなんざ……男のやる事かよ? コレが英雄様のレディーファーストってか?』


 おちょくる声に、少年は呻く。

 

「どうやって」

『あ?』

「こんな化け物、どうやって倒せっていうんだ」


 何かを問う様な少年の声に、鬼神は鼻で笑った。


『あー、昔の連中が俺様をどうやって倒したかってか?』

「あぁ、どうせなら、死ぬ前に教えてくれないかな?」


 間際の願いといった声に、鬼神はスッとしゃがみ込んだ。


『簡単だよ。 昔々、すっげー間抜けが居てな、幼い亜人の女の子が、炭坑に閉じこめられて、ソイツは居ても立っても居らんなかったんだよ。 でだ、その間抜けがノコノコと炭坑に入った所で……炭坑ごとぶっ飛ばしたのさ』

 

 魔人が直接語ったのは【如何にして先人達が魔王を倒したのか?】という問いへの答えであった。

 誰が見ても、罠である事は明白であり、そんな場所へ入っていく方がどうかしている。

 にも関わらず、魔人は其処へと入って行ったというのが、伝説の顛末であった。


 如何に異能を消しされる魔人でも、炭坑丸ごとで潰されてはどうにも成らない。

 

 実に単純では在るが、最も効果的かつ安上がりな作戦と言えた。


「そんな、事で?」

『ひでぇ話だよな? 流石にあん時は俺も駄目かと想ったぜ。 なんせ、外に出た時には腕が一本無かったからな』


 軽く笑う魔人に、少年は何も言えなかった。


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