表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界征服、はじめました  作者: enforcer
戦慄の作戦! 地球からの追放!?
45/145

戦慄の作戦! 地球からの追放!? その29


 夜が明け、日が昇る。

 

 里から離れた場所では、奇妙な光景が在った。

 それは、並び立つ二人の篠原良である。


 単に棒立ちではなく、それぞれに腕を組んで足は肩幅。

 これから来るであろう軍勢の方角を仁王立ちにて睨んでいた。


「なんつーかな……昨日は、お楽しみでした?」

「ビッグなお世話だぜ。 そっちなんか何人侍らせて居やがんだよ」


 軽い世間話にて、二人の良は肩の力を抜いた。


「まぁ、それはさて置き……さぁて……そろそろかな」

「そうだな、見えると思う」

  

 そう言う二人の良の目に、遠くから向かってくる一団が見えた。


「お、来たみたいだぜ」

「あぁ、なんつーか、派手だな」


 この場に置いて、良は仲間に後ろに引っ込んでいる様に言いつけて在った。

 無論、ソレについては苦言も在ったが【お願い】をして居る。


「なぁ、やり方……忘れてないよな?」

「おいおい、若僧の癖に、誰に聴いてんだよ」


 同じ人物だからこそ、通る会話である。


「さぁて……」「……そんじゃま」


 お互いに声を掛け合うと、二人の篠原良は同時に構えを取った。


「「変……身」」


 決して叫ぶ事はないが、力強い言葉でそれを宣言する。

 瞬く間に、二人の良は姿を変えた。


 現れるのは全く同じ鎧ではあるが、違いも在る。

 鬼神と呼ばれた良は、風に揺らめく外套マントを纏っていた。


 揺られてなお目立つのは【不殺不敗】の染め抜かれた四文字。


 片方の良が、チラリと横を見る。


『ソレ……良いよな?』

『あん? あぁ、格好いいだろ?』


 同じ人物だからこそ、価値観や考え方もやはり似ていた。

 戦いの直前という割には、実に飄々とした良達である。


 開けた場所に敢えて立っていたからか、遠くからでも見つかってしまう。

 寧ろ、わざと自分達を発見させる為にそうしていた。


 通常の軍隊とは違い、色とりどりの大勢と対峙する。


 だが、特に怯えるでもなく、良達は揃って肩を竦めていた。


『よくもまぁ、あんだけ暇人が居るもんだ』 


 良にしてみれば、集まった連中の気が知れない。

 果たして何の為に戦争の準備までして遙々遠くの地まで足を向けるのか。

 

 そんな自分の疑問に、鬼神は兜を揺する。


『さぁなぁ、長いことコッチに居るが、未だに解らんね。 暇さえ在りゃ、他人をぶっ殺してあれやこれやを奪うぐらいしかやることが無いんだろ』


 大魔王と称される鬼神だが、長い間を過ごす内に様々なモノを見ては居た。

 その際に解ったのは【時代が移ろうと、例え世界が違っても、人がやることは全て同じ】という事だけである。


『流石は勇者様って奴だ。 世界を救ってくださる英雄ってな』

『いつだって弱い者虐めしか出来ない連中だよ。 自分達より弱い相手としか戦わない』


 軽口を叩く良達に向かって、一団が動き始めた。

 ある程度の数が集まれば、それは壮観ではある。


『よっしゃ』

『アレやるか』


 互いに声を掛け合うと、良達はそれぞれに右腕と左腕を伸ばす。

 どちらが合図するでもなく、拳を打ち合わせる。

  

 すると、それを受けて良達の胸の奥に仕込まれた装置が動いた。

 不可視の波が起こるが、それは互いに共鳴し、一気に広がる。

 

 次の瞬間、軍勢に異変が起こっていた。


   *


 先ずはとばかりに大仰な武器を携えて居た者達が転がる。


「ぎゃ!?」「……重い!?」


 背中に背負って居たならば重さに耐えかねて仰向けに転がるか、もしくはその重さに地面に顔から突っ伏して動かなくなる。


 手に持って居たならば支えきれずに落としてしまう。

 身体に合わない武器は、ただのガラクタへと変わった。


 変化はそれだけに留まらない。

 重い鎧を身に着けた者など、その場で膝を着いて動かなくなってしまう。


「ひゃ!! 落ちる!?」


 謎の力にて、フワリと宙空に身体を浮かせて居た者は、即座に地面に落下する。

  

 他の者達にしても、自身の変化に戸惑って居た。

 魔法を使おうとしても、何も起こらない。


「なに!? どうなってんの!!」

「どうして!! こんなに祈ってるのに!?」

 

 ブンブンと自慢の杖を振っても、必死に詠唱しようとも、全身全霊にて神に祈りを捧げても、やはりなにも起こらない。


 この場に置いて、在る筈の【奇跡】や【異能】は全てが消え失せていた。


  *


 ワァワァと慌てふためく一団に、鬼神は片手を挙げる。

 ソレを合図に、隠れていた黒装束達が一斉に姿を見せた。


『さてさてとだ……野郎共! 喧嘩の時間だ!!』 

  

 吠える様に大声を上げる鬼神。

 敢えて【戦争】と形容しないのは、背中に背負う文字の為である。

 

【不殺】という文字を掲げる以上、悪戯に武器を振り回す事を好まない。

 そして【不敗】という文字を背負う以上、逃げ出す事などしない。


『勇者様ってのが、どんだけ喧嘩が強いのか……お手合わせ願おうぜ』

 

 そう言うと、鬼神は地面を蹴って駆け出す。 誰よりも速く先人を切る為に。


『おっと……先越されちゃ上手くねぇ……』


 慌てて駆け出す良の姿に、やはり悪の組織が姿を現す。


 先駆けて前に出たのは、女幹部と虎女。


「総員! 突貫せよ!」


 攻撃開始の合図を出しながら、女幹部は本来の姿であるモンハナシャコへと姿を変える。

 

「一応は殺すなよ! 但し、腕や足の一本二本は構うな!」


 亜人と共闘する以上、虎女は相手の流儀に敬意を払った。

 彼女もまた、姿を変えながら戦列へと加わる。


 亜人と悪の組織は、揃って声を張り上げていた。


   *


 悪の大魔王を倒すべく、集まった筈の軍勢だが、最初の志気は既に無い。

 何故ならば、異能チートの力を持って相手を制して来たのだ。


 様々な種類の能力スキルや、普通では有り得ない道具の数々。


 如何に絶大な力で在っても、振るえないのでは意味が無い。

 

 押し寄せる敵に、集まった筈の勇者達は初めて脅えた。

 相手が押し寄せるまでに時間はもう無い。


 この場にて決められるのは、三つ。

【逃げ出す】か【戦う】か【降伏する】か、である。


 逃げ出す事を選ぶのは無理がある。

 今まで異能に頼りきりだった者ほど、自力は乏しい。


 では戦えるのかと問われれば、可能では在るだろう。

 勝てるかどうかは別なだけである。


 そして、降伏をするかどうかと言えば、実のところコレが一番真っ当な選択肢である。  

 しかしながら、それを選べるかと言われれば難しい。


 何せ命乞いをする者達をどう扱って来たのか、彼等が一番良く知っているのだから。

 

 そんな事を迷っている内に、先頭の集団と鬼神がぶつかった。

 文字通りに単純な体当たりなのだが、それだけで数人が吹き飛ぶ。


 そんな光景は、勇者達に取っては恐るべき光景と言えた。


 此処に集まった者達は、それぞれがそれなりに名を成した筈であった。

 先年に一人の神童、一騎当千の強者、伝説級の術者。


 誰もが、別の場所では知る人ぞ知る者達である。


 だが、そんな彼等を歯牙にも掛けず、暴れ回る魔人が居た。 

 何とか予備の剣で斬り掛かった所で剣の方がへし折れる。

 

 数人に取り囲まれても、止める所の話ではない。


『邪魔だオラァ!!』


 龍の吐く火炎ですら通さない筈の防具を纏っていたとしても、蹴られ倒れた。


  *

 

 魔人に混じって戦う黒装束達だが、彼等も戦い振りでは劣らない。

 素早く懐へと入り込み、相手を掴み投げ飛ばす。


 剣や槍といった鋭い武器は通さない鎧であっても、地面にぶつけられては鎧の意味が無かった。

 それどころか、重さ故に衝撃は大きくなる。


 軽装の者は動けるが、問題も在った。

 猿より遥かに機敏に動ける筈が、それが出来なくなっている。


「どうして!?」


 何とか地面の武器を持ち上げようと試みるが、揺れるばかりで上がらない。


 起こった事態に酷く困惑する者も多かったが、それは間違いであった。

 生物の動きは、基本的に筋肉の組成と量に因って左右される。


 細い腕や脚には出せる力が決まっており、それ以上は出る訳もない。

 

「どうして、だと? 何もしてない奴に武器は応えたりはしない。 ましてや、身の丈も弁えず伊達を気取る者にはな」 


 掛けられる声に、薄着の少女は慌てて顔を上げる。

 見てみれば、其処には顔を覆面で覆った黒装束の一人が立っていた。


「くっそ……」


 武器が使えないのであれば、徒手空拳しかない。

 繰り出される拳を、黒装束はサッと避けつつ肘を腹へと叩き込んだ。


 何も身に着けて居ない場所へ、深々と食い込む肘鉄。

 複雑な動きをしなければ成らない手と比べると単純が故に硬く鋭い。


 スッと黒装束が退くなり、相手は腹を抱えて膝を落とす。

 

「……げぇ」


 鳩尾への攻撃は、骨に護られる部位よりも与える衝撃は強い。

 胃の中のモノをブチ撒ける相手に、黒装束は首を傾げた。

 

 もはや動けないだろうが、だからと言って放置は出来ない。

 跪いた形の相手のこめかみに狙いを付け、爪先にて蹴り倒した。 


 動けない相手を倒すのは卑怯かと問われれば、そんな事を考慮して居る方がどうかしている。

 

 戦場と遊び場ではなく、どちらかが倒れ伏し、力尽きるまで戦う場であった。

 其処には老若男女の区別は無い。 


 参加した以上は、如何なる文句も弱音も意味を為さない。

 動かない相手を確認してから、次の相手へと黒装束は向かう。


   *


 次から次へと倒されていく勇者達。

 その中には、見ている事が受け入れられずに喚き出す者も居た。


「くそが!? どうなってんだよ!? 俺は今まで何千匹とモンスターぶっ殺して経験値を積んだ筈だぞ!!」


 自分の体に起こった違和感に、美声年は声を荒らげる。

 

「それは大いなる間違いだったな」

 

 言った事を否定する声に、慌てた顔を向ければ、其処には壮年が立っていた。


「弱い者を幾ら倒しても、それは強さには結び付きはしない。 まぁ、多少は効率的には成るだろうがね。 研鑽とは、弱い者イジメではなく如何に己と戦うかに在る」


 淡々とそう言うと、壮年は腰に携えた刀を鞘から抜き放った。


「どうする? 武器を捨てて這い蹲るなら、見逃しても良いのだが?」

「ふざけんなジジイが!?」

 

 降伏を迫られた青年だったが、相手を見て勝てると踏んだのだろう。

 慌てて剣を振り上げ、壮年へと向かう。


 振り下ろされる剣に合わせて、壮年の持つ刀が煌めく。

 相手の勢いを殺す事なく、鎬の部分で横へと押しやる。


「な!?」


 青年は剣は地面にめり込むが、その僅かな隙を突いて、刀の峰が肩へと下ろされていた。 

 鎖骨を砕かれ、倒れる相手に、壮年は刀をヒュッと払う。


「年上の忠告は、聴いて置くものだよ」


 そう言うと、壮年も次の獲物を探して周りを眺めた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ