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世界征服、はじめました  作者: enforcer
戦慄の作戦! 地球からの追放!?
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戦慄の作戦! 地球からの追放!? その27


 超人の細胞は、博士もある程度は知っては居た。

 組織加入の際、ほんの少しだが標本サンプルを貰って調べて在る。


 その際に解ったのは、餅田が人であるという事だけ。

 

 その他の事に付いて言えば、餅田の身体を構成する組織は、人の全身全てと同じ事可能であるという特異性に在る。


 基本的に人間は、神経、皮膚、頭髪、骨格、筋肉、内臓と全てが役割分担をして居るのだが、餅田の身体はこれら全てが、一緒くたなのだ。


 やろうと思えば全身を歯や爪の如く硬化させる事も出来る。

 もしくは、全身を毛髪で覆う事も可能だろう。

 

 それだけでなく、同時に柔軟な筋肉でもあった。


 更に細胞一つ一つが脳と同じ働きが出来ながら、同時に内臓と同じ働きも可能という、正に超人の名に恥じない。


 加えて、自らの細胞を他者へと与える事で、相手を超人化させられる。

 この作用を利用する事で、餅田は他人の傷を癒せるのだが、果たして、改造人間にその効果が在るのかは未だに未知数である。


 在る意味では、その実験が異界の地によって行われていた。


  *


 鬼神を包んで居た餅田が、ズルズルと離れる。

 この時、その体積が減っていた。


 他者からは何をしたのかは見えないが、餅田が盛大な溜め息を漏らす。


「ずあぁぁぁ……あー、めっちゃしんど」


 まるで大仕事を終えた様な声に、リサとクラウが寄った。


「どうなったんです?」「教えて、鬼神様は?」


 二人同時に話掛けられた餅田だが、先ずはと丸まる。


「なんや忙しないなぁ、どないしたん云われましても……わて、毎度の様に少し分けたただけですわ」


 餅田にしてみれば、改造人間の一部に残されている人間の部分に、自らの体を少し譲っただけなのだ。

 結果がどうなるかなど、初めてなのだから云いようもない。

 

 程なく、座っていた鬼神の身体が揺れ出す。

 震えるという小さくなく、寧ろ身体が勝手に暴れ出した様で在った。


「鬼神様!?」


 慌てたクラウは、ガタガタと動く鬼神の身体を抑えようとする。

 それを、リサが慌てて羽交い締めにて止めた。


「駄目! 待って!」


 改造人間の膂力は、人のソレではない。

 普段は本人達が周りへの被害を考慮して抑制セーブして居るだけなのだ。


 つまり、無自覚な場合は危険極まりない。


「離して!」


 危ないか危なくないかなど、クラウは考慮して居ない。

 揺れ動く鬼神の安否が気掛かりで、他の事など頭から抜けていた。

 

 勝手に暴れる鬼神の身体だが、それを抑える者が居た。

 それは他でもない、良である。


 他人に自分を任せる訳にも行かないと、その暴れる体を抑えた。

 

 篠原良が篠原良を抑えるという光景に、誰もが見入る。

 大凡で一分程が経った頃、バタバタと揺れていた鬼神の身体が動きを止めた。


「鬼神様!!」


 単純な力では、鍛えているクラウをリサが抑える事は難しい。

 羽交い締めから抜け出すと、急いで近寄った。


「起きてください……お願いです……お願いします」


 必死なクラウの懇願に、まるでその呼び声に応える様に、ウーンと唸りが響く。

 一見死んでしまったかの様だった鬼神は、パチッと目を覚ました。


「お? 俺、なんで床に寝てんだ」


 記憶が確かならば、自分は椅子に座っていた。

 だが、気付けば床に仰向けであり、側にはクラウがしゃがみ込む。


「びっくりしたぜ……で、調子は?」


 ソッと抑えを解いた良の声に、ムクッと身体を起こす鬼神。

 徐に手を挙げて、グッと何度か握ったり開いたりを繰り返す。


「変なんだ……なんか……ずっと忘れてた様な……なんか、腹の奥が……」

 

 身体に起こった違和感に困惑する鬼神だったが、その腹がグゥと鳴いた。


「……そっか、腹が減ったのか」


 今までは改造人間として食事を忘れていた。

 だが、超人の片鱗を受け継いだからか、鬼神は空腹を訴える。

  

 そんな彼に、目を潤ませたクラウが抱きついていた。


「おっと、なんだよクラウディア……」

「私を置いて行かないで……」


 ぼそりと吐かれた言葉に、鬼神は困った様に笑う。


「大丈夫だクラウ……それより、なんかないかな?」

 

 思い出して見ると、空腹感というのは思いのほか辛い。

 考えて見れば、鬼神は百年は何も食べていなかった。


「すんまへん……わても、腹減ってもうたんでっけど」


 餅田の声は場の空気を和ます。


 ただ、そんな中でもリサだけは難しい顔をしていた。


   *


 精密な機器が無い為、改造人間を調べるのは難しい。

 普段であれば、基地の中で整備や調整を行えるが、この場では無理が在る。


 そんな博士の視線の先では、鬼神と餅田が食事をしていた。

 餅田が食べる事も異様な姿なのだが、改造人間が栄養分を補給する事も異様である。


 次から次へと手を伸ばし、口へと放り込む鬼神。

 入るだけ入れたなら、咀嚼し飲み込む。


 通りが悪かったからか、ワインを水代わりに呑んだ。

 プハァと、息を長く吐く。

 

「……なんてんだろうなぁ……食い物って、有り難いよなぁ」


 数えるのも馬鹿らしい程に、生き物の宿命とも言える【食事】を忘れていたからか、感慨深いといった鬼神。


「せなやなぁ、 やっぱり体が資本やさかい、先ずは食べんと!」

 

 餅田にしても、失った分の栄養を補給せんと食べる。


 単純に見れば、鬼神と超人が食事をして居るだけだある。

 しかしながら、博士に取っては解せない。


 そもそも、篠原良を改造人間に変えたのはリサだった。

 だからこそ、解る事もある。

 

 改造人間には栄養補給の意味が無い。

 にも関わらず、見えている篠原良は食べ物を食べていた。


 こうなると、博士の中に在る感情が湧き上がる。


 本来必要無い筈の改造人間が栄養を欲し、尚且つ食事をして居る。

 それは何故なのかと、確かめたくとも設備が無くては難しい。 


 となると、直接問診する他は無い。


「えーと……良、さん?」


 果たして、どう呼ぶべきかを悩んだが、結局は慣れた呼び方をする博士。


「「うん?」」


 やはりと言うべきか、二人の良はほぼ同時に反応を見せていた。


「あっと、コッチの良さんに、ちょっとお聞きしたい事が」

 

 床を指差す事で、区別を付ける。

 此方の世界に長く居た良が「おう」と応えた。 


「今のところ、調べる方法が無いんですけど、体調はどうですか?」

  

 本来、改造人間に体調を尋ねるのは間違いである。

 痛みは殆ど抑制され、在るのは感覚のみなのだ。


 問われた鬼神は、鼻を唸らせる。


「何つったら良いんだろうなぁ……ずーっと昔の、自分に戻った……のかな?」


 機械に疎いからか、いまいち自分の変化に対する説明が難しい。

 どうと問われても、未だに解っている事は多くはなかった。


 餅田から細胞を分け与えられたという事は、超人に変わるという意味もある。

 但し、元が改造人間の場合は如何なる変化が起こるのか。


「せやったらゴチャゴチャ考えんと試したらどないです?」


 食べながら、別の口で喋るという器用さを見せる餅田の声。

 

「……まぁ、言われて見りゃ、最もだな……」


 食事を中断すると、鬼神は立ち上がる。

 無言にてリサの目を見る鬼神に、リサも頷いた。


 今現在はまだ時間的余裕も在り、試している猶予は残されている。


 何度か鼻で息をすると、先ずはと起動動作の構えを取った。


「……変身」


 掛け声を合図に、鬼神の身体は光った。

 瞬く間に、全身が装甲に覆われた姿が現れる。


「どうですか? 何処か、違和感は?」


 問診を掛けられた鬼神は、身体の彼方此方を動かした。

 先ずは手首、足首、次に肘と膝、仕上げに肩と、具合を確かめる。


『なんだろうなぁ……どう言えば良いのか……ま、悪くない、かな?』  


 曖昧な答えでは在るが、特に問題は無いという。

 

 ただ、周りの者達は見えないが、クラウだけには見えていた。

 まだ幼い時分、見た目こそ恐ろしくも頼もしい魔人の現役の頃の姿。

 それが、今の鬼神と重なっていた。

   

   *


 軍隊の到着までは時間は残されている。

 用意に余念がない里の者達だが、その中にはクラウと鬼神も含まれていた。


 誰もが、慌てて準備をするのだが、ソレは逃げ支度ではない。


 すね当てや籠手を身に着ける者も居れば、誰も居ない空間に向かって拳や蹴りを放ち、身体の動きを確かめる者も居た。


 誰もが、これから始まるで在ろう戦に備えている。


 そんな中でも、たった一つだけ同じ事が在るとすれば、誰もが武器を持っていないという事だった。


 慌ただしい中、鬼神が戻ったというのにクラウの表情は優れない。

 

「……どうした? 難しい顔して」


 掛けられる声に、クラウの目が泳ぐ。


「……不安なんです」


 今でこそ、良率いる悪の組織が助力してくれるという。

 加えて、鬼神も復帰を果たした。


 だが、ソレまでは、クラウは実働隊の一人とした何度も最前線へと赴いて居る。

 

 口にこそ出さないが、時には仲間が犠牲に成ることも在った。

 それだけでなく、秘密を守る為にと、時には手を下した事もある。   


 自ら身体を抱くクラウに、鬼神は目を向けた。

 見てみれば、今の彼女は過去の幼い頃とは違う。

 

 奇妙な事だが、在る感覚が鬼神の中に込み上げる。

 ずっと昔に忘れた筈なのだが、それが帰って来ていた。


「……な、ちょっと時間取れるかな」

「え?」

  

 何を言うでなく、鬼神はクラウを抱き寄せ口を口で塞いだ。

 時間にすれば数秒間だが、ソレは離される。


 いきなりの事に目を丸くてしまう愛弟子に、鬼神は目を見る。


「なぁ、クラウ」


 特に何かをするとは言わない。

 ただ、呼ばれたクラウは静かに首を縦に振った。

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