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世界征服、はじめました  作者: enforcer
戦慄の作戦! 地球からの追放!?
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戦慄の作戦! 地球からの追放!? その26


 すっかりと日は沈み、二つの月が空に輝く夜。

 

 隠れ里の者達は、奇妙な光景に誰もが目を疑って居た。

 勿論、その中には悪の組織の面々も含まれている。


「なんだろなぁ、なんて云えばいいのかねぇ?」


 悪の組織代表として、そんな事を口走るのは良である。

 対して、真ん前にて立つのは、やはり里の代表と言える良だった。


「云わなくても良い、解るだろ?」

 

 二人の篠原良が、互いに言葉を交わす。


 片方は青年らしさ在るが、もう片方は歴戦の猛者を想わせる風貌。

 実に奇妙な光景に、誰もが口を噤んでいた。


 ただ、少し離れた所では、愛とカンナが互いに顔を寄せ合って居る。


「ね、あんな人居るんなら教えてくれたって良かったじゃん? 驚いたよ」

「私だって、さっき知ったばっかりですよ」


 ボソボソと、言葉を交わす虎女と魔法少女。


「ふぅん? まぁでも、アッチの首領もさ、いい感じじゃない?」

「なんて云うか……ないすみどる?」


 見慣れた良とは違い、新たに顔を見せた良は、在る意味二人に取っては新鮮である。


 顔の造り自体はそう大差は無いのだが、鬼神はより深い何かを纏っている。

 ソレは一朝一夕では身に付かない歴史の重みであった。


 コソコソと会話する二人はさて置き、里の者達はと言えば、帰って来た良に何とも言えない目線を送っていた。


 この地に居着いた良こそが、彼等が【鬼神】と呼ぶ者である。

 そんな鬼神は、ソッと木箱を良の前へと置いた。


「ソレ、何です?」


 箱の存在こそ知っては居たが、中身までは知らない。

 中身を知らないリサが、箱の中を尋ねる。


「リサが造った機械だってさ……じげん、いそうき?」


 既に中身を知っている良が博士にそう伝えるが、本人からすれば寝耳に水であった。


 造ったと云われても、そんな記憶は在る訳もない。

 同じ人物では在っても、此方の世界のリサは既に故人であった。


「は? そんなの知りませんけど?」


 この一言に、鬼神は僅かに寂しそうな顔を覗かせる。

 唇を強めに閉じ、目を細めた。  


 当たり前の事だが、今この場にいるリサと、過去のリサは同じ人物ではあっても、違うのだと云うことの証明である。


 一瞬胸の奥に何かを感じるが、それは表には出すべきではない。


「……大丈夫だ、説明書は入ってるらしいから、お前ならなんとか出来るさ」


 そう言う鬼神の声は、懐かしむ様で在る。

 

「さて、後は……そっちに任せるぜ?」


 まるで、良へと装置をバトンタッチをしたと言わんばかりの鬼神。

 

 渡された機器が上手く動作したのなら、この世界から悪の組織は去ることに成る。

 元々が帰る手段を探す為の旅なのだから、其処は終着点と言えた。


 その後で里がどうなろうとも、本来組織には関係は無い。


「あんたは……帰らないのか?」


 装置の持ち主は移ったが、良はそう尋ねる。

 もしかしたら、此方の良にも元の世界への未練は在るの確かめたかった。

 

 思わぬ質問に、里の者達は不安げな目線を鬼神へと送るが、問われた鬼神は、首を横へと振った。


「俺には俺の仕事が残されてる。 それに、今の俺は……此奴等の首領さ」


 此方の世界にて、鬼神は別の組織を立ち上げていた。

 その証か、何人かの黒装束が大幹部の如く立っている。


 本来ならば、もはや良は関わる理由は無い。

 ただ、単に辺鄙な里に温泉旅行へと来ただけである。


 しかしながら、このままオメオメと帰るのは勿体ないと思えて仕方ない。


 必死に帰ろうとしながらも、帰れなかった仲間の無念に良は想いを馳せる。

  

 どうせなら、行ける所まで試したくなった。

 クルッと踵を返すと、良は自分の組織を見渡す。


「なぁ皆。 俺さ、思ったんだ……どうせなら、世界征服しちゃおうかなぁ?」


 首領としての発言であれば、組織はそれに従うのが勤めである。

 

「是非もなし……」

 

 乗り掛かった船とばかりに、女幹部アナスタシアがマントを翻した。


「総員! 首領からの御命令だ! 我々はこの地の組織と共闘する! 世界征服の為に!!」


 幹部から声が掛かれば、戦闘員達も後へと続く。


「「「首領! 万歳! 首領! 万歳!」」」

 

 大声にて、いつもの挨拶が戦闘員達から響き渡る。


 本来ならば、悪の組織とは恐れられねば成らないモノだろう。

 しかしながら、この場に置いては違った。


 迷う事なく共闘するしてくれるという悪の組織に、里の者達は羨望の目を贈る。

 

 そんな中、虎女と魔法少女はウーンと揃って鼻を唸らせていた。


「まぁたもう、いつもお預け喰わされてる気がするぅ」

 

 唇をタコの如く突き出すカンナに、愛もウンウンと頷く。


「まぁ、篠原さんの悪い癖だからねぇ」


 どうせなら、サッサと温泉旅行へと戻りたい二人だが、敢えてそれは飲み込んでいた。


   *


 偵察に出ていた虎女カンナの報告によれば、敵が到着するまでには時間が掛かると言う。

 だが、全員に余裕が在る訳でもなく、そうでない者も居た。


 中でも、取り分けて頭を痛めているのは、博士である。


 里の者達の前では気丈に振る舞っていたが、いざ屋根の下に来ると問題が起こった。

 

 虎を迎えに向かった鬼神だが、その際に変身をしてしまっていたのだ。

 修理した側の人間に言わせれば、これほど馬鹿らしい事もない。


「もう……なんで直ぐにムチャクチャするんですかぁ」


 如何に動ける様に成ったとは言え、鬼神の身体はまだまだ本調子ではない。

 それどころか、何時壊れてもおかしくはなかった。 


 倉庫に放置され、ガラクタ同然の車でも、修復レストアすれば或いは動くかも知れない。

 しかしながら、それは、はいどうぞ完了する訳もないだろう。


 旧型の自動車を動かすだけでも、腕利きの職人が大勢で取りかかってようやく可能な話なのだ。


 鬼神の身体に付いて言えば、ソレと大差は無い。

 

 露骨に文句を垂れる博士に、鬼神は眉を寄せ困った顔を覗かせた。


「……すまん。 動ける様に成ったからかな、つい……な」

「そんな事云って、もし私が居なかったら……」


 言い掛けた所で、博士は慌てて口を噤んだ。

 自分の言った事も勿論だが、鬼神の顔は見えていた。


 眉間にシワが寄り、何かに必死に耐える。


「すまない……そうだな、その通りだ」


 詫びる鬼神だが、恐らくは過去にも同じ人から同じ事を云われたのだろう。

 例え詫びたくとも、この世界のリサはもう居ない。


 決して茶化す事なく、博士の言葉を飲み込む。


 そんな二人の様を、クラウは口惜しそうな顔で見ていた。

 出来る事なら、少女から学び取りたい。


 だが、如何ともし難いのは簡単ではないという事にある。


 機械の説明をされた所で【かがく?】とは何かから始めねば成らず、それらを習得するには余りに時間が足りなかった。

  

 博士が居るからこそ、今の鬼神はまだ動いて居られる。

 だが、もし博士が居なければ、穴蔵に逆戻りなのは自明の理であった。


 重苦しい空気に耐えかねたのか、餅田がポンと跳ねる。


「難儀な話でんなぁ、何やったら、わての力を分けられたらええんですが」


 ふと、思い付いたままを餅田は語る。

 改造人間とは違い、超人である餅田は遥かに利便性に富んでいる。


 身体を治すにせよ、大量の栄養分さえ在ればソレで良く、複雑な手順や設備を要しない。


 餅田の声に、作業を見守っていた良がウンと鼻を鳴らす。

 

「出来ないのか?」

「ほぇ? 篠原はん?」


 以前に、超人達と合間見えた事もある良は、その時の事を忘れた訳ではない。

 重傷を負ってしまった超人を、餅田はその際には文字通りあっという間に助けて居る。


「いや、だからさ、もし……餅田の力を分けて貰ったら……どうなる?」

 

 良の問いに、博士は首を傾げた。


「えーと……どう、と云われても」


 改造人間とは、何も全身が機械という訳でもなかった。

 一応の定義では人間の身体を変えた者である。 


 では、其処に超人を加えたならどんな結果が起こるのか。


 大凡の予測は出来ない訳ではない。

 超人の細胞は改造人間に残された人間の部分と結合はするだろう。

  

 但し、今のところ博士の頭の中の試算でしかなく、結果までは想像すらつかなかった。

 

「……なんだ、だったら、俺で試したらどうだ?」


 そう言ったのは、鬼神である。

 特に悩むことなく、自分を【実験材料にしろ】と。


「そんな事……実験もしてないのに」


 通常の薬剤ですら、人間に使用されるまでには長い道のりが必要である。

 先ずは試験用のラットを用い、順序次の段階へ。

 最終的には、膨大な実験の果てにようやく認可が下りる。


 悩むリサに、クラウが近寄ると、衣服を脱いだ。

 流石に下着は身に着けて居るために、全身が露わに成るわけではない。

 

「私の傷も、其方の……もちだ様が治してくださいましたが」


 見てみれば、確かにクラウの二の腕の傷は塞がっている。

 若干その部分の肌の色が違うが、傷は目立たない。


 かと言って、生身の人間と改造人間は同じではなかった。

 迷う博士に、鬼神が微笑む。


「頼むよ、リサ。 どうせなら、やって見なきゃあな?」


 良から云われると、博士も拒めない。

 スッと離れる博士に代わり、餅田が鬼神の前に出た。


「ほな、チョイと見させて貰いますわ」

「頼む」


 鬼神の声に、餅田がスルスルと鬼神へと寄る。

 調べるとは云ったが、その様は何とも言えないモノが在った。


 何せ、鬼神が巨大な餅に飲み込まれて居る様にしか見えない。

 

「なんや、えろうゴチャゴチャしてまんなぁ……」

「……そりゃあ、そうだろ……」

 

 全身余すことなくどころの話でなく、中身まで調べられる。

 それ故か、鬼神は若干苦しげで在った。


「……あー、ほぉほぉ……此処が……こうなって…コッチが……ふむふむ」


 如何にして調べて居るのかは餅田にしか解らないが、ハッキリ云って怪しい。

 もしも彼が味方でなければ、それこそ周りの者達が慌てて引き剥がす所だ。


「あ、とぉ? 此処ら辺やな? で、ホントにええんでっか?」


 餅田にしても、了承が欲しかった。

 試す事は出来ても、結果がどうなるかまでは解らない。


「やらずに終わるぐらいなら……やってみるさ」

「さいですか……せやったら、行きますで!!」


 餅田の声と共に、鬼神が僅かに揺れる。

 その光景を、クラウは瞬きも忘れて見守っていた。

 

 

 

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