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世界征服、はじめました  作者: enforcer
戦慄の作戦! 地球からの追放!?
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戦慄の作戦! 地球からの追放!? その24


 隠れ里を目指して歩く集団だが、その数は決して大群でもない。

 精々が五十に届くかどうかと云う程度だった。


 しかしながら、その集団は軍隊とは言い難い。


 通常の軍団ならば、基本装備は一律で揃え、後は必要に応じて多少変える程度である。

 それに対して、里を目指す集団は、バラバラであった。


 まるで鉄の塊といった鎧を纏う者も居れば、全身に武器を携える物々しさ漂わせる者。


 片や重武装な者に比べて、軽装な者も決して少なくはない。

 

 目立つ者であれば、ほぼ水着といって差し支えない衣服しか身に着けて居ない者も居た。

 ただ、手ぶらという訳でもなく、牛一頭は在ろうかという斧や剣を軽々と担ぎ涼しい顔で行軍してみせる。

 

 そんな一群の最後尾では、以前に悪の首領と相対した少年も含まれていた。


 今回は幾分かは武具を纏って居る。

 そして少年の横で馬に乗るのは、彼の副官である女騎士。

 

「壮観だね。 そうは思わないかい、カタリナさん?」

 

 問われた女騎士は、兜の目庇(バイザー)を上げた。

 そのままでも答えられるが、礼儀を重んじたのだろう。

 

「はい、まさか、これほど早く集まるとは……」


 端的な感想に、少年は笑った。

 領主が振れを出したとは言え、余りに集まるのが速い。

 

 それは、在る意味この集団が普通ではない事を示しても居る。


「そりゃあそうさ。 伝説の魔神を倒したとなれば、箔がつくってね」


 人が高名を求めるならば、手順は様々在るだろう。

 だが、最も手っ取り早いのは、既に在る高名を打ち倒す事にある。

【伝説の●○を倒した!】とそれだけでも、人は【彼奴は凄い!】と賞賛を贈る。


 今回の件は、集まった者達に取っては実に好都合と言えた。


 如何に伝説とは言え、ソレは一人だけに過ぎない。

 然も、数ある伝承にも【討ち倒された】と記されていた。

 

 ただ、女騎士は不安げである。


「しかし、大丈夫……なのでしょうか?」


 以前に戦った際は、倍程も兵が居たにも関わらず、あっという間に自分達が敗れ去った。

 それに比べると、今回は数に不安が残る。


 そう言う女騎士に、少年は馬を寄せた。


「前とは違うよ。 雑兵じゃない、東西南北から勇者が駆け付けてくれたんだ」


 少年はそう言うが、女騎士の不安は尽きない。

 手も足も出せずに負けた事もあり、彼女は在るだけの書物に目を通した。

 

 その時に解ったのだが、件の魔神【シノハラリョウ】と相対して勝った、というモノは一つとして無かったのだ。


 そもそも書物には【如何にして倒したのか?】という重大な情報が尽く無い。 

 まるで、誰かが其処だけを削り落としたかの様に。


「ま、気楽に行こうよ? 高みの見物ってね」

 

 前回酷い負けを喫した割には言葉通り気楽そうな少年に、女騎士は上げていた目庇を下ろす。

 顔を隠す理由だが、今の顔を見せる訳には行かなかった。


   *


 一団の進み自体はそれ程速くはない。

 それは、遠くからも見える。


 魔法少女とやらかしていた虎女だが、今は一時休戦とし、別の任が在った。


「ひー、ふー、みー、よー、いつ……」


 やはり虎女にしても改造人間であり、その目は望遠鏡と比較しても遜色は無い。

 高い木の天辺に陣取り、相手の数を確認していた。


「だいたい五十ちょっとってとこかぁ……あのペースから、到着は明日の朝ぐらい」


 ぼそりと独り言を云うと、虎女は支えとして居た手を離す。

 その体は重力に引かれる訳だが、名に遜色なくヒラリと地面に降り立った。


「さてさて……飛べれば楽なんだけどなぁ」


 アナスタシアを運ばせる為に、魔法少女はこの場に居ない。

 だからといって、居たとして【お願い】が出来るのかは微妙である。


「……面倒くさいなぁ」


 気さえ高ぶって居なければ、基本的には猫の様な性格故か、余り忙しいという事がカンナは好きではない。

 加えて、自分は里まで脚でしなければいけない事に溜め息が漏れる。 


「どうせなら、バイクとか在れば良いのにぃ」


 改造人間で在るが故に、長距離のマラソン程度ならば疲れもしない。 

 単純に走らねば成らないという面倒くささに、カンナはブー垂れる。


 それでも気を取り直し、里の方へと足を向けた途端、虎の鼻がヒクヒクと動いた。


 何も云わず、耳を済ませる。 すると、僅かだが擦れる様な音がした。

 微細では在るが、虎の耳は誤魔化せない。


 クルリと踵を返すと、腰に手を当てる。


「ねぇ、虎相手に風上に立つとか……舐めてんの?」


 音もだが、何よりも虎女に相手を気付かせたのは匂いであった。

 それが何であれ、人の放つモノは自然のモノとは違う。


 一応は声を掛けたが、返事は無い。


 それに対して、カンナは鼻を鳴らした。


「ふーん? ま、別に良いけどぉ、影からコソコソ覗かれるのは……」


 そう言いながら、足元の小石を拾う。

 身体の柔軟性を生かし、捻ると同時に片足を上げる。


「……好きじゃない!!」


 振りかぶった腕を、一気に伸ばし遠心力を生かして小石を放る。

 最も、改造人間がそれをするならば、ただの石投げという訳でもなかった。

  

 弾丸の如く放たれた石は、匂いの元へと向かう。


「……おっと」


 木陰から、そんな声がした。

 

 カンナが放り投げた石は当たりこそしなかった。

 それでも、相手を炙り出す効果は在った。 


「……おっかしぃなぁ……隠行のスキルが見破られる訳がないのに」


 そう言う声は、若さが窺える。


 ヌッと影から姿を現したのは、青年と呼ぶには若い。 

 特徴的なのは、余り男女の区別が付きそうもない顔立ちである。 


 相手を確認した虎女は、心臓を庇う様に腕を組んだ。


「はん……あれだけ香水の匂いプンプンさせてたら、だれだって気付くでしょうが」


 実際には改造人間でなければ気付かない程に微細だが、それを云う必要は無い。


「で? ストーカーに追い回される趣味なんて無いんだけど?」


 敢えて、虎は怖い声と怖い顔を覗かせるが、それは威嚇の意味が在った。


 もし、大型動物が相手を仕留めようとするならば、威嚇はしない。

 淡々と静かに忍び寄り、間合いに入った所で隙を突いて襲い掛かるだけである。

 

 虎女の声に、相手は肩を竦めて笑った。


「怖いなぁ……そんなに脅さなくたって良いでしょ?」


 隠れて近寄って来た割には、相手の態度は異様である。

 強いて言えば、軟派(ナンパ)を仕掛けて警戒されてしまい、慌ててそれを解こうとしているといった風情だった。


「だから? 用が無いんなら消えて貰える?」

「いやぁ……そうも行かないんだよねぇ」


 虎との距離が大凡で七歩程の所で、相手は足を止めた。


「お姉さんさ、あんたも抜け駆けしてシノハラリョウ狙ってんでしょ?」


 ポンと出された名前に、カンナの眉がピクリと動く。


「いやほら、どうせなら手柄独り占めしたいと思っててね、でもまさか、同じ事を考える人が居るとはね」


 どうやら、相手はカンナを自分と同種と判断したらしい。

 それは、在る意味間違っては居なかった。


 亜人と比べると、カンナは人の見た目に近く、纏う衣装は派手である。 


 どちらかと言えば、今里に向かっている者達に見た目は近い。


「もし、良かったら、ご一緒しません?」


 にこやかな相手に、カンナは目を窄める。


「あーらら、まさかこんな所でナンパしちゃうんだ……」


 敢えてやんわりとした声でそう言うと、カンナは小首を傾げて見せる。


「でも駄目、だって……あんたなんかしてるでしょ? 周り中からコソコソ音がするもの」


 会話で多少紛れはしたが、確実に何かが蠢いている。

 それは、音が数を物語って居た。


 お誘い合わせを断られたからか、相手も顔を変える。


「あ、そう……じゃあ、一つ聞いて置くんだけど……あんた、どっちだい?」


 具体的に【何を】とは問われて居ないが、相手の身姿から察する事もあった。

 問われたカンナだが軽く片手を上げ、人差し指で顎を触った。 


「うーん……まぁ、悪者かな?」


 厳密に言えば、カンナは悪の組織の大幹部である。

 つまり、正義の味方かと問われれば、寧ろ真逆だった。


 虎女の【悪者】という声に、相手も片手を挙げた。


「そっかぁ、じゃあ、しょうがないね」


 親指を留めにし、力を込めた中指をずらす。

 溜めを生かした指が、パチンと音を立てた。


 相手は単に指を打ち鳴らしただけなのだが、事はそれだけに収まらない。


 カンナの周り中から、一斉に何か小さいモノが向かってくる。

 それは、猫より幾分か小さいネズミであった。


「さよなら、お姉さん」

 

 別れを告げる声だが、カンナは動じない。


「……変身」


 返事の代わりに出された声と共に、一瞬身体が光る。 

 その光を、跳び掛かるネズミの大群が覆った。


 一匹一匹は小さいが、数で勝れば相手を圧倒出来る。


 だが、この時の獲物はただの人間ではなかった。


 いつもであれば、大柄な男ですら取り囲み、あっという間に食い尽くす。

 その筈が、ネズミはバラバラに成って飛び散る。


「……なんだ?」


 何事かと見詰める先では、姿を変えたカンナが立っていた。

 

 妙齢かつ妖艶な女性といったいつもの姿を変え、現れるは文字通り虎女。


 口以外の殆どを仮面で覆い、急所を守る様に配置された装甲。

 全身を虎柄に染め上げる異形。


 その姿は【ブレードタイガー】の異名を持つ、悪の大幹部の一人である。


 名が示す通り、身体の至る所からは鋭利な刃が突き出して居たが、それは、僅かな音を伴って収納される。


「光栄に想いなよ、大幹部直々にお相手してあげるんだからさ」

 

 そんな声に、相手は思わず唾を飲んでいた。

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