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世界征服、はじめました  作者: enforcer
戦慄の作戦! 地球からの追放!?
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戦慄の作戦! 地球からの追放!? その23


 温泉に入りに来たというには、派手な登場を果たしたモンハナシャコ。 

 勿論、温泉にて茹でられに来た訳ではない。


 別の目的が在って来た訳だが、アナスタシアは在る光景を見て頭からその事が吹っ飛んで居た。


『説明しろぉ!? コレは一体全体どういう事だぁ!?』

 

 見ている光景に関してだが、どうもこうもない。

 いきなりの事に慌てた博士が、思わず良に抱き付いてしまった事故である。


 が、それはあくまでも良達の都合であり、アナスタシアからはそうは見えていない。

 

 寧ろ、間抜けが居ない合間に、博士がシメシメと混浴という抜け駆けをブチかましたというのが、蝦蛄の結論である。


 モンハナシャコの剣幕に、上司である筈の首領は焦りを隠さない。

 現実には、男女の区別が無い為に皆で温泉に浸かって居ただけなのだ。


 まだ弁解の余地は在ると思えてしまう。


「いや、ま、待て、アナスタシア……話せばわかる」

 

 緊急事態だからか、良の頭も回っていない。

 彼の認識に置いては、まさか空から女幹部が降ってくるとは想定していなかった。


 そして、口をついて出てしまった言葉に関してだが、非常にマズい選択である。


 理路整然と経緯を説明するべき所を、良は焦りから誤魔化そうとしている様な言葉を使ってしまった。


 敢えて云うならば【浮気現場】が見つかった男性だろう。

 そうなるとどうか、答えは単純に、モンハナシャコから湯気が立ち登ったのである。


『そうですかそうですか……ま、首領に関しては後でねっちりとお仕置きと御説教をするとして』


 いったん言葉を区切ると、モンハナシャコは博士を睨みつける。

 長いヒゲの如き触角が、グンと天を向いた。


『博士……最期に言い残す言葉は在るか?』


 もはや、処刑マシーンと化したアナスタシア。

 そんな見た目も声もおどろおどろしいとなると、リサも反応してしまう。


「……ヒィ」

 

 余りの恐怖からか、引きつった声を漏らすリサ。  

 更には、魂の脅えが身体を刺激したのか、益々良へと身体を寄せてしまう。

 

 一応、博士も腕輪ブレスレットを用いる事に因っての変身は可能だ。

 そうすれば、生身の彼女でも改造人間と渡り合える。

 

 しかしながら、もって生まれた性格は如何ともし難い。

 特に、緊急時に置ける反応は顕著であった。


 固まる良に、益々ガッチリと腕を絡めてしまうリサ。

 薄布一枚しか身に着けてない事など、宇宙の彼方へすっ飛んでいる。

 

 ソレを見たからか、モンハナシャコは静かに動き出した。

 もはや、今の目的は憎き怨敵を討ち果たすのみ。


『組織を裏切った者には……死、在るのみ』


 厳密に言えば、博士は何も組織を裏切る様な真似はしては居ない。

 それでも、少女の命は風前の灯火と言えた。


 改造人間のパンチをマトモに浴びれば、生身の人間などは一溜まりもないだろう。 

 だが、偶然にもこの温泉には別の者も入っていた。


「アナスタシアか」


 ポンと名前を呼ばれたからか、ギロッと蝦蛄の目が動く。


『馴れ馴れしい!? 誰が勝手に人の名前呼んでいい……と?』

 

 暴走特急と化していた蝦蛄だが、名前を呼んだ者の姿を見て動きを止めた。

 風貌に多少の違いは在るが、モンハナシャコの眼に映るのは篠原良である。


『しゅ、りょう? え、でも、アッチも首領? え?』


 声や印象は全く同じ様では在るが違いも在る。


 風貌は少し違い、そして何よりも、篠原良が二人居るという事実。

 ソレ等が、怒り狂った筈の蝦蛄に困惑を与えていた。


「そっか、アナスタシアもコッチに来てたのか……」

 

 懐かしむ様な声に、モンハナシャコの天を突いていた触角が垂れ下がった。

 その様は、まるで怒りが霧散している様に見えなくもない。

 

 実態としてはそのまま為に窺えないが、鬼神は恐れず近付いた。


「その格好見るのは……どれくらいぶりだろうな? でも、すまないが、久し振りに顔を見せてくれるか?」


 落ち着いた声で【見せて欲しい】と頼まれると、蝦蛄も断り辛い。

 如何にして首領が二人に成ったのかはともかくも、変身は解けていた。


 変身さえ解ければ、現れるのは女幹部アナスタシアである。

 惚けた様な彼女の頬に、鬼神の指先がソッと触れていた。


 敢えて指先だけで触れるのは、まるで夢が壊れてしまう事を恐れている様で在った。

 触れた指先が、ゆっくりとアナスタシアの頬を伝い、唇の端を少し擦った。


 その感触には、人目憚らず女幹部が震える程である。


「触れる。 夢じゃないんだな、此処に居る」

「あ、あの……えと」


 普段ならば女幹部といったアナスタシアも、鬼神の前ではまるで子犬同然であった。 


 女幹部と鬼神の出逢いだが、それを見ていてもクラウは何も云わずに居る。 

 唇を僅かに噛んでは居るものの、口を出そうとはしない。


 何故かと言えば、ソレは何度となく見た来たからだ。


 里の老婆の中には、良の顔を見た途端に縋り着く者すら居たが、それは過去に理由が在った。


 一人戦い続けた鬼神を慕い、多くの者がクラウの様に思いを寄せ、側に居ようとはした。


 ただ、全ての女性からの誘いを過去の鬼神は断っている。

 その理由は、極単純に【自分では子を為せないから】という訳があった。


 なればと、全ての女性達は他の者と添い遂げる他はない。

 でなければ、とうの昔に里は滅んでいただろう。


 それは数世代に渡って何度となく続き、クラウもソレは見て来ていた。

 

 悲しみから嘆く者も居れば、口汚く鬼神を罵った者も居た。

 中には、怒りからか手を出す事も一回二回ではない。


 それら全てを背負いつつも、鬼神はいつも独りだった。


 そんな彼が、まるで昔の恋人に再会した様な顔を覗かせる。 

 口惜しさは在れども、クラウは必死に黙っていた。


 とは言え、問題も在る。


 温泉に浸かって居た以上、鬼神は衣服を纏って居らず、アナスタシアにしても女幹部の衣装はお世辞にも上品とは言い難い。


 つまり、まかり間違えば、この場で【何か(R18)】が起こったとしてもおかしくはない。


 だが、場の全員が忘れて居ることも在る。

 アナスタシアは改造人間では在るが、空を飛べない。


 つまり、誰かが空を飛んで運ばねば成らないという事である。

 そして程なく、その誰かが降りて来た。   


「ちょっとぉ、せっかく特急便で送ってあげた……って」 


 そう言うのは、モンハナシャコを運んだ魔法少女だが、その顔は驚愕に彩られて居た。


「ウソ!? 篠原さんが二人居る!」

 

 魔法少女、川村愛の驚きの声が、僅かに湯から立ち登る湯気を揺らした。


   *


 温泉蝦蛄爆弾投下事件から少し後。


 場は【悪の秘密基地(仮)】へと移される。


 流石に素っ裸で話し合いは不可能と判断されたからか、湯上がり後に着替えは済ませていた。


 惚けた様に力が抜けた女幹部はともかくも、愛は混乱状態である。


「えーと? 篠原さんが二人居て……リサが抜け駆けして……」


 このままでは、またしてもひと騒動が起きてしまい兼ねない。

 其処で、良は何かを閃いた。 


「お、そう言えば……カンナはどうした?」


 何故【この場に虎女は居ないのか?】という疑問を投げ掛ける。

 人間の精神とは現金なモノで、新しい事をぶつけられらると誘導されやすい。


「え? あー……」


 腕を組み、唸る愛。

 ふと、顔を上げてポンと手を鳴らした。


「あ! そうでした! 大変なんですよ!」


 急に何かを思い出した様に、愛が焦った。

 混乱したり焦ったりと忙しいが、とにもかくにもその事情を知らねばならない。


「落ち着けって……で、何が大変なんだ?」

「なんか、此処に向かって、遠くから向かってるのが居るんです! で、カンナさん偵察に出てくれて……」


 いまいち要を得ない声に、良が眉を寄せる。


「それは、誰だ?」


 隠れ里とは言え、外に出掛ける者も居るだろう。

 時には、里だけでは手に入らないモノを調達する必要が在る。


「誰とかじゃなくて! スッゴい大勢なんです!」


 大幹部との戦いの最中、偶々魔法少女は見て気付いた。

 だからこそ、一旦決着を保留し、わざわざ良達の元へと駆け付けたのだ。


「そんな……今まで此処がバレた事は」


 愛の声に、驚きを隠さないのはクラウだ。

 彼女からすれば、仮に拷問に掛けられても場所を吐きはしなかっただろう。

 

 その筈が、何故か所在地がバレているという。  


 場に居る面々が、それぞれに原因を考える。

 其処でふと、餅田が「あ!」と声を挙げた。


「……アレですわ、バスのわだちとちゃいます?」 


 分裂が出来る餅田だからこそ、在る意味原因の究明が可能であった。

 

 偵察班と防衛組に分かれた訳だが、餅田は両方を見ている。

 そして、修理されたバスにて揺られて里へと辿り着いた。


 当たり前の話しだが、異界に大型車両というモノはまだ無い。


 それは重く、走れば痕跡を大きく残してしまう。


 土の上を走れば、車輪が土を抉り踏み固める。

 草の上を走れば、やはり大きな後を残すだろう。


 そういった派手な痕跡を追跡するのは、猟師でなくとも難しい事ではない。

 何せ見える形で何かが通った後がハッキリと残されて居るのだ。


 バスというモノを知らないクラウでは在るが、事態の重大性は理解が出来た。

 このままでは、里が襲撃を受け甚大な被害が出てしまう。


 であれば、里を捨てて逃げるという選択を選ぶ他は無い。


「私、皆に逃げる支度する様に行って来ます」


 もはや一刻の猶予もないというクラウ。

 だが、そんな彼女の肩が両方から抑えられてしまう。


 抑えたのは、首領と鬼神であった。


「ま、落ち着けクラウ」「今は俺達が居る」


 二人の良から発せられる声は、妙な説得力が在った。

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