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世界征服、はじめました  作者: enforcer
戦慄の作戦! 地球からの追放!?
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戦慄の作戦! 地球からの追放!? その20


 先ずはと腕と脚の修復に取り掛かり、次に機関部を調べ様とする博士。

 だが、問題が一つ持ち上がる。


 手持ちの機器は、基本的な整備の為のモノであり、手で使うモノが占めていた。

 普段であれば、基地の設備を使用する所だが、そんなモノはこの場に無い。


 つまり、博士だけでは力が足りなかった。 

 幸いにも、この時の博士には助手が付いている。


「ちょっと胸開けるから手伝って」

「え?」


 さも当然という博士に、クラウは目を剥いた。

 当たり前だが、胸を開けるという事自体、彼女にとってみれば未知の事である。


 未だに医学すら浸透して居ない世界では、博士の一言は異様としか聞こえない。


 迷いを見せるクラウに、良は目を向ける。


「クラウディア、こっから先は見ない方が良い……」


 良にしても、博士ならともかく弟子に自分の中身を見せたいという趣味は無い。

 身体こそ改造人間では在っても、其処に宿って居るのは人間の魂である。


 云われたクラウだが、顔を背けるどころか、進んで博士に近寄った。


「どう、したら良いんでしょう?」


 唾を飲み込み、意を決したらしい声に、博士は指で指し示す。

 以前、整備性が劣悪故に再改造を施した事がある。 

 やはりと云うべきか、この世界の良にも同じ細工は施されていた。


「ほら、此処と此処に指を引っ掛けて……でも、良いの?」


 慣れている人間であれば、或いは人の中身を見ても動じはしないだろう。


 だが、クラウは初めてである。

 それでも、決して逃げ出そうとせず、頷いてみせた。


「わかった。 じゃあ合図するから、そしたら引っ張って……いち、にの……さん!」 


 合図を合わせて、クラウと博士が良の胸を開く。

 当たり前だが、其処は人とは全く違う中身が覗いた。


 思わず、クラウは歯を食いしばり出そうに成った声を殺す。

 必死に耐える弟子に、良は困っていた。


「だから云っただろう……頑固モンめ」


 口を閉ざすクラウをソッと押しやり、博士が診察を始めた。 

 今まで生存して居ただけ在り、内部の損傷は其処まで致命的ではない。


 だが、全てが完璧ではなく、やはり劣化と損傷は見えた。


「だいぶ……傷んでますね」

「そらそうさ、なんせ長いことほったらかしだったからな。 どうせなら、軽い整備の仕方ぐらい習っとけば良かったよ」 

 

 自動車にせよ、整備無しでは走り続けるのは難しい。

 燃料さえ入れればある程度は走るかも知れないが、何時かはガタが来る。

 その意味では、良の身体はリサの想像を越えていた。


 調べれば調べる程に、酷使が窺える。

 

 それでも今まで保ったのは、在る意味運が良かったと言えなくもない。

 言葉から察するに、前に診ていた人が今は居ない事を現してもいた。


「何でこうなったかは知りませんけど……なんとかしてみます」


 損傷の原因を中から想像するとこは難しい。

 それでも、手を尽くす事を博士は惜しまなかった。   


   *


 洞窟の中では、時間を忘れる。

 風の流れも無ければ、温度の変化も少なく、日が昇っているのか暮れているのかも見えない。


 逆に言えば、それだけ博士は集中力を発揮していた。

 

 いつもであれば、基地の設備が彼女の手となり足となってくれる。

 だが、この時は全ての作業をリサ一人がせねばならない。


 それでも、なんとか一通りの作業を終えた所で、博士はフゥと額を拭った。


「どうでしょう、たぶん……変身の解除は出来ると思います」

「任せるよ、やってくれ」


 機器が無い以上、実際に試すしか方法は無い。

 開いていた良の胸を閉じ、博士はソッと離れる。


 程なく、良の身体は光を放った。 


 瞬き程の間、リサとクラウは腕で眼を庇う。

 光は長いことは続かず、収まっていた。


 見てみれば、変身を解いた良が姿を現す。

 変身が解けたからか、良は息を吸い込むと、長く吐いた。

 

「……なんか、久し振りだなぁ」


 そう言うのは、篠原良では在る。 

 ただ、彼の着ている衣服はほぼ原型を留めて居らず、ボロ布同然。


 慌てて背中を向ける博士に対して、クラウは、急いで用意していた薄手の布で良を覆う。

 

「悪い。 いきなり素っ裸ってのも、良くないからな」

「いえ、これぐらいの事は」


 軽い言葉を向け合うクラウと良。

 ふと、良は博士の背中へ眼を向ける。


「おーい、もう大丈夫だぞ」

「あ、はい」


 一応の礼儀エチケットとして背を向けたリサだが、まだ診察が終わっては居なかった。

 腕と脚を継ぎ足し、変身も解きはしたが、まだまだ動ける状態ではない。

  

 ソッと近付く博士に、クラウは逆に退く。

 

「じゃあ、もうちょっと掛かりますから……」


 リサがそう言った時、良の中で何かが動いた。

 今までは忘れていた筈のモノが、出口を求めるのが解る。 


 伸ばされた手が、触れた途端、良は我知らず動いていた。

 素早い動きではないが、不意を突かれれば避けられない。


「や!? ちょ……良さ……」


 すわ何事かと焦るリサだったが、直ぐに在ることに気付く。

 良は、博士に縋り着いて直ぐに震え出した。


 寒さから来るものとは違い、必死に何かに耐える身体の強張りが生む揺れ。

 

 顔は下を向いている為に見えないが、声は聞こえて来る。


「……ずっと……ずっと声が聴きたかったんだ……ずっと……」


 嗚咽に混じる様に、そんな声を良は漏らす。


 身体の調子を見たリサだからこそ、良が云わんとしている事が理解が出来た。

 長い年月が、過ぎたのは明白である。

 その間に、誰も見ていないという事は、博士だからこそ見えてしまう。

 

 数十年、更にもっとか、数えるのも馬鹿らしい程の間、良は独りで戦っていた。

 脱げない鎧は何時しか、良を縛る鎖へと変わっていた。


 人ではない姿のまま、人で居なければ成らない時間。

 見知らぬ土地にて、孤軍奮闘し続ける。


 積み上がったその孤独が、堰を切った様に流れ出す。


 思わず、リサは震える良の背中をソッと撫でていた。

 違う篠原良で在ることに違いはないが、やはり篠原良でもある。


 泣く良を慰めるリサに、クラウはソッと目を瞑っていた。 

 

   *


 暫く後、良は背中を壁に預けて居た。


「……すまん、情けないところを見せちまった」

 

 良の詫びに、リサは「いえ」と小さく応える。


「ずっと掛かり切りで、腹減っただろ? クラウディア、何かやってくれ」


 そう言われたクラウは「畏まりました」と返す。


「俺は、もう少し此処で休ませて貰う。 そうすれば、動けそうなんだ」


 時間をくれと頼まれれば、二人に断る理由は無い。

 心配そうな目を向ける博士の肩を、クラウはポンと叩いた。


「此処では何でしょうから、お食事なら外で」

「あー、うん」 


 促される博士を連れて、クラウは外へと向かう。

 離れていく二人の背中を、良は横目で見送っていた。


 洞窟から出る頃には、すっかりと日が暮れている。 

 ほぼ一日中、博士は良の身体を直すことに費やして居た事を知った。


「わー、もうこんなに経ってたんだ」


 我ながら時間を忘れていた博士の腹が、思い出した様に鳴る。

 そんな博士に、クラウは持参していた弁当を差し出した。

 

「お口に合うかは解りませんが……」

「ん、ありがとう」


 受け取ると、適当に腰掛ける博士。

 渡された包みだが、中身はパンに具材を挟んだモノである。


 とりあえずと、一口食べて見れば、素朴では在るが味そのものは悪くない。

 モグモグと食べ始める博士に、クラウはどこか悔しげな目を向ける。


 当然だが、隣でそんな風に見られれば気付くのは自然だ。


「……なに?」  

 

 何か悪い事をしたかと訝しむ博士に、クラウは唇を噛んでいた。

 ただ、いつまでもそうはして居らず、唇を開く。


「私は、貴方が羨ましいです」

 

 急な声に、博士は少しだけ咽せた。

 トントンと胸を叩いて、息を整える。


「ちょっと、急になに?」


 困惑する博士から目を離すと、クラウは遠くを見詰めた。


「あの人……一度だって泣いたこと無いんです……なのに……」


 クラウの主観で言えば、隣に座る少女よりずっと長く付き合いが在る筈だった。

 にも関わらず、良が泣きついたのはリサである。

 

 隠すことなく、嫉妬を露わするクラウに、リサは何とも言えない気分にさせられる。


「でも、貴方の方が信頼されてるみたいだけど?」


 付き合いの長さだけを言えば、リサとクラウでは比較するだけ馬鹿らしい。

 そんな指摘に、クラウは笑って見せた。


「もちろんです、だって、ずっと一緒でしたから」


 堂々と付き合いの長さを自慢するクラウに、博士は少しだけ目蓋を落とし、ジト目で見る。

 そう長いことそんな目をして居る訳でもなく、ふと、在ることを思い出した。


「あ、そう言えばさ、なんで良さんこんな所に?」


 唐突な質問に、クラウは目を丸くした。


「え?」

「だってさ、別に洞窟じゃなくたって、あの村だって良いんじゃないかな」


 率直に感じた事を博士が語ると、クラウは目を落とした。


「あの人は、恥ずかしがり屋だから」


 いまいち答えに成っていない言葉に、博士は鼻を唸らせた。


「え、でも、別にそんな事は……」


 訝しむ博士に、クラウはスッと顔を上げる。


「私にだけ、云ってたんですけども……女の子の背中に隠れなきゃいけない様な恥晒しじゃあ、誰にも顔向け出来ないって……そう言ってました」


 この世界の良の言葉に、博士は解ることもある。


 恐らくは、例え脚がもげようと腕が無くなろうとも、良は戦おうとはしたのだろう。

 しかしながら、如何に改造人間でも手足が無くては始まらない。


 戦う事はおろか、立つことすら出来なく成った良は、誰かに頼るしかなかった。

 ソレを恥じているからこそ、里から離れて隠れて居るのだ、と。


「その分、貴方が頑張ったんでしょ?」


 全身を覆う服でもなければ、全てを隠すのは難しい。

 今のクラウは、よく見れば露出している肌に傷が無い所がなかった。

  

 刃物か弓か、大なり小なりの痕は残されている。


「誰かの為に頑張ってるだから、私も、貴方が羨ましいかも」


 互いに顔を見合っていたリサとクラウだが、揃って遠くの沈みゆく太陽を見ていた。

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