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世界征服、はじめました  作者: enforcer
戦慄の作戦! 地球からの追放!?
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戦慄の作戦! 地球からの追放!? その19


 首領からの用事を仰せ使った博士を除けば、組織は再集合を果たしていた。


 些か人数は多いが、別に里の者達は何も言わない。


 それは偏に、良が頭を下げて【お願いします】と頼んだからだ。


 奇妙な話だが、良が頼めば里の者達は誰もが嫌とは言わない。

 寧ろ、快く異界で迷子に成った悪の組織を迎え入れてくれた。


   *


 他に場所が無い以上、とりあえず【悪の秘密基地(仮)】と化した一軒家にて、会議が行われていた。 

 

 議題に付いては、【今後どうしよう?】なのだが、いまいちその進みが遅い。

 その理由は、大幹部と客分の少女の睨み合いに在った。


「……新入り、報告せよ」


 女幹部の声に、餅田がプルプルと揺れる。

 偵察に出たAと、陣地防衛に回ったBは既に合体を済ませている。 

 分かれていた際の記憶は統合済みであった。


「そないに云われましても、色々おましてなぁ、何から話そか……」

「餅田よ、その様な事は聞いていない。 小娘の動向について尋ねて居る」


 アナスタシアからすると【偵察隊が何処で何をしていた】という事は余り重要ではないらしい。

 寧ろ【客分の魔法少女が何かした?】だけを尋ねて居た。


「えあ、別に、色々と、助けて貰うてますけども?」


 餅田は別に嘘は云っていない。

 

 偵察に出てからというもの、それこそ異界の地にて波乱万丈の冒険をしていた。

 だが、其処を除くと夜中に恋バナで多少盛り上がった程度である。


「そうではない! あの小娘が首領に対して何かをして居ないかと問うているのだ!」


 時に事実と認識は乖離を生む。

 直接見ていないのだから、それも無理はないのかも知れない。


「いや、せやから、別になんも……」


 端的に自分がみた事を餅田は偽ることなく言った。

 そんな超人に、虎女が詰め寄った。


「ね、いい子だからさ、全部吐いちゃいなって。 大丈夫、怒らないから」


 虎という割には猫撫で声のカンナ。

 

 その図は、尋問に用いられる【飴と鞭】に等しい。

 厳しい役と、甘やかす役が、交互に接する事によって相手を揺さぶるのだ。  


 とは言っても、この場には幹部達と餅田しか居ない訳ではない。


「ちょっと!? さっきから黙って聞いてればさ! 人を何だと想ってんの!?」


 流石に露骨な【犯人扱い】には、愛も我慢が出来なかった。


 実際には他の事があまりに忙しく、疚しい事などしている暇が無かっただけである。

 つまり、本人の胸の内がどうであれ、いかがわしい行為は行っていない。


「ぃ喧しい! 貴様への尋問は後だ!」

「そうそ、大人しくしてなって。 ちゃんと言い訳ぐらいは聴いてあげるから」


 全く持って、川村愛への信頼が欠如している大幹部。

 こうなると、愛の頭にも血が登る。


「あーもう!? あったま来た!! 今すぐ表へ出なよ! 白黒つけてやる!」


 如何にもプッツンとキレたらしい愛を、良かソッと肩を押し留める。


「川村さん、落ち着いて……頼むから」


 良が取りなせば、愛も一旦は点いた火を飲み込む。


「……篠原さん、でも、この人達むちゃくちゃだよ」


 さて、なんとか暴走し掛けた魔法少女を止める事には成功した良だったが、コレは単純に他のモノへ火を移したのと大差がない。


「首領!? どういう事ですか? 私よりも先に小娘を抑えるとは!?」


 普段から、冷静な分だけ、一度火が点けばなかなか鎮火しない。

 怒り狂うアナスタシアは、正に火事の様相である。


 それだけ火が強ければ、伝播する事も容易い。


「ずっるいよねぇ……やぁっぱりさぁ? なんか、してたんでしょ?」


 居残りを喰らった分だけ、カンナの声は低い。

 元々が愛に好意を抱いて居ないのだから、普段に比べると倍増していた。


「してないって云ってるでしょ!? だいたいさ、そっちこそなんな訳!? 寧ろ自分が変なことしてるからやっかんでんだ!!」


 抑えを跳ね除け、愛の気勢(ボルテージ)が跳ね上がった。

 そして、当然ながらそんな言い方をされれば相手にも熱は伝播する。


「上等じゃん? 小娘はお姉さんが躾てあげないとね」

「ええい! いずれ始末してやろうと思っては居たが、この場で処刑だぁ!?」


 もはやこうなると、如何に悪の首領でも手に負えない。

 三人寄らば姦しいと言うが、文字通りと言えなくもなかった。


「参ったなぁ、なんでこうなるんだろ?」


 ピーチクパーチクと喧しい三人から離れた良。

 そんな彼に、壁に凭れていた壮年が笑った。


「簡単だよ。 首領、君の責任だ」


 いともあっさりと、壮年はそう言ってのける。

 コレには、良も黙っては居られない。


「……どういう意味っすか?」


 何故自分が悪いのかと、良は壮年へムッとした顔を向ける。

 壮年はと言えば、未だに止まない女達の喧騒を見物しながらも、チラリと目だけを良の方へと動かした。


「どういう? 解らないか? 何故君は彼女達の期待に応えようとしないんだ?」


 問われた良は、顔を背けて押し黙った。

 実際問題として、大幹部と魔法少女が争うのは、自分がハッキリしないからだという自覚は幾分かは在る。


「じゃあ、どうすりゃ良いんすかね?」


 そう言うと、良はジッと自分の手を見た。

 一見すると生身の人の手にも見えるが、それは仮の姿に過ぎない。

 

 改造人間には、人間ヒトとしての機能は実は残されて居なかった。


「そりゃ、ちょっとした遊びぐらいなら出来るんでしょうが」


 仮に性交渉だろうと、しようとすれば可能ではある。

 しかしながら、それは本来の姿とはかけ離れたモノに過ぎない。

  

 今の良は、如何に人間の姿をして居ようとも、実態は違う。

 仮に、普通の人を造られた料理に例えるならば、良は展示された食品標本サンプルという方が近かった。

 見た目こそ似てはいるが、それだけであり、食べる事はおろか、飾る意外の意味が無い。


「俺に出来るのは、ヒトの真似事だけですよ」


 寂しそうな良の声に、壮年は何も云わずに前を向く。


「例え真似でも、それはいけない事かな? 何もしないよりは良いと私は思う」


 二人の会話は、姦しい声が覆い隠してくれていた。


   * 

 

 騒がしい騒ぎとは離れた場所では、別の意味で忙しく動き回る姿が在った。

 クラウはリサを医者と云ったが、強ち間違いでもない。


「とりあえず、ひと通り見せて貰いますから……」


 修理技師が機械の医者ならば、正に文字通りと言える。

 そして、そんな博士は、先ずはとばかりにこの世界の良を診察していた。


「酷い……どうしたら、こんなに成るんです?」

 

 身体の損傷具合に関しては、人間ならば生きている方が不思議であり、加えて、年月の経過に因る劣化は著しい。

 口には出さないが、今の良は【生きているだけでも奇跡】と言えた。


 持ち前の機器は基本的に首領用であり、当然規格は一致する。

 そうでなければ、如何に博士でも手の施し様が無かった。


「ちょっとやそっとじゃ、こんな事には為らない筈なのに……」


 リサの声に、良は笑う。

 語ろうと思えば語れなくは無いが、余りにそれは長過ぎた。


『……まぁ、色々と、在ってな……ホントに色々と』


 兜から響く声は、正しく良のモノと大差は無い。

 ただ、リサにしてみれば奇妙であった。


 今診ている良は、博士の知っている良とは同じながらも違う。

 見知らぬ土地にて、同一の人物で在りながらも別の良を直そうと試みていた。


「あの、何か、お手伝いを……」


 怖ず怖ずといったクラウの声に、博士は手近な機器を指差す。


「それをもう少し近付けて」

「はい」


 協力し合う二人は、見知らぬ間柄にも関わらず、医師と看護士、整備士と助手と言えた。


 機械を全く知らないクラウに比べれば、博士は何度も良の身体を直している。

 先ずはとばかりに、兜へと手を伸ばした。


「今すぐ、変身の強制解除は難しいですけど……取れるとは思います」

『あぁ、そいつは良い。 もう長いこと、この中に入ったままなんだ』 

「じゃあ、外しますよ」


 そう言うと、博士は少し操作を行う。

 具体的にどうすべきかは、やはり経験者でないと解らない事である。


 僅かな音と共に、良の顔を覆っていた兜が外された。


「……ぁ!?」


 顔が露わに鳴るわけだが、博士は慌てて口を手で抑える。

 その際、外された兜は洞窟の硬い地面に当たって音を立てた。


 顔が空気に触れたからか、良は長く息を吐く。


「……あぁ、カビ臭いが、何時振りだろうなぁ」 


 改造人間の肌は、一応は傷を負っても治る様に設計はされている。

 だが、その復元には限界が在った。


 チラリと顔をあげると、良はクラウと博士を見る。


「なぁ、あんまり……じろじろ見ないでくれ、そんなに顔に自信は無いんだ」 


 同じ人物である以上、元は同じ顔なのだが、この良は博士の知っている良とはだいぶ違った。

 髪はすっかり色が抜け、顔中には至る所に傷が残されている。

 

 口を手で抑える博士に、良は苦く笑って見せた。


「やっぱり、見せない方が良かったかなぁ」


 後悔を感じさせる声に、博士は慌てて口を覆う手を外した。

 自分の知っている良とは違うかも知れないが、目の前の人は間違い無く良である。


「すみません……それより、続きを」

「頼む」


 多少の事は在ったが、修理が再開された。


   *


 失われた腕と脚だが、コレは予備部品(スペアパーツ)を用意して置いたので問題は無い。

 千切れた部位を取り替える必要は在るが、時間が掛かるだけで修復は可能であった。


「こんな事も在ろうかと、用意したのが役立ちましたね」


 普段から、いざという時の備えを欠かしていない博士。

 そんな彼女の声に、良は目を瞑ったまま苦い笑みを覗かせる。


「……そういや、そんな事も云ってたなぁ」


 良の声は、昔を思い出す様な含みが在るが、リサもその意味が解らないでもない。

 此処には既に居ないが、過去には自分が居たことを想像する。


「なんかさ、思い出すよ……色々と、な」


 まるで旧友と再開を果たした様な良だが、それは間違いない。

 リサにはそうでなくとも、良にとってみれば確実に昔居なくなった人と念願だった再会を果たしていた。

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