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世界征服、はじめました  作者: enforcer
戦慄の作戦! 地球からの追放!?
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戦慄の作戦! 地球からの追放!? その9


 篠原良は悪の組織に改造された改造人間である。 

 だが、単に肉体を強化されただけではない。


 その胸の奥には、組織が威信を懸けて開発した在る恐るべき装置が内蔵されていた。

 改造人間ですら及ばない力を持つ異能力者の出現に対抗すべく。


 そして、組織の尖兵として異能を振るう邪魔者を屠る為に。


 だが、以前の首領が打ち倒された時点で、組織の目的自体は頓挫している。

 それでも、装置はそのままに残されていた。


 良へ近付くのであらば、如何なるモノであれ、物理法則には逆らえなくなる。

 それを理論体系化しないかぎり、それは、存在しないのと同義であった。


  *


 ただの柄と成ったモノが、ゴロンと転がる。


 見ればそれだけのことに過ぎないが、場の空気は固まった。

 ソレを為した当の本人はと言えば、フンと鼻息一つ吹く。


「なんだ、やっぱり玩具じゃねーかよ」

 

 如何にも、つまらないといった良の声に、剣を失った騎士は慄く。

 岩より硬い龍の鱗ですら斬り裂ける筈の剣は、見る影もない。

 

 今となっては、只の刀身が欠けた柄である。


「……き、貴様……何をした!? 剣が……破邪の剣が!?」

「何したって、その場で見てたろうが」

 

 良からすれば、危ない玩具を振り回す輩からソレを奪い去っただけだ。

 降りかかる火の粉を払うべく。

    

「この、何をしている!? 此奴等を捕縛しろ!?」


 兜に隠され、表情は窺えないが、中から響く声は裏返っていた。

 声色から察するに、喉が引きつる程に驚いているのだろう。


 指示が出されたからか、馬から続々と兵隊が降りる。

 降りるなり、槍の穂先が良へと向けられた。 


「う、動くな!? 大人しくしろ!?」


 兵隊達にしても、件の剣を消し去って見せた良は恐ろしいのだろう。

 穂先には震えが出ている。

 

 どうしたものかと悩む良に、壮年が鼻で笑った。


「どうだろう、首領。 この場は、此方が折れる………というのは?」


 大幹部の提案に、良は目を細めた。

 

 少し考えてみれば、ソレも悪くないと思えてしまう。

 今この場にて、変身すれば周りを片付ける事は可能だろう。


 良にせよ、愛にせよ、餅田にせよ、壮年も、全員が周りの兵隊を片付けるには大した時間は掛からない。


 だが、いざ戦うとなれば、相手側に死傷者を出さないというのは無理があった。

 少し加減を間違えてしまった時点で、簡単に人を殺してしまう。


「多少窮屈だろうが……物見遊山、というモノさ」


 実に気楽か声でそう言うと、壮年は自らの腰から愛刀をソッと払う。

 良にしても、自分達は何もしていないのだから、捕まえられるのは釈然とはしない。

 だが、偵察の為ならばと、フゥと息を吐いた。


 片意地張ることを止め、その場でドカッと胡座を決める。


「ほぉれ、サッサと捕まえれば良いだろう」


 良がそう言えば、愛は嫌そうに眉を寄せる。


「えぇ? ホントですかぁ? えぇ……」


 あから様に嫌がる愛に、良がチラリと顔を向ける。


「頼むよ、川村さん」


 良が丁寧に頼めば、愛もムウと唸った。


「次、奢りですからね? 全く」


 嫌々かつ渋々といった風に、両手を差し出す少女。


 不審者三人が、自ら縛に着くという。

 その事には、兵隊達ですら互いに顔を見合わせていた。


「……わて、帰ってもええでっか?」


 今更ながらに、餅田は残してきた半身を羨むのであった。


   *

 

 面々が捕まってから暫く後。 


 良達は、黒装束が襲った馬車の中に居た。 

 なんと、中身は空だったのだ。

   

 空ならば、後から中身を入れても問題は無い。

 そして、その中身は、悪の組織御一行とその他一名である。


 中でも取り分け目立つのは、真ん中が凹む程に縛られた餅田であろう。


「ムギュ~……」


 上下に膨らむ程に真ん中が縛っている為か、異様である。


「篠原はん」

「なんだ?」

「わて、こないな趣味在らへんのですわ」

「そらそうだろ? んなもん在ったら俺が困るわ」


 縛られる事に文句が在るのか、餅田の愚痴は尽きない。

 そんな中、一緒に捕まった女が、ジッと良を見ていた。


 独特の鋭い目つきだが、値踏みしている様でもある


「なんだよ、俺の顔ジロジロ見て、何か在るのかい?」

 

 別に顔に自信が在るという訳でもない。 であれば、見られる理由を問う。

 ただ、問われた女はプイッと顔を背けた。


「……別に」


 小さな返事に、良はフンと唸る。


「可愛い顔の割には、可愛くねぇなぁ……ぅぃ……ちょ、川村さん?」

「どぉかしましたぁ?」

「いえ、別に」


 相手の容姿を誉める良だが、その脇腹に愛が抓りを入れていた。

 

 捕まっている割には、実に飄々とした面々に、女は顔を窺った。


 片角の剣客は、瞑想でもしているのか目を瞑ったまま動かない。


 青年と少女は何とも言えない軽さがある。

 そして、餅はと言えば、馬車の揺れに合わせてプルプルと揺れていた。


「……どうしてだ?」


 ポンと出された声に、良と愛は揃って顔を向け、壮年もチラリと片目を開く。


「怖くは、ないのか?」


 問う声は、震えが在った。

 彼女が何を想うにせよ、良にはその心は解らない。


「いや、別に?」


 虚勢でも何でもなく、良はそのままを吐露する。

 怖い怖くないで言えば、これっぽっちも恐れては居なかった。


 そんな良の態度が気に掛かったのか、女が僅かに歯をギシリと軋ませる。


「どうし……」

 

 余りに動じない事に、声を荒らげそうに成ったのだろう。

 だが、急な動作が矢の傷を刺激したのか、苦痛に顔を歪める。


「あ! あんた、そういや怪我したんだよな……」 


 自分が改造されて以来、とんと傷の痛みとは疎遠に成っていた事を良は思い出す。


「餅田くん」

「はいな」

「確か、ちょっとした傷ぐらいは、治してやれるか?」   

「そらまぁ」

「んじゃ、頼むよ」

「へぇへ、まっこと人使いの荒い首領やで」


 軽い会話の後、餅田が女性へと寄る。

 縛られては居るが、元が不定形の為に特に問題は無い。


 強いて言えば、縄で縛られた餅という外観に難が在る程度だ。


 そんな餅の上部が、ニュッと伸びる。


 それには流石に驚いたのか、女は目を剥いた。

 

「何をする!?」


 鋭い声を発するが、縛られていては余り動けない。


「まままま、そう嫌がらんと、別に悪いようにはせんよってに」 

 

 落ち着かせる為の餅田なりの配慮なのだろう。  

 しかしながら、はっきり女の顔には恐れが浮かんでいた。


 ゆったりとした動きで、伸びた餅の先が傷の方へと近付く。


「やめろ! 何をする!?」

 

 流石に慌てたのか、女は縛られた両手で餅田を掴もうとする。

 が、元から骨も無く、関節も無いのだから掴みようが無い。


「ええやんかええやんか、先っちょだけ、先っちょだけやって……」


 本当に治療しようとしているのか、性的な嫌がらせ(セクハラ)をしようとしているのか怪しい。

 が、頼んだのが良である以上、口を挟まなかった。

 

 程なく、女の衣服の破れに自分の先を差し込む餅田。

 恐らくは、傷か肌に触れたのか「ヒッ」と引きつった小さな悲鳴。


「ちょっと、篠原さん? 流石に不味いんじゃ」


 流石に、同性の危機と感じたらしく、愛が心配そうな声を漏らす。

 

 だが、直ぐに餅田は女の脚から離れた。


「何をする……えと、あれ?」


 最初は怒っていた様子の女だったが、直ぐに在ることに気付いたらしく顔を変えた。


「どや? もう痛いこと在らへんやろ?」


 えっへんと言わんばかりの餅田。

 超人らしく、改造人間には出来ない事も可能だ。


 その一つに、自らの身体を用いて相手の怪我を治すという器用な真似も出来るのだ。


「ほれ、次は腕やで? 今度は暴れんといてや、余計に手間掛かるよってに」


 最初の時は嫌がった女も、今度は目を丸くしながらも抵抗はしなかった。    


   *


 餅田による治療自体は、文字通りあっという間終わる。

 浅い傷ならば、ほぼ触れただけでもって塞げるというのは本人の談である。


 ともかくも、女は自分の腕を信じられないモノでも見るように見ていた。


 痛みが無くなったのは、顔からでも判断出来る。

 ふと、女性が良へと目を向けた。


「……何故だ?」

「お? 何が?」


 尋ねられても、質問が短過ぎては解らない。


「何故、こんな事まで……私は……」


 其処まで言ったところで、女は口を噤む。

 言葉こそ出ないものの、目は時に口以上に雄弁に語る。


 強いて言えば【バツが悪そうな】顔を覗かせていた。


「なんだ? もしかしたら、俺を放り投げた事を気にしてんのか?」


 良がそう尋ねると、女は首を縦に振った。

 

 負けた事に関しては、実のところ良は差ほど気にして居ない。

 不意打ちを受けた訳でもなければ、騙し討ちもされていない。

 

 素手同士にて、技で遅れを取ったとあっては、負けた方に問題が在る。

 改造人間ですら倒すという技の冴えに関して言えば、良は感じ入っていた。 


「言っただろう? 俺は頑丈だってさ」


 良の声に続く様に、愛が縛られた手をパタパタと揺らす。


「そうだよ、あんまり気にしないでさ、篠原さんは無駄に硬いから」

「川村さん? 無駄ってなんすか?」

「え? いやほら、言葉の綾って言うじゃないですかぁ」


 捕まっているという事実など、歯牙にも掛けていないらしい姿。

 その様には、女は思わず信じられないといった目を向ける。


 だが、部外者の女からすれば、何故同じく捕まっている三人と一匹にソレほどの余裕が在るのか理解が出来ない。

 

 複雑な顔を見せる女に、隣で瞑想していた壮年が目を開けた。


「そう心配する事はない」

「……え?」

「我々が一緒に居る。 最初の出逢いは些か問題は在ったが、今は同じだ」


 低い壮年の声には、有無を言わせぬ何かが在った。

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