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世界征服、はじめました  作者: enforcer
戦慄の作戦! 地球からの追放!?
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戦慄の作戦! 地球からの追放!? その8


 とりあえず、自己紹介を決めた良だが、反応は微妙であった。 

 いきなり見知らぬ土地にて【悪の組織】を名乗ったところで、無理もない。


 とは言っても、いつまでも惚けても居られない理由もあった。


 何故ならば、矢が自然に空を飛ぶことは有り得ない。

 それを射掛けた者が居る。

 

 ふと、良の耳に音が聞こえた。

 ソレは、何か重いものが大地を蹴飛ばす音である。


「お次はなんだぁ?」


 目を向ければ、迫ってくる音の正体も見える。

 それは、馬こそ奇態だが騎馬隊らしき姿であった。


「くそ……」


 チラリと聞こえる悪態は、黒装束が漏らしたモノである。

 なんとか立ち上がろうとはするが、脚の傷が響くのか俊敏さは欠片もない。


「マズいぞ」「クラウ! 立って!」


 残り二人の声に、傷を負った一人は舌打ち混じりに顔を上げた。


「私の事は良い! サッサと逃げろ!」


 撤退を促された二人は、躊躇を見せる。

 だが、直ぐに「ごめんなさい」「すまん」と声を残して立ち去ってしまった。


 街道を離れ、藪へと逃げ込めば、騎馬で追うのは難しい。

 だが、一人は残されている。


 立ち去った二人を見ていた餅田が、良へと寄った。


「ちょお、篠原はん。 わてらものうなった方がええんとちゃいます?」


 超人らしからぬ声に、良はフゥと息を吐く。


「餅田くん? 僕ら、手掛かり探しに来たんだよ? 手ぶらで帰ったら、あいつ等になに言われるか解ったもんじゃないさ」


 意外な程に、良が語った理由は軽いモノだった。


 時間にすれば、数十秒といった所だろう。

 あっという間に、馬車を中心に騎馬隊がソレを取り囲む。


 囲まれるのは、良を筆頭とする四人に、負傷した黒装束。


 そんな五人を囲む一団から、馬を寄せた。


 一見する分には、中世の騎士と思しき姿ではあるが、差異はある。

 ハッキリ言って、纏う鎧は異様であった。


 鎧とは、本来ならば自らの体を護るために纏うモノだろう。

 しかしながら、良の目線の先に居る騎士は微妙と言えた。

 

 あから様に【自分は女である】と言わんばかりに強調された造形デザインに加えて、鎧としての実用性を度外視している構造。

 見ている側からすれば【何の為に着ているのか?】という疑問すら浮かぶ。


「なんだ、貴様は?」


 兜から漏れ出る声は、想像通り男のモノではない。

 甲高くは在るが、疑っているのは滲み出している。


 本来ならば、情報収集の為に下手に出るのが定法だろう。

 だが、馬の上から見下ろされるというのは、良には不愉快であった。


「あん? そらコッチの台詞だぜ? 偉そうなあんたこそなんだよ?」


 若干喧嘩腰では在るが、その理由もある。

 如何なる理由であれ、矢を射られたという事を良は怒っていた。


 フンと鼻息荒い良だっだか、謎の騎士はいつまでも良を見て居らず、負傷している黒装束の方へと兜を向けた。


「手間を掛けた割には一人だけか」


 そう言うと、騎士は片腕を挙げる。


「捕まえろ」


 淡々とした指示に、部下らしい数名が馬から降りると、黒装束へと近付く。


 本来ならば、良は別に先ほどまで喧嘩していた相手を庇う義理は無い。

 だが、その中身が女である事は既に解っていた。


「……何のつもりだ?」 


 遮る様に立つ良へ、そんな声が掛かる。

 だが、良はポケットへと手を突っ込むと顎を反らした。


「何のつもりだぁ? あんた、さっき弓矢放っただろ? こちとら、そのせいで服がボロボロだぜ? どうしてくれんだよ?」


 難癖以外、何ものでもないが、良は相手に文句を付ける。

 文句への返事は、放られる丸いモノであった。


 地面に落ちるソレは、地球のモノとは違うが硬貨らしく見える。


「あ? なんだ?」

「それで十分だろう、拾って失せろ」


 騎士の冷たい声は、良を乞食か何かと想っているからだろう。

 勿論、良にしてもそれは理解できてしまった。


「失せろ……だ?」


 只でさえ、ムカっ腹が立っていた所へ、余計な油が注がれる。

 こうなると、良も髪の毛が逆立つ様な感覚を覚えた。

 

 とりあえず何かしらの文句を付けてやろうとする良。

 

 良が息を吸った途端「隊長!」と水が差される。


 その声には、良も騎士も一旦睨み合いを止め、声の方へと目を向けた。   

 

 見てみれば、黒装束の覆面に手が掛かる。

 バッとそれが引き剥がされ、白い肌と更に白い髪の毛が空気に晒された。


「……んん!?」


 女性である。 その事は良も理解していたが、目を引くのは耳だ。

 有り体に言えば、白熊をそのまま人間と混ぜ合わせた様な顔立ち。

 見えなかった時には想像してない程である。 


「確認しました! やはり亜人です!」


 聞き慣れない単語に、良は在ることを確信する。

 認めたくはないが、此処は、自分達が居た世界とは違うのだ、と。


 続けてざわめきが起こっていたが、その中心は、大幹部の壮年である。

 

「角が生えてる……魔物か!?」


 本人はあまり気にして居ないが、壮年の額には角が二本在った。

 最も、片方は既に折れ、根元が僅かに残るだけ。

 

 それでも、やはり目立つモノは目立つ。


 広がるざわめきに、良を睨んでいた騎士は次には餅田へと目を向ける。

 組織は勿論、本人も超人とは言うが、見た目は大きな餅である。


「魔物を連れているだと……貴様、何者だ?」


 隊長と証される立場上、それなりの役職では在るのだろう。 

 しかしながら、部外者である良にとっては相手の立場など意に介さない。

 

 寧ろ、偉そうな物の言い方に更に血が登る。


「何者だぁ? いいか!? 俺様は……むごご」 


 堂々と名乗りを挙げようとする良だったが、ソレを止めたのは細い手。

 流石に事態を重く見たのか、川村愛が慌てて良の口を塞いでいた。


「あー、えーと、わ、私たち! 旅の、とちゅーでして」


 どう聴いても、愛の声は【取って付けた言い訳】である。

 勢い任せに、思い付いた言葉を並べ立てただけ。


 それでも、これ以上事態をややこしくしたくないという配慮であった。


 只でさえ、訳の解らない場所へ放り出された。

 それだけでなく、加えて訳の解らない輩に取り囲まれている。


 穏便に済ませたい愛の愛想笑いを、騎士はジッと見ていた。


 少女は気付いて居ないが、実のところ愛も怪しさを隠せていない。

 そもそも全く違う技術の衣服を着ているのだから、嫌でも目立つ。


「……旅の者だと言うならば、聴かせて貰おうか……魔物を連れている理由と、貴様らが何処の誰なのかをな」


 問われた愛の目が、忙しく泳ぎ始める。


「あー、あの、えーと……」


 名乗るつもりならば、幾らでも可能ではある。

 自分は何処其処の誰々で、何をしているのか、と。

 

 此処で問題なのは、それを証明する方法が無いという点だった。


 しどろもどろな愛に、騎士の部下が近付いた。

  

「先ほどから怪しい奴等め、其処へ跪け! 隊長に無礼であろう!」


 そんな声と共に、良の肩がドンと突き飛ばされる。


 東西南北を問わず、時代によっては士階級の立場は強い。

 それこそ、何処から来たのか怪しい一団よりも立場的にも上と言えるだろう。


 平民であらば、或いは言われるがままに平伏し、頭を上げる事さえ暴挙と言える。

 しかしながら、良は単なる平民でもなければ、乞食でもない。


 偶々この地へと降り立った【悪の組織の首領】である。


 例え相手が誰であれ、意地を張り通して来た。


「あ、おい! 何を……するんだぁああ!?」


 自分を突き飛ばしたであろう者を掴むと、良は力任せに放り投げた。

 倒れるどころの騒ぎでなく、完全武装の騎士が空を舞う。


「……無礼もへったくれも在るか。 三下が、誰に口利いてんだよ」


 一瞬、場の空気が凍った。

 重武装の兵士を片手で放り投げたと在っては、無理もない。


 だが、直ぐに空気が動き始める。


 良の前に居た騎士が、バッと馬から降りると腰の柄に手を掛ける。


「やはり……ただの人間ではないな?」


 そう言うと腰の剣を引き抜く訳だが、異様である。

 柄や鍔、それ以外にも豪華な装飾が施されているにも関わらず、刀身が無い。


「あ? なんだそりゃ? 玩具か?」

「玩具かどうか、その目でよく見るが良い!」


 別に良に限らず、刀身の無い剣など恐るるに足りない。

 次の瞬間、騎士の持つ柄から低い音を立てて光が伸びた。

 

「おん! びぃむさーべる……つぅやっちゃな! なんやえろう進んでまんなぁ!」


 今まで静かにしていたが、未知の武器に感銘を受けたのか、餅田がそう言った。


 その感想が聞こえたのかはともかくも、騎士は手首を器用に動かす。

 持ち主の動きに合わせて、光る刀身も音を唸らせた。


「聖霊と魔法にて鍛えられたこの破邪の剣で斬られたくはあるまい? 大人しく……」


 相手の声は、途中にて止まる。

 その理由だが、良がムッとしたままで近寄ったからだ。


「おい! 何を!?」


 相手にしてみれば【破邪の剣】なる武器を出した時点で、良が恐れ戦き平伏するものと確信していたのだろう。

 だが、いざ事に際して、良は膝を折るどころか堂々と近寄ってくる。


「なーにが、はじゃのつるぎ、だよ……」


 恐らく、この世界に置いては素晴らしい武器なのかも知れない。

 しかしながら、良にとっては武器とも呼べないモノでしかなかった。


「チィ……!!」


 舌打ち混じりに、騎士が光る剣を振るう。

 唸りを立てながら踊る刀身が、良の肩辺りへと狙いを付けた。


 剣先が触れるかどうかという時、光る刀身は散っていく。


「な!? そんな!!」


 幾多の者を屠って来たであろう光る剣だが、良には意味が無かった。 

 

「スターウォーズじゃあるめぇに、そんな玩具が、俺様に利くもんかね」


 苛立ち隠さずそう言うと、良は相手の手を力任せに払い除ける。

 光る刀身を持つ筈の柄は、ただの柄だけと成って地面に落ちた。

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