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世界征服、はじめました  作者: enforcer
戦慄の作戦! 地球からの追放!?
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戦慄の作戦! 地球からの追放!? その7


 忍者風の何者かは、良達を睨む。


「……聞こえなかったのか? 去れと言っている」


 続けられる声に、良は慌てて両手を突き出す。

 別に手から光線を出せる訳でなく【私は丸腰です】と現す為である。


「おいおいおい、そんなに喧嘩腰になんなくても良いだろ? まぁ、あんたらが何だってそんな馬車を襲うのかは……知らんけど」


 事情に付いては全くの知る由も無いのだが、一応は争いを止めんと動く良。

 但し、言葉で【止めましょう】と言った所で、相手が納得するかは別である。


「……警告は、した」


 淡々とした声でそう言うと、片手が挙がる。

 その声に合わせて、馬車を開けようとしていた他の数名も動いた。


 数にすれば、三人程でしかない。

 それでも、醸し出す空気は並みの者にはないモノがあった。


 場数を踏んだ者にしか宿らないであろう、本物の殺意。

 ソレは、良も今まで何度となく出逢っている。


 仕方ないと、良は舌打ち混じりに手を下ろす。

 

「……なんだよ、コッチなら、地球へようこそ……って歓迎してやんのに」


 異界の生き物達との初遭遇ファースコンタクトは、友好的とは言い難い。

 とは言え、相手方が迫ってくるのであらば、払うのが良である。


 ジリジリと間合いを詰める三人だが、少しずつ互いの距離を離した。

 少しずつ動く相手に、良と餅田も目を配る。


「いやぁ、篠原はんと居ると、ホント退屈せんですわ」


 軽口を叩く餅田だが、決してふざけている訳ではない。

 それは声色に現れている。


「俺は、出来る事ならこんな事と関わりたくねぇよ」

  

 せっかくの温泉旅行は中断。


 然も、訳の解らない場所へと放り出された挙げ句、謎の集団に取り囲まれる。

 楽しい旅行の筈が、摩訶不思議な冒険に無理やり駆り出されるのは不本意であった。 


 三人の内、真ん中の一人が一気に地面を蹴って駆け出した。


 意外な事に、特に変わった事もせずに真っ直ぐに突っ込む。

 しかしながら、その動きは並みの人間とは思えない程に速い。


「ほっ……こりゃあ意外だ」


 同時に、篠原良もまた、ただの人間ではなく悪の首領にして改造人間であった。

 組み付いて来る相手に合わせて、良も動く。


 相手の勢いを生かして放り投げてやろうと掴むのだが、ハッとなった。

 手に伝わってくる柔らかさに、良は思わず目を丸くしてしまう。


「……女!?」


 思わず動きを止めてしまう良だったが、相手は止まらない。

 素早く良に組み付くと、勢いを生かして投げを打った。


 フワリと、重い筈の良が浮く。


「篠原はん!?」

  

 餅田は慌てて声を出すが、既に手遅れであった。

 瞬く間に、地面に背を強かに叩きつけられる良。


「……っが!!」


 流石の改造人間でも、息が詰まる。

 

 良を放り投げた一人と、残りの二人は油断無く餅田を囲んだ。


「……スライムか? 魔物に用は無い……去れば追わん」 


 本来ならば、一々相手に声を掛ける必要など無いのだが、相手はそうした。

 意外な一面を見せる相手に、餅田はフフンと笑った。


「なんや、こん人ら案外優しなぁ……せやけど、わてはそうもいかんのですわ」


 見た目はどうであれ、今の餅田は悪の組織に加担する餅超人である。 

 である以上、首領を放り捨てて逃げ出したとあっては立つ瀬がない。


 餅田が声を発したからか、黒い忍者擬き達は僅かにざわめく。


「……喋る……だと?」


 彼等の認識からすると、餅田が喋る事が異様なのだろう。

 魔物という単語自体、地球でも用いられる事は在れども、それに見合うという生き物は居ない。


「なんや? わてが喋ったらあかんのか?」


 当然の様に喋る餅田だが、彼自身は見た目がどうであれ、人間ではあった。

 形こそ失っては居るものの、心までは無くして居ない。


「奇態な喋り方だが、まぁいい、言葉が通じるなら解るだろう? 失せろ」


 この段に至り、解ることもある。

 彼等が何故に餅田に配慮するのか、理由は定かではない。 

 それでも【逃がそう】としているのは伝わる。


「そう言うわけにも……行かねーんだよなぁ」


 場に響く声に、黒装束達がバッと一斉に動く。

 今まで、仰向けに寝ていた筈の良が、身を起こしていた。 


「……馬鹿な……まともに地面に叩きつけた筈だぞ?」


 相手にすれば、投げた相手が意識を保っている事自体が想定外なのだろう。

 変身こそしていないが、良はただの人間ではない。


「まぁ、生憎と頑丈に出来てるんでね」


 言葉と共に、ムクリと起き上がる。


「さて、先に手を出したんだったら……文句はねーよな?」


 今一度、良は相手と向かい合う。

 だが、どういう訳か変身しようとはせず、ただ身構えた。

 

 その意図が解らないからか、餅田が揺れる。


「ちょお、篠原はん! なんで変身せぇへんのや!」 


 当然といった疑問に、良の鼻がヘンと鳴った。


「あん? なんで? んなもん、素手が相手なら素手ってのが喧嘩の王道ってもんだ」


 自分なりの意地を持っている良からすれば、今の相手にはある種の共感シンパシーを覚えていた。

 投げ飛ばした後、彼等はその気になれば良へと追撃を見舞った筈である。


 しかしながら、その理由を知る由も無いが、敢えてそうしなかった。


 構える良に、黒装束の一人が立ち塞がる。


「逃げないのなら、手加減はしないよ」

「あぁ、その方がお互いの為だな」


 二度、対峙する二人。


 餅田にせよ、二人の黒装束に囲まれて居たが、敢えて黙って居た。

 奇妙な話だが、相手は加勢しようとしない。


「どういうこっちゃ?」


 どう考えても、一人より三人掛かりの方が楽に成る筈で在る。

 にも関わらず、そうしないのは、彼等が【公平に戦おうとする意思】が垣間見えた。


 最初の接触とは違い、今度はゆったりと間合いを詰める。


 先に動いたのは、黒装束。


 パッと左拳を打ち放つが、ヤケに遅い。

 見るものならば、蝿が留まると言うかも知れないが、事実良もそう感じていた。 


 だが、かえってそれが不自然に感じられる。

 強化改造された神経系は、時間すら遅く感じさせる。


 だからこそ気付いたが、左はただの誤魔化しに過ぎず、既に右の拳が迫っていた。

 

 左腕にて、相手の拳を払う良。


「おっと」「馬鹿な!?」


 意表を突いた筈が、呆気なく弾かれてしまう。  

 とは言え、黒装束も長々と密着しておらず、飛び退いた。


 再び、間合いが開かれる。


 顔が覆われている以上、相手の目線は見えないが、動揺は伝わってくる。

  

「なんだ? もうお終いか?」


 良の挑発気味の声に、黒装束が揺れた。


「奇態な奴だ……身のこなし、動き、どれも素人の筈だが」


 相手もそれなりに対峙している良を評価はしているのだろう。

 しかしながら、その判定は【素人】であった。


 ムッとはするが、事実として良は何かの訓練を受けた事はない。


「悪かったな、ド素人でさ」 


 せめてもの意趣返しとして、そう呟いた。


   *


 首領が対峙する中、その部下の立場である剣豪と客分の魔法少女が何をしているかと言えば、藪から様子を窺っていた。


 コレについては、偵察の基本に忠実に従っての行動と言える。


 二人なら一人が、四人なら二人が先方へ向かい、残りは後衛に努める。

 それは、いざという時に後衛だけでも逃走する為の心得であった。

 

 藪の中に隠れながらも、愛は苛立ちを隠さない。


「篠原さん、なんで? なんで変身しないの?」


 鼻息荒い少女の肩を、壮年が馬でも宥める様にポンと叩く。


「お嬢さん、もう少し声を抑えて欲しいな」


 あくまでも、影に徹する壮年を、愛がジトリと睨む。


「てか、なんで私達こんな事してるんです? パッと出て行って、あんな奴等……」


 今にも変身を始めそうな少女に、壮年は小さく首を横へと振った。 


「ソレについてだが、たぶん、相手が素手だから……かな」


 剣客としての勘が、壮年に思わせる。

 

「見てごらん、相手も、短刀を帯びては居るが、使おうとしないだろ?」


 壮年の声に、愛が目を細めた。

 よくよく見れば、確かに黒装束達は腰に小さいが何かを差している。


 何とも言えない相手の行動には、愛も首を傾げた。


「でも、ナイフが在るなら使えば良いのに」

「そうだな。 小さくとも、刃物は刃物、例え小さな金属片で在ったとしても、それは人に力をくれる」


 言いながら、壮年は自分の腰に帯びた愛刀の柄を撫でた。 


「それなのに使わないのは……恐らくだか、使いたくないんだろうな」

 

 壮年の説明に、愛は如何にも疑問だと首を傾げる。


「わっかんないなぁ……そんなの」


 年頃の少女らしく、解らない事は解らないとボヤく。

 年を経た壮年にしても、実のところは全てが解るという訳でもない。

 

 ただ【そんな気がする】程度であった。


「バッカらしい、サッサと手伝って終わらせましょ」


 せっかちな性格なのか、愛が良への援護を申し出る。


 コレには、壮年も苦笑いが浮かんだ。

 武人として、出来れば勝負に水を差したくないが、仲間を想えば、少女の意見に賛同したくなる。


 二つの意見が揺れるのだが、ふと、壮年は別の方へ目を向けた。


「静かに」

「ぇ、ぁ……」


 場が静まるからこそ、聞こえる音もある。

 それは、何かが空気を切り裂いて進む音。


 散々愛を抑えた筈の壮年は、先んじて藪を飛び出していた。

 

   *


「矢が来るぞ! 身を隠せ!」


 唐突な乱入者の壮年の声には、黒装束達も面食らったらしい。


「後衛か!?」


 そんな声か、挙がるが、構わず壮年は空を見上げる。


「来るぞ!」


 程なく、空から矢が降り注いだ。

 

 足元近くに矢がつき立ったからか、良は慌てて飛び退く。


「うおっと!? 危ねぇ!?」


 二、三本は身体を掠めたが、大したことではない。

 

 良とは違い、餅田の場合は直接に矢が突き立つ。


「あだ!! いだだ!! なんやいきなり!?」


 餅に矢が生えたというのが正しい見た目なのだが、痛いのか呻く。


 黒装束達と慌てて避ける。

 三人の内、二人は自分達が止めた馬車を盾と出来たが、良と対峙していた一人は違った。


 進んで先に出ていた事が裏目に出たのか、遮蔽物が無い。

 何本かは手で払い除けては居たが、その内の一本が、大腿部へと当たってしまった。


「……ぅ!?」


 矢自体の質量その物は大したことはないかも知れないが、速度を伴えばそれは凶器である。

 動作が止まれば、矢は止められない。


 次に二の腕へと矢が当たる。 


 いきなり事に、体勢を崩す相手に、良は舌打ち混じりに近寄ると、立ち塞がった。


 顔を腕で庇い、自らを盾とする。

 避けねば矢は当然当たるのだが、良は動かない。


「どういうつもりだ……」


 背中から聞こえる驚きの声に、良は鼻で笑う。


「いつもの、悪い癖さ」

 

 そう言いながらも、盾に成ることを止めなかった。


 時間にすれば、数秒間だろう。 矢の雨が止む。

   

 顔を庇うのを止めた良は、自分の様子を見て「うわぁ」と呻く。


「あ~あ、エラいことに成ってんな」

 

 本数にすれば数本ながらも、矢が突き刺さっているのは痛ましい。

 だが、良は痛みなど感じていないが如く、身体に刺さった矢を引き抜き放った。

 

 自分の掃除を終えると、振り向く。


「よぅ、生きてるか?」


 見てみれば、黒装束の脚と腕にそれぞれ矢が突き刺さっている。

 但し、相手は寧ろ良の方を見上げていた。


 単純な見た目ならば、良の方が遥かにボロボロである。


「どうして……っ……それに、矢が……」

「あん? 言ったろう? 悪い癖さ……ってな。 それに、俺様は頑丈でね」


 良の声に、黒装束が動くが、痛みが動きを止めたらしい。

 必死に堪えては居るのだろうが、呻きが漏れている。


「おいおい、大丈夫かよ」


 思わず、良が手伸ばそうとするものの、黒装束は自分の脚に突き立つ矢を掴む。

 

「構うな……」


 一言置いてから、矢を自ら抜き去った。 僅かに血が飛び散る。


「へん、可愛くねぇなぁ」


 折角自らを盾にした割には、相手からの感謝は無い。

 勝手にやった事である以上、それも仕方ないと諦める。


 ムッとする良に「篠原は~ん」と間延びした声。


「わての事はどうでもええんでっかぁ?」


 哀しげな声だが、良は餅田が超人である事を忘れては居なかった。


「んなもん自分で何とか成るだろ?」

「いややわぁ、やっぱこん人いけずやわぁ」

 

 辛辣な首領に対して、ペッペと矢を身体から吐き出す餅田。


 矢の雨とう凶器すら意に介さない良と餅田に、黒装束が何とか立ち上がる。


「ただの者ではないな……何者だ?」

  

 問われたなら、答えねば為らない。

 ウーンと鼻を唸らせると、ポンと手を叩く。


「聞いて驚けよ……俺達は、通りすがりの悪の組織さ」


 ふと、良は思い付いたままに答えた。

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