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世界征服、はじめました  作者: enforcer
戦慄の作戦! 地球からの追放!?
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戦慄の作戦! 地球からの追放!?


 辛くも、新手の超人計画を退けた篠原良。 

 一つの戦いを経て、僅かの間の平穏を得た。


 しかしながら、未だに全てが終わった訳ではない。

 既に、次なる計画は蠢き始めていた。

  

  *


「うぎぃやぁあああああ……」

 

 世界の何処かで、誰かが放つ最後の悲鳴が大きく響いた。

 激しい電圧は、人体などあっという間に炭へと変えてしまう。


 パタリと円卓に突っ伏すが、誰もその人物へ憐憫を向けては居なかった。


 炭となった者が椅子から引きずり降ろされ運ばれていく。

 同じ卓を囲う者達からすれば、次は我が身であり、何かをいう余裕など無い。


 暗い空気に負けず劣らずの溜め息が、盛大に部屋に響く。


『また失敗か……君達がやる事はどうしてこうも上手く行かないのかね?』


 部屋の壁に映し出されるのは、真首領。

 相も変わらず影法師(シルエット)に目が浮いているだけで全貌は窺えない。


 その声は、酷く低く、聞き取り辛いが、何故だか聴いている者の脳に直接響いている様にも感じられた。


 誰もが、真首領に反論など出来る筈もない。

 何せ、少し前に失敗した者がどうなったのかは見せつけられていた。


 その焦げた臭いは、消えては居ない。


「……お、御言葉ですが、真首領。 我々の戦力では、かの篠原良を止めるのは難しく」


 超人エックス回収の為に、一応は彼等も増援は送り出しては居た。

 だが、送り出したが最後、送り出した部隊からの連絡は途絶えたままである。


 体内に爆弾を仕込まれている以上、逃げ出すのは不可能だった。

 にもかかわらず、定時連絡どころか、救援の要請もない。


 つまり、見えない所で既に片付けられてしまっているというのが一番自然であった。

 

 未だに戦力は残されては居ても、出した所でどうなるかは見えている。


 口を噤む面々に、壁に映し出される真首領は少し揺れた。


『そうか……君達に何まかも任せては、酷と言うものか』


 部下に任せきりであった真首領は、流石に無理だと悟ったのかフゥムと唸る。


『本来ならば、我々は余り関与すべきではないが、少々此方も君達に手を貸してやろう』


 意外な真首領の声に、集められた面々は顔を上げた。


 場の誰が指示を飛ばさずとも、数名が卓へと近付く。


 ゴトンという重い音と共に、卓の上に奇妙なモノが置かれた。


「真首領、コレは?」


 面々の目に見えるのは、例えるならば誘導式弾発射機(ミサイルランチャー)である。


 設計(デザイン)こそ、地球上に在るモノに似ているのだが、細部は違った。


 思わず、面々の一人が置かれたモノへと手を伸ばす。


『気をつけたまえ。 それは、諸君等には過ぎたモノだぞ』


 注意を促す声に、伸ばされた手が引っ込められた。


『さて、諸君等を苦しめ、我々の邪魔をする篠原良だが、その対策として我々は考えた。 始末が出来ないのであれば、消す他はない、とな』


 尊大な声だが、場の面々からすれば、疑問の方が強かった。

 用意された兵器に関しては、一応知らなくはない。

 

 標的を選定し、推進剤を用いた弾頭で標的を破壊する。

 地球上に在る同型の兵器でも、戦車や航空機でも落とせるだろう。

 

 しかしながら、場の面々からすれば、疑問は尽きない。

 

 通常の武器で倒せるならば、誰も苦労などしていないのだから。


「真首領、消す……と仰いますが、如何にして」


 理解できないのであれば、尋ねる他はない。


『言った筈だが? 文字通り、それを使用すれば何処かへと消し飛ばせる』


 あまり説明する気は無いらしく、真首領の言葉は要を得ない。


「消し飛ばすとは、何処へですか?」

『そんな事は気にするべき事かね?』


 真首領から【聞くな】と言われれば、従うのが勤めである。


『被害は最小限に留める様に調整はして置いた、気にせず使いたまえ』


 真首領しても、支配すべき者が居ないのでは意味が無い。

 そして、部下である面々からすれば【しろ】と言われれば動くのが当たり前であった。


「仰せのままに……」

 

 誰が合図するでもなく、場の者達は真首領の言葉に応えた。


   *


 超人事件から暫く後。 在る晴れた日。

 

 何処かで何かが蠢いて居たとしても、それを気取るのは難しい。

 更に、他の事で忙しいとも成れば、更に無理がある。

 

「総員! 整列せよ!」


 バッと出される指示に、悪の組織の戦闘員達は並んだ。

 指示を飛ばすのは、女幹部アナスタシアである。


 いつもで在れば、外に出る事は憚られる格好の彼女だが、この日は違う。


 果たして、何処から仕入れたのか、ソレは問題ではない。


 ブラウスにベスト、密着型(タイト)なスカートに帽子、ついでに手にはメガホン。

 有り体に言えば、バスガイド的な格好である。


 何故そんな格好をしているのかに付いては、本人にしか解らない。


「諸君! いよいよこの日が来たぞ!」

「首領! 万歳! 旅行! 万歳!」


 大幹部兼用バスガイドの声に、戦闘員達も腕を挙げて応える。

 当たり前なのかはともかくも、各自がバッグなどを持参済みであった。


「はい! 奇数組は一号車! 偶数組は二号車だ!」


 メガホン越しのアナスタシアの号令に因って、計画が始動する。

 指示にしっかりと従い、ウキウキと動き出す戦闘員達。


 その悪の計画とは、かねてから予定された【温泉旅行】であった。

  

 では、悪の組織の乗り物は何かと言えば、レンタルされたバスである。


 車体の前面には【悪の組織様】と印されていた。

 傍目には冗談としか映らないからか、問題とはされていない。


 バスに乗り込む服装さえ気にしなければ、どこかの会社の社員旅行といっても差し支えないだろう。


 そして、そんな光景を見守るのはアナスタシアと同じく大幹部の虎女なのだが、この時、なんと部外者が一人混じっていた。


 本来ならば、組織の部外者など計画に組み込めない。

 組織の形態上、外に漏れては拙い事もある。


 が、其処は長である良が【其処を何とか】と頼めば無理も押し通せた。


 そうした結果、今回の計画に参加を許されたのは、博士と同じ年頃の少女である。


 一瞬目を反らし、露骨に舌打ちと溜め息を漏らす虎女。

 それでも、顔を取り繕う。


「ねぇ、川村さぁん」

「はぁい? なんですぅ?」


 とりあえず、丁寧な言葉を交わす虎女と部外者の少女。

 但し、川村と呼ばれた少女はただの小娘ではない。  


 裏の界隈でも危険な対象と見做されている【魔法少女】である。

 

 そんな強大な彼女だからこそ、悪の組織の大幹部と睨み合いが出来ていた。

 そして、少女の顔には薄っぺらな笑顔が張り付いているが、虎女は気にしていない。


「どぅしてあなたが此処に居るのかしらぁ? 呼んだ覚えが無いんだけどぉ?」

「えぇ? だってぇ、篠原さんにお願いって言ったら、良いよって言いましたよぅ? それにぃ、この前の事件の時なんて無視(シカト)されちゃいましたしぃ」


 如何にも和やかな会話を心掛ける二人だが、実のところ仲は宜しくない。

 それどころか、裏を明かせば互いに喉笛を狙ってすら居た。


「おーい、そろそろ出発だぞ?」


 表面上は笑っているからか、気にせず声を掛けるのは良である。

 そして、良の声に対して、虎女と魔法少女は揃って首をグンと向けた。


「「は~い」」


 にこやかな筈なのに、嫌な寒気がする返事である。


 背筋に異様なモノを感じる良だったが、ツンツンといった感触に振り向く。


「はいは……い?」


 良の脇腹を突っついた人物だが、博士だった。

 何時もは本人の意向か白衣といった出で立ちなのだが、この日は旅行という事も在ってか、私服であった。


「えと、旅行には、良い日ですよね?」


 当たり障りの無い挨拶だが、良の眼は見えている。


「なんか、新鮮だな」

「えーと?」

「リサのそんな格好見るのも、さ。 似合ってるぜ」


 特に遠回りはせず、思ったままを伝える。

 それだけでも、博士の頬は緩んだ。


 今の笑顔からは察せないが、ついこの間の恐ろしさが嘘の様である。 


 如何にもエヘヘといった博士だが、直ぐに顔をハッとさせた。

 博士の顔の変化に、良は思わず振り向き掛けるが、それより速く、襟が捕まえられる。


首領(おきゃくさま)、此方へお願いしますぅ」


 そう言うのは、バスガイドの格好なアナスタシアであった。

 妙齢の女性といった見た目にも関わらず、その膂力は人のソレではない。


「アナスタシアさん? あの、僕、一応首領なんだけど……」

「そうですとも。 ですから、速く乗って頂かないと」


 ずるずると首領を引きずるバスガイドを、博士は露骨に睨んだ。

 その視線に対して、勿論アナスタシアは気付いて居る。

 

 果たして、女幹部が博士の事を邪魔したのかと問われれば、その通りであった。


 組織内に置いては【組織内での恋愛厳禁】といった掟は無い。

 長である良だが、余り組織の運営に付いては頓着をしていないのだ。

 

 つまり、しようと思えば出来る。

 但し、ソレは誰も邪魔をしないという条件が課せられていた。


 一見する分には仲良く見える大幹部達にしても、譲れないモノはある。 


 緊張と弛緩が入り混じる賑やかな乗車風景を眺める者も居た。


「なんや、賑やかでんなぁ」


 如何にものんびりとした口調でそう言うのは、新入りの餅田。

 

「まぁ、いつもの事だよ」


 そんな説明をするのは、大幹部の一人である剣豪(ソードマスター)と称される壮年である。


「ところで、ここの皆さん……あんまりわての事見ても驚かへんねんですわ」


 自分の見た目に関して、殆ど関知されない事に、餅田は疑問を呈す。 

 新入りの超人の声に、壮年は静かに笑った。


「入り立てのお前さんには解らんだろうが……色々在ったからな」


 何処か遠い眼をする壮年は、何処まで見通しているのかは解らない。

 それでも、特段の何も無しに受け入れてくれる事は、餅田にとっては有り難い事だった。


「おおきに、恩に着ますわ」


 その声に、壮年は静かに頷いた。


   *


 様々な面々が、各々決められたら号車を無視しつつも、何とか全員がバスへと乗り込んで行く。

 程なく、悪の組織を乗せたバスは走り始めた。

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