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世界征服、はじめました  作者: enforcer
恐怖! 超人エックス出現!
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恐怖! 超人エックス出現! その12


 攻めてくる強化人間と、それに立ち向かう改造人間。


 皮肉な事に、以前に殺し合った筈の二人は、肩を並べて戦っていた。 


『篠原! 後ろだ!』

『わあってますよ!』


 共闘する事はコレが初めてではない二人なのだが、意外な程に馬が合う。

 互いに背中を預け合い、時には連携を見せる。


 悪の組織の首領と、其処から脱走者。


 そんな間柄にも関わらず、二人には何処か通じ合う何かが在った。


「ええい! たかが改造人間二人に何を手間取っている!?」


 隊長格は、焦りから憤慨していた。


 装備は自分達の方がより新しく、人数に関しては多い。

 それなのに、旧式の改造人間に遅れを取らされる。


「くそったれが! お前ら! 半分は超人エックスを狙え!」


 このままでは無駄に人員が減らされる。

 其処で、隊長格は餅田へと矛先を向けた。


 本来の目的が【超人の回収】ならば、例え半数を犠牲にしてでも、目的達成の為の捨て駒にする事は致し方ない。


 相手の声が聞こえたからか、餅田は身体を鼓舞する様に震わせる。 


「しゃあない、わてもとっておきを見せたるわ!」


 馬鹿正直に捕まるつもりなど、毛頭無いのか餅田はそう言う。

 次の瞬間、餅田の身体に、僅かに割れが走る。


 端から見ていると解るが、餅田が二つに分かれたのだ。


「「秘技! 分身の術や!」」


 言葉通りと取るべきかはさて置き、なんと餅田は二つへと身を分けた

 如何なる原理か、分割前と体積には変化が無い。


「なんだ!? こんなの聴いてねぇよ!?」


 回収班の一人が喚く。

 いきなり二つに分かれただけでなく、左右から目標が近寄ってくるのだ。

 

 目の錯覚や幻覚といった虚仮威しとは違い、餅田は二人居た。


「「しばいたるでぇ!!」」


 思考も共通しているのか、声は左右から掛かる。

 相手からすれば、悪夢の様な光景であった。


 鏡合わせの如く、左右へ散った筈の餅田が、同時に殴り掛かる。

 

「「ダボーパンチ!!」」


 巻き舌気味の掛け声と共に、左右から殴られる。

 とてもではないが、防御のしようもない。


 恐ろしい事に、同時に殴られるという事は、逃げ場が失われるという事でもあった。

 吹き飛べば、それだけでもある程度の衝撃を分散する事は出来るのだが、ソレすらも許されない。


 強化人間の身体は、プレス機に掛けられたが如くひしゃげた。


「「どや? 参ったか?」」


 相も変わらず、同時に響く餅田の声。 返事は無く、ただ倒れる。

 

「二つに分かれたからとなんだと言うんだ!」

「サッサと潰せ!」

 

 仲間がやられても、強化人間達は戦いを止めない。

 相手が何であれ、彼等は役目を果たす他に道は残されては居ないのだ。

 

「「こんの、どアホぅ共がぁ!? ええ加減にせんかい!!」」


 三人掛かりで掛かってくる相手に、二つの餅田は怒声を飛ばす。

 良と似通った彼にしても、無益な戦いはしたくはない。

  

 だが、相手が掛かってくるのであれば、降りかかる火の粉は払わねば成らなかった。


「やったるで!」「おうさ!」


 初めて、分かれた餅田同士が声を掛け合う。

 具体的な内容に付いては一切話して居ないが、言いたい事は伝わるのか身体が動く。 


 分かれた餅田の一部が伸び、それが握手の如くガッキと握り合った。


「「そうりゃあ!」」


 片方の餅田を、もう片方の餅田が振る。

 見た目はともかくも、その様は、あたかもハンマー投げの選手の似ていた。


 ブンブンと音を立てて、餅田が餅田に回される。


 遠心力を伴えば、ただ振り回して居るだけでも凶器と化す。

 跳び掛かった筈の三人は、蠅でも払う様に散らされてしまった。


 相手を払った餅田だが、なんと振り回していた自分を真上へと放る。


 真上に上がれば、真下へと落ちる訳だが、触れ合った途端に一つへと戻った。


「どや!! 悪党共! 懲りたらもう止めぇや!」


 勝ち誇る餅田。

 だが、その近くには先程倒れされた筈の強化人間が居た。


 ノロノロと近寄ると、割れたガスマスクから僅かに覗く目を窄める。


「なんやおどれ、まだやるんかい」


 忌々しいといった餅田の声に、ガスマスクから不気味な嗤いが漏れ出る。


「……しん、首領様に……栄光あれ……」

「あん? ズタボロの癖に何言うて……」


 最後に残った息を吐き出す様にそう言い終えた途端、強化人間の身体は光る。

 次の瞬間、爆弾と化した身体が爆ぜた。 

 

 爆弾の威力は、その量に比例する。

 手で持ち運べる手榴弾ならば、それなりだが、その大きさが人一人分となるとそれだけ威力は増した。


 弾け飛ぶ身体は榴弾と成り、容赦なく餅田の身体を削り取っていく。

 爆風が誇りを巻き上げ、辺りを煙が覆った。


 餅田の事も勿論なのだが、良が驚いたのは、相手が自爆した事である。


『この、馬鹿野郎が……』


 死ぬことすら厭わない相手の戦い方に、良は言葉を詰まらせた。


 命すら捨てる戦いなど、馬鹿げた話としか思えない。

 死んだ所で、何の益も得られないのに、平然と命を投げ捨ててしまう。


 首領で在りながらも、部下を想う良にすれば正に理解し難い行為であった。


『篠原! ボケッとしてんなよ!?』

『……解ってますよ、橋本さん』


 安否は気掛かりでは在るが、だからといってそれだけに集中も出来ない。

 後ろ髪引かれる思いだとしても、良は目の前の敵に集中せねばならなかった。


   *


 二人の改造人間が戦う近くで、爆煙が晴れる。

 少しずつだが、其処には餅らしい姿が見え、声も聞こえた。

   

「……いだだだだだ……」

 

 至近距離ということが災いしたのか、爆発に因って大きく抉られた餅田。

 その身を抉られただけでなく、直接熱を浴びてしまった部分など、炭化してしまう。


 如何に超人と言えど、その体には欠点も在った。


 装甲を纏う改造人間とは違い、餅田は丸裸と言っても差し支えない。

 である以上、爆発を浴びればその被害を丸ごと受けるのに相違なかった。


 良と橋本の両名が踏ん張っているからこそ、今のところ餅田に向かう強化人間は居ないのだが、かといって問題は残っていた。


「あかん……腹減って目ぇ回ってきた」

   

 回すべき眼が在るのかはともかくも、損害ダメージはそのまま餅田の身体に影響を与えていた。


 抉られた分だけ身体は小さくなり、それだけでなく、身体が焼けた傷を治そうとする分だけ、蓄えた栄養を使ってしまう。


 在る意味では、餅田の意志を無視して身体は何とかしようとしてしまう。


 それに動いた分も加えれば、燃料が保たない。

 今の餅田を苦しめるのは、空腹感であった。

 

「……なんか、喰わんと……」


 戦いの最中では在るが、餅田は別の思考に捕らわれ掛けていた。

 それは、本能に根ざした【飢餓感】である。


 急速な消耗による栄養失調は、餅田の意識を朦朧とさせていた。


「……あかん、今は、それ所やないんや……」


 本人が如何に戦いに集中しようとしても、身体は栄養を欲する。


 其処で、ふと餅田は在ることに気付いた。

 爆散したとはいえ、強化人間の破片は見える。

 

 そして、強化を受けたとしても、元の材料は人間であった。

 つまり、体組織や内臓の一部は残されてる。


 それを見てか、餅田は思わず唾を飲み込むという錯覚を感じた。


 知らず知らずの内に、身体の一部が死体へと伸びる。

 明らかに、餅田の身体は、見つけ出した栄養源を欲してしまう。


「……止めぇや、わて化けモンやない……」

 

 見た目がどうであれ、自分は人間であるという矜持を捨てては居ない。

 にも関わらず、身体は死体を欲する。


 自分の身体を抑えるだけでも、精一杯であった。


 このままでは動けそうもない餅田だが、其処へ「マスター!」と声が掛かる。


 呼び声に、餅田がハッとした様に身体を震わせる。

 見てみれば、橋本と良が探しに来た少女が何かの箱を頭上へと掲げていた。

 箱の横には【cornsyrup(コーンシロップ)】と銘が在る。


「コレ、行きますよ!」


 箱を投げようとする少女だが、その姿は、丸見えであった。


「あほう!? 早よ逃げぇ!!」


 飢餓感を一旦意識から切り離し、子分に逃げる様に促す餅田。

 だが、当たり前の話だが、大声を上げれば周りにも響いてしまう。


 強化人間達も気付いたのか、阻止せんと動いた。


「阻止しろ!」


 せっかく厄介な超人の動きを止めたのに、また動き出されてはたまらない。

 箱を投げようとする少女へと、躊躇なく銃口が火を噴いた。


 いきなりの事だったからか、狙いは余り正確とは言い難い。

 それでも、下手な鉄砲数撃てば当たるとも言う。


 反れた弾は建物の一部を削ったに留まったが、残りの弾は、少女へと向かった。

 

「……ぁ!?」


 少女にしても、馬鹿正直に撃たれるつもりは無く、慌てて身を隠そうとはしたものの、声が上がる。


 頭上である以上、見えなくなれば生死の判別は着きそうもない。


 子分が投げ落とした箱は、餅田がしっかと受け止めていた。

 

「……この、阿呆共が……」


 箱を丸ごと身体へも受け入れながらも、唸る餅田。

 程なく、人がガムを吐き捨てる様に、体内の空に成った箱をぺっと吐き出す。

 

「おどれら、生きて帰れるなんて思うなや!!」


 栄養さえ確保すれば、意識はハッキリとする。

 今までは言うことを聞こうとしなかった身体も、自由に動いた。


 並みの人間ならば吐き出しそうな甘いシロップだが、今の餅田にとっては正に天からの助けと言えた。

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