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世界征服、はじめました  作者: enforcer
悪の組織 最期の日
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悪の組織 最期の日 その20


 前回の襲撃の際、悪の組織は撤退を余儀なくされた。


 その理由は幾つか挙げられる。


 先ずは、篠原良による力の抑制効果だろう。

 それをされてしまえば、戦闘員達の力は激減してしまう。


 その要因は大きいが、ソレが全てでもない。


 首領による【相手に必要以上の怪我を負わせない】という制約が在ったからだった。

 相手が死物狂いで掛かって来るのに対して、手加減在りでは勝負に成りはしない。


 逆に言えば、制約さえ無くせば、存分に力を振るえる。


 以前は撤退させられた悪の組織だったが、今回は、あっという間に相手を制圧し始めて居た。


   ✱


 戦況に付いては、逐一報告が為される。

 そして、それを受けてか、背広姿の篠原良はウ~ンと唸った。


 攻め込まれて居る割には、随分と余裕が窺えるが、胸の内迄は見通せない。


「やっぱさ、コッチの被害が大きいよな」


 そんな声に、秘書が首を縦に振った。


「はい社長。 やはり、通常の戦力では改造人間を制圧するのは不可能かと」


 当たり前と言えばその通りなのだが、普通の軍隊程度で追い払える、もしくは撃退出来る様であれば、改造人間の存在意義は無い。


 例え相手が戦車で在ろうと、素手で制圧してしまえるからこそ、その価値が在る。


 無論の事、今出している警備員兼用の兵士達には、前回の様に最新鋭である液体装甲(リキッドアーマー)を纏わせては居た。

 ただ、如何に装甲その物が頑強でも、中身は通常の人間である。

 

 改造人間が遠慮をしなければ【少々硬い的】程度の効果しか得られない。


 そうなると、悪の組織が遠慮を止めた以上、被害は拡大するのは明白であった。


「まぁ、殆どが脛に傷持つ奴だとか、死刑囚だのの寄せ集めだからな、別に死んだ所で誰もが困りゃしねぇんだろうが……」


 被害が出ていると言われた割に、大して気にした様子は無い。

 とは言え、何もしないでは被害は広がる一方である。


「……しゃあねえなぁ、んじゃま、出ますかね」


 そう言うと、椅子から立ち上がり、ジャケットを脱ぎ捨てる。


「変……」


 起動動作の構えを取る訳だが、その仕草は、同じ篠原良と大差はない。

 左腕を右肩へと伸ばし、一気に左腕を脇へと巻き込みながら、今度は逆に右腕を左肩へと伸ばす。


「……身っと」


 動作が完了すれば、その体は瞬間的な閃光に包まれた。

 その閃光は虚仮威しではなく、変身の邪魔をされない為の目眩ましである。


 光が弱まれば、其処から現れるのは、漆黒に塗られた装甲。

 名前も顔も同じだが、その纏う色は違った。


『さてさて……出し惜しみは無しだぜ、アナスタシア』


 社長にそう言われれば、秘書に拒否の権利は無い。


「畏まりました」


 僅かな言葉の後、秘書もまた掛けていた伊達のメガネを放り、ジャケットを脱ぎ捨て、姿を変える。

 

 忠実な秘書という皮を脱ぎ捨て、姿を現したのは、黒い蝦蛄。

 その姿は、フトユビシャコモドキに酷似していた。


『なんか、その格好見んの久し振りだぜ』


 そんな声に、秘書だった黒い蝦蛄は僅かに頭を下げる。


『お目汚し、お赦しを』


 自らの姿を恥と思うからか、そんな声を漏らす。

 似ては居るが、このアナスタシアもまた、悪の組織の女幹部とは違いを示して居た。


『気にすんなって、久し振りの戦争だぜ? 楽しまなきゃあな?』


 そう言うと、執務室を出て行く篠原良に、秘書が続く。


『おっと? そういや、他の連中は?』

『はい社長。 もう既に、出撃致しました』


 見た目は変わっても、声はそのままという時点で、かなりに異様に見えなくも無い。

 だが、そんな事は些細な事なのか、黒い篠原良は笑う。


『俺の分、残りそうかなぁ……』

 

 先に行ったという言葉に、真っ黒な兜からは心配そうな漏れていた。


   ✱


 先行した首領と大幹部が次から次へと銃座を潰す中。

 戦闘員達を率いるのは、博士たる高橋リサの役目だった。


『みんな! あんまり散らないで!』


 基本的に首領である良と大幹部達だが、集団戦よりも個人で戦いたがる。

 連携が不得意というよりも、持ち前の力故に下手をすれば仲間を巻き込み兼ねない。


 意外な話かも知れないが、戦争に置いての死因の中には【友軍の誤射(フレンドリーファイア)】が指折り数えられる。


 最も、敵味方入り乱れの戦闘では、一々相手を確認して居るだけの余裕や隙は無く、ましてや、遠くからでは本当にソレが味方なのかを吟味するのは難しい。

 

 また、出合い頭に敵だと思ったら味方だった、もしくは砲撃先に味方が居たという偶発的な事故も多発する。


 である以上、強い者が味方の側に居るのは頼もしくも在るが、同時に常に誤射の危険性を孕んでいた。

 

 だからこそ、敢えて危険を承知で良や大幹部達は個別に戦おうとする。

 

 それに比べて、戦闘員達は集団戦を得意として居た。

 単一の戦闘員が出せる力は高が知れて居るかも知れないが、逆に固まればその分だけ力を発揮できる。


 そして、それを円滑に行うには、優れた頭脳を持つ者が必要である。

 

 出張って居る者達の位置を把握し、戦況の変化に応じて逐一指示を出し、被害は最小に、戦果は最大に。

 直情的なアナスタシアやカンナでは、無理な芸当である。


 ほぼほぼ銃座は潰したからか、射撃は止む。

 だが、まだまだ戦い序盤に過ぎない。


 今の所、当座の橋頭堡を確保したに過ぎないのだ。


『博士! 次は如何に?』

『ちょっとだけ待って』


 古株の戦闘員の声に、リサは周りを見渡す。


 実際には、リサを筆頭に全員が【〇〇レンジャー】と言わんばかりの変身をして居る以上、狙撃を恐れる必要は無い。


 ただ、戦闘員の何人かが、何かを見付けたのか、集まる。


『おい! 其処で止まれ!』


 本来ならば、敵地にて制止を呼び掛けるのは無駄の極みだろう。

 見敵必殺というのが当たり前である。

 

 だが、長い時間を、良という首領に預けて居たからか、否が応でも戦闘員達もまた、首領に似て来ていた。


『うわ!?』『なんだ!?』


 響く声に、リサがヘルメットの先を向ける。

 すると、誰かが戦闘員達を突き飛ばしたらしい。


 らしいと云うのも、ただ突き飛ばしただけで、人が軽く宙に舞う。


『いったい……なに……が』


 それをしたらしき者が姿を見せるが、その顔を見て、リサは思わず絶句して居た。


 スタスタと歩いて来るのは、場に似つかわしくない少女。

 然も、その顔や体型、果ては身長に至るまで、高橋リサに非常に似ていた。


「なぁんだ……凄いのが来てるって言うから、期待してたのに」


 吐かれる声もまた、リサと変わらない。

 何かを違いが在るかと言えば、普段は白衣を纏うリサに対して、今姿を見せたそっくりさんは、派手である。


 短めのシャツに、わざと脚を露出させたスカート。

 

 何処をどう見ても、戦場を歩き回る格好とは言えない。


『……誰なの?』


 鏡写しとも言える少女に、思わずリサは声を掛ける。


「はあ? 名乗るんなら自分からでしょ? そっちこそ、全身ピンク色にヘルメットとか、馬鹿じゃないの?」


 率直な意見に、戦闘員達も何も言えなかった。

 何故に博士の纏うスーツはピンク色なのか、それに付いてはリサ自身も解明出来て居ないのだ。


 戦闘員達の纏うスーツだが、其処まで派手な色味は無く、中には場に合わせた迷彩柄まで居る。


 そんな中では、リサのピンク色は非常に目立つ。


『別に……好きでこんな色してる訳じゃ……』

 

 思わず、自分に説経をされた様な気がしたリサは反論するが、そっくりさんは大して気にした様子は無い。

 それどころか、独りにも関わらず、戦闘員達を眺めていた。


「で? あんたらどうするの? 降伏するなら今だけど?」


 場に似合わない少女は、降伏の勧告を出した。

 

 最も、誰もがそんな声に耳を傾けようとはしていない。

 寧ろ、何故にリサそっくりな少女は強気なのかと訝しむ。


『その場で膝を付いて腹這いに成れ。 手荒な真似はしない』


 痺れを切らした戦闘員の一人が、そっくりさんへと声を掛ける。

 やはりと言うべきか、彼もまた、良と同じ様な考え方をしていた。


 そんな声に、少女は眉を片方だけ上げる。 


「は? 雑魚の癖に、誰に口効いてるわけ?」

 

 苛立つ声と共に、戦闘員の手首を少女が掴む。


『おい! 勝手な真似はぁあああ!?』


 リサを筆頭に、戦闘員達の見ている前で、少女は軽々と大人を持ち上げただけでなく、放り捨てた。


 果たして、変身すらしていない人間に、そんな事が出来るのか。


『…っ…改造人間か!?』


 思わず、近くの戦闘員が声を出すが、言われた少女は首を傾げた。


「かいぞうにんげん? そんなポンコツと一緒にしないでくれる?」


 手に付いた埃を払うが如く、ポンポンさせながら笑う。


「イオン性高分子重合ゲル筋原繊維……なんて言っても、あんた達には解んないでしょうね」


 聴こえた声に、リサは耳を疑う。

 ソレは、まだ理論上の技術テクノロジーの言葉であった。


『嘘、そんな事が……』


 自身の纏うスーツにしても、未知の科学に因って力学的に強化されたモノだが、少女の場合は、微細技術(ナノテクノロジー)に因って人体その物を変えるモノである。


 そしてソレは、まだ今の時代には存在し得ない筈だった。


「まぁ、直ぐに終わらせちゃつまんないでしょ? ちょっと手品見せたげる」


 ケラケラと笑ったと思った途端に、少女の全身に変化が起こった。

 肌の色が急に失われ、代わりに、辺りの色へと変わる。


 一見する分にはカメレオン程度の変化にも見えたが、直ぐにその輪郭すらボヤケてしまう。


『博士! アレはいったい!?』

 

 焦る戦闘員の声に、リサは頭を巡らせる。

 其処から導き出せるのは、一つの可能性であった。


『……光学迷彩(クローク)? そんな物まで……でも、どうやって』


 改造人間の中には、同じ効果を持たせた者も居た。

 だが、生身の姿のままで、ソレが出来る者をリサは知らない。


 見ている事が信じられず、戸惑うリサだったが、ふと、目の前の空間の歪みに気付く。


「ばーか」


 声が聴こえたと思った途端、リサの体に凄まじい衝撃が走っていた。

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