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アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~  作者:
番外編

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お忍びデート

「美月、お待たせ」

「陽葵ちゃん、お疲れ様」


 夕方に仕事が終わり、美月も同じくらいに終わる予定だったから待ち合わせをして一緒に帰ることにした。


「こうやって一緒に帰るのって久しぶりだよね」

「うん。そうだね。じゃあ、帰ろっか」

「みつきたん、手繋ご?」

「え……外だよ?」

「いいじゃーん」


 美月の前にはいっ、と手を出してみたけれど、手を見て、私の顔を見て、と葛藤している様子。


「えぇ」

「はい、時間切れー! 行くよー」

「えっ、ちょっと……!?」


 腕に抱きつけば、あわあわしながら帽子を深く被る美月が可愛い。


「みつきたんが手を繋いでくれないから悪いんですぅー!」

「待って、かわっ」


 そう呟いた後、ハッとして、手のひらで口元を隠して目を逸らされた。本人も無意識だったらしい。



「ねー、みつき、真っ直ぐ帰る?」

「そのつもりだったけど、どこか行きたいところあった?」

「なんか、真っ直ぐ帰るの勿体ないなぁ、って」

「それは分かる」

「お忍びデート、しよっか」

「……!?」


 どこに行こうか考えてくれている横顔が綺麗で、こっちを向いて欲しいな、という欲が隠せなかった。耳元で囁けば、驚いたようにこっちを見て、じわじわと赤くなった美月が可愛くて仕方ない。


「どこ行く? ホテル?」

「はっ……!?」

「みつきたん、何想像したの? ホテルでディナーでもどうかな、って意味ね?」

「……っ、分かってるし!」

「必死すぎ」

「陽葵ちゃんが変な言い方するから……」

「かーわいー」


 本当に、いつになっても初々しくて可愛い。


「あれ? この前陽葵ちゃんが言ってた、凛花さんオススメのお店ってこの辺じゃなかった?」

「洋食屋さん? そうだっけ?」

「多分そうだと思う。陽葵ちゃんと行ってみたいな、って思って調べたから」

「えー、調べてくれてたの?」


 お店の名前と、美味しいらしい、って話をしただけだったのに。


「うん。行ってみる?」

「行く!!」


 スマホのナビに従って進めば、本当に近くで、直ぐに到着した。

 少し待つって事だったけど、急いでいるわけじゃないし、待つことにした。


「……あれ、みんなも来てたんだ?」

「えっ、美月さん! と、陽葵さん……!?」

「嘘!?」

「ええええ!! マジか!! マジか!!」

「美南、落ち着いて」

「これが落ち着いていられる? いや、無理じゃん? 望実は何でいつもそんなに冷静なの!?」


 こちらでお待ちください、と案内された場所には見慣れたメンバーが纏まって座っていて、こっちを見てポカーン、とする子、バッグを開けて何かを探している子、叫ぶ美南ちゃん、宥める望実ちゃんというカオス。


「みんなお疲れ様」

「「「「お疲れ様です!!」」」」


 このグループって体育会系だよね。見た目は可愛らしいアイドルなのに。


「石川様、お席のご用意が出来ました」


 写真をお願いされてみんなで撮ったり、少し話したりしていたら、店員さんが来て望実ちゃん達の席の用意が出来たと案内に来てくれた。


「あっ、すみません、ありがとうございます。あ、でも……」

「望実ちゃん、私たちは気にしないで楽しんで?」

「すみません。ありがとうございます」

「席の用意が早い……! 他のお客さんを優先で……!」

「ほら、行くよ!」

「あー、ちょっと、引っ張らないで……陽葵さん、写真待ってますぅぅぅ!!」


 美南ちゃんが相変わらずブレなくて、美月と顔を見合わせて笑いあった。



 少し待って個室に案内されて、周りを気にせずにイチャイチャしながらご飯が食べられた。あーんもしてもらったし、今日のじゃない写真付きで”美月とご飯"って投稿したし、大満足。


「陽葵ちゃん、コメント読んだ?」

「ん? なにか来てる?」

「ご自宅に帰ったら写真を、写真を何卒投稿お願いします!!!! だって」

「はは、美南ちゃんか」


 投稿を開けば、美月が言った通りのコメントが投稿されていて、ファンからも沢山の反応が返ってきていた。


「彼女とデートってタグ付けてさっき撮ったみつきたんの写真載せていい?」

「ダメでしょ」

「えー、じゃあ、これならいい?」

「これなら、まぁ……でも帰ってからね」


 それはもちろんそうする。料理の写真とかで特定する猛者も居るかもしれないし、念の為。



「あれ、また会ったね」

「本日2度目!? え、こんな日があっていいの? 運使い果たした??」


 駅に向かえば、またメンバーと遭遇した。美南ちゃんの反応は、まるで推しに会ったファンみたい。


「いやいや、私もメンバーだったじゃん。美月は今もメンバーだし」

「昔は幸せでした……ほぼ毎日お2人に会えて……」

「美南ちゃん、相変わらずだね」

「なんかもう、美南が本当にすみません……」

「ううん。こうやって、私達を好きでいてくれて嬉しいよ。ね?みつき?」

「そうだね」

「なんて尊い……これからも全力で推します!! そして布教します!!」

「布教はしなくていいから」

「そうですよね! 布教なんて要らないほど人気ですからね! でも、大丈夫です! 私に任せてください!」

「いや、そうじゃなくて……」


 美月と目を合わせただけなのに、美南ちゃんのテンションがさらに上がった。布教、という言葉に美月がすかさず拒否していたけれど、美南ちゃんには全く届いていなかった。



「陽葵ちゃーん、お風呂準備できたよー」

「一緒に入ろ……あ、もうそのつもりで準備してくれたんだね」


 SNSに投稿し終えて、お風呂場に行けば入浴剤が入れられた湯船が目に入った。もちろん、にごり湯。

 ニヤニヤしながら美月を見れば、こっちを見ないように服を脱いでいるけれど耳が赤い。可愛すぎるでしょ……

 お風呂は短めにして、イチャイチャしよう。


「みつきたん、お風呂早く出よう?」

「あ、もしかして眠くなっちゃった? 朝も早かったもんね」

「じゃなくて、こーいうこと」

「……っ!? 先に入ってるね!!」


 キャミソール姿の美月に後ろから抱きついて、首筋に唇を寄せればいい反応をしてくれた。


 私の恋人は今日も可愛い。


 *****

 メンバー視点


 今日は早く仕事が終わり、望実さんと美南さんが撮影に参加していた6期生をご飯に連れていってくれる事になった。

 凛花さんがお友達のモデルさんに教えてもらったという、隠れ家的な洋食屋さんらしいから楽しみ。


 芸能人もお忍びで来るようなところらしいから、誰かに会えたりするかも? 一応、私もグループに所属しているし、芸能人という枠の中には居るけれど、歴も浅いから一般の方々と何も変わらないな、という気持ち。


 お店に着いて、メニューを見ながら待っていれば新たなお客さんが案内されてきて、今日収録で一緒だった美月さんと、元キャプテンの陽葵さんだった。


 最近、同期の花音が推しているひまみつさん。

 以前レッスンを見てもらったことはあるけれど、2人ともほとんどお話したことがない。

 美月さんは同じグループだけれど、全体の人数も多いし、活動はチームに別れているし、私は6期生の中でもまだまだ目立てていなくて、ゆっくり話せる時間なんてなかなか無い。


 ポカーン、と見つめてしまったら、陽葵さんと目が合って優しく微笑まれた。大人のお姉さん、って感じ。


 テンションの高い美南さんが一緒に写真を撮って欲しいとお願いして、皆で写真を撮ってもらった。後で美南さんが送ってくれるらしいから、プリントして飾ろう。


「陽葵さん、美月さん、良かったらメニュー見ますか?」

「みんなはもう決めたの?」

「決まってるので、どうぞ」

「望実ちゃん、ありがとう」


 2人を前にしても落ち着いているキャプテンが流石です……!


「えー、どれも美味しそうー!」

「陽葵ちゃんこれ好きそうだね」

「うわー、こっちもいいなぁ」


 メニューを開いてテンションが上がった陽葵さんを優しい目で美月さんが見ていて、一瞬で2人の世界が作られた。


 近い距離でメニューを見ながら、これもあれも、と美味しそうなものを美月さんに伝えて笑いあっている。尊いってこういうことか、というような光景。


 美南さんはこっそり写真を撮っていて、それを見てはニヤニヤしている。

 望実さんが呆れつつ、陽葵さんが卒業する前はこんな日常だった、と教えてくれた。


「みんなはこのお店来たことあるの?」

「いや、初めてです。凛花さんが教えてくれて」

「あ、私も。って言ってもさっきまで忘れてたんだけど」

「思い出したんですか?」

「うん。美月が」

「あ、美月さんも凛花さんに教えて貰ってたんですね」


 凛花さんって本当に色々なお店知ってますよね、って望実さんが納得しかけたら、陽葵さんがニヤニヤしながら美月さんを見ていた。


「凛花に教えてもらったんだっけ? みつきたん?」

「そうですねー」

「えー、そこは否定するとこじゃない?」

「なんの事ですかー?」

「陽葵さん、詳しく!!」

「美南ちゃん、気にしなくていいから……」

「後でね」

「ちょっと、陽葵ちゃん、ダメだからね!」

「後で連絡待ってますっ!」

「おっけー」

「あ、陽葵さん、私にもお願いします」

「え、嘘、望実ちゃんまで!?」

「じゃあグループトークに送るね」

「……陽葵ちゃん、そのグループトーク、後で見せて貰ってもいいですか」

「もちろんいいけど、本当に見る?」

「……やっぱりいいです」


 わちゃわちゃ盛り上がる先輩達が楽しそうで、仲の良さがこのグループのいい所だよな、と改めて所属できた幸運に感謝した。


 先に個室に案内されてからは美南さんも落ち着いて、普段通りの面倒見のいいお姉さんになった。長くは持たなかったけど……

 陽葵さんが"今日の写真ではない"と添えて美月さんとのツーショットをSNSに投稿すると、尊いけど、この写真はもう貰ってるやつ……! って悶えて、今日の写真を要求するコメントを打ち込んでいた。

 見せてもらったスマホには、2人専用のフォルダが作られていて、完全にファンだった。


 推しは人生を豊かにする、って美南さんがそれはもう熱く語りだして、是非とも推しを作った方がいい、と力説された。

 家に帰ったら、昔のひまみつさんの動画を見てみよう。これは必須、といくつかの動画をオススメされたから、まずはそれから。


 私たちのグループは、今日も平和です。

お読みいただきありがとうございました!!

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★新作もよろしくお願い致します★
黒狼と銀狼
― 新着の感想 ―
[良い点] 美月が二人お風呂に徐々に慣れてきてる! 陽葵が時間をかけてじわり侵食。 ひまみつのすばらしさを後輩ちゃんにも! 美南も時間をかけてじわり侵食。 [気になる点] >普段通りの面倒見のいいお…
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