欲求不満?
お久しぶりです。昨日の夜急に書きたくなりました。お楽しみ頂けたら嬉しいです。
「美月、ちょっと」
「え、どうされました?」
冠番組収録を終えて楽屋で着替えようとしていたら凛花さんに部屋の隅に連れていかれた。
「陽葵がなんか変なんだけど、心当たりある?」
「なんか変……」
なんか変、ってなんだろ?
「1期生のグループあるじゃん? そこで大抵くだらない話してるんだけど、陽葵が全然乗ってこなくて……いつもは美月が可愛い、って惚気けてくるのに」
「ちょっと待ってください……陽葵ちゃん惚気けてるんですか!?」
1期生のグループトークで惚気けてる……? 聞きたくなかったような、聞けてよかったような……
「ご飯作ってくれた、とか髪乾かしてくれた、とか」
「あぁ、その程度ですか」
「……まぁ」
「ちょっと、なんで目逸らすんですか!?」
「それで、心当たりは?」
思いっきり話しそらされた……
「うーん……陽葵ちゃんは今少しお仕事が落ち着いてるんですけど、私の方がちょっと忙しくて……実は仮眠に帰るくらいで全然ゆっくり話せてなくて。でも寝顔は見れてますし、早い時間に起こしちゃうんですけど、少しは会えてます」
「あー、今色々重なってるもんね」
「そうなんですよね。起こしちゃうのが申し訳なくて、ソファで寝たらものすごく拗ね……怒られて。疲れが取れないでしょ、って」
「ただの欲求不満ってことか」
「……はい??」
よっきゅうふまん? え? ……あれ、最後にシたのいつだっけ?
「だから、欲求不満。美月不足」
「いや、聞こえなかったわけじゃ……」
「最近エッチした?」
「……」
「確定だね」
凛花さん、ニヤニヤしないで貰えませんか?
「明日の午前中オフでしょ? 誘ってみたら?」
「さそっ……!?」
「結果教えてねー? じゃ、私次の現場行くから。おつかれー」
「えっ、お疲れ様でした……」
嵐のようだったな……誘う? 私が陽葵ちゃんを? 無理無理。絶対無理。
「みつきたーん!! おかえりぃー!」
「ぉわっ!? 陽葵ちゃん、ただいま」
もうすぐ着く、と連絡をしていたから玄関で待っていてくれてたのか、ドアを開けるなり飛びついてきた。
「おかえりのちゅーは?」
「……っ、やば、かわい……照れる」
待って? キス待ち、可愛すぎません??
「ふふ、やった。ご飯? お風呂? イチャイチャする?」
「っ、お風呂、でお願いします」
「照れてるの? かーわーいー!」
凛花さんが変なことを言うからちょっと挙動不審になってしまったけど、顔を見られないようにギュッと抱きしめたら嬉しそうにしてくれたから結果オーライ、かな?
「ご飯用意しておくから、ゆっくり入っておいで」
「うん。ありがとう」
シャワーだけでいいかな、と思っていたのに、お湯はりもしてくれていて、優しさにジーンとした。
「陽葵ちゃん、ありがとう」
「もっとゆっくり入ってきたら良かったのに」
「いやいや、十分ゆっくり出来ました」
「そ? ならいいけど。こんなに帰りが早いの久しぶりだね。無理してない?」
「うん。大丈夫。もう少しすれば落ち着くから」
「ここを乗り切れば少し空くもんね」
同じグループに居たから、言わなくても分かってくれる。陽葵ちゃんは現役時代もっと忙しかったんだけどね。
「……陽葵ちゃん、なに?」
「可愛いなぁ、って」
「落ち着かないから見ないで」
見られながら食べるのって恥ずかしい。陽葵ちゃんは仕事で少し食べてきたとかでお腹が空いていないらしい。私の分だけ用意してくれて、申し訳ない……
「美味しい?」
「うん。ありがとう」
「良かった」
そう言って笑う陽葵ちゃんの方が可愛いって。
忙しくてすれ違い生活だから、こうしてたわいもない話をして、一緒に笑い合える時間が貴重だなって思う。
「ご馳走様でした」
「はーい。あ、片付けやるよ?」
「ううん。これくらいさせて? 陽葵ちゃんもお風呂入ってきたら?」
「ありがと。入ってくるね」
お風呂に行った陽葵ちゃんを見送って、洗い物を終えて凛花さんの言葉を思い出す。私から誘う? どうやって? そもそも、陽葵ちゃんにその気はあるのかな?
お風呂も一緒に入らなかったし、凛花さんの勘違いなんじゃ?
「みつきたーん?」
「あ、出た?」
「うん。考え事?」
「ううん。何でもない。……って陽葵ちゃん、髪乾かさなきゃ」
「みつきたんやってー?」
「……っ、行こ」
上目遣い、相変わらずの破壊力……
「美月に乾かしてもらうの久しぶり」
鏡越しに、気持ちよさそうに目を閉じる陽葵ちゃんを見て、髪を乾かしてあげるのも久しぶりだな、と思っていたら同じことを思っていたみたい。
「だね。いつも変な時間に起こしちゃってごめんね?」
「好きで起きてるし、気にしないで」
一緒に住んでいるとすれ違い生活でも顔が見られるから幸せ。別だったら全然会えないもん。
「よし、終わり!」
「ありがとー。歯磨きして寝よっか」
「うん」
私の分も歯磨き粉をつけて渡してくれたり、ちょっとの事だけど幸せな気持ちになる。
鏡越しに目が合って、優しく微笑みかけられて、素で照れてしまった。
久しぶりだと耐性が下がるよね。
「電気消すよー」
「うん」
「みつきあったかい。おやすみー」
「あ、うん。おやすみ」
ベッドに入って、ギュッと私に抱きついて目をつぶった陽葵ちゃん。
あ、今日はそういう気分じゃないのか。……期待なんてしてないよ?
「かわい……」
頭を撫でていたら、どうやら寝たっぽい。
「ぁ、凛花さん……」
メッセージが入って、見れば凛花さんだった。
『誘えた?』
『誘ってません!! もう陽葵ちゃん寝てます』
『ヘタレ』
『ヘタレじゃないです』
『ま、頑張って。おやすみ~』
完全に楽しんでません??
「全く、凛花さんは……寝よ」
「凛花がどうしたの?」
「えっ、起きてたの?」
「うん。で、凛花が何?」
「ううん、なんでもないよ」
じとっとした目で見上げられて、思わず目をそらしてしまった。目力が……
「やましい事でもあるの?」
「いやっ、ないです」
「ふぅん?」
「うん。寝よ?」
「気が変わった」
「え?」
すうっと目が細められたと思えば、あっという間に組み敷かれた。
「疲れてるだろうから寝かせてあげようと思ったのに。隠し事?」
「っ、違っ……」
「まぁいいよ。身体に聞くから」
「まっ……て……」
唇が塞がれて、続きは言わせて貰えなかった。なんか勘違いしてる……? それとも、やきもち?
「みつき、ごめん」
「ううん。私もごめんね」
私が疲れてるだろうから、って寝たフリをしていたのに、凛花さんの名前が出てきて、やきもちをやいたらしい。私がはぐらかしたから余計に、ってことで私も悪かったな、って。
若干ぐったりする私を見て悪いと思ったのか、しゅん、と落ち込む陽葵ちゃんがとにかく可愛い。
眉が下がって目はうるうるしてるし、本当にギャップがやばい。
「陽葵ちゃん、おいで? 寝よ?」
「うん」
嬉しそうに隣に寝転んだ陽葵ちゃんを抱きしめて、幸せな気持ちで目を閉じた。
1日の終わりを陽葵ちゃんと過ごせるから、明日からまた頑張れる。いつもありがとう。
お読み下さりありがとうございました!




