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アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~  作者:
番外編

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68/99

7.歌番組後

生放送が終わって、よく行く焼肉屋さんの座敷を貸切にしてもらった。同じ事務所の方々も利用することが多い事もあって色々と融通してもらえて助かっている。


「みんなお疲れー!」

「えっ、陽葵さん?!」

「陽葵さんー!!」

「うそ?!」


食べ始めた頃に陽葵ちゃんが到着して、知らなかったメンバーのテンションが一気に上がった。


「あれ、凛花言ってなかったの?」

「その方が面白いかなって」

「うわ、悪い先輩ー! ここ空いてる?」

「陽葵、真ん中来なよ」


凛花さんと話しながら入口近くの席に座ろうとしたけれど、結構真ん中に座ることになっていた。

私は色々動きやすいから入口近くに座っている。


「みんな飲んでないよね?」

「うん。飲んでない」

「何にしようかなー」


店員さんが来てくれたからメンバーの分のドリンクを頼んで、陽葵ちゃんを見れば目が合った。


「決まった?」

「烏龍茶でー」


注文をすると、早速1期生と盛り上がっている。

ある程度時間が経って、陽葵ちゃんは席を転々として沢山のメンバーと話をしていて、みんな嬉しそうで良かった。


「みつきたんー、お肉ちょうだい」

「ふ、かわい。待ってね。まだ熱いかも……はい」


あらかた話し終わったのか、ちょうどお肉が焼けたタイミングで陽葵ちゃんが隣に座って、口を開けてくる。


「ん、美味しー」

「全然食べてなかったもんね。お皿とお箸持って来ないから」

「だってお皿とお箸持って移動するの面倒だもん。もっとちょうだいー」


全く面倒くさがりなんだから……まあ、分からなくもないけれど。


「はい。みんなと話せた?」

「話せた! 新メンバーも入って更に若くなったね」

「ほんと若い。一番下の子小6だよ?」


さすがに今日は来ていないけれど、もうみんなで猫可愛がりしちゃってる。


「野菜は?」

「いらない」

「はい、玉ねぎ」

「……みつきたん、聞いてた?」


野菜も食べた方がいいって。口元に差し出したままじーっと見れば渋々口を開けて食べている。うわ、不満そう。


「ごめんごめん。はい、お肉」

「ん」


お肉を口に入れてあげれば満足気で可愛い。


「はぁ……久しぶりのこの2人……尊い」

「生で見るとやばいですね……」

「分かる?! そう、やばいんだよ。この光景が当たり前だった日々が恋しい……動画撮っていいかな……?」


美南ちゃんと新メンバーの子が話しているのが聞こえてきて、陽葵ちゃんがニヤニヤしている。絶対悪ノリするやつじゃん。


「美南ちゃん、写真撮ってー」

「え?! 喜んでっ!!」


陽葵ちゃんに呼ばれて飛んできた美南ちゃんがさすがすぎる。


「あ、私の事は気にせず続けてください! 勝手に撮るので」

「ふは、そういう感じ? ちょっと思ってたのと違う」


普通に写真を撮ってもらうつもりだった陽葵ちゃんが楽しそうに笑っていてなんだか嬉しい。


「美南さん、後で写真下さい!」

「私にも送ってくださいー!」

「もちろん! 後でグループトークに送るね!」

「え?! 送らなくていいよ!」


全員に送る必要ある?! 絶対ないよね??


「美南ちゃん、それ私見られないんだけど……」

「それ! 陽葵さんなんで抜けちゃったんですかー!!」

「陽葵さんがグループトークを抜けた時泣いたんですけど!」

「最後に写真を送り逃げとかずるいです!」

「うわ、なんか凄い責められてる……え、酔ってる? みんな飲んでないはずだよね?」


陽葵ちゃんが責められてたじたじになっていて見ててニヤニヤしてしまう。


「ソロで歌う姿がカッコよくて、でも寂しくて泣けてきます」

「え、泣かないでよ。何時でも連絡してきて?」

「イケメン……!」


うん、ほんとイケメン。今日のかっこいい姿で言われると余計に。


「今日のメイクもイメージ変わりますよね! 似合ってます!」

「ありがとう。みくさんがやってくれて」

「今もみくさんなんですね!」


さすがみくさん。この前の歌番組を見た時にあまりにも好みすぎて、帰ってきてからもそのままだったから、ずっとくっついてたもん。


「陽葵さん、サイン下さい!」

「私にもくださいー!」

「もちろん!」

「いつ会えるか分からないのでずっと持ち歩いてて」

「連絡してくれれば行くのに」


陽葵ちゃんはそう言うけどなかなか先輩に連絡出来ないよね。


「ちょっと自慢してきますー! 見て、陽葵さんにサイン貰った!」

「うそ、ずるい!」

「私も持ってくればよかったー!」


同期のところに行って自慢げにサインをしてもらったCDを見せている。


「陽葵さん、指輪するようになったんですね」

「うん。もうアイドルじゃないしね」

「似合ってます!」

「陽葵さんがもうアイドルじゃないなんて……」

「なんで卒業しちゃったんですかー!!」

「うわ、泣く? 待って、落ち着こ?」


後輩に囲まれて絡まれる陽葵ちゃんという構図が完成していてニヤニヤしてたら睨まれた……ごめんって。

卒業して2ヶ月以上経っても変わらず慕われていて、気づけば中心にいるのは陽葵ちゃんだった。


未成年のメンバーが帰る時間になって、集合写真を撮ってもらう。みんな名残惜しそうにしていて、また会おうね、と陽葵ちゃんが声を掛けていた。



「さ、飲みますか?」

「飲んじゃいますか?」


未成年のメンバーが帰ったから、早速お酒好きなメンバーがメニューを広げている。


「陽葵はどうする?」

「なんかまた潰されそうな気がするからなー」


強い方だけれど潰されたんだもんね……今日もちょっと心配。


「あはは、この前潰れたもんね」

「なんだかんだ、陽葵が自分から飲んでたよね?」

「美月に連れて帰ってもらえばいいじゃん」


潰れても連れて帰りますけど、際どいこと言わないでもらえますか……


「今日はお返しに飲ませてやるー」


少し経つと、ほとんどのメンバーが飲んでいるからだんだんテンションがおかしくなってきて、こういう時に騒がしい柚が静かだな、と思って探せば酔い潰れて寝ていた。アイドルとしてそれでいいのか……?

明日の朝早いメンバーって居なかったよね? ちょっと心配になるよ。


「陽葵と美月も飲もうよ」

「いや、私は弱いのでやめておきます」


多分寝ちゃうし、陽葵ちゃんにも止められてるしね。


「ちょっとだけ飲もうかな」

「いいね! すみませーん!」


陽葵ちゃんが少し飲むと言えば早速注文をしていて、他のメンバーも追加注文をしている。みんなよく飲むな……


「陽葵ちゃん、飲むのはいいけど、寝ないでよね?」

「寝ない寝ない! ちょびっとしか飲まないから!」


……まあ、こうなるよね。知ってた。さっきまでの自信はなんだったのか。

心配していた通り、陽葵ちゃんは私の膝を枕にして気持ちよさそうに寝息を立てている。普段からもすぐ寝るのに、お酒なんて飲んだら余計でしょ。

私がいない時は気を張ってるから平気、とか言っていたけれど怪しいな……本当に気をつけて欲しい。


「陽葵ちゃん、起きて。帰るよ」

「んー、みつき……? ちゅー」

「しませーん。起きてるくせに」

「寝てますー」


そんなに飲んでないし、これくらいじゃ酔わないでしょ。それに寝起きもいいから、ちゃんと起きてるのは分かってるよ。


「ちょっと、くすぐったい」

「ねー、ちゅーは?」

「しませんー」

「ケチー」


お腹に顔を埋めて甘えてきたってしないからね。2人きりじゃないんだから。


「久しぶりでこれはやばいって……なんなの最高なんですけど!!」

「美南、気持ちは分かるけどちょっと落ち着こうか」

「無理! これで当分頑張れる……!」


望実ちゃんがなだめているけれど、美南ちゃんの盛り上がりがすごい。うん、明日からもお仕事頑張って。


「柚ちゃん、起きれる?」

「うー、凛花さん……頭がんがんする……」

「飲みすぎだって。ほら、お水飲んで」


向こうでは凛花さんが柚を介抱してくれている。うちの同期がご迷惑おかけします……


「じゃ、みんな気をつけて。私は柚ちゃん送っていくわ。陽葵、またね」

「うん、またー」

「柚のことよろしくお願いします。お疲れ様でした」


解散して、凛花さんがタクシーで柚を連れ帰ってくれた。他のメンバーも解散したし、私達も帰りますか。


「タクシーで帰る?」

「んー、酔い覚ましに少し歩きたいな」

「じゃあ少し歩こっか」


もう暗いし、自然と手を繋いで歩き出す。もうすぐ陽葵ちゃんもグループでもツアーが始まるし、すれ違い生活になるな、と思うとこうして陽葵ちゃんと手を繋いで歩く時間も貴重に思える。

まだ一緒に住んで2ヶ月くらいなのに朝と夜に陽葵ちゃんが居る生活が当たり前になってしまった。どちらかと言えばひとりが好きな方だったはずなのにな。


「なんかこうやって美月と夜に歩くのも久しぶりだね」

「ほんと。仕事終わりに一緒に帰るってことがもうないもんね」

「寂しい?」

「寂しくありませーん」


仕事終わりにたわいもない話をしながら家まで歩く時間が楽しみだったから、それが無くなってしまったのは正直寂しい。


「ふーん、私は寂しいけどな。そっかー美月は寂しくないのかー」


うわ、分かってるくせにニヤニヤして……


「早く上がれそうな日に待ち合わせとかしたいなって思ったんだけどひとりで帰るわ」

「え」

「あーあ、残念だなー」


全然残念って顔してないじゃん。絶対楽しんでる。


「残念だねー」

「美月と夜に歩くのも今日が最後かなー?」

「そうかもねー?」


陽葵ちゃんの思い通りには言わないもんね。


「むー、素直じゃない」

「そんな目で見ないでよ」

「まあいいや。今日は楽しかったなー」


あ、いいんだ。諦めたのかな。


「皆も喜んでたしね」

「あんなに喜んでくれるなんて皆可愛いよなー」


確かに可愛いけど、そんなに嬉しそうにされるとなんかちょっと……


「そーだね」

「新メンバーの子達もキラキラしてて元気もらった。あとさ……」


私が素直じゃないからわざと? 確かに皆可愛いけど、私の前でそんなに褒めなくても良くない?


「あれ、みつきたんどうした??」

「何もー?」

「え、拗ねてるじゃん。え??」


しばらくして気づいてくれたけれど、わざとじゃなかったみたい。しかも分かってないし……気づくとニヤニヤするからこのまま先に行っちゃお。


「みつきたん何で先いくのー?! しかも手!!」


繋いでいた手をそっと離して少し先を歩くと後ろから不満げな声がする。


「知りませーん」

「いや、知らないわけ……あ、そういう……」


気づいたのか、小走りで追いついてきて後ろから抱きついてくる。


「やきもち? ごめんね?」

「ちがいまーす! 離して下さーい」

「ごめんって。ねー、美月が1番だからさ。許して?」

「陽葵ちゃん、その言い方だと浮気したみたい」


あ、つい声に出ちゃった。


「浮気?! してないよね? え、さっきのって浮気になる?」

「いや、ならないけど」

「良かった……!」


覗き込んできながら本気で焦っていて思わず笑ってしまう。メンバーは確かに皆素直で可愛いけど、可愛かったところを嬉しそうに話したお返し。


「ふふっ」

「えー、今度は笑うの……」

「さ、帰ろー」

「……許してくれたってことでいいの? ねー、みつきたんー」


甘えた口調が可愛いすぎ。なんでこんなに可愛いのか……


「陽葵ちゃん、他のメンバーの所に行かないでね?」

「もちろん!」

「じゃあよし。離して? もう1回手繋ご?」

「かわっ! ツンデレ極めてるなー」


ニヤニヤする陽葵ちゃんと手を繋ぎ直してまた歩き出す。

滅多に素直になれない私だけど、よそ見しないでね。私にとっても陽葵ちゃんが1番だから。

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★新作もよろしくお願い致します★
黒狼と銀狼
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