2.卒業特番
蛇足と感じる方もおられるかもしれません。ご注意ください。
グループを卒業しもうすぐで2週間、今まで自分の中心だった活動が無くなって自由な時間が増えた。
ソロデビューに向けて準備は進んでいるけれど、少し休もうと思ってゆったりとしたスケジュールにしてもらっている。
これから私が卒業した後最初の冠番組の放送があるからテレビをつけて待機中。美月と一緒に見られたら良かったけれど、私の卒コンの次の日から変わらず忙しくしていて帰りも遅い。
約束していた通り先週から一緒に住み始めて、今は私が家にいる時間が長いから迎えてあげられるのが嬉しい。
『今日の放送は、先日行われた陽葵さんの卒コン特番です。最初に今日のメンバーの自己紹介をさせてください。まずは私、2代目キャプテン、3期生の石川望実です』
『同じく3期生の木村美南です』
『2期生の山内美月です』
『4期生の高橋咲希です』
『同じく4期生の加藤美結です』
『最後に、1期生の田崎凛花です』
お、始まった。今日は6人か。
望実『本日はこの6人でお送りします。遂に陽葵さんが卒業してしまいましたね……今は陽葵さんが卒業されてまだ3日しか経っていなくて。放送だと2週間くらい経ってますかね?』
凛花『それくらいかな?』
望実『皆さん、実感ってありますか?』
放送が始まって、今日は私の卒コン特番らしいから楽しみ。美月は特に何も言ってなかったけれど、どんな感じなんだろう?
望実『ちなみに私は、歌番組の収録をした時に、ああ、居ないんだな、って思いました』
美南『いつもなら楽屋で美月さんとのイチャイチャが見られるのに見られなくて実感しました』
美月『え、実感するところおかしくない?』
美月が映ると毎日見ているのにじっと見てしまう。困ったような顔も可愛い。
凛花『メンバー全員のグループトークがあって。陽葵が抜けた時に実感しましたね。卒コンの次の日に写真を送り逃げしてて』
美結『私も気づいてショックでした……卒コンの時は参加出来たことがただただ幸せで、卒業ってなんだか実感出来てなくて。次の日からも普通に楽屋で会えるんじゃないかなとか思って』
凛花『確かにね。普通に、今日もよろしくねー! って入ってきそうだよね』
グループトークを抜けるのは私も辛かった。何を最後に送ろうか迷って、卒コンの前にスタッフさんが撮ってくれた集合写真を載せてグループトークを抜けた。
これから卒業メンバーが抜けたり、新メンバーが入ったりしてどんどん私が知らないグループになっていくんだろうな。寂しくもあり、楽しみでもある。
望実『これから卒コンのダイジェスト映像と舞台裏の映像が流れますが、印象に残ってることってありますか?』
美南『それはもう、全部ですよね!』
凛花『美南ちゃん……気持ちは分かるけど。咲希ちゃんは何かある?』
咲希『私は1期生のコーナーをモニターで見ていて、卒業された1期生の皆さんからのメッセージとデビューからの映像に感動しました』
凛花『当時小学1年とかだもん、きっと初めて見る映像が多かったよね』
ビデオメッセージと映像はサプライズだったから、私も感動した。よく耐えられたと思う。
望実『他に何かある人ー?』
美南『はいっ! 美月さんとのイチャイチャが尊すぎました』
望実『うんうん。それは本当にそう』
美南『これからの映像で流れるのか分からないですが、ステージを降りたあとがもう……ずっと笑顔だった陽葵さんが美月さんを見たら泣いちゃって……』
凛花『完全に二人の世界だったもんね』
あー、それ触れるんだ……美月はどんな顔して聞いてるんだろう?
美南『カメラさんが撮っていたはずなので、これからかメイキングで使われるって信じてます! ね、美月さん?』
美月『え、私に聞かれても知らないけど……』
困った顔しちゃって。こういう話題苦手だもんね。
卒コンのダイジェスト映像と舞台裏の映像が流れて、私のソロ曲や最後の挨拶の時に泣いているメンバーの様子が映っていた。メンバーのコメントも入っていて、こんなに慕ってくれて今まで頑張ってきて良かったな、という気持ちになった。
『お疲れ様でーす』
『あ、美月さんちょっといいですか?』
『はい? え、撮ってますか?』
スタッフさんの横を通り過ぎた後にきょとん、として戻ってくるのが可愛らしい。
『撮ってます。陽葵さんがいよいよ卒業ですが、仲のいい美月さんとしてはどんな気持ちですか?』
『そうですね……今まで大きなイベントではいることが当たり前で頼りきりだったので、居なくなるって言うのがまだ想像出来ていないです。もう存在が大きすぎて……最後だと思うと寂しいですが、同じくらい、今後の陽葵さんのソロ活動が楽しみです』
美月はこんなこと言ってくれてたんだ。ソロ活動頑張らないと。
メンバーそれぞれと写真を撮っている映像になって、美南ちゃんの期待していた部分もバッチリ使われていた。恥ずかしいけれど、おろおろしている美月が可愛いから見られてよかった。
最後には卒コン前に集合写真を撮っている時の様子が流れて、スタジオのメンバーに切り替わる。
望実『いや……もう最高でしたね』
美南『ありがとうございます! これは永久保存版ですよ!』
凛花『最後の集合写真、陽葵が最後に送ってきたやつじゃん』
美結『最後に撮ってもらった陽葵さんとのツーショットと一緒に部屋に飾ってます!』
咲希『美結と一緒にフォトフレーム買いに行きました』
映像を見終わってからも、わいわい盛り上がっていて、しんみりしなくて良かった。こんなにしっかり特番で流してもらえるとは思ってなかったからなんだか嬉しい。
凛花『美月全然話さないね?』
美月『え、そんなことないですよ』
望実『では美月さんに最後締めて頂こうと思います』
美月『うわ、私でいいの? 陽葵さんが卒業されて、これからのグループを心配されている方もいるかもしれないですが、新キャプテンの望実ちゃんは凄く頼もしいですし、頼れる先輩もいるので私はあまり心配していなくて。もちろん、力不足ですが私も望実ちゃんを支えて、グループを盛り上げていきたいなと思っています。変わらず、これからも応援よろしくお願いします!』
『『よろしくお願いします!』』
美月の挨拶を聞いて、頼もしくなったなと嬉しくなる。昔はちょこちょこ後ろをついてきて可愛かったのに、いつの間にか隣にいるのが当たり前になって、今では私の方が支えてもらっているもんね。
ファンの方々が番組の感想を投稿してくれているのを読んでいると、ちょっとした仕草もしっかり拾われていて、よく見ているなぁ、と毎回驚く。
今回もダイジェスト映像に少しだけ映った美月とのイチャイチャについて書いてくれている方が結構いて読みながらニヤニヤしてしまった。
アイドル同士だったからこその距離の近さも、私が卒業した今はどんな反応をされるのか心配だったりする。
それじゃなくてもガチだと疑われているのに、卒業してからも変わらなかったら余計そう思われるかな、とか全く触れないのも怪しいのかな、と色々考えてしまう。
日付が変われば私の誕生日になるし、誕生日の投稿で卒コンのオフショットを載せて反応を見てみようかな。




