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アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~  作者:
番外編

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1.卒コン後の2人

陽葵ちゃんの卒コンが終わって、2人でご飯を食べに来ている。隣を見れば陽葵ちゃんが幸せそうにお肉を頬張っていて頬が緩む。可愛すぎ。


「はい、焼けたよ。入れておくね」

「ありがとー!」


いい具合に焼けたお肉を陽葵ちゃんのお皿に入れていく。次は野菜を焼こうかな。


「美月もちゃんと食べてる? はい、あーん」

「……ん、ありがと。食べてるから気にせずいっぱい食べて?」


隣から覗き込んできて、お肉をあーんしてきてくれるから断るのも悪いかな、と食べさせてもらった。満足そうな顔をしているから断らなくて正解だったみたい。


卒コンを終えてアイドルじゃなくなっても、特に何かが変わった気はしない。まだ卒コンを終えて時間が経っていないし当たり前か。

歌番組だったり、MV撮影とかコンサートみたいな陽葵ちゃんが必ず参加するような時にやっと実感するのかな……


「考え事?」

「え、ああ、卒コン終わったけど何も変わらないなぁって」

「私が? 激変したらびっくりでしょ」

「それはそうなんだけど」


穏やかに笑っているけれど、さっきまで大勢のファンの前でかっこよくパフォーマンスしてたんだもんなぁ……

陽葵ちゃんを独占してしまって、今頃喪失感でいっぱいだろうファンの方には申し訳ないな……


「ちょっとSNS見てもいい?」

「うん」


画面を覗き込めば沢山の投稿がされていて、陽葵ちゃんは本当にファンの皆さんに愛されてるな、と誇らしくなる。想いの強さなら私だって負けない自信があるけれど。


一つ一つの投稿をじっくり読みながら笑顔を見せる陽葵ちゃんが可愛くて眺めていたら、いくつか焼いていた野菜が焦げていた……ちょっと見すぎたらしい。これは私が食べよう。


「デザートなにか頼む?」

「頼む!」


ある程度お腹がいっぱいになったところで、デザートメニューを渡せばキラキラした目で眺めて、どれにしようか悩んでいる。しばらく食事制限をしていて沢山我慢してたもんね。


「どれで悩んでるの?」

「んー、この2つ」


2つで良かった。多いとせっかく頼んでも食べきれないもんね。


「2つとも頼んで半分しよ?」

「いいの? やった!」


注文をして、ご機嫌のまま再びファンの方達の投稿を確認している。凄い数の投稿がされているからとても読みきれないだろうな。

しばらく眺めていたらなんだかニヤニヤし始めたけれど、何を調べてるの……?


「ねえ、何見てるの?」

「えー? みつきたん積極的だったなぁって」

「……はい?」


何が?? 卒コンの投稿を調べてたんじゃないの?

画面を覗き込めば検索ワードに私の名前を追加していて、陽葵ちゃんの頬にキスをした事や普段よりイチャイチャしてた、なんて投稿が表示されていた。


「うわ、何調べてるの……」

「やっぱり最後だから吹っ切れたの? キスしてくれないかなって思ってた」

「陽葵ちゃんがアピールしてきたんじゃん」


最後だからって言うのと、皆から愛されてる陽葵ちゃんの恋人で、キス出来るのは私だけ、なんて独占欲が働いたなんてとても言えない。


「そうだけど、普段の美月ならあんなに沢山の人の前でなんて絶対してくれないと思う」

「それはまあ、最後だからね」


陽葵ちゃんから求められたとはいえ、自分でも大胆なことしたよなって今思い出しても恥ずかしくなる。


「配信ではちゃんと映ってたのかな? 投稿探してみよー」

「え、探さなくていいよ。あ、ほらデザート来たよ」

「わーい!!」


店員さん、ナイスタイミングです! デザートで気が逸れて良かった。改めて言われると照れる。



「美味しかったなー!」

「幸せそうだったもんね。ほら、これなんて可愛すぎ」

「美月撮りすぎ」


陽葵ちゃんの家に着いてソファでくつろぎながら、可愛すぎて沢山撮った写真を見せると、写真の多さに苦笑されたけれど仕方ないよね。


「いや、陽葵ちゃんが可愛すぎるから」

「さっきからそればっかり」


撮った写真を見ながら可愛い可愛いと言っていたら少し照れくさそうにしている。


「そんなに褒めてくれるの珍しい。デレの日?」

「あー、一緒に過ごせるのが久しぶりで浮かれてるかも……」


確かに可愛いしか言ってない。ちょっと落ち着こう。


「お、今日は素直。私も美月と一緒に過ごせて幸せ」

「……私も幸せ」


ぎゅっと抱きついてきながらそんなことを言ってくれるから愛しさでいっぱいになる。可愛すぎてつらい……


「ねえ、何してるんですか……?」


いつの間にか、陽葵ちゃんの手が服の中に入り込んでいて、背中や腰を撫でてくる。


「美月が無防備だからつい」

「……っ、今日は私がしたい」

「だめー」


今日は甘やかすって決めてたのに、このままだと流される……一旦お風呂の用意をしに行こう。


「陽葵ちゃん、ちょっと離れていい? お風呂の用意してくるよ! 疲れてるだろうし、ゆっくり入ってきて?」

「今日は泡風呂にしようよ。私も行く」


え、今日使うの? 陽葵ちゃんは素肌を撫でていた手をサッと引いて、鼻歌を歌いながらお風呂場に向かっていった。うわ、機嫌良すぎ……


「みつきたーん! 早く来てー」

「え、もう脱いでるし……」


追いかければちょうどシャツを脱ぎ捨てたところで、下着は脱いでいなかったけれど、とても直視できない。


「ヘタレー」


サッと視線を逸らしたら、くすくす笑いながらからかってくる。いつになっても綺麗過ぎて照れるんだって。


「そろそろ下着姿くらい慣れてよ」

「無理。見れない」

「メンバーのは全然普通じゃん」

「いや、メンバーと陽葵ちゃんじゃ違うから」


裸だって見たことがあるわけで、どうしても艶やかな陽葵ちゃんを思い出してしまう。

私の下で啼く陽葵ちゃんといったらもう……って違う。いつからこんなに変態になってしまったのか……陽葵ちゃんのせいに違いない。


「なんか悶えてるけどシたくなっちゃった?」

「あはは、それは陽葵ちゃんでしょー?」

「うん。シたい」

「うえっ?!」


冗談のつもりだったのに、強い視線で見つめ返されて動けなくなる。


「あー、えっと……泡風呂の入浴剤ってこれでいいの?」


何とか視線を外して入浴剤を物色する。いつからか種類別に分けてくれるようになったからすぐに見つかった。


「ふっ、聞いてきたくせに慌てすぎ。それで合ってるよ」


強引に空気を変える私に乗ってくれて、優しく笑ってくれてほっとした。なんだか押されっぱなしで悔しい……いつもだけれど。


陽葵ちゃんの髪を洗ってあげて、お返しに洗ってくれるという陽葵ちゃんから逃げ切った。洗ってもらったら絶対触ってくるでしょ。


「うわ、ふわっふわ!!」

「きっと好きだと思ったんだ。喜んでくれて良かった」


シャワーで泡を作って遊んでいたら、その様子を微笑ましげに見られて何だか恥ずかしくなる。

ちょっと子供っぽかったかな……落ち着け私。


「陽葵ちゃん、疲れてない?」

「疲れはないけれど、無事に卒コンが終わってホッとした」

「ずっと準備してきたもんね」


今日までずっと走り続けてきたし、明日からはゆっくりして欲しい。


「美月、ここおいで」

「え……」


向かい合って座っていたけれど、おいで、と両手を広げて呼ばれる。今お互い裸だよ?? 服を着てても抱きつきに行くなんて照れるのに……


「それなら陽葵ちゃんが来てよ」

「だーめ。ほら」

「わっ……?!」


自分からなんてとても動けずにいたら、痺れを切らした陽葵ちゃんが距離を詰めてきて腕をぐっと引かれた。


「ふふ、捕まえた」

「……っ、もー!! あぶなっ!!」


陽葵ちゃんの膝に乗せられて正面から抱きしめられて、きっと真っ赤になっているだろうし、素直になれなくてつい怒ったふりをしてしまう。


「真っ赤になっちゃって、可愛い」


どうせニヤニヤしてるんでしょ、と陽葵ちゃんを見れば愛しげに見つめてくれていて胸がいっぱいになった。吸い寄せられるように唇を重ねれば驚いた表情が見られて、つい得意げな顔をしてしまったと思う。


「……美月、出よ」

「え、もう少し入ろうよ」


まだそんなに経ってないのにどうしたのかな、と様子を伺えばうっとりと見つめられて自分の失敗を悟った。


「はぁ……こっちがどれだけ我慢してると……」


膝に座っているからちょうど首筋に熱い息がかかってぞくぞくする。背中に回された手も不埒な動きをしているしこれはまずいかもしれない。


「えっと、もしかしなくてもそういう気分だったり?」

「今更? 入る前にもシたいって言ったでしょ」


確かに言っていたけれど、泡風呂でテンションが上がっていたし、陽葵ちゃんも私が緊張しないようにそういう雰囲気にしないでくれていたからすっかり油断していた。


「美月がいいならここでもいいけど」

「ここで?! 良くない!」

「じゃ、出よ」


急かされるようにシャワーで泡を流して、タオルを巻いただけで寝室に誘導される。陽葵ちゃんはまとめていた髪を解いて雑にタオルで拭いていて、その余裕の無さにドキドキする。


あっという間に組み敷かれて、長い髪をかきあげて見つめてくる姿が色っぽくて目が離せない。私しか見たことがないだろうし、これからもこんな姿は誰にも見せないで欲しい。


「陽葵ちゃん……」

「ん?」


思わず名前を呼べば、優しく笑って続きを促してくれる。


「こんなこと他の人にはしないでね……?」

「こんなに夢中なのに、他に目移りなんてするわけない」


頬を撫でられて優しく唇が重ねられる。


「ふふ、キスだけでこんなえろい顔しちゃって。メンバーの前ではあんなにクールなのに」


咄嗟に反論しようと思ったけれど、今度は深く口付けられて何も考えられなくなってしまった。キス上手すぎるんだって……



卒業して、張りつめていた気持ちが緩んだだろうし、沢山甘やかすつもりだったのに結局いつもと同じように攻められてしまって悔しい。

陽葵ちゃんは隣に寝転んで満足そうにしているから、今日は甘えたい気分じゃなかったのかな。


「そんな膨れちゃってどうした?」

「今日は私が甘やかしたかったのに」


むう、と膨れる私の頬をつつきながらまた今度ね、なんて余裕の表情。もう日付も変わっているし明日も仕事だから今日は諦めるけれど、陽葵ちゃんの誕生日こそ、と考えてついにやけてしまった。


陽葵ちゃんの髪はまだ濡れていて、このまま寝たらせっかくの綺麗な髪が傷んじゃうからドライヤーを取りに行こうと、布団で隠しつつ起き上がってタオルを探す。


「何探してるの?」

「巻いてきたタオル」


陽葵ちゃんがその辺に投げ捨てていたと思うのだけれど……


「なんで?」

「ドライヤー取りに行こうと思って」

「そのまま行ったら?」

「無理!」


ニヤニヤしながら見てくるけど、そんなの無理に決まってる。


「散々見てるのに。さっきだってあんなに乱れ……」

「わー、ちょっと黙って?!」

「さっきはもっと、ってしがみついてきて可愛かったのに」

「あー、もう、うるさっ! ほんと変態っ!」


あわあわする私を見て楽しむとかほんとドS……


「向こう行った方が早いかな。先行くよ」


ひとしきり私をからかって満足したのか、くすくす笑いながら、裸のままベッドから降りて寝室を出ていった。

なんかどっと疲れた……


タオルを巻いて陽葵ちゃんを追いかけて、視線を感じつつ服を着る。陽葵ちゃんの髪を乾かした後で並んで歯磨きをしてまた寝室に戻ってきた。寝る時くらいは甘えて欲しいな、と抱き寄せればすんなり擦り寄ってきてくれて嬉しい。


「陽葵ちゃん、改めてお疲れ様」

「ありがと。美月がいてくれてよかった。1人だったらまた泣いてたと思う」

「うん。1人で泣かせるようなことにならなくて良かった」


卒コンの後に仕事が入っていたら1人で泣かせることになったのかと思うとゾッとする。仕事を入れないでくれてありがとうございますとお礼を言いたい。あえてなのか偶然なのかは分からないけれど。


「おやすみ。ゆっくり休んで」

「ん、……おやすみ」


しばらく頭を撫でていたらうとうとしてきて、あっという間に眠りに落ちた。久しぶりに陽葵ちゃんを抱きしめて眠れることに幸せを感じる。これからはこうして眠ることが普通になっていくのかな、と思うとなんだかくすぐったい気持ちになる。


これからもずっとそばにいさせてね。

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黒狼と銀狼
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