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アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~  作者:
本編

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56/99

56.冠番組収録

公式アカウントから、陽葵ちゃんの卒業日が発表された。私たちメンバーは発表より先に聞いていたけれど、4月の第3土曜日に卒業コンサートが行われて、その日に陽葵ちゃんのアイドル活動が終了となる。

あと1ヶ月もないから、リハーサルも始まって忙しい日々を過ごしていて、卒業なんだな、と感傷に浸っている暇もない。


新曲も発売されて、カップリング曲ともに評判が良くて嬉しい。キスシーンに関してはSNSの盛り上がりが凄かった。


卒コンでも期待する声があるみたいだけれど、しないよ? まず今回のカップリング曲はセトリに入ってないしね。

私とは9周年ライブでユニットをやっているから、他のメンバーを優先に組んだと言っていた。その分全体曲でイチャイチャしようねって言われたけれどそれはそれで恥ずかしいな……


今日が陽葵ちゃんの最後の冠番組収録で、最初のコーナーは陽葵ちゃんに向けて、メンバーそれぞれからの暴露話だったり不満が発表される。


「最後なのになんで暴露話とか不満?! もっとありましたよね?!」

『愛情の裏返しってやつですよ』

「そこ裏返す必要あります?!」


陽葵ちゃんとスタッフさんのやり取りにみんな笑っていて、しんみりして終わるよりは陽葵ちゃんらしいなって思う。


『事前に皆さんから集めた内容がこの箱に入っています』

「え、これを私が引くんですか?」

『はい』


箱が陽葵ちゃんに渡されて、早速一枚目を引こうと手を入れてかき混ぜている。


「うわ、なんかいっぱい入ってる……じゃあこれ。"陽葵さんはオンとオフの切り替えが凄すぎて戸惑います"」

「それはみんなそうだよね!」

「分かる!」

「いきなり空気変わるもんね」


これは不満になるのかな? メンバーからの同意が凄い。私も振り回されてるもんな……嫌じゃないけれど。


「まあ、それは意識して切り替えてる部分があるからね」


陽葵ちゃんも自覚がある事だからか苦笑している。


「オフになると一気に親しみやすくなって嬉しいです」

「ゲームとかでも1番盛り上げてくれて好きです」

「え、嬉しい!」


不満かと思いきや口々に褒められて喜んでいて可愛い。


「次はなんかもっと不満っぽい不満引いてください」

「柚葉ちゃん、私になにか恨みでもある……?」

「え、そんなに無いですよー」

「そんなに?!」

「あ、間違えた。無いですよー」


柚のちょっとおバカなところを陽葵ちゃんが拾うこんなやり取りが好きだったりする。


「次は……"陽葵さんがイケメンすぎて困ります"……これ不満? え、普通に嬉しい。というか自分で読んでて恥ずかしいわ」


 不満がなかったのかな? 確かに気持ちは分かるけれど。


「次は……うん。別の行きましょう」

「うわ、気になる!」

「それはどんな反応??」


陽葵ちゃんが紙に書かれた内容を読んで、そっと閉じた。何が書いてあったんだろ?


「陽葵、貸して。えっと、"陽葵さんがゲームで負けた時に美月さんに泣きついていて可愛すぎました"……結構よく見る光景だけど、最近だとダンスレッスンの後のことかな?」

「私のイメージがっ!!」

「いや、もう結構バレてるから」


うわ、これは私まで恥ずかしいやつ……


「気を取り直して、次は……"初めてお会いした時に、自己紹介前に名前を呼んでくれて嬉しかったです"これは先にプロフィール知ってたからね」

「陽葵はまず全員の顔と名前覚えるもんね」

「うん。覚える。なんかいい事ばっかり言ってくれるな……面白くないかな? 大丈夫ですか?」


記憶力がいいのか、人数が多いのに直ぐに覚えるから凄い。私も見習って覚えるようにしているけれど。


その後も不満は出てこなくて、皆が陽葵ちゃんを好きなんだなって分かるような内容ばかりだった。


「次のコーナーは、視聴者さんからの質問に応えるコーナーです。最後ということで、陽葵さんに聞きたいことを募集しました。軽いものからやばいものまでこの箱に入っているそうですよ」

「え、何それこわ……」

「今回はメンバーに引いてもらいます。まず、凛花さんお願いします」


進行役の柚が凛花さんに箱を差し出して引いてもらっている。


「これにしよ。"卒業は誰かに相談しましたか?"」

「相談はしていないですね……ずっと卒業っていうのは頭の片隅にあって。このタイミングかなって自分で決めました」


グループの事を1番に考えて、自分のやりたいことを諦めたこともあっただろうし、私には想像もつかないようなプレッシャーだったんだろうな。


「じゃあ、次は美南ちゃん引く?」

「引きます! "メンバーの中で、親友、ペット、恋人を選ぶとしたら誰ですか?" 恋人……?! それはもう、1人しかいませんよね!」

「待って、美南ちゃんほんとに書いてある? 作ってない?」


陽葵ちゃんが思わず美南ちゃんが引いた紙を覗きに行っていて笑いが起きる。


「あ、書いてあるわ」

「え、ついに公式から発表しちゃいます?!」


美南ちゃん、興奮しすぎ……


「ついにってなによ?! あくまでもメンバーの中で選ぶならでしょ? 親友は凛花、ペットは……柚葉ちゃんかな。恋人は美月」

「ヒューヒュー」

「ですよね!」

「ありがとうございます……!!」


カメラさん、私のことを映さなくていいです……


「今日から陽葵さんのペットになりました! 羨ましいでしょー?」

「え、それ羨ましいかな……なりたい人いるの?」


柚、普通に喜んでるけどペットだよ? それでいいの? 陽葵ちゃんも喜ばれるとは思わなかったから困惑してるじゃん……なんでですかー?! って反応を期待してたんじゃ??


「次は……美月引いてー」


変なやつ引きませんように……!


「よし、これ!……チェンジで」

「チェンジはありません!」

「何引いたの?」

「やばいやつ引いちゃいました?」

「美月さん関係ってことですね??」


うわ、最悪なの引いた……これを読むの?? 本気で??


「待って、本当やだ。読まなきゃダメですか……?」

「ダメです!」

「読みましょう!」


みんな他人事だと思って……!


「ふー……よし。"カップリング曲でのキスシーン尊すぎました。完全に運営公認ですね。キスの感想を教えてください。ちなみに、何回したんですか?" もうやだ……なんでこれを引いちゃったのか」

「わー、美月凄いの引いたね……」

「自分がされたキスの感想をした本人に聞くとか……」

「うわ、やば……!!」


生暖かい目で見てくるのやめてくれませんか……つらい。


「聞かれそうって思ってたけれど、まさか美月が引くとは……キスの感想は、キスシーンなんて最初で最後だと思ってちょっと楽しんじゃいました。したのは本番の1回だけですね」

「楽しんじゃうとか陽葵らしい」


陽葵ちゃんは特に恥ずかしがることも無く普通に答えていて、メンバーと話している。何だかどっと疲れた……


「では、最後に陽葵さん、番組に対して一言ありますか?」


その後陽葵ちゃんが何問か質問に答えて、最後に柚が陽葵ちゃんにメッセージを求めたけれど、何故か番組についての一言をもらおうとしている。


「え、番組に対してでいいの?」

「あれ? 視聴者の皆さんに対して?」


うん、視聴者の皆さんに対してだと思うよ。


「そうですね……冠番組をさせて頂けるっていうのは素晴らしいことですし、ドッキリとか、メンバーの個性を引き出してくれる番組だと思うので、長く続いて欲しいですし、これからは視聴者として楽しく見させていただきたいと思います! 視聴者の皆様、私はこの放送で最後になりますが、番組は終わらないので、引き続き応援をよろしくお願いします。ありがとうございました!」


番組についての感想と視聴者の皆さんへのメッセージを伝えて、深々とお辞儀をする陽葵ちゃんを見ているとこれで最後なのか、って泣きそうになってくる……

毎回全員が出るわけじゃないから、今まで陽葵ちゃんが居ない組み合わせも何度もあったけれど、もう一緒に収録をすることもないと思うと寂しいな。


「みつきたん、お疲れ! ……どうした?」


収録が終わって、楽屋に向かっていたらいつもみたいに後ろから抱きついてきたけれど、様子がおかしいことに気づいてくれたのか心配そうに覗き込んでくる。


「いや、今日で最後なのかって思ったら……」

「寂しくなった?」


そんなに優しく見つめないで欲しい。俯いたら何も言わずに頭を撫でてくれた。


「あ……」

「望実、何止まってるの……? え、尊い……」

「2人ともお疲れ様。あ、邪魔?」


後ろから追いついてきた望実ちゃんと美南ちゃんにバッチリ目撃されて、陽葵ちゃんが対応してくれてるけど、離してくれないかな……慰められてたとか恥ずかしい。


「え、邪魔だなんてとんでもない! 続けてください」

「むしろご馳走様です」

「続けて、だって。美月どうする? キスでもしとく?」

「なんで?! しません!」


空気を変えてくれたのは助かるけど、私が引いた質問を思い出すからやめて欲しい。分かってて言ってそうだけど。


「残念。さ、楽屋戻ろー」

「え、しないんですか」

「私たち目閉じておくので……!」

「いや、しないから」


2人とも随分仲良くなったよな、と思いながら歩き出す。私たちの関係を知ってからも変わらず接してくれて感謝しかない。陽葵ちゃんが卒業してからも写真や動画を供給しようかな、なんて気の早いことを考えてしまった。きっと喜んでくれると思うから。

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