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アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~  作者:
本編

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53/99

53.カップリング曲

私の卒業シングルのカップリングに美月とのユニット曲が収録されることになって、一足先に出来上がった曲を聞かせてもらった。


先生がずっと温めていたという歌詞は私たちの関係を知ってるんじゃないかと思わずにはいられない。美月はどう感じるかな? 早く聞いてもらいたい。

メロディも耳に残って何度も繰り返し聞いた。


この曲を私たちに歌わせちゃっていいのかな? 私たち2人が好きだと言ってくれているファンが沸くことは間違いないと思う。


「おはようございまーす」


何度も聞いているからもう歌えそう。口ずさんでいたら、美月が楽屋に入ってきた。


「美月おはよー」

「さっきの曲って何??」

「ユニット曲。聞く?」

「え、陽葵ちゃんもう聞いたの? 聞きたい!」


目を輝かせる美月にイヤホンを渡して、再生する。美月はどんな反応をするだろう。

目をつぶって聞き惚れている様子で、曲が終わると照れ笑いを浮かべる。今は一回目だからそこまで歌詞を意識したわけでは無いと思うけれど、それでも感じるものはあったみたい。

もう一度再生して、今度は歌詞が書かれた紙も渡す。目で追いながら、じわじわ赤くなっていくのが可愛らしい。


「うわ、これ……いいの?」

「これで運営公認って事だし、思いっきりイチャイチャできるね?」

「何でそうなるの?! しませーん!」


いつもみたいにふざければ楽屋にいたみくさんやスタッフさんから笑いが起きる。こんなやり取りももうすぐで終わりだと思うと寂しい。プライベートでは一緒に居られても、卒業したら美月と仕事をする機会なんてほとんど無いだろうから。


「もうこれを見てるだけで恥ずかしい……」


MVには今まで撮られたメイキング映像も使われるみたいで、この辺、と見せられた映像に美月が悶えている。雑誌のメイキングを見せられた時には、ここで出てくるのかって美月も思ったはず。


「待って、え、冗談ですよね??」

『本当です』

「ええ……嘘だぁ……」


MVのイメージを説明してもらったのだけれど、まさかのキスシーンがあって美月が物凄く動揺している。スタッフさん達の前でキスするとか気まずいし、撮り直しもあるかもしれないしどうなる事やら……ドラマでのキスシーンやベッドシーンを思うと、女優さんって本当に凄い。


「キスするなんて聞いてない……知ってた?」


着替えをするために楽屋に戻ってきて、2人だけになると美月が不安げに聞いてくる。


「私も初めて聞いた。スタッフさんの前でとか緊張する」

「え?」


私の言葉にきょとんとしているけれど、なんでそんな反応?


「陽葵ちゃんも緊張する? なんか喜んでしそう」

「……私のことなんだと思ってる?」


見せつけたいな、と思ったりもするけれど、人前でキスするなんて初めてだし緊張するよ。ユニットでは寸止めだったし。


「私は寝たふりしてたらいいんだもんね?」

「うん。動かずじっとしててね?」

「むしろ緊張して固まっちゃいそう……」


待ってる方もドキドキするよね。あー、緊張する……

ガチ感出ちゃうだろうし、気まずい空気にならないように、キスの前後はなるべく軽い感じでいこう。


「これ、ほんとにしちゃっていいんですよね? 後で怒られません? 大丈夫ですか?」


いよいよキスシーンの撮影になって、監督さんに確認すると、笑顔で問題ないって返ってきたけれど、なんか楽しそうですね?


「ちょっと皆さんニヤニヤしすぎじゃないですか……」


美月がベッドに腰掛けて、スタッフさんを見渡して居心地悪そうにしている。


「美月、動かないでよね? 何回もしたいなら別だけど」

「なっ?! したくありませんー!!」


うん、スタッフさんも笑ってるし、美月の緊張もほぐれたかな?

そういえば、カメラテストって寸止めでいいんだよね?


「テストはキスしなくて大丈夫ですか?」

『大丈夫ですが、全然してもらっても』

「しませんっ!!」


監督さんの言葉に、私より先に美月が答えてるし。


「残念ですが、拒否されたので寸止めで」


そういう私を睨む美月に笑うスタッフさん達。なんか楽しくなってきた。

カメラテストが終わっていよいよ本番。美月は仰向けに寝て目をつぶっている。

美月の頬に手を添えて、親指で唇をなぞる。本当、綺麗な顔……吸い寄せられるように唇を重ねた。このまま深いキスをしてしまいたくなる衝動に襲われるけれど、ゆっくり唇を離して、頬を撫でながらしばらく見つめていたらカットの声がかかった。


『カット、OKです!』


監督さんが映像をチェックしているけれど、ちゃんと撮れてるかな? キスをする前は愛しげに、キスの後は名残惜しげに見つめてください、と指示されたけれど、そんな表情を意識したことなんてないからちょっと心配。


「どうかなー? 撮り直しにならないといいけれど」

「ほんとそれ」


目を開けて起き上がった美月は恥ずかしいのか目を合わせてくれない。


「美月、どうだった??」

「……どうって?」

「キスの感想は? 撮り直しになったらもう1回出来るけど」

「感想っ?! 1回でいいですっ!!」


慌てたように私を見てきて、変なことを言わないでって顔に書いてあるけれど、これくらいの方が普段の私たちっぽいでしょ。私と美月がじゃれ始めるとスタッフさんからの微笑ましげな視線を感じた。


「冗談だって」

「もー、陽葵ちゃんはすぐそうやって……」


美月も恥ずかしさは無くなったかな? 幸い撮り直しは無くOKが出たから一安心。

室内での撮影以外に外での撮影もあって、暗くなってから撮るということで楽屋に戻って休憩することになった。


「お疲れ様でーす。あれ、みくさんだけなんだ」


楽屋に入ると、ちょうどみくさんしか居なかったから気にせず話が出来るな。


「2人ともお疲れ様」

「ほんと、疲れました……」

「あはは。まさかキスシーンがあるなんてね。今回は雑誌の時とは逆なんだ?」

「なんか監督さんが雑誌も9周年のユニットも見てくれたらしくて、私が攻めだなって思ったらしい」


みくさんは雑誌の時もメイクを担当してくれたから撮影の様子も見てたもんね。


「え、そうなの?? そんなこといつの間に聞いたの?」

「ん? キスシーンの指示をもらった時にちょっと話した」


美月も知らなかったからか驚いている。私が攻め、は否定しないんだね。


「見てたけど、あれはやばいわ……」

「え、そんなに?」

「うん。なんか見ちゃいけないものを見た気がする」


キスなんて見ることないもんね。ましてや同性だし余計かな?


「ガチ感出てた?」

「出てた」

「出てたかー」

「あー、私向こうで曲聞いてきますね!」


私とみくさんが話している間、美月は恥ずかしいのか離れたところに座ってイヤホンを付けている。相変わらず分かりやすい。


外での撮影に移動する前に、衣装さんからお揃いの時計を渡された。


「わ、可愛いですね。陽葵ちゃん似合いそう」

「美月も似合うと思うよ」


手を繋いだ時に見えるように、ということで私が左腕で美月は右腕に付ける。なんか照れる。

美月を見れば同じように照れくさそうにしていて思わず抱きしめたくなった。なんで家じゃないんだろう……この後抱きしめるシーンとかないかな?


「これと同じやつ買っちゃう?」

「え……買わない。ほんとに買わないでね? フリじゃないからね?」


ちょっと悩んだよね? ルームウェアの事があるからか買わないように念押しされた。


残念ながら抱きしめるシーンは無かったけれど、恋人繋ぎをしながら歩いたり屋上で撮影をしたりと、普通に夜の散歩を楽しんで来た。最初は緊張していた美月も普段通り雑談するうちにリラックスしてきて可愛かったし。

どんなMVになるのか、見るのが楽しみだな。

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黒狼と銀狼
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