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アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~  作者:
本編

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51/99

51.バレンタイン

今日はファンクラブ限定のバレンタインイベントで、午前中はミニライブ、午後は握手会と1日がかり。


「バレンタインイベント、張り切っていきましょー!」


陽葵ちゃんの掛け声でイベントがスタートして、ステージに上がる。沢山の人が手作りうちわだったり、グッズを持ってくれていて嬉しい。あ、私と陽葵ちゃんの名前が書いてあるやつ発見。

普段から応援してくれるファンの方を見つけて手を振ったけれど、分かったかな?

柚とすれ違う時にじゃれ合ったり、後輩たちに絡んだりしながらステージを駆け回る。


「次の曲は私たちが皆さんの近くに行きますよー!」


私の声にメンバーが続々とステージを降りて客席を駆け抜けていく。広いから端まで行ったメンバーは戻って来るのに時間がかかりそう。ちなみに、陽葵ちゃんは一番最初に駆け降りていった。早……!


間奏の間に自分のうちわを持ってくれているファンの方に手を振ったり、うちわに書いてある事をやっていく。他のメンバーの様子も煽っている声が聞こえたりして何となく分かる。


「今日は来てくださってありがとうございまーす! うちわも沢山持ってくれていて嬉しいです! え、ぶりっ子して、多っ! やりませんって!」


配信でもやらないって言ってるのに。ここまで来るとわざとだよね?? 皆笑ってるし。


「皆戻ってきてー! 端の方のメンバーは頑張って走ってー!」


3曲目の途中で、ステージの上から凛花さんがメンバーを呼び戻している。私は真ん中辺りまで来ていたけれど、そこまで急がなくても大丈夫かな。


「お、美月いたー!」

「っ?!」


間奏で手を振りながら戻っていると、後ろから走って来た陽葵ちゃんに抱きつかれて客席が沸いた。

びっくりして変な声出そうになったよ……


こんなに沢山の人の前でなんて恥ずかしいけれど、喜んでもらえるのは嬉しい。


「びっくりした……」

「見えたからつい。あ、うちわ持ってくれてるよ」

「え、どこ? 本当だ」


マイクを通さないように気をつけて話しつつ、うちわを見つけては手を振りながら、ステージの階段前まで移動する。


「陽葵ちゃん、先に行って」

「このまま行けばいいじゃん」

「いや、階段危ないから」


不満そうな陽葵ちゃんを先に行かせると、登りきったところで待っていてくれてちょっと照れくさい。


「さあ、バレンタインイベント、始まりました! 皆さん、今日はお越しいただきありがとうございます! 楽しんでますかー? 皆さんの推しメンは近くに来ましたか? ……え、私しか来なかった? なんで嫌そうなのっ?! この後もまだまだイベントは続くので、応援よろしくお願いします」


陽葵ちゃんが話し始めるとファンの皆さんからの歓声が凄くて嬉しい。なんか一体感。


「それでは、自己紹介していきますので、メンバーコールお願いしますね。さあ、元気よく行きますよー! ではまずは私から。はぁーい、キャプテンの工藤陽葵、24歳ですっ! 今日はぁ、楽しんでいってくださいねっ? よろしくお願いしまぁーす」

「いえーい!!」

「ひまりー!」

「うわ、陽葵さんかわいいっ!!」

「え、待って、なんでそんなぶりっ子なの?!」


メンバーも会場も盛り上がっているけれど、陽葵ちゃん何やってるの?! 思わず突っ込んでしまった。しっかりぶりっ子ポーズもしてて可愛いけれど。


「え、何かおかしい?」

「いやいや、おかしいでしょ? え、おかしいよね?」


他のメンバーも笑っているけれど、全員これやる訳じゃないよね?


「はい、じゃあ次凛花」

「はぁーい、田崎凛花、23歳でーっす。今日はいっぱい楽しむぞっ」


え? 凛花さんまでノリよすぎ!! その後の1期生2人も同じようなテンション……1期生の皆さん何してるの?!


「次は2期生に行きましょう。柚葉ちゃん」

「はいっ! ゆずはこと井上柚葉、21歳ですっ! 今日は柚ちゃんって呼んでくださいね? せーの?」

「柚ちゃーん」

「柚さーん!」

「ありがとうございますっ!」


柚まで……メンバーもノリよすぎでしょ……


「よし、じゃあ次は美月いこっ!」

「……山内美月、20歳です。よろしくお願いします」

「えー」

「美月さんもぶりっ子してください!」

「美月さんのぶりっ子見たい!!」


なんかブーイングされた……同じようにやれってこと?! キャラじゃないって!


「何ですか?」

「終わり?」

「はい」


陽葵ちゃんが不満そうに見てくるけれど、やらないよ??


「ツンデレー」

「これってツンデレなの……?」


陽葵ちゃんと絡みつつ、全員の自己紹介が終わった。ぶりっ子で自己紹介する子もいたし、私と同じように普通の自己紹介をする子もいた。

ほら、私までやっちゃうと皆やらなきゃいけないから、あえてやらなかったって事で。

その後、何曲か歌いミニライブは終了した。お昼何かなー? 


「陽葵さん、自己紹介最高でした」

「でしょー? なんかぶりっ子してってうちわが多かったからやってみた」

「いやいや、やるなら先に言っておいて?」

「そんなこと言って、凛花ノリノリだったじゃん」


休憩スペースに着くと、陽葵ちゃんを中心に自己紹介についての話題で盛り上がっていて、絡まれるから絶対近づきたくない。お弁当貰いに行こ。


「皆取りに来てー! どれがいい? これ? はい」

「ありがとうございます!」


お弁当を受け取りに行くと、中学生メンバーが待っていたから呼び寄せて選ばせていく。陽葵ちゃんはまだ盛り上がってるし、先に食べちゃお。


「向こうで一緒に食べない?」

「はい!!」

「是非!」


きゃあきゃあ盛り上がる中学生メンバーと話ながらお昼を食べていると、学生に戻った気分になる。色々話を聞くと、この前陽葵ちゃんと一緒に仕事をした後にランチに連れて行ってもらったと喜んでいて微笑ましい。


午後からは握手会で、短い時間だけれどファンの方と直接話が出来るから嬉しい。


「ぶりっ子して」

「ここでも?! しませんって」


なんでみんなそんなにして欲しいの……? 


「陽葵ちゃんにチョコあげる?」

「メンバーみんなにあげますよ」


陽葵ちゃんには別のも用意してるけどね。


「××のアイス食べたよ」

「わ、食べてくれたんですね! どうでした?」

「美味しかった!」


生配信でおすすめしたアイスを食べてくれたらしい。ほんと美味しいよね。

一部が終わって休憩スペースに移動していると、陽葵ちゃんのレーンが見えて、次の部の列ができ始めている。今回は卒業発表後初の握手会になるから、すごい倍率だっただろうな……


「美月、休憩? ちょっと待てる?」

「うん」

「一緒に行こ」


通り過ぎようとしたらもうすぐ終わるみたいで、少し待つことになった。

最後に並んでいた女の子達が私との絡みが好きだと言ってくれていて、陽葵ちゃんに手招きされる。近づくと、ぐっと肩を抱き寄せられた。

キャー!! と次の部の方からも黄色い声援が聞こえたから、喜んでもらえたみたい。


2人で手を振って休憩スペースに移動する。こうしてイベントの合間に一緒に過ごせるのもあと少しなんだな、と思うとこの時間がすごく貴重に思える。

休憩スペースにはメンバーからのチョコや差し入れが置いてあってどれも美味しそう。チョコの用意はもちろん強制じゃないけれど、個別に用意するとすごい数になっちゃうから毎年一箇所に集めて各自取っていく形式になっている。


「美月は何作ってきたの?」

「食べやすい方がいいかなと思ってトリュフ」

「どれー?」


結構持ってきたメンバーが多いみたいで沢山のチョコが置いてある。お、あった。


「これ。陽葵ちゃんには違うやつ用意してるよ?」

「え、ほんと?! 嬉しい! でもトリュフも食べる」


美月からのチョコ、って喜んでくれていて可愛い。そんなに喜んでもらえるならいつでも作るよ。


「陽葵ちゃんは作ったの?」

「作ってない。クッキー買ってきたー。あ、美月はダメ」


取ろうとしたら止められた……なんで??


「クッキーは友達でいようって意味らしいよ。友達でいたいなら食べていいけど」

「え、そんな意味あるの?! 食べないからそんな目で見ないで」


その理由で食べちゃダメとか可愛すぎない?! この後も握手会があるのに、思い出してニヤケちゃいそう……


他のメンバーからのチョコは食べると拗ねそうだから差し入れのフルーツを貰って、空いているテーブルに移動する。


「はい、フォーク。陽葵ちゃんも食べるでしょ?」


フォークを差し出すけれど、受け取ろうとしてくれなくて、チラチラ見てくるのが可愛すぎる……仕方ないから食べさせてあげますよ。

苺を差し出すとパッと笑顔になって食べていて、オフになった途端甘えてくるのが可愛いくて、敵わないなって思う。

握手会が終わったら陽葵ちゃんに用意したチョコを渡そう。もう用意してるって言っちゃったけれど、喜んでくれたらいいな。

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黒狼と銀狼
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