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アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~  作者:
本編

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41/99

41.プレゼント

午後からの冠番組の収録前に、美月とカフェで待ち合わせをしている。近くで撮影をしていたから、私の方が先に着いた。


「ごめん、ちょっと撮影が押して遅れた。お疲れ様」

「平気。お疲れ!」


少し待つと、店員さんに案内されて美月が到着した。店員さんに丁寧にお礼を言ってから席に座る所とか、好きだなって思う。


「もう何頼むか決めた?」

「ううん。まだ」


メニューを見ながらこれ美味しそう、と選ぶ時間も楽しい。注文は美月がさっとやってくれて、こういう所も後輩にモテるポイントなんだろうな。

昨日イルミネーションを見ながらプレゼントを渡してくれた美月もイケメンだったし。一緒にイルミネーションを見られただけでも幸せだったのに。

私は昨日プレゼントを家に忘れてしまったけれど、今日はちゃんと持ってきたから先にプレゼントを渡すことにする。


「美月、はい。プレゼント」

「わ、ありがとう!! 開けていい?」


なんだろー? と袋から出して、包装紙を丁寧に開いていく。こんなところも真面目というか、真剣で可愛い。


「うわ、可愛い!!」

「見て、お揃い」


服の下に隠れていたネックレスを引っ張り出して見せると、照れたように笑って、早速付けてくれた。普段あまりしないのに抵抗なく付けてくれて嬉しいし、よく似合っている。

身につけてもらえるものがいいな、と思ってピアスかネックレスで悩んだけれど、ピアスは前に美月から貰ったからネックレスにした。


「ありがとう! 大切にする」


お揃い嬉しい、と目を細めて笑う美月の笑顔に私まで嬉しくなる。喜んでもらえて良かった。


「あ、美月ちょっと待って。料理が見えるように持ってこっち向いて?」


注文していた料理が届いて、食べようとする美月を呼び止める。写真撮る? って料理をこっちに渡そうとしてくれるけれど、美月を撮りたい。


「なんかデートっぽい! 彼女感ー!」


ちょっと照れ笑いをしつつ写っているのがいい感じ。


「陽葵ちゃんの方が彼女感あると思うけど……あ! ねえ、昨日の投稿、びっくりしたんだけど!!」

「彼女感あるって言われたってやつ? コメント欄見ながらニヤニヤしちゃった」


私と美月のツーショットを喜んでくれるファンの方が多いから心配ないかなって思ったけれど、思った通り荒れることも無く平和だった。


「やっぱりね。きっとそうだと思った」

「美月は彼氏感溢れ出てるって言われてたよ?」

「それはそうなるよね。陽葵ちゃんの圧倒的彼女感」


載せてないけど彼女感溢れる写真沢山あるし、なんて言ってるけど逆だからね?? 


ランチを終えて楽屋に向かい、用意されている衣装に着替えると、ネックレスが見えてしまうから外してバッグにしまう。美月の方は服で隠れるからそのまま付けてくれているみたい。


収録が始まり、次のコーナーは私が進行だな、と思っていたら何故かカメラさんが望実ちゃんを映した。


「さて、次のコーナーに行きましょう、と言いたいところですが……抜き打ち! メンバーの鞄の中身チェックー!!」

「……は?」

「なになに?!」

「聞いてないんですけど?!」


え、私も聞いてない。私もターゲットってこと?? スタッフさんが運んで来たテーブルには私のバッグも置いてある。そして美月のリュックも。


「ここにメンバーの私物があります。これ、皆さんのですよね? ……皆さん明らかにテンション下がってません?? そんな事は気にせず、早速1人目から行きましょうー」


仕掛け人は楽しそうだなぁ……次は私も仕掛け人やりたい。


「では次、このリュック誰のですか??」

「……私の」

「美月さんテンション低っ!」


美月の番になって、本当に嫌なんですけど! なんて言いつつ席を立って自分のリュックが置いてあるテーブルに向かっていく。そういえば、ネックレスの箱と包装紙どうしたかな? 美月の事だから捨ててなさそうだけれど。


「まずはスマホ、メイクポーチ、コンタクトとメガネ、財布、キーケース、水、今やらせてもらってる舞台の台本、歯ブラシ、リップとハンドクリーム、以上! ……もう片付けてもいい?」

「綺麗にされてますね!! はい、大丈夫です」


許可を貰って、出したものを戻そうとすると先に私物チェックをされていたメンバーからストップかかった。


「え、望実、美月さんに甘くない?!」

「本当ですよ! 私たちの時はポッケの中とかまで確認したのに!」

「いや、さすがに先輩のバッグを確認する訳には……美月さんすみません。行けってスタッフさんから言われたので失礼します!」

「あー、どうぞ」


渋々場所を譲って、望実ちゃんが美月のリュックを確認している。


「ポケットは何もなし……ん? なにかの箱と、これは包装紙??」


やっぱり持っていたみたいで、美月には悪いけれど、素直に私からって言うのか、誤魔化すのかどうするのかなってちょっと楽しみになってしまう。


「この箱って開けても大丈夫ですか?」

「うん。中身は入ってないんだけど、いいよ」


お、意外と落ち着いてる。


「ネックレスですかね? もしかして今付けてます?」

「さー、それはどうでしょう」

「え、教えてくれないんですか?!」


メンバーからもブーイングを受けつつも、うまくかわして中身の所在については深く追求されることなく次のメンバーに移った。


「じゃあ最後、陽葵さん」

「はーい! 待ってる間に何か面白いもの入ってたかなって考えてたけど、多分無いわ……」

「陽葵さんの私物を見られるだけで充分です!」

「もうファンじゃん」


ファンです!! って元気よく返事が返ってきて、ファンというかヲタク? ってメンバーからの声がする。


「スマホ、財布、キーケース、メイクポーチ、コンタクト、ネックレス、イヤホン、充電器、歯ブラシで終わり。もう無いけど中身確認する? なんか普通すぎて……」

「ん? ネックレス??」

「美月さんが持ってた箱の中身だったり?!」

「え、やばい!」


あ、そうなっちゃう?? 妄想が凄い……


「もしかして美月さんからのクリスマスプレゼントですか?!」

「え? 美月さんからのプレゼントはマフラーでしたよね??」

「待って、それ今関係なくない?!」


美月がメンバーにどうなんですか?! って詰め寄られて困惑している。


「えっと、もう片付けていいのかな?」

「あ、大丈夫です! ファンの皆さんにとっては推しの鞄の中身を知れて良かったんじゃないでしょうか。私にとっても最高の時間でした! という事で、抜き打ちの私物チェックでしたー!」


抜き打ちチェックが終わり、予定通りに私が進行のコーナーまで撮り終えて、今日の収録は終わりになった。

スタッフさんと話してから楽屋に戻ると、美月の周りにはメンバーが集まっていて、何やら盛り上がっている。


「何してるのー? 私も混ぜてー」

「あ、陽葵さん!!」


私に背を向けていた美月のお腹に手を回して抱きつき、肩に顎を乗せて話に混ざる。


「美月さんがネックレスどうしたのか秘密にするんですー!」

「いや、それよりバックハグやばい! 最高!!」

「隠されると余計気になって……」

「陽葵さん貰ってないんですよね?」


収録中やけにすんなり次に行ったなと思ったけれど、本当はみんな気になって仕方がなかったらしい。

メンバーの中では、何故か誰かに貰ったという考えにはならないらしい。美月がネックレスを付けてるイメージが無いからかな?

美月は、だからあげてないって。と苦笑している。


「貰ってないよ。私があげた」

「えっ、陽葵ちゃん?!」


着替えればどうせ見えるし、と美月のお腹に回していた片手を離して、衣装で隠れていたネックレスを引っ張り出してみせるとキャー! とメンバーが沸いた。


「もしかしてお揃いですか?!」

「そう。可愛いでしょ?」

「可愛いです! 陽葵さんからのプレゼントなんですね!!」

「え、服に手を入れるところ自然すぎません? 美月さんも無抵抗でやばいんですけど……」


美南ちゃん以外はお揃いやばい、と盛り上がっているから美月を覗き込んでみたら手で顔を覆って照れている。


「もう、なんで見せちゃうの」

「着替えたら見えるじゃん? それなら今見せても一緒かなって」

「それはそうだけど、恥ず……」


そんなに照れてると弄られるよって言おうとしたらもう遅くて、後輩たちからニヤニヤした視線を向けられている。


「美月さん照れてるー!」

「イケメンの照れ顔っ!」

「今日も尊い……」

「あー、もう! 早く着替えるよ!」


ほら、行った行った、とメンバーを追いやって、私達も着替えを置いているところまで移動する。


着替えた後に美月の胸元でネックレスが揺れているのを見て、幸せな気持ちになる。プレゼントした私の方が幸せな気持ちにしてもらっているかもしれない。


メンバーと別れて次の仕事に向かいながらスケジュールを確認する。次に美月と会えるのは年末かな。毎年年越しはメンバーと過ごしていて、美月も高校卒業後の昨年から参加している。

今年ももう終わりだと思うと時間が経つのって本当に早い。美月はもちろん、メンバーと過ごせる時間も大切にしていきたいな。

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黒狼と銀狼
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