40.イルミネーション
世間はクリスマスムード一色だけれど、そんな事は関係なく仕事が入っている。忙しいのは有難いことだけれど、陽葵ちゃんと過ごせないのは残念だな、と思ったり。
収録の合間に、近くでイルミネーションをやっているとスタッフさんが教えてくれて、陽葵ちゃんを含めたメンバーの何人かと見に来てみた。
「人多すぎ! そしてカップル多すぎじゃない?!」
「それはまあ、クリスマスだからね」
「ねえ、向こうにツリーある!」
メンバーが言うように周りはカップルだらけで、イチャイチャしていて正直羨ましいな、と思っていたら柚がツリーを見つけて大はしゃぎで走っていった。子供か。
「柚葉ちゃんはいつでも元気だなー」
「ほんと。陽葵ちゃん、そんな薄着で寒くない?」
気を使われたのか、みんな柚について行って、陽葵ちゃんと2人になってちょっと照れくさい。結構寒いのに陽葵ちゃんは薄着で風邪ひかないかなって心配。プレゼント、もう渡しちゃおうかな……
「寒いから手繋ご?」
「みんなと合流するまでね?」
あー、もう可愛い。外だけれど暗いし、周りはみんな自分の恋人に夢中で周りなんて見ていないから手を繋ぐくらいは平気かな?
「えー、別に手繋ぐくらい普通じゃん?」
「恥ずかしいって」
そう言いながら繋がれた手はいわゆる恋人繋ぎってやつで。さすがに見られるのは恥ずかしい。
「まさか美月と2人でイルミネーションを見られるとは思わなかったな」
「私も。みんなに感謝だね」
綺麗だねってイルミネーションを見ている陽葵ちゃんが綺麗すぎるから写真に収めて、その後もチラチラ見ていたら目が合った。しばらく見つめ合う形になったけれど、どちらからともなく笑いあう。今ならプレゼント渡せそう。
「あのさ……今日の収録終わりにプレゼント渡せるかなって持ってきてて」
「え、用意してくれたの? 嬉しい! なになに??」
リュックからプレゼントを取り出して渡すと、キラキラした目で開けていい? とそわそわしている。喜んでくれるといいけれど。
「わ、マフラー! しかも××の! わざわざ買いに行ってくれたの?」
「うん。服にしようかなって見に行ったんだけど、似合いそうなのがあったから」
「ありがとう! 早速使お」
マフラーを巻いて、肌触りやばい! って顔をうずめている仕草が堪らなく可愛いし、想像通りに良く似合う。またスマホを向けて何枚か写真を撮ってしまったけれど、彼女感が凄い。可愛すぎ。
「私も用意してるんだけど、家に置いてきちゃって。明日の収録前に渡すね」
「うん。ありがとう」
「美月、もう1回手繋ご」
忙しい中用意してくれただけで嬉しい。愛しいなぁって見ていたら、手を差し出されたからしっかりと繋ぎ直す。
ツリーの周りに近づくにつれ明るくなっていって、手を離さなきゃなって思うのに名残惜しい。集まっているメンバーを見つけたけれど、離せずにいたら美南ちゃんと目が合って、視線が下がっていくから慌てて私から手を離した。
「わ、今……!! うわっ!!」
「美南ちゃんそんな慌ててどうしたー?」
陽葵ちゃんがニヤニヤしながら美南ちゃんに絡みにいき、他のメンバーもなになに?? って盛り上がり始めている。
「え、今手繋いでましたよねっ?! しかも恋人繋ぎ!!」
「うん。寒いから繋いでもらったー」
何事もないように陽葵ちゃんが答えてくれているけれど、見られてたとか恥ず……
「えー! 見たかったです!!」
「なんで離しちゃうんですか?!」
「そうやってすぐイチャイチャするー!」
ラブラブだからねー、見たい? とにやけつつ答えていて、自分から煽りにいっている。
「見たいです!!」
「だって。美月どうする? もう1回繋いどく?」
「繋ぎませんー」
いつもの感じで断ると、えー! と皆からブーイングを受けた。なんで陽葵ちゃんまで言ってるの??
「あれ? 陽葵さんそんなマフラーしてましたっけ??」
「本当だ! よく似合ってますね!!」
「どこのマフラーですか?」
「××のやつ。あ、今日の服もそこのだわ」
陽葵ちゃんを囲んできゃあきゃあ盛り上がっているのを微笑ましく眺めていたら、凛花さんが私を見ながらニヤニヤしているから、私からのプレゼントだって気がついていそう。
「なんか美月さんにも似合いそうですよね」
「似合うだろうけど、美月はこの色は選ばないだろうなー」
そうだね。自分用に買うならもう少し暗めの色にするかな。他にも何色かあったし。
「色違い無いんですか? お揃いとか」
「あー、どうだろ? 美月、色違いってあった?」
「うん。何色かあったよ」
……あ。陽葵ちゃんが普通に聞いてくるから、反射的に答えちゃった。
「え、美月さんからのプレゼントですか?!」
「さっき2人になった時に??」
「イルミネーション見ながらとかもうカップルじゃん……!!」
「もう……!! むり……尊すぎ……」
私からのプレゼントって知られても問題ないけれど、生暖かい視線が恥ずかしすぎる……! 陽葵ちゃんはメンバーの反応にニヤニヤしてるし。
「えーっと、せっかくなので写真撮りましょ! 私が撮るのでツリーの前まで行ってくださーい」
強引にメンバーをツリーの前に追いやって、何枚か写真を撮る。ちょっと目立ち始めてるし、そろそろ帰った方がいいかな。
「さて、帰りましょー?」
「美月も撮ってあげる」
帰ろうと呼びかけると凛花さんが写真を撮ってくれると言ってくれたから、端に入って写真を撮ってもらう。
「陽葵と美月はちょっとそのままで。他のみんなはこっち来て」
写真を撮り終わって凛花さんの所に行こうとしたら、そのまま留まるように言われた。
「凛花に2人の写真撮ってくれるように頼んじゃった」
傍に来て、ぎゅっと抱きついてきた陽葵ちゃんを見ると、嬉しそうにしていて見蕩れてしまった。
完全に楽しんでいるメンバーからはやし立てられながら写真を撮ってもらう事になったけれど、陽葵ちゃんが嬉しそうだから撮ってもらえてよかった。この前は撮れなかったしね。
少しの時間だけれど2人になれたし、メンバーには感謝しかない。
家に帰ってから、写真をSNSに投稿する。凛花さんから送ってもらったツーショットは載せるか迷ったけれどガチ感が凄い気がしてやめておいた。
今までに沢山撮った陽葵ちゃんの写真は彼女感が溢れていてファンの人たちが喜んでくれるはずだけれど、いつ投稿しようかな。スマホには陽葵ちゃんの写真が沢山入っているから、厳選してどこかのタイミングで公開してもいいかもしれない。
お風呂上がりに水を飲みながらスマホを確認すると陽葵ちゃんの投稿通知が来ていて、コメントを読んで水を吹き出しそうになった。
工藤 陽葵
収録の合間にメンバーとデートしてきました。イルミネーションが綺麗でした!
1枚目はメンバーと。2枚目は凛花に美月とのツーショットを撮ってもらいました。彼女感凄いって言われたー
#イルミネーション
私が載せるのを止めた写真がバッチリ載っていて、そういう事を自分から書いちゃうところが陽葵ちゃんらしいというか。ファンの人たちの反応を見てニヤニヤする陽葵ちゃんが浮かんで、早く会いたくなる。明日の収録が待ち遠しいな。




