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アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~  作者:
本編

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34/99

34.ライブ後②

ライブが終わって家に帰ってきて、ソファに座っている美月の肩にもたれかかってのんびりする。こんな何気ない時間が大切で、プレッシャーとか疲れとかが全部無くなっていくから、支えられてるなってすごく実感する。またしばらくは忙しくなるから、今日はずっとくっついていたい。


SNSを更新してファンの人の投稿を見ていると、私たちがキスをしたのか? という話題で盛り上がっているのを見つけた。

美月にも見せるとMCで私が変なこと言ったんじゃないかって疑われたけれど、言ってないよ?? ちゃんとしてないって明言しておいたし。


メンバーから送られてきた写真を見ていると、ため息が聞こえた。チラ、と美月を見てみれば険しい顔でスマホを見つめている。何か嫌なコメントでも見つけちゃったかな?


「美月、ため息なんてついてどうかした?」

「え? ついてた?」


無意識だったみたいでびっくりしてる。そんな所も可愛い。


「うん。嫌なコメントでも来てた?」

「ううん、来てない。なんでもないよ」


声だけ聞くと普通だけれど、こっちを見ないで答えるところから何かあったって分かるよ?

じっと見つめても、気づいているはずなのにこっちを向いてくれない。


「美月?」

「んー?」


あ、返事はしてくれるんだ。聞こえないふりもできるのに、そういう所はやっぱり優しい。


「なんでこっち見ないの??」

「今ちょっと盛り上がってて……」


確かに盛り上がっているけれど、普段はスタンプくらいでそんなに混ざらないのに。話の内容も特別美月が好きそうな話題でもない。隠し事が下手すぎて可愛い。


「私にも来てるから知ってる。ね、何かあったでしょ??」

「え? 何も無いよ。陽葵ちゃんの勘違いじゃない?」


視線は相変わらずスマホに向いたままで、しばらく待ってみたけれど終わりにする気配はない。大人しく随分待ったと思うから、そろそろいいかな?


「美月ちゃん、自分からトーク抜けるか、美月借りるねって私に言われるかどっちがいい?」

「えっ?!」


今なら抜けても大丈夫そうだな、というタイミングで終わりにするように促すと、私の本気を感じとったのか慌てつつ終わりにしてくれた。


「やっとこっち向いた」

「ね、ズルくない??」

「美月が隠そうとするからでしょ?」


強引だったかもしれないけれど、素直じゃない美月を待ってたらいつまでもあのままだと思うし、そんなの時間が勿体ない。


「だから隠してないって。もういい時間だし、陽葵ちゃんお風呂入ってきたら?」

「後でいい。本当に何も無いの?」


これでダメなら一旦引こうと思ってじっと見つめてみる。ここまで頑なに隠したいことって何だろう? 心配事なら話して欲しいのに。


「さっきから無いって言ってるじゃん」

「……それならいいけど。何かあったらちゃんと言うんだよ? シャワー浴びてくるね」


言わないか。意地になってるし予定通り一旦引くことにして、この後どうやって聞き出そうかな、と考えながら下着やタオルの用意をする。

シャワーだけにしようと思ったけれど、次の泊まりの予定も決まっていないし、やっぱり一緒に入りたい。お湯はりをしている間に呼びに行こうかな。


「あー、もうやだ……そもそも陽葵ちゃんがメンバーとイチャイチャしてるから悪いんじゃん」


戻ってみたら項垂れている美月が見えて、声をかけようとしたら呟きが聞こえた。え、なにこの可愛い子? 嫉妬したことを隠したかったってこと?


「そういうことね」

「うわっ?! え?! 待って、シャワーは??」


隣に座ると、飛び上がるほど驚いている美月に見つめられた。


「やっぱりゆっくりしたくてお湯張り中。戻ってきて正解だった。嫉妬してくれたの?? みつきたんかーわいい!!」


こんなに可愛い姿を見せられて、今すぐ押し倒したい気持ちを落ち着けるように、いつものようにからかってみる。


「もー、こうなるから嫌だったのに」

「ごめんって。気づけなくてごめんね? でも美月が嫉妬してくれたのは嬉しい」


嫉妬して、それを隠そうと意地張って1人で落ち込んでたなんて、愛しさが溢れてどう伝えたらいいんだろう?


「私が勝手にもやもやしてただけだから」

「写真撮ってる時?」

「うん」


探してくれてて目が合った訳じゃなくて、ずっと見てたってことかな? 来てくれていいのにって思ったけど、 周りを気にして私と距離を置こうとするくらいだからそんな事できないか。


「でもメンバーと仲良くして欲しくないなんて思ってなくて。陽葵ちゃんがサービス精神旺盛というか、空気を読んで期待に応えちゃうというか、そういう所は分かってるつもりだし。なんだろ。上手く言えないけど」


美月は本当に自分より周りのことに気を配れる子だなって思う。年下だけれど、私よりしっかりしてるかも。私が甘えすぎてるのかな。


「でも嫌だったんでしょ? そういうのは押し殺さないで言って? 美月に見せつけないでって言っておきながらごめん。気をつける」


私も美月がメンバーとイチャイチャしてるのを見ると嫉妬するし、気をつけてって言いながら同じことしちゃったなって申し訳なくなる。


「私が好きなのは美月だし、甘えて欲しいのも甘えたいのも美月だけだから。それはちゃんと伝わってる? もし足りないようならメンバーがいても自重しないけど」


惜しみなく伝えてるつもりだけれど、不安にさせたのなら何度だって伝えたい。伝わってないなら、普段は恥ずかしがるから控えてるけれど、メンバーの前でも甘やかそうと思う。


「伝わってるから大丈夫!!」

「それならいいけど。さ、お風呂行こ!」


何かを感じとったのか、慌てたように大丈夫、と言われたからしばらくは今のままでいいかな。

今日は嫉妬させちゃった分思いっきり甘やかそうと決めて、恥ずかしそうにする美月をお風呂に引っ張っていく。


「前に入浴剤入れたいって言ってたよね? 好きなの選んで?」

「うわ、なんか増えてる……え、買い足したの?」


色々な種類が売っているから、美月が喜ぶかなと思わず手に取っていて、気づけばどんどん増えてしまった。


「うん。喜ぶかな? って思ったらつい買っちゃって」

「どうしよ、悩む……あ、温泉もある。え、種類多すぎ」


買いすぎだよって笑いながらも嬉しそうにしてくれて、色々手に取りながら真剣に悩む姿が可愛らしい。最終的にフローラルの香りを選んで、溶ける様子を楽しそうに眺めている。


「溶けた? もうここで服脱いじゃえば?」

「溶けた! 凄くいい匂いするー! わ、陽葵ちゃんもう脱いだの?!」


サッと服を脱いで浴室に入ると、振り返った美月がまた背中を向けた。


「脱がせてあげよっか?」

「大丈夫!! 先に入ってて!!」


私を見ないように目を伏せつつ浴室を出てドアが閉められた。そろそろ慣れてもいいのにいつまでも初々しい。そんな所も好きだけれど。後から入ってきた美月の髪を洗ってあげて、交代で身体を洗って湯船につかる。


「この入浴剤いいね! 私も何か買おうかな」

「買わなくても好きなの持っていきなよ」


ぱしゃぱしゃ音を立ててお湯で遊んでいる美月が無邪気で可愛くて、ついじっと見つめてしまう。

美月が来た時にしか使わないし、使い切るのに時間がかかる量になっていて、さすがにちょっと買いすぎたかな。


「え、いいの? 貰ってく!」

「あ、でもにごり湯のタイプ以外を持ってって?」


フローラルの香りだから勝手にピンク系のお湯の色かなって想像してたけれど、乳白色のにごり湯だったみたいで、残念なことに肌が見えない。

でも美月が普段より落ち着いた雰囲気だから、一緒に入る時にはにごり湯がいいかも。普段は視線が泳いじゃって落ち着かなさそうだし。せっかくならリラックスして欲しい。


「なんで??」

「肌が見えない方が緊張しないでしょ? にごり湯のやつはうちで使お?」

「うん」


緊張させちゃうのは、私がすぐ手を出しちゃうからっていうのもあるかもだけど……でも好きな子が裸でいたら触れちゃうよね? 今日はお風呂では何もしないから安心して欲しい。


「先に出るけど、美月はどうする?」

「んー、もう少し入ってようかな」


入浴剤が気に入ったみたいで良かった。

美月が恥ずかしがるからちゃんと服を着て、髪を乾かす。ある程度乾かしたところで美月が出てきて、こっちをチラチラ気にしながらタオルで髪と身体を拭いている。

そんなに気にされると逆に気になるって。服を着た美月を椅子に座らせてドライヤーをかける。丁寧に乾かしていると、気持ちよさそうに目を細めていて、何度見ても気を許してくれている感じがして凄く嬉しい。


「はい、終わり。やっぱり短いと早くていいな」

「陽葵ちゃん長いから時間かかるもんね。まだ乾いてないでしょ? 交代しよ」


交代で美月が乾かしてくれて、歯磨きまで終わらせる。私がお風呂でも何もしなかったからか、すっかり警戒心がどこかに行ってしまっている美月はベッドで横になってくつろいでいる。

それにしても、嫉妬してくれた美月可愛かったな。ベッドに腰掛けながら、思い出してついニヤニヤしてしまう。嫉妬させないように気をつけるけれど、もしまたなにかしちゃった時には隠さないでぶつけてきてくれたらいいけど。


「何ニヤニヤしてるの??」

「嫉妬してくれた美月が可愛かったなって」


隣に寝転んでそう言うとものすごく嫌そうな顔をされた。


「嫉妬なんてしてないし、可愛くない」

「そういう素直じゃないところも好きだよ?」

「なっ……もう寝る!」


頭まですっぽり布団を被って隠れちゃったけど、お風呂から出たばっかりだし、まだ暑いよね?


「ね、暑くないの?」

「暑……くない」


もう、うちの子可愛すぎません? 


「ごめんね? からかわないから出ておいで?」

「……ぅわ?!」


そろりと顔を出したところで布団を剥ぎ取って抱き寄せる。いきなり何するの、と文句を言ってくる割に抵抗はしてこない。本当素直じゃないんだから。


「明日の仕事、朝からじゃなかったよね?」

「うん。9時過ぎまで寝てられるけど、早く起きる。陽葵ちゃん朝からでしょ?」

「そう。美月は寝てな?」


美月は朝弱いし、まだ甘やかすつもりだし、何より早く寝かせるつもりなんてないしね。


「ううん。一緒に起きる」


そういえば、私が先に出た日に起きられたかの確認で電話をした時、寂しがっているのかなって思うことがあった。美月は寂しいなんて言わなかったけれど。一緒に起きたいって言ってくれるなら、少し早めに寝かせてあげようかな。


「起きて1人だと寂しい?」

「……うん」


認めないだろうけれど、と聞いてみたらまさかの素直な返事。顔を見ようとしたら私の胸元に顔をうずめて隠されてしまった。嫉妬してくれたり、急に素直になったり今日はどこまで可愛い姿を見せてくれるんだろう。

早く寝かせてあげようかなって思った気持ちはもうどこかに行ってしまった。

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黒狼と銀狼
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