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アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~  作者:
本編

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22/99

22.ユニット

ライブでのユニットを決めるアンケートの結果が出て、陽葵ちゃんとやることが決まった。選んでもらえたのは素直に嬉しいけれど、上位に入っている曲を見せてもらったら、どれもちょっと……ってなるような曲で、普通の曲が1曲もない。え、選曲おかしくない? 


「どれやるー? やっぱり1位になったやつかな?」


陽葵ちゃんはノリノリだし、振り付けの先生もどんな振り付けにしようかなって楽しそうにしているし、私だけ温度差がすごい。


まずは今までのメンバー達の映像を見てみようって事になり、1位に選ばれている曲を見ているのだけれど、とにかくやばい。


「え、これって本当にキスしてるよね?」

「してるな」


もう卒業してしまった1期生は舌入ってますよね? ってくらいのキスシーンがあったし、見ているこっちが恥ずかしい……!! 陽葵ちゃんはあー、そういやこんなのやってたな、やばいな! なんて軽い感じだし……


歓声もすごくて、こういう絡みは需要があるんだなって遠い目になった。

自分にこんな表現ができる気がしない。むしろ色気ってなんですか? ってレベルな気がする。

そんなことを考えていたら、いつの間にか先生との話は終わっていて、振り付けが出来たら連絡するから楽しみにしてて、と他のユニットの方へ行ってしまった。


「あれ、曲決まった?」

「聞いてなかった? アンケート1位のやつに決まったよ。美月返事してたけど」


思い返せば、進めていい? って先生に聞かれて、返事をしたような……


「聞いてなかった……まじか」


陽葵ちゃんは頭を抱える私に苦笑して、決まったからには頑張ろうね、と頭を撫でてくれた。


「おつかれー。曲決まった?」


凛花さんと柚でのユニットが決まって、2人は少し離れたところで打ち合わせをしていたけれど、纏まったのかこっちのテーブルに移動してきた。

今この場にいるのはユニット参加メンバーだけだけれど、この後他のメンバーも集まって打ち合わせがあるから、曲が決まったユニットから自由時間になる。


「決まった。そっちは?」


陽葵ちゃんが聞くと、これ、と凛花さんがリストを渡している。


「おー、いいね。2人にぴったり」

「ですよね! さすがファンの方は分かってるなって」


柚は楽しそうでいいなぁ……


「で、美月はなんでそんなどんよりしてるの?」


今度は陽葵ちゃんがはい、とリストを渡して、覗き込んだふたりが納得したように頷いている。


「やっぱりね。だから覚悟しておきなって言ったのに」

「いわれましたけど……」

「えー、美月と陽葵さんのユニット楽しみー!!」


柚、面白がってるでしょ……決まったからにはやりますけどね。


「振り付けはどんな感じになるんだろうね? 前にさ、キスしてたペアもあったじゃん?」

「あったあった。さっき映像みたんだけどやばかったわ! ね、美月?」

「……ですね」


なんでそこで私に聞くの?! ニヤニヤして、絶対反応を楽しんでる……


「え、そんなのありましたっけ? それならもしかして2人も……?!」

「先生が楽しみにしててってめっちゃ笑顔だったからないとも言いきれないなって」

「うわ、ますます楽しみだね」


柚は知らなかったのか興味津々だし、先生がそんな笑顔だったとか不安しかない……


「それにしても、今回ユニットの数多いよね。今までの周年ライブで最多じゃない?」

「最多だね。いい物になりそうってユニットと曲が多かったみたいで、削れなかったみたい」


凛花さんの言うように、定番の組み合わせから意外な組み合わせまであって、どういう風に仕上がるのかが楽しみ。多くのメンバーがチャンスを掴めるのはいい事だから、ユニット活動はどんどん盛り上げていきたい。私も、ちゃんと盛り上げられるように頑張らないと。


「あ、お弁当来た!」

「取りに行ってきますね」


雑談をしていたら、お弁当が届いたからスタッフさんの所に貰いに行く。


「みんなお疲れ! お弁当貰いにおいでー!」


後輩は先輩優先となかなか動けなかったりするから、陽葵ちゃん達を待たせるのは申し訳ないけれど、打ち合わせが終わって集まっている後輩を呼び寄せる。


「美月さーん!」

「里香早すぎ! 美月さん、お疲れ様です」


真っ先に里香ちゃんが駆け寄ってきて、直ぐに未央ちゃんも追いついてきた。


「2人とも反応早っ!」

「それはもう、美月さんにおいでなんて言われたら飛んできますよ!」


隣で未央ちゃんも頷いている。


「あはは、元気で何よりだね。2人はどんなユニットやるの?」


話を聞くと、2人は高校生4人でのユニットをやるらしい。制服着ても現役だもんね……若い。


その後も続々お弁当を受け取りに来て、打ち合わせ中のメンバー以外は受け取ったかなって所で凛花さんと陽葵ちゃんと柚の所に戻る。


「すみません、お待たせしました」

「ううん、大丈夫。後輩たちを呼んでるの見てたよ。あんなに小さかった美月が成長したなー」

「凛花さん、お母さん目線になってますよ。でも気持ちは分かります」


柚が笑いながら凛花さんに共感していて、陽葵ちゃんは優しい目で見てくれていて、なんだか照れくさい。


「もう、お弁当食べましょ!」


袋から出したお弁当を渡して強引に話を終わらせる。


「照れてるの? かーわいい」

「……っ!! 照れてないしっ。可愛いのはそっちでしょ」


隣に座っている陽葵ちゃんが覗き込んでくるけれど、そんなあなたが1番可愛いんですけど! つい思っていることが口に出てしまった。


「え、人前でそんなこと言うなんて……今日はデレの日なの?」

「なんのことですかー?」

「はいそこイチャイチャは家でやってー」

「イチャついてません!」


否定してみたけれど、陽葵ちゃんは明らかに嬉しそうで、凛花さんと柚はニヤニヤしてるし、近くに座っているメンバーからも視線を感じるし……

反応するほど弄られるのが分かっているから、ちょっとわざとらしいかな、と思ったけれどお茶を取りに逃げ出した。


「あ、お茶貰ってくるの忘れたので取ってきますねー」

「あ、逃げた」


お茶を取りに行く時間なんてすぐだけれど、戻ったら何も無かったように渡して話を変えよう。


お茶を持ってきて、凛花さんと柚に渡してから陽葵ちゃんの分はキャップを緩めてから渡す。

お弁当を食べようとすると、妙に視線を感じたけれど、気にしないことにして食べ始める。中華久しぶりだし美味しい。


「なんか、ご馳走様って感じだわ……」

「え、凛花さんお腹すいてないんですか?」

「いや、そういうことじゃないんだけど。まあいいわ……」


何故か呆れたような視線で見られたけれど、いいらしいので気にしなくていいか。


*****

柚葉視点


凛花さんとのユニット曲の打ち合わせを終えて、少し離れたテーブルに居る美月と陽葵さんの所に合流する。2人は並んで座っていて、陽葵さんが美月の頭をなでているけれど、とにかく距離が近い。もう肩なんて触れてるんじゃ?


頭を撫でられている美月はせっかく陽葵さんとのユニットが決まったというのにどんよりしている。嬉しくないのかな?


美月がこうなってる理由は陽葵さんが見せてくれたアンケート上位のリストを見て納得した。見事に大人系の曲ばっかりで、ファンの人達の熱意を感じる……


「やっぱりね。だから覚悟しておきなって言ったのに」


凛花さんは予め分かってたのか、事前に美月に助言していたみたい。


「いわれましたけど……」

「えー、美月と陽葵さんのユニット楽しみー!!」


美月には申し訳ないけど、私は物凄く楽しみ!! 公式にイチャイチャが見れるってことだもんね。どんな感じになるのか自分のユニット以上にドキドキしちゃう。


「振り付けはどんな感じになるんだろうね? 前にさ、キスしてたペアもあったじゃん?」

「あったあった。さっき映像みたんだけどやばかったわ! ね、美月?」

「……ですね」


キス?! そこまでしちゃうの? 前例があるならアリってことだもんね?


「え、そんなのありましたっけ? それならもしかして2人も……?!」

「先生が楽しみにしててってめっちゃ笑顔だったからないとも言いきれないなって」


先生が張り切ってるなら、本当に有り得るかも……?! どうしよう、これはやばいんじゃないですか?!

今年はユニットが最多みたいだけれど、1番注目を集めそう。もちろん、私も選んでもらったからには喜んで貰えるように頑張りますけどね!


雑談をしていたら、お弁当が来て、私が取りに行く前にもう美月が動き出していた。行動が早い……


「美月、取りに行くの早……」

「思い立ったら即行動って感じだからね」


そう言いながら陽葵さんは優しく笑っていて、美月のことをよく分かってるんだなってなんだか嬉しくなった。

お弁当を受け取りに来ない後輩達を呼び寄せて渡してあげていて、さり気ない気配りがモテる秘訣なのかな、なんて思ったり。

陽葵さんはどう思ってるんだろ?


「あー、美月囲まれちゃって。天然のタラシだなー」

「本当に。まあ、それも美月のいい所だけれどね」


嫉妬してない訳じゃないだろうけれど、なんというか大人の余裕? 苦笑しつつ、美月を見る視線はやっぱり優しかった。


「すみません、お待たせしました」


後輩たちに配り終えて、申し訳なさそうに美月が戻ってきた。手には袋に入ったお弁当を4つ持っている。


「ううん、大丈夫。後輩たちを呼んでるの見てたよ。あんなに小さかった美月が成長したなー」

「凛花さん、お母さん目線になってますよ。でも気持ちは分かります」


入った時は赤ちゃんみたいだったのに、今や後輩に慕われる先輩になってて、同期として誇らしい。


「もう、お弁当食べましょ!」


袋から出したお弁当を渡してくれながら、強引に話を終わらせようとしている。


「照れてるの? かーわいい」

「……っ!! 照れてないしっ。可愛いのはそっちでしょ」


自然にイチャイチャしだした2人を横目に、お弁当を開ける。美味しそー!


「え、人前でそんなこと言うなんて……今日はデレの日なの?」

「なんのことですかー?」

「はいそこイチャイチャは家でやってー」

「イチャついてません!」


凛花さんがニヤニヤしながら弄っていて楽しそう。大きい声で騒いでいるから、近くに座っているメンバーも始まった、というようにニヤケを隠せずにいる。


「あ、お茶貰ってくるの忘れたので取ってきますねー」


注目されて気まずくなったのか席を離れたけれど、完全に棒読みだし、動揺しているのが丸わかりで可愛らしい。


「あ、逃げたー」

「逃げたね」

「お茶なんてすぐ戻ってくることになるのに可愛いんだから」


陽葵さん、本当に美月の事になるとデレッデレですね。もう隠す気ないですよね?

美月がお茶を持って戻ってきて、まず凛花さんに渡して、次に私にくれる。

陽葵さんに渡す時にはキャップを緩めてから渡していて、あまりにも自然だから見逃しそうになった。陽葵さんも特に違和感なく受け取って飲んでいるから、2人の中では普通の事なんだね……

他にも誰か見てたかな、と周りを見渡すとそれなりに目撃者がいたみたいで、美月に視線を送っている。


お弁当の蓋を開けて、隣の陽葵さんの蓋と重ねて、包みや割り箸のゴミも2人分纏めてから食べ始める美月が甲斐甲斐しい。

陽葵さんが笑顔でお礼を言うと照れたように笑っていて、叫びたくなるくらい甘い……何を見せられているんだろう……


「なんか、ご馳走様って感じだわ……」

「え、凛花さんお腹すいてないんですか?」


美月、そんな純粋な目で凛花さんを見て……無自覚なのは分かってるよ。


「いや、そういうことじゃないんだけど。まあいいわ……」


凛花さんはもう気にしないことにしたみたい。それが正解ですね。


「みつきたん、これあげるー」

「あ、嫌いだからってまたそうやって。ちゃんと食べなよ」

「えー。食べさせてくれるなら食べる」

「……かわっ!! 子供か」


美月の方を向いて口を開ける陽葵さんを愛しさが隠せない目で見つめながら、全く仕方ないな、なんて言いながらあーんしてあげてるし、甘すぎじゃない?


陽葵さんだけしか見えてないけれど、私達も居るってこと忘れてるの?

美月のこんなに甘々な所なんてドッキリの時くらいしか見たことがなかったのに、いつの間にか敬語も無くなってるし、段々陽葵さんに影響されてきてるよね。


「柚葉ちゃん、このバカップルどうする?」

「どうします? 美月は絶対私たちのこと忘れてますよね?」

「陽葵が嬉しそうだし、気づいた時の美月が面白そうだからこのままでいっか」


ニヤリと悪い顔をした凛花さんに弄られることが決まったな……美月、頑張れ。


「ご馳走様でした! 中華久しぶりで美味しかったー」

「ご馳走様でした。確かに最近作ってないもんね。食べたいもの言ってくれたら作るよ」

「ほんと?! やった!」


あれもこれもって食べたいものを挙げていく陽葵さんに、うんうんって聞く美月の彼氏感……


「美月、彼氏感半端ないな……」


あ。つい口に出ちゃった。


「ぅえ?! 柚、いきなり何?!」

「全然いきなりではないんだけどね? ずっとイチャイチャしてたからね??」


美月が周りを見渡すと、ニヤニヤこっちを見ているメンバーと目が合ったのか、うわぁ……という顔をして顔を隠してしまった。


「最近更にラブラブですねー?」

「でしょー」


凛花さんの言葉に嬉しそうに同意する陽葵さんは堂々としていて、全く動揺していない。それに比べて美月は顔を上げられずにとうとう机に突っ伏してしまって、しばらく復活して来なさそう。


そんな2人の様子に、ユニットは陽葵さんが攻めになるのかな、なんて関係ないことを考えてしまった。

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黒狼と銀狼
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