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アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~  作者:
本編

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17/99

17.放送日

配信を切ると、美月がはー、とため息をついて後ろに倒れ込んだ。かなり緊張してたし、疲れたんだろうな。


「疲れた?」

「疲れたー! 緊張したし、陽葵ちゃんが変な事言うし」


変な事って、押し倒されたってやつかな? 今回の雑誌の1番の見所だと思うんだよね。


「変な事って?」

「知らない」


あえて聞いてみると、ふいっと顔を逸らされた。


「こういうこと?」


美月のお腹の上に跨って、顔を近づけて耳元で囁くと、じわじわと赤くなってくる。右頬を下にしているから左耳に付いたお揃いのピアスがちょうど目の前にきて、遠慮がちにピアスを片方貰って欲しいって言ってきた美月を思い出して愛おしさでいっぱいになった。

耳の縁をなぞってピアスごと耳たぶを撫でると、ばっと耳を手で押さえて涙目で見上げられた。


「っ?! いきなり何……?!」


怒ったような口調だけれど、涙目だし真っ赤だし誘ってるとしか思えない。明日も早いし、これからお風呂にも入らなきゃいけないしするつもりはなかったんだけど、揺らぐ……


「ん? 美月が知らないって言うから実践しようかなって」

「撮影ではここまでしてないじゃん?! 降りてー!」


慌てる美月が可愛くてもう少しいじめたかったけれど、途中で止められなくなりそうだから降りてソファに座る。一瞬あれ? っていうような表情をした気がするのは私の願望かな。


こっちに来て、とソファの隣を示すと素直に隣に来てくれた。美月の肩にもたれかかりながら、雑誌発売のお知らせを投稿する。


「よし、終わり。美月はどう?」

「私も終わった。もう日付変わっちゃうね」

「うん。先にお風呂入ってきちゃって」


この前も別に入ったし、本当なら一緒に入りたい。でも絶対手を出しちゃうから……早く寝ないと明日が辛い。美月も朝早かったはずだし。


「陽葵ちゃん先でいいよ」

「私は後でいいから。それとも一緒に入る? 何もしない自信はないけど?」


遠慮しながら私を先に入れようとしてくれるけれど、私の言葉に慌てて立ち上がった。


「何変なこと考えてるの?! 変態……」

「好きな子が裸でいたらそんな気分になるでしょ。むしろ健全?」

「もー! 先に入ってくる!!」


怒った口調で部屋を出ていったけれど、耳まで真っ赤になっていて照れ隠しなのはバレバレ。ほんといい反応してくれる。


美月が出るまでの間動画でも見ようかな。アーカイブを辿っていると、昨年の8周年のライブ映像が目に付いた。もうそろそろ9周年の準備が始まる時期だな、と美月と一緒にいる時間が長くなりそうで嬉しくなる。

美月とユニットやってみたいな、と思ったけれどさすがに職権乱用すぎるから私からは提案できない。今年はどんな組み合わせが誕生するか楽しみ。


そういえば、明日はソロコンの時のダイジェスト映像が放送されると聞いているけれど、どんな編集になっているんだろう? 通しでは見せてもらっていないからどういう編集がされているのか分からない。

リアルタイムでは見られないから後から見ることにはなっちゃうけれど。さっき投稿したばかりだし、放送のお知らせは明日投稿すればいいかな。


「陽葵ちゃん、お待たせ」


美月が髪をタオルで拭きながら戻ってきた。お風呂上がりで上気した頬に濡れた髪が張り付いて色気が……

美月にはそんなつもりはないだろうけれど、誘惑されているような気分になってくる。


「私も入ってくるね。眠かったら待ってなくていいからね」


はーい、と言う返事を聞きながらお風呂に向かう。髪のケアが1番面倒。洗うのも乾かすのも時間がかかるし。でも疎かにすると、せっかく綺麗な髪なのに、って美月が怒るしな……

丁寧に洗って湯船に浸かると、少し温くなっていたので温度を上げる。私は熱めで入るから、一緒に入ると美月は熱すぎって文句を言うんだよね。文句を言いつつ、一緒に入ってくれる美月はほんとツンデレだと思うけれど。

何度一緒に入っても恥ずかしがる美月は可愛すぎるし、次の泊まりの時こそ一緒に入りたい。


そんなことを考えていたら美月に会いたくなった。さっきまで一緒にいたのに、少しでも離れていたくないなんて重いかな。


「あれ、まだ起きてたんだ?」


ドアを開けると、美月が歯磨きをしているところで、私を見て慌てて目を逸らした。


「わ、ごめん!! SNS見てたら時間経っちゃって」


そんなに慌てなくてもいいのに、と思わず笑ってしまった。


「いつまで経っても慣れないね?」

「綺麗すぎて無理。ほんと無理。早く服着て」


スイッチが入った時はあんなに積極的なのに、不意打ちにはこんな反応をするなんて狙ってやってる? 可愛すぎてこっちが無理。

服を着たところで、やっとこっちを向いてくれた。手にはドライヤーを持っていて、乾かしてくれるつもりみたい。


「乾かしてくれるの?」

「うん。そこ座って」


ブローまでしてもらって、髪サラサラ、なんて嬉しそうにしてくれる美月を見ていると、これからもケアを頑張ろうって思える。我ながら単純。


「ありがと。もう少しかかるから先に寝てて」


美月には先に寝室に行ってもらい歯磨きをして、軽くストレッチをしてから寝室に向かうと、美月は眠そうに目を擦っていた。私が来るまで頑張って待っててくれたみたい。

電気を消してベッドに入り、アラームがかかっていることを確認して、美月とは反対側の枕元にスマホを置く。


「明日は私に合わせて起きなくていいからね。美月も普段より早いんだからちゃんと起きるんだよ?」

「うん。……がんばる」


今にも寝そうで、返事が若干怪しい。ちゃんとアラームかけたかな? 朝弱いしちょっと心配。モーニングコールでもしてあげようかな。

おやすみ、と声をかけるとかろうじて聞き取れるくらいの声でおやすみ、と返ってきた。


アラームの音で目が覚めると、目の前には美月の寝顔があった。起こさないようにベッドを出て、朝の支度をする。

家を出る前にもう一度顔が見たくて、寝室を覗くと変わらずぐっすり眠っていた。ずっと眺めていたいけれど、もう出ないと間に合わなくなる。額にそっと口付けると、くすぐったかったのか口元がふっと緩んだ。はあ、可愛い。

仕事に向かう途中も可愛い姿を思い出してしまってニヤけるのを抑えるのが大変だった。

現場に着いたらちゃんと起きてるか電話してみよう。


*****

朝起きると陽葵ちゃんはもう居なくて、ベッドも冷たくなっていた。無性に寂しくなって、陽葵ちゃんと一緒に起きればよかったな、と後悔した。

ぼーっとしていると、電話が鳴った。こんな朝早くに誰だろう、と画面を見ると陽葵ちゃんと表示されていて慌てて起き上がって画面をスライドした。


「もしもし?」

『あ、起きてた。おはよう』

「おはよう。さっき起きた」

『ちゃんと起きれたかなって思って電話してみた』


良かった、起きてたね、と優しい声に泣きそうになった。


「なに、寂しくなっちゃった?」


え、エスパーか何か? 黙ってしまった私に、ふっと笑いながら聞いてくる陽葵ちゃんには隠し事なんて出来そうにない。


「陽葵ちゃんはもう現場?」

「うん。もうそろそろ行かないと」


素直に寂しいって言えればいいけど、つい話を逸らしてしまった。こういう所が可愛げ無いなってちょっと落ち込む。


「電話ありがとう。頑張ってね」

「美月もね、それじゃまた」


電話を切って、またベッドに倒れ込んで目を閉じた。もう少ししたら急いで準備しないと。


今日は陽葵ちゃんのソロコンのダイジェスト映像が放送される日で、収録の休憩中の楽屋では、陽葵ちゃんの特集を見ようとメンバーが待機している。


「陽葵さんの特集始まりますよ!」

「楽しみー!!」


出来れば家でゆっくり見たかったけれど、この後まだ仕事があって帰れない。皆と見るとなんだか落ち着かないし、コンビニにでも行こう。後でゆっくりアーカイブ見ればいいかな。


「あ、美月さん! どこ行ってたんですか?」


コンビニから帰ってくると、美南ちゃんや里香ちゃんに詰め寄られた。え、何?


「コンビニだけど……食べ物とか適当に買ってきたからみんなで分けて」

「わ、ありがとうございますー!! じゃなくて、なんでこんなタイミングでコンビニ行っちゃうんですか?!」


買ってきたものを袋ごと渡して、椅子に座ってお茶を飲んでいると周りをメンバーに囲まれた。


「えっと……?」

「さっき放送されたダイジェストに美月さんも映ってて」


……あれか。陽葵ちゃんも見たって言ってたからもしかしたらとは思ってたけど、使われちゃったのか。恥ず……


「あ、そうなんだ? 家帰ったら見てみるよ」


私からは絶対に触れない、とはぐらかすと不満そうな顔をされた。


「隣にいたのに全然気づきませんでした。……不覚」


美南ちゃんが残念がってるけど気づかなくていいから。


「美月さんが儚すぎて、もうやばかったです。語彙力無さすぎてやばいしか出てきません」

「美南さんテンションやばかったですもんね」

「興奮冷めやらず投稿してましたもんね」


……ん? なんか今変なことが聞こえたような。SNSを開いて美南ちゃんの投稿を探して、飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。


木村 美南

陽葵さんソロコンのダイジェストご覧になりましたか?

全てが素晴らしかったですが美月さんの涙に尊いが溢れて止まりません……!!

この時隣にいたのになんで気づかなかったのか……

美月さんを映したカメラマンさん神ですか?! 編集も素晴らしすぎました……


もうすぐ収録が再開されるし、見なかったことにして画面を閉じた。コメントも恥ずかしすぎてとても読めないし、メンバーからの生暖かい視線がいたたまれない。

なんでこんなタイミングに休憩なのか……リアルタイムで見られるようにって配慮? 早く収録再開されないかな……


「陽葵さんと美月さんが揃ってる所を早く見たいです!」

「9周年に向けて全員が集まる機会が増えるので楽しみです!」


後輩たちの言葉に、もうそんな時期なんだって驚いた。この前8周年ライブをやったばかりな気がするのに。

この時期はダンスレッスンやボイトレ等やることがいくらでもあって忙しいけれど、全員が集まる機会は少ないからみんな楽しみにしている。今年は誰とユニットを組む事になるのか、今から楽しみ。陽葵ちゃんとは一緒になることは無いだろうけれど、いつかは一緒にやってみたいな。

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★新作もよろしくお願い致します★
黒狼と銀狼
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