81話 美味しいキノコ
「なるほど、精霊樹の里にも派閥争いみたいな事もあるのか…少々意外だな」
「人間族ほど激しくはありませんが、『社』がアリステラ様の意向で営利は最低限で運営されているので、里自体の収入はそこまで潤沢という訳ではない関係上、予算が限られて取り合いになっている所はどうしてもギスギスしてしまいますね」
まあそれも飛空船が売れる様になれば…と、徐々に遠くなっていくフィリフィアの背中を見ながら説明を終えるエスリナ。
「そうだな。後は定期的にメンテナンスが必要になっているから、需要を満たしても収入が途切れる事はないだろう。
さて、そろそろ夕食の準備を始めても良い頃合いかな。
またコンテナを出すから、その旨を伝えてくれ」
「分かりました!」
色々な意味で遠くにいるフィリフィアの代わりに、出陣部隊にも少数居る人間族の青年が伝令の手配をした。
昨日と同様に冷凍コンテナを一定間隔で並べ、中から具材とスープごと凍結させたものを取り出し、包装を剥いでそのまま鍋に入れる。
「今日は茸鍋ですか…色々な茸が入っていますね。
これとかこれは食べた事があるものにとてもよく似ていますね」
だいぶ溶けて具材がよく判るようになった鍋を覗き込みながらケイドが言う。
「これは舞茸、こちらはしめじ…大体見た目も味も同じですね。
この短柵型のはエリンギを切ったもの…にしては随分滋味がありますが、何茸でしょうか?」
一煮立ちした茸鍋から様々な茸を少しずつよそって味見をしていたエスリナ(猫獣人だからと言っても猫舌かどうかは人による)がとある短柵切りされた茸について訊いてきたので、
「ああ、それはファンガスだね」
と教えると、エスリナは思わず固まった。
ファンガスが何か分かっていないケイド達はエスリナの様子に首を傾げていたが、
「ファンガスってあのファンガスですよね?
食べて幻覚症状が出たりとか、身体から茸が生えたりしないかちょっと不安が…」
周りに聞こえない様に小声で尋ねてくるエスリナに苦笑しながら、
「それは腹黒義姉上達が無害で食べられる様に人体実験を重ねたものだから、大丈夫だよ」
鍋の風味を良くする為に少量ずつ鍋に入っているファンガスの短冊切りをつまみ上げて食べ、不安顔のエスリナに安全性をアピールした。




