8話 里の現状
「その前に訊きたい事があるのだが、ここに来るまでにめぼしい防御施設が見当たらなかったのだが、どうなのだ?」
それに対してスーリオンは微笑みながら、
「この里で獲れる農産物や醸造したお酒は普通の物より遥かに美味でしてな…東大陸の王侯貴族はほぼこれらの重客です」
その返答に思わず少しニヤッとしながら
「なるほど、それは素晴らしい防壁だな」
と称賛を込めて言った。
「万が一攻めて来られても、ドワーフ達の多くが住む坑道兼住居が防御施設に転用出来る様にはしてあるのですが、問題はアリステラ様の本体たる精霊樹でして…」
「東大陸に住まう者ならば精霊樹を傷付けようなど思いもよらぬでしょうが、今回の相手は魔王軍です…その様な暴挙に出る可能性を考えると、とても坑道に立て篭もるなどという選択肢を採る訳にもいかず…」
「なるほどな、…ならばまずやる事も決まったな。私の力がどの程度か示すにも丁度良さそうだ」
会議室から出て、スーリオンと共に外へと出た。
「スーリオン殿、この里を一望できる場所はあるかな?無ければ里周辺を飛行したいのだが」
「少し歩きますが、あるにはありますが…周辺を見て何をなさるおつもりですか?」
「精霊樹を守らなければならないのならば、精霊樹の周りに防御施設を作れば良い。樹の家々も精霊樹の近くに固まっているようだから、それらも囲ってしまえば一石二鳥となりそうだしな」
「確かにそれが出来れば安心して魔王軍を迎え撃てますが、来るのは3日後ですぞ?精々、柵ぐらいしか作れぬのでは?」
「普通はそうだが…まあ見ているといい、一部の者から『土木皇帝』などと言われている由縁を見せてやろう」