70話 ジア王国の戦歴
「魔王軍がオード王国とサニア王国に跨る北皇山脈から流れ出る紅河に沿って南下を始めたのが、半年余り前の事になります」
「当時我が国は飢餓に加えて大陸南端にある南涼国の侵攻を受けており、8万の兵が揚江の南にある河南郡から動かせず、南下の途中にあった2城でひと月ずつ時間を稼ぐのがやっとの状態でした。
そうして時間を稼いだ間に、7万の兵を王都ジーリアに集めたのですが、飢餓の為にこれ以上集める事が難しく…河南郡に置いている兵の引き上げが急務だったのですが、ここぞとばかりに南涼の者共が無茶な条件を突きつけてきて、交渉は難航しておりました」
苦々し気にケイド王子達は語る。
「基本的に中立の立場の私達の里も、今回ばかりは『社』を通じて働きかけてはいるのですが、聞く耳を持ちませんでしたね」
「そう言えば、初日の話の中に南涼という国は出ていなかったな」
私が里の動きについて説明したエスリナに訊くと、
「敵の敵は味方、という事でしょう」
なるほど、よくある話だった。
「全く、南涼国王はとんだ権謀術数主義者ですよ!
……申し訳ありません、少々取り乱しました」
側近のライガの謝罪に対して、
「貴国を苦境に追い込んだ要因なのだから無理もない。気にせず続けてくれ」
と、先を促す。
「ありがとうございます。
続けますが、交渉がまとまらないうちに、遂に魔王軍はジーリアへ到達し、第一次攻防戦が始まりました。
既に国境近くの遭遇戦で統率された豚人や牛人の恐るべき打撃力について報告を受けていたチャンリュ大将軍は籠城を選択、第一城壁が落ち、第二城壁の間にある無数の住宅などに決死隊を潜ませて多大な出血を強いながら援軍の到着を待ちました。
しかし、こうして籠城が始まって一カ月経った後も交渉はまとまらず、我が国は断腸の思いで揚江より南の河南郡を割譲し、停戦協定を結び膨湖経由で紅河(紅河は北と南から流れてジーリア付近で合流し、ラン王国へと流れている)を軍船で北上し、相国様の奇策で何とか保たせたジーリアを救援しました」
「南涼とは停戦したとは言え、割譲した河南に相変わらず軍を駐屯させたままであり、揚江の対岸に水軍を合わせて4万は置いておかないと、渡河して更に侵攻して来ないとも限りませんのでこれ以上引き抜けません。
また、河北郡にもルカ商国から圧力がかかっているため動かせません。
ですので、第一次攻防戦後に残った9万が、第二次攻防戦の我が国の防衛兵力となります」




