7話 条件
再びスーリオンが話を始める。
「こうしてジェラルド王国軍の裏切りで多くの同胞を喪った私達ですが、それで終わりとはいかなかったのです。
去年は近年稀に見る大干ばつが東大陸を襲いましてな…儂らも隣国のジア王国や少し北にあるサニア王国などに食糧支援をしたのですが、それでもかなりの餓死者が出たとか」
「そんな中、四天王の1人であるドルグードがアンデット軍団を率いて東大陸に侵攻して来たのです。
東大陸最北のオード王国はたちまち陥落し、サニア王国も同様の運命を辿りました」
「オストラント大陸最大の難所の、飛竜の狩場と呼ばれる北回廊を通ってこちらに侵攻して来るなんて誰も思っていませんでした」
と、アリステラ。
更にスーリオンは続ける。
「サニア王国の隣国のルカ商国は魔王軍の圧力に屈し、僅か1年足らずで北地方は魔王軍の制圧下になってしまいました」
「そして半年前に隣国のジア王国に侵攻が始まり、一度は奇策により撃退したのですが、2週間前に今度は占領下の者たちも兵に加えて王都攻防戦を行なっているとの事です」
◆ ◆
「ここからが本題なのですが、1週間前にドルグードの使者が来まして、
*ジア王国、ラン王国、遊牧民、駿河御国との取引の停止
*魔王軍占領下並びにルカ商国との取引を最恵国待遇でする事
*現在ここにいる難民の扱いは精霊樹の里に一任する
*上記の条件が守られる限り、魔王軍と精霊樹の里は停戦する
という条件で、10日後に返答を聞きに来るとの事でした」
「これに対して私達の意見は最初は拒否が優勢だったのですが、魔王軍およそ5千が接近中との報を受けて意見が対立してしまい…準備が整った召喚の儀の結果を受けてから決めるように話をまとめたのです」
「私達にとっては幸いと言いますか、こういう事態の専門家とも言えるご貴殿はこの条件をどう思われますでしょうか?」
とスーリオンが問いかけてきたので、
「この条件を受けるのは愚策だな」
と即座に切り返した。
「即答ですな…理由をお伺いしても?」
「まず条件に『現在ここにいる難民』など後から難癖つけられる余地がかなりあるというのもあるし、そもそも停戦後に人間族が巻き返せば後々の火種となるし、魔王軍が東大陸を制圧してしまえば、無茶な条件を出されても断る事が出来なくなる、という事だな」
「やはりご貴殿もそう思われますか………戦いの準備をするように指示を出しましょう」
ーお知らせー
当面の間は月曜と木曜にこちらを更新し、火曜と金曜に天魔戦争と連邦成立編を更新します。