第1章 防衛 1話転移
連邦暦297年1の月、大会議室
「…今年も国が発展し、平和であるよう努めよう。」
私は話を締めくくり、一呼吸おいてまずは財務卿から話を始める。
「先ずは去年の主な収支からですが、資料をご覧ください…
と話を始めた時、魔力を感知する…足元からだ。
思わず足元を見ると、魔法陣が浮かび上がって来ている!
(この宮殿には結界があるのに、それでも発動するとは余程の魔法強度だね…そしてこの魔法は…転送魔法のようだな)
徐々に魔法陣が形成され、周りの者達も気付き、
「陛下!すぐにそこから離れてください!」
「対抗魔法を!魔法を打ち消すのだ!」
などと騒ぎ始めた。
「お前達こそすぐに離れろ!これは転送魔法だ!巻き込まれるぞ!」
そして近寄る者が出る前に、自分を【(上級魔法)アイソレーション】で空間隔離する。
(下手に巻き込まれると、おかしな所に飛ばされたりするから回収するのが大変だからね)
そしていよいよ魔法陣が完成し、光に包まれる。一言つぶやいた後、
「問題ない、また後で状況を伝える!」と叫んだ。
こうして、私は転送された…
◆ ◆
皆で魔力を注ぎ込み、必死で儀式魔法を維持する。
「くっ、抵抗が強くてなかなか喚び出せない…」
アリステラ様の声が聞こえる。
アリステラ様と儂ら長老達、それと非戦闘員の大半で行っている召喚の儀式であり、失敗は即ち不本意な魔王軍との和睦となり、それは未来の破滅に繋がる可能性が高い。
それを糧として魔法を維持し続ける。
そして少しずつ魔法陣の輝きが増し、遂に完全に発動してあたりが光に包まれ…収束すると魔法陣の上に1人の男が立っていた。
「おお…」「成功したのか?」「勇者様は人間族の男か?」
周りの騒めきを聞きながら男を観察すると、とても仕立てのいい服に身を包んだ銀髪で長身(190㎝近いじゃろうか?)、20代と思われる男だ。
その男はゆっくり辺りを見回し、
「貴様らは誰だ?この所業は私を光翼連邦皇帝と知っての事か?」
と、問いかけて来た。