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The Voice  作者: 幸-sachi-
The Voice vol.2
48/59

Episode 13ーWhite Christmasー

8月18日。

2人の初めてのデートの日。

日記に楽しかったの文字を見つけて男は微笑んだ。

「俺も楽しかったよ。」

しかし、この日の日記には最近になって胸が苦しくなる回数が増えてきた事が書かれていた。

恐いの文字が4つ並ぶ。

「こんな恐怖の中、俺の目の前では気丈に振る舞ってくれていたんだね。」

男はまた優しく万年筆で書かれた文字を手でなぞった。



2015年11月2日(月)


The Voiceは今日から柴咲交響楽団との練習を始めた。本番はここに柴咲合唱団が加わるが今は合唱団の姿はない。全員が揃って練習出来るのは本番まで2回しかない。

柴咲交響楽団と柴咲合唱団のコンサートだというのに雪乃が作った曲を演奏するThe Voiceはステージの中央にいる。雪乃の2曲を演奏する時だけはThe Voiceがメインとなる。

(The Voiceだけでなく交響楽団や合唱団にも迷惑をかけないようにしないと)

サポートメンバーの霧島亮がそんな事を思いながら演奏をしているそばから演奏を少しミスしてしまった。

タクトを振る指揮者の芦名充(あしなみつる)が亮の方を見た。芦名は亮のミスを見逃さなかった。

(マジかっ!今のちょっとしたミスもあの指揮者は見逃さなかった……

しかし…長谷川雪乃…あんたのこの曲凄すぎるよ…俺が何度聴いても完璧に覚えられなかったのはこの曲が初めてだ。何度も練習もしているのに未だにミスしてしまったし…)

芦名がタクトを止め全員に休憩するように指示を出した。亮は一瞬自分のミスで演奏するのを止められたと思った。が、それは違った。亮が周りを見渡すと柴咲交響楽団達も頭を掻く仕草をする人や首を捻って楽譜を見つめる人がいた。

(プロでもこの曲を演奏するのは至難の業だという事なのだろう。この大勢の中でちゃんと演奏が出来ているのはもしかしたら凛ただ一人だけなのかもしれない。凛以外のThe Voiceのメンバーでさえ前から練習をしてきたのに未だにちゃんと演奏しきれていない。

しかし凛の奴、俺の想像以上のピアニストだった…もしかすると長谷川雪乃以上のピアニストかもしれないと思ったのは俺だけじゃないはずだ…)

「まだ練習初日だ。以前から練習をしていた人もいるようだが大勢で音を合わせるとまた違う。焦らずいこう。」

真希の父であるコンサートマスターの浩一がここにいる全員に向けて言うと龍司が「その通りだぁー!練習は始まったばかり!まだまだこれからだぁー!」とバカみたいな大声で叫んで交響楽団達からは笑い声や失笑が洩れていた。しかし、凛はそんな様子を気にも留めずにずっとピアノ椅子に座ったまま芦名の方を見つめていた。

(そう言えば凛はこのステージに上がってからずっと指揮者ばかりを見ていて周りを見ていないし今のように少しの休憩が入っても拓さん達とも会話をしようとしない。)

きっと凛は今緊張している―亮はそう思って凛の元に駆け寄った。

「おい。凛。大丈夫か?」

亮が凛の後ろから声を掛けても凛は振り向く事もしない。

(ここまで緊張するタイプだったか?)

拓也も凛のそばに寄って来て凛の肩を軽く叩き人差し指と親指を自分の耳元に持っていき遠ざける仕草を凛に見せた。

(そうか。今、凛は耳栓をして感情が入らないようにしているのか…

だけど、この至近距離で沢山の楽器の演奏を聴くっていうのに耳栓だけで防げてるのか?)

凛は拓也の耳栓を取れという仕草を見て頷いてから耳栓を取った。

その耳栓を拓也は凛から受け取り何故か亮にその耳栓を見せて来た。

「これは…耳栓じゃない…」

拓也の手のひらに置かれた物は亮が想像した耳栓ではなくワイヤレスイヤホンだった。

そのイヤホンからは今シャカシャカと音が洩れて聴こえて来る。

「耳栓だけでは防ぎきれないだろうって話しになって音楽聴きながら演奏する事にしたの。」

いつもは大きな声では話さない凛が大きな声を出してそう言ったのを聞いて、亮は相当な音量でそのイヤホンからは音が出ている事が想像出来た。

試しに亮がイヤホンを耳に近づけてみると雪乃の曲とは全く違う洋楽が流れていた。

亮はイヤホンを耳に近づけたまま凛を見つめた。凛はただじっと見つめて来る亮が不思議だったのか首を捻り「なぁに?」と大きな声で言って来た。亮は「別に、何も。」と答えてそのイヤホンを凛に返した。その時の亮の手は自分でもわかるくらい震えていた。

(マジかよこいつ…全然違う曲をあんな大音量で聴きながらピアノを弾いていたってのか?しかも何の狂いもなくあの長谷川雪乃の難解な曲を……)



2015年11月8日(日)


佐倉みなみは結衣と共にブラーに訪れThe Voiceのライブを見に来ていた。

ファーストステージが終って店内が明るくなったところで、

「あーあ。龍ちゃんと恋人同士になれたっていうのにちゃんとしたデートなんて全然ないんだよぉ。サクラちゃんもちゃんと拓也くんとデートしてる?」

結衣が頬を膨らませながら聞いて来た。

「私もデートらしいデートはしてないよ。でも、少しの時間だけでも会って話しをしてる。私はそれだけでも幸せだから。」

「龍ちゃんは少しの時間も一緒にいてくれない。すぐ帰っちゃうのよ!」

「クリスマス・イヴコンサートや柴咲音楽祭の為に練習ばっかりだもんね。」

「そうなの。サクラちゃんと拓也くんが羨ましい。龍ちゃんは結衣の事ぜっんぜん考えてくれてないっ!」

「そんな事ないよ。龍司君はちゃんと結衣ちゃんの事を考えてるよ。だけど、今は龍司君も必死なんだよ。ううん。龍司君だけじゃない。拓也君も真希達もみんな必死だよ。今年プロになれなかったらと思うとみんな恐いんだよ。絶対に今年柴咲音楽祭で優勝してプロになるって決めてるみたいだから。」

「…わかってるの。それはわかってるんだけど、寂しいよぉ〜。」

「とにかく柴咲音楽祭が終るまでは我慢だよ。それが私達に出来る彼女としての役割だよ。だから応援してあげよう。ね?」

「うん、わかってる。結衣は応援してるから今日だってライブに足を運んでるんだもん。」

「そうだね。」

みなみはまた頬を膨らませる結衣を見て微笑んだ。

「それよりサクラちゃん。拓也くんがまた大阪に行くってホント?」

「うん。本当だよ。」

「クリスマス・イヴの午前中にこっちに帰って来る予定だって聞いたんだけど?」

「うん。12月18日の金曜日の夜から24日の木曜日まで。その間の学校は休むんだって。24日の夜はクリスマス・イヴコンサートだっていうのに大丈夫かなぁ。」

「それサクラちゃんはオッケーしたの?」

また結衣は頬を膨らます。

「反対なんて出来ないよ。あの相沢裕紀さんが直々に来ないかって誘ってくれたらしいから。新幹線代とか全部払ってくれるらしいよ。」

「そんなの関係ない!結衣ならぜーったい反対する!」

「だから今回は龍司君大阪に行かないんだね。」

「え?龍ちゃんも大阪に行く予定だったの?」

「うん。だけど龍司君急に用事が出来たって言って断ってきたんだって。結衣ちゃんの為だったんだね。」

「えっ!?そ、そうだったんだ…確かに龍ちゃん拓也くんが大阪に行くって言って結衣はイヴもサクラちゃんと一緒に過ごせないのに前日まで大阪に行くなんて信じられないって言っちゃったけど…龍ちゃん結衣の為に大阪行くの辞めたんだ…なんか悪い事しちゃった。」

「そんな事ないよ。龍司君も結衣ちゃんと一緒にいたいと思ったから大阪行くのを辞めたんだよ。」

「…それじゃあ逆に拓也くんがサクラちゃんより大阪を選んだみたくなっちゃってるよ。」

「大丈夫。拓也君は私と一緒にいたいって言ってくれてたし私の方が大阪に行くべきだって言ったんだから。」


■■■■■


「本当」

[拓]一人じゃないんだと 勇気をくれる人がいるんだ

ああ、また笑顔が見れた ずっとその笑顔を見ていたいんだ


※きっと何気ない日常が 大切な時間で

一緒にいるだけの時間が とても大切で


☆本当なら 僕が支えなきゃいけない

本当なら 僕が支えなきゃいけない


○それ程遠くない未来が 僕を不安にさせる


本当なら [真]僕が支えなきゃいけない


あなたの笑顔が 僕に勇気をくれたんだ

あなたの笑顔で 僕も笑顔になれたんだ


※repeat

☆repeat

●きっと乗り越えられる未来が 僕らには待っている


本当なら [拓&真]僕が支えなきゃいけない


[拓]○repeat

[真]●repeat

[拓&真]ほんの少しだけでも良い 今の時間が長く続け[拓]○repeat

出来るだけ長い時間をあなたと共に過ごしたいんだ

[拓ホーミー&真]本当なら 僕が支えなきゃいけない

僕が支えなきゃいけない

[拓ホーミー]僕が支えなきゃいけない


■■■■■


   *


『本当』というタイトルのバラード曲を最後にThe Voiceのライブが終わった。KINGはしばらくの間席を立つ事が出来ずにいたのだがQueenことThe Voiceのリーダー姫川真希がKINGがいる席に近づいて来るのがわかると急いで立ち上がり猫耳フードを深く被り顔を隠した。

(Queenの。いや、The Voiceのライブを見るのはこれで何度目になるだろうか?)

KINGは暇と時間さえあればThe Voiceが行う店でのライブや路上ライブに足を運んだ。姫川真希という人物がQueenである事は2度目のライブで気が付いた。1度目にたまたま入ったこの店でThe Voiceのライブを見た時は姫川真希がQueenだとは全く気が付かなかった。しかし、路上でThe Voiceがライブを行っていたのを見た時、姫川真希がQueenだと気が付いた。KINGは姫川真希に憧れた。だから自分も姫川真希のように動画サイトに顔や性別や体型を隠しKINGと名乗った。KINGの動画の中には「Queen」というタイトルの曲がある。それはKINGがQueenに憧れているからこそ付けたタイトルでいつかKINGの動画を姫川真希が見た時に憧れている事に気付いてもらう為だった。

その憧れの存在、姫川真希がKINGのすぐ側まで来ている。猫耳フードを被った自分の方を怪しげに見つめている気がしたがそれに構わずKINGは歩き出した。

「またあんたの演奏を聴けて良かったよ。やる気が出た。」

一人呟きながら歩くKINGを怪しい人物と思ってか前方から来る大柄な男が避けて通る。その男とKINGが横をすれ違う時になって急に男は立ち止まった。そして、何故か男は突然KINGの顔を覗き込んで来た。独り言をブツブツ言っていた人物の顔をどうしても確かめたいらしい。KINGは立ち止まりその男相手に舌を出した。男は不気味な笑みを浮かべながら舌を出すKINGがよっぽど危ない客だと思ったらしくそそくさと去って行ったのでKINGは会計を済ませ店を出ようとした。その時、

「KING。あなた真希の事が好きだったんだね。さっきの独り言聞こえちゃったよ。真希と話さなくて言いの?」

KINGを呼び止める声が聞こえてきて相当驚いた。一瞬で体に冷や汗が流れ出した。すぐに声の主は一ノ瀬凛だとわかった。KINGが恐る恐る振り向くと凛はステージ袖に立っていてこちらをじっと見つめている。KINGと凛との距離は店の端から端まで距離がある。

(そう言えば以前に路上ライブを3人で行っている姿を見て、どうして今日は3人だけで路上ライブを行っているのかと呟いた時、一ノ瀬凛はその小さな呟きを聞き取っていた…)

KINGは凛に背を見せ、

「どうして?KINGだとわかった?」

と呟きながら店のドアを開けたその時「だって、この前名前を教えてくれたじゃない。」という凛の声が聞こえてKINGは一歩も歩けなくなった。開けたドアがひとりでに閉まる。

「まさか…この声も、あの時の声も聞こえていたのか…」

呟いたその声は自分でも驚くほど震えていた。

「聞こえてるとわかって話してくれたんじゃなかったの?」

「……」

KINGは動揺した。

(えっ?えっ?…そんな、まさか……確かに以前KINGと名乗った。だけどそれは相手に聞こえると思って名乗ったわけじゃない…あの時、今以上に相当な距離があった。なのに声が聞こえていたっていうのか?信じられない…同じ位耳が良い人物がこの世にいるだなんて…)

「私、てっきりあなたはQueenを嫌ってるんだと思ってた。Queenというタイトル曲があるのも挑発的だと思ってたし、いずれ私達のライブを動画に撮影してコイツがQueenだってバラす気だと思ってた。」

KINGは凛がいるステージの方に振り返り激しく被りを振った。

「そんなわけない。そんなわけないだろう……」

「憧れてたんだね。真希に。」

KINGはゆっくりと頷いた。

「もう一度聞くわ。真希と話さなくていいの?」

「話さなくて良い。」

そう言ってKINGはもう一度ドアを開け今度こそ店を出た。

ドアが閉まりきる前に、

「そう。じゃあ、今度は私達があなたに会いに行くわ。必ず探し出してみせるからね。」

という凛の声が聞こえた。

(そうだった…確か一ノ瀬凛には特別な力があるって事を聞いていた。特別な力っていうのは耳の良さのことだったのか…)

「あいつ…それならそうとちゃんと教えとけよっ!」



2015年11月22日(日)


夜遅くまでThe Voiceとサポートメンバーである亮はブラーでクリスマス・イヴコンサートの練習や柴咲音楽祭で演奏する予定の曲を練習していた。

一ノ瀬凛は練習を終えて龍司と亮の2人に家まで送ってもらいながらKINGの事をずっと考えていた。

「なんとか俺達も亮も雪乃の曲を失敗なしで演奏出来るようになってきたな。」

「龍さん。俺はまだ完璧じゃないっすよ。まだ心配な部分が沢山ある。」

「大丈夫。ダイジョーブ。昨日の全体練習でもプロの柴咲交響楽団や合唱団だって未だにミスしてんだからよ。」

「プロ達は他にも練習する曲はあるんだろうけどさ。あれだけ人数がいて完璧に演奏できてんのは今のところ真希さんと春さんと凛の3人だけってどんだけ難しい曲作ってんだよ長谷川雪乃は!」

「それなっ。けど、ちょっと前までは完璧に演奏出来てるのは凛だけだった。そこに真希とハルが加わったんだから上出来だ。まだ日にちもある。間に合うさ。」

「全体練習は残すところあと1回限り、か…」

「なんだよ。お前結構ビビりだったんだな。」

「ビビるに決まってるだろっ!まわりはみんなプロだし俺はThe Voiceのメンバーじゃないしミスは許されないんだぞ!おまけにあの指揮者…一音でもミスったらすぐに気付きやがるからやりにくいったらありゃしねーよっ!プレッシャー感じさせてどうすんだって話した!」

「大丈夫だ。本番にお前がミスっても誰も責めはしねぇよ。指揮者だってな。」

「そうは思わねーけど。」

「大丈夫。大丈夫。それに、お前が一番練習するの遅かったのに俺達にもう追いついてる。大したもんだ。自信持てよ。」

2人が何か話しをしていたが凛には2人の会話は頭に入って来なかった。

(どうして私はKINGのギターを聴いた覚えがないのにKINGの弾くギターの曲調をどこかで聴いた覚えがあるのだろう?

KINGのギターを聴いた覚えがないのに曲調は知っている。この違和感は一体何?

ただ単純に私が耳栓をしている時にKINGの演奏を聴いていたからそう思ったの?

何故だかそれは違う――ような気がする。

そもそも私は本当にKINGのギターを聴いた事があったのだろうか?

確かにどこかでKINGの演奏を実際に聴いてはいるはずだ。だからKINGだからこそ出せるであろう曲調を聴いた覚えがあるんだ。

だけど、やっぱりKINGのギターの音色は動画サイトでしか聴いていない気がする。

それは、つまり、どういう事なのだろう?)

路上ライブをする時も今日のようにブラーに来て練習する時も学校での授業中も家にいる時でさえも凛はこの2週間ずっとその事を繰り返し考えていたが答えは出なかった。



2015年12月15日(火)


柴咲交響楽団と柴咲合唱団との最終練習が終った。やっと全員が雪乃の曲を完璧にマスターする事が出来た。完璧に演奏した後、交響楽団の誰かが自然と拍手を始め交響楽団も合唱団ももちろん結城春人達も全員が笑顔で拍手をしていた。それほど雪乃が作った2曲はプロ泣かせとも言える程の難解な曲でそれを完璧に演奏出来た事に皆がほっとしていた。

交響楽団も合唱団もThe Voiceのメンバーも、もちろん一番遅く練習を始めたサポートメンバーの亮も全員が完璧な演奏だった。

(芦名という指揮者は今日全員が完璧な演奏が出来なかったら今回のコンサートでこの曲を演奏する事は許さなかっただろう。本当に良かった。これなら人前で演奏しても大丈夫だし雪乃に恥をかかせる事もないだろう)

合同練習後、一人歩いて帰宅する途中、春人はほっとした気持ちで一杯だった。だがすぐに自分の頬を両手で2回ほど叩いた。

(ここでほっとしている場合じゃない。本番はもうすぐだ。それにこのコンサートが終ればすぐに柴咲音楽祭がやってくる。もう一度気を引き締めないと!)

家に着くと春人は誰もいないリビングのソファに座りスマホを見始めた。まずは自分達The Voiceの動画サイトのコメントをチェックし次にひな達LOVELESSの動画を確認した。新しい動画が配信されているので確認する。

LOVELESSの新しい動画はデビューシングルのミュージックビデオだった。

(本当にデビューするんだな。俺達がもし去年柴咲音楽祭に出場していれば今頃は俺達が…)

とそこまで考えて春人は首を振った。

(ダメだ。ダメだ。俺達は去年柴咲音楽祭に出場もしていなければ優勝出来ていたという保証もない。俺達はひな達に続くように今年頑張ればいいんだ。)

LOVELESSのチャンネルが開設されたのを知ったのはほんの数日前だ。真希がグループLINEで教えてくれた。それまで真希もひなからチャンネルを開設した事を聞いていなかったらしい。動画サイトにチャンネルを開設していた事に関しては春人が黒崎に動画の編集を教えいていた事もありそれ程驚きではなかった。しかし、有名な女性雑誌にひなが一人で表紙を飾っていたという情報を聞き、その雑誌を見た時は本当に驚いた。

雑誌の表紙をひなが飾っていたという情報も真希から聞いた事だが、その時も真希はすぐにひなから教えてもらったわけではなく雑誌発売から数週間経ってから聞いたらしくて真希は「いつもひなは事後報告で腹が立つ」と怒っていた。

LOVELESSのチャンネルはメインチャンネルとサブチャンネルがあり、今まではメインチャンネルの動画はこれからデビューするひな達4人の名前と写真を格好良く使った短い自己紹介動画を一本だけ配信されていただけだった。更新されているのがサブチャンネルばかりなのを見て龍司は「俺達の真似じゃねーかよ!」と怒っていたが黒崎が動画配信の手本としているのはThe Voiceの動画だからそれは仕方がない事だと春人は思っている。

(だけど今日メインチャンネルに新しい動画が配信されたという事は本格的にメインチャンネルを始めていくのだろうな。おそらくメインチャンネルはライブ映像やミュージックビデオや新曲の発表などのバンドの宣伝をしていくのだろう。そして、サブチャンネルは今まで通り郷田と西野の2人がゆるい感じでバンドの裏側を話したりしていくスタイルなのだろう。)

LOVELESSのメインチャンネルの動画を見た後、春人は続いてサブチャンネルの動画も見てみた。ゆるい感じの動画だろうと見始めたサブチャンネルの動画には驚くような発言があった。


「デビューシングルでオリコン1位になれなかった場合。バンド活動が出来なくなるっていう噂を聞いたんですけど、それって事実ですか?」

LOVELESSのプロデューサーである黒崎がカメラをまわし、あくまでもスタッフとして質問をしていた。郷田は少しためらった後答えている。

「それは…おそらく事実です。」

「おそらく。というのは?」

「はっきりと言われたわけではないので…」

「そうですか。ところでデビューシングル発売日って12月24日のクリスマス・イヴですよね?」

「はい。そうです。」

「その日って確かあのエルヴァンさんのシングル発売日じゃなかったですか?」

「スタッフさん。よくご存知で!そうなんです。ラヴレスはいきなりあのデビューから15年もの間連続でオリコン1位を獲っているエルヴァンさんとCD発売日が一緒になってしまいました。しかし、こうやって動画を配信して少しでもエルヴァンさんの売り上げに近づけるように。と思っております。

では、ヒナとケイの2人もこうやって待ってくれているので、そろそろミュージックビデオを見ようかと思います。このサブチャンではミュージックビデオを4人で見るっていう、ただそれだけの動画を配信するんですけども、ちゃんとしたミュージックビデオを見たいという方は概要欄に貼っておきますのでそちらから見て下さい。では、4人で見ますか。」

「あ、その前にラヴレスのリーダーから一言もらいますか?」

「そうですね。じゃあ、リーダーのケイ。一言お願いします。」

リーダーはひなじゃなかったのか。と春人が思った瞬間、動画の中のひなが驚きの表情を浮かべていた。

「ちょっとたんまっ!えっ?待って。え?このバンドのリーダーってケイなん?ウチちゃうの!?」

「ヒナ。お前今更何言ってんだよ?夏に俺がリーダーになるって決まっただろ?」

「うそぉ〜ん。普通ウチがリーダーやろう!だってウチがアンタらを集めたんやで!」

「集めたのはヒナじゃないだろう?」

「間宮トオルにメンバーを集めて欲しいって頼んだんはウチやでっ!」

(急にグダグダになったな…ま、ひならしいと言えばひならしい、か…しかし、ここでトオルさんの名前が出てきたのには驚いたな。)

春人はリビングのソファから立ち上がった。

(しかし…デビューシングルがオリコン1位になれなかったらバンド活動が出来なくなる?しかもよりによってどうしてあのエヴァと同じ日にデビューシングルを発売するんだ?勝ち目はないのはわかってるはずなのにどうして?)

春人は自分の部屋に入り窓から外を眺めた。

(LOVELESSの今後の運命を決める日は12月24日か。

ひな、俺達もその日は大切なコンサートだよ。去年、雪乃が立てなかったステージに俺達が代わりに立つんだ。俺達も前に進む為に大切な日になるよ。)




2015年12月16日(水)


深夜の音楽番組をぼーっと見つめながら神崎龍司はタバコをふかしていた。

(そろそろタバコ…やめねぇとな…んっ?あと2年で正式に吸って良い事になんのか?ならやめる必要ねぇよな…けど、真希や結衣に言わせればあと2年くらいタバコをやめろと言うんだろうな)

テレビの中では人気急上昇中若手女優と紹介された子が歌い始めた。

(人気急上昇中若手女優?こんな女優知らねーぞ。)

「女優なら女優らしく歌なんて歌わずに演技に集中してろよな。」

龍司はリモコンを持ちテレビを消そうとしたのだが何故かその女優が歌う曲が気になって電源ボタンを押す事が出来ず画面を見つめていた。

(さっき年齢は19歳って紹介されてたっけ?俺達と1歳しか変わらねーのか…)

1つしか年齢が変わらないというのにプロとしてちゃんと働いている名前も知らない女優を見つめ龍司は少しだけ尊敬をした。

「そんなに歌は上手くないが曲は良い。あんたが女優として売れれば曲も売れるさ。」

女優が歌う曲が終わりMCと女優のトークに画面が切り替わった。龍司は今度こそリモコンの電源を切ろうとボタンを押そうとしたその時、龍司が知る名前を女優は口に出した。

「作詞、作曲、編集は私と同い年の若手シンガーソングライター石原一成さんにお願いしたんです。」

龍司は手に持っていたリモコンと口に銜えていたタバコを同時に落とした。

「この女…今、なんつった??」

(石原一成?LOVELESSの郷田や西野と一緒にバンドを組んでいたあの気持ち悪い髪色の男の事か!?)

髪をピンク色に染めた石原の気持ち悪い写真がテレビに映し出される。

「マジか…マジであの石原じゃねーか…」

(あいつこんなに良い曲作れる奴だったのか…一人だけプロになれたのはこういう才能があったからだったのか……)

タバコの火で少し床が焦げている。龍司はチッと舌打ちをしてさっき落としたリモコンとタバコを拾った。



2015年12月17日(木)


「ちょっといい?」

放課後、姫川真希はそう言ってみなみの右手を持ち薬指に糸を巻き付け糸が重なる部分にボールペンで印をつけた。みなみは「なに?なに?」と驚いているが真希はそれに構う事なく作業を終えた。

「じゃ、私ルナによって路上ライブだから。みなみも体調が良かったら来てね。」

「う、うん。明日から拓也君大阪だから今晩の路上ライブは見に行くつもりだったよ。それより真希、今のは一体何だったの?」

「じゃ私、先行くね。」

真希はみなみの質問に答える事なく先に教室を出た。

ルナに着くと真希は一人カウンター席に座り、みなみの右手の薬指に巻き付けた糸を取り出した。そして、糸が重なる部分に印をつけた場所の距離を定規で計った。その様子を見ていた新治郎が、

「指輪のサイズを計っているのか?」

と先ほど頼んだホットコーヒーを置きながら真希に問い掛けて来た。

「うん。みなみのね。拓也がクリスマスプレゼントに指輪をあげるんだって。」

「そうか。みなみちゃん喜ぶだろうね。」

しばらくすると拓也、龍司、結衣、凛の西高の4人が一緒にルナにやって来た。真希は拓也に「右手の薬指で良かったんだよね?」と聞いた後「8号だったよ。」と告げた。

拓也は嬉しそうに「右手の薬指で大丈夫。ありがとう!」と答えたが真希はその拓也の嬉しそうな声とは正反対の声で「だけど、みなみ…手がむくんでるから本当のサイズは7号だと思うんだ…」と言った。それでも拓也は嬉しそうな声を出して「そっか、本当は7号か。でも、今のサイズで大丈夫だよ。ありがとう真希。」と答えた。

「どうして左手の薬指じゃなくって右手の薬指を?」

結衣のその問いにも拓也は嬉しそうに笑みを浮かべ答える。

「左手は結婚してからでいいだろう?だから付き合っている間は右手の薬指の指輪をプレゼントしたいって思ったんだ。」

その言葉を聞いて結衣は龍司の方を見上げながら「良いなぁ。良いなぁ。結衣も右手の薬指に指輪つけないなぁ。」と呟いていたが龍司は結衣の言葉を無視して「石原の野郎、若手女優に楽曲提供してるの調べたか?」と真希に聞いて来た。

今朝、龍司はグループLINEで石原が若手女優に楽曲提供をしていて、その曲を女優が深夜の歌番組で歌っていた事を全員に教えていた。真希は授業中ではあったがそのLINEが届いてすぐに石原に楽曲提供をしてもらった女優の事を調べて、プロモーションビデオが動画サイトに配信されていたので休み時間の間にその動画も確認していた。

「女優の名前は穂波飛鳥(ほなみあすか)。」

真希がそう言うと結衣だけは「知ってる。今じわじわと人気が出始めてるよね。」と言っていたが結衣以外は誰もその穂波飛鳥の事を知らなかった。

「石原に提供してもらった曲は発売されたばかりだけど一部のコアなファンからは人気があるみたいね。」

「穂波飛鳥はまだまだ無名の新人女優だけど、その穂波飛鳥が人気が出れば石原も有名になる可能性は充分ある。」

そう言ったのはいつの間にかルナに到着していた春人だった。

「あんたいつ来たの?」

「ヒメが穂波飛鳥の名前を言った時だよ。気付いてると思ってたけど。な、亮?」

春人が向いた先に亮がいて真希は驚いた。

「あんたもいたの?」

「なんだよ。春さんと一緒に店入って来ただろう?」

「だから、その時に私気付いてないから!てか、2人は穂波飛鳥の事知ってるの?」

真希は春人と亮の顔を交互に見た。春人は「いや、顔も知らないし名前も初めて知った。」と答え亮も「俺も全く知らねー。」と続いた。

「この中で知ってるのは結衣だけか。相当マニアックな女優って事だな。」

龍司がそう言うと拓也は「そのマニアックな女優が将来化けるのかもしれないぞ。」と言った。

「フン。俺が化けると聞いて思い浮かべる顔は大阪の与田芽衣くらいだな。芽衣は本当に才能がある。明日大阪であいつと会うんだろう?」

「引き続き相沢さんからレッスン受けてるみたいだから会うだろうな。」

「あいつがどれだけ成長してるのかが楽しみだ。動画撮れるならあいつの歌ってるところ撮影して来てくれよ。」

「どうせ柴咲音楽祭で会うんだからそれまで楽しみにしといたらいいじゃないか。」

「そっか。それもそうだな。」

「龍司、あんたの方はどうなってんのよ?」

真希が言うと龍司は「何がだよ?」と聞いて来た。

「奥田さんよ。最近全然龍司にドラム教えに来てくれないじゃない。」

「ああ、奥田のおっさんの事かよ。あのおっさん最近レコーディングだとか何だとかで忙しかったみたいなんだよ。だから来てなかった。けど、明日からまた来るって言ってた。」

「レコーディングか。発売日とかもう決まってるわけ?」

「ああ、イブに発売らしい。なんだ真希?スーパーゴリラのCD買う気なのか?」

「せっかくだし買うわよ。」

「マジかよ。じゃあそれ貸してくれ。」

「まさかあんた買わない気!?弟子なら買いなさいよっ!」

「龍司君?さっきスーパーゴリラのCDはイブに発売って言ってたけど、まさかシングルじゃないよね?」

と凛が突然そんな質問をしたので真希は首を傾げて「どうしたの凛?」と質問をした。

「イブって言ったらLOVELESSのデビューシングル発売日でオリコン1位を取らないといけない日だよ。しかもあのエヴァも同じ日にCDを発売する。その上スーパーゴリラまでシングルを出すとなるといよいよLOVELESSがオリコンで1位なんて取れなくなるよ。」

「あ、そうだった。」と言って真希は龍司の顔を見つめた。

「安心しろ。スーパーゴリラはアルバムだって言ってた。」

「そう。アルバムか。」

拓也が胸を撫で下ろす感じで呟いた。

「それより良いのか?もうあと5分で路上ライブの時間じゃないのか?」

新治郎がパイプの紫煙をくゆらせ言ったので真希達は一斉に店の入口の大きな振り子時計を見つめた。

「ヤバっ!」

全員がそう言って一斉に席を立った。



2015年12月18日(金)


橘拓也が大阪に着いたのは午後5時を少しまわった頃だった。

楽器店『Aizawa』の前に着くと拓也はみなみに電話を掛けようと思ってズボンの後ろポケットからスマホを取り出した。

昨晩の路上ライブが終った後、みなみは今日の学校をサボり新横浜まで拓也と一緒に行くと言ってくれていた。しかし、今朝になって体調が悪くなったようで一緒に行けないとLINEが送られて来た。

拓也は無事に大阪に着いた事とみなみの体調確認の為に電話の発信ボタンを押そうとしたその時、

「拓也、おっそーい。」

と店から遥が飛び出して来て拓也はみなみに電話をする事が出来なくなった。

「あ、ごめん。今日も与田さんは練習を?」

拓也はスマホをズボンの後ろポケットに直し聞いた。

「そやで。あれから与田は毎日ここに来てるし私らも毎日来てひな先輩のおっちゃんの夜ご飯作ってる。って言ってもほとんど料理してんのはサト先輩やけどなっ。」

「そうか…じゃあ、随分と与田さんは成長したんだろうな。」

「ふふん。蛇がドラゴンになった姿を見せたるわ。さあ、さっさと入っておいで。」

(蛇がドラゴン……)

「ちょっと電話を掛けたら店に入るよ。」

「そうか。じゃあ、ひな先輩のおっちゃんに拓也が来た事伝えて来るわぁ。」

遥が去った後、拓也は店から少し離れた場所に行き、みなみに電話を掛けた。

電話に出たみなみの声はとてもしんどそうだった。学校も休んだらしく今日は一日ベッドで眠っていると言っていた。あまり長電話するのも悪いと思って拓也は電話を切った。電話を切った後、拓也は、今日本当に大阪に来て良かったのだろうか?みなみの側にいるべきだったんじゃないのか?と疑問に思い始めていたのだが、まるでそれを察しているかの様なLINEがみなみから届いた。

-私は少し疲れてるだけだから心配しないで。それより最後の追い込みになるんだからしっかりと相沢さんからボイストレーニングを受けてきてね–


拓也が店に入ると相沢とホワイトピンクの4人が出迎えてくれた。

「久しぶり。」と5人が順番に言ってくるのを拓也は同じ言葉で返した後、早速与田が蛇からドラゴンに成長した姿を見たくて2階に向かう事にした。何故かボイストレーニングを行わない遥達3人も一緒に2階に上がって来る。

緊張した様子で与田がため息を吐く。そして、与田はアカペラでサザンクロスの『声』を歌い始めた。その瞬間拓也は鳥肌が立ち心が振るえ始めた。それは与田が歌い終るまで続き、遥が言った蛇がドラゴンになった姿を拓也は目の当たりにした。

「……凄い…凄い…凄い!凄い!凄い!想像以上だっ!8月に別れた際に随分と上手くなったと思ってたけどそれ以上だ!まさかここまで成長してるなんて本当に驚いた!なんか俺まで嬉しくなったよ。」

拓也は与田の手を取り驚きを隠さずに素直にそう言ってはしゃいだ。与田は拓也のその反応に驚いた様子で「あ、ありがとう…そ、そんなに喜んでもらえると思ってなかったから嬉しいな。」と困惑の表情で答えていた。

「拓也、わかってる?私ら8日後の柴咲音楽祭では敵同士やねんで?そんなに喜んでどうすんねん。」

遥はそう言ったが拓也はそんな事よりも与田の成長の方が嬉しかった。その事を正直に遥達に告げると与田が「そう言ってもらえると本当に嬉しい。」と言ってくれた。

「で、拓也。俺はホワイトピンクと共に25日に神奈川に向かうつもりなんだが、その日まで大阪にいるか?」と相沢が拓也に聞いた。拓也は、

「24日に大切なコンサートがあってそれに俺達The Voiceも出演するから帰らないといけないんです。」と告げると遥が首を捻って「ライブじゃなくってコンサート?」と聞いて来た。

「2曲だけだけどオーケストラと共にある曲を演奏するんだ。」

拓也はそう告げて雪乃の事やクリスマス・イブコンサートの詳しい話しを始めた。

拓也が話し終えると驚きの表情を浮かべたのは与田だった。

「長谷川雪乃さん事故に遭ったんだ…」

与田のその言葉はまるで雪乃を知っている言い方だった。

「与田さん…もしかして雪乃の事を知ってるのか?」

「あ、うん。私が一方的に知ってるだけだけど。私ちっちゃい頃からピアノ習ってて、中学2年の時にピアノコンクールの全国大会に一回だけやけど運良く出れた時があって、そん時に…長谷川雪乃を知ったんや。長谷川雪乃のピアノは圧倒的やったし今でもその演奏してる光景が忘れられへん。この人が今回優勝するんやろうなって思ってたら私よりも2つ年下の小学生がそのコンクールで優勝して…

長谷川雪乃の演奏を見て私と彼女とでは次元が違うって思ったのにそれ以上のピアニストがいて、その子は私よりも年下で、小学生で優勝って思うと私はこの人達に並ぶ事すら無理だと思ってそのコンクール以降ピアノは辞めた。長谷川雪乃も凄かったけどあの小学生も凄かったなぁ。神童って呼ばれてたよ。その子。今頃世界にでも出てるんかなぁ?」

「一ノ瀬凛。」

拓也が呟くと与田は叫んだ。

「んっ!?あっ!そう!そうそうそう!!一ノ瀬凛っ!なんで橘君知ってるん!?やっぱ今では有名なピアニストになってんの?」

「あ、いや。凛は俺らのバンドの新メンバーだ。担当はピアノじゃなくてDJだけどね。」

「なぁーーーーー!!」

与田の悲鳴を聞いて遥が「なになに?拓也のバンドにはめっちゃ凄いメンバーがいるって事?」と与田に聞くと与田は何度も何度も頷いて「そ、そそそそ、そういうことー」と言っていた。

「あの金髪龍司もやたらとドラム上手かったし…拓也ももちろん凄いし…そ、そうか…3人も上手い奴がいるって事か…動画サイト見てるだけではわからんかったわ…いや、単純に凄いなっていうのはわかってたんやけど…The Voice…なかなか侮れへんみたいやな。柴咲音楽祭は予選を勝ち抜けばトーナメントやったな。直接対決になったら少しくらい手を抜いてくれてもいいんやで。私ら今回解散を賭けて挑むんやから。」

「なにも解散を掛けなくても…でも、残念ながら俺達も今回の柴咲音楽祭に懸けてるから無理だな。」

遥達ホワイトピンクの4人は一斉に「ケチー!!」と拓也に怒鳴りつけた。



2015年12月20日(日)


拓也は昨日、朝から大阪の中心街に赴き、みなみに送るクリスマスプレゼントを買いに行った。もちろん買ったプレゼントはペアリングで、みなみの指輪のサイズは今、嵌める事が出来るサイズの8号を買った。そして、指輪とは別に買う予定になかったシルバーのネックレスも購入した。もし、みなみが指輪のサイズが合わなくなった時の為に指輪をそのネックレスに通す事が出来ると考えたからだ。


拓也はいつもプレゼントを送る時は形に残る”物”を選ぶ。しかし、みなみはというといつも形に残らない”物”を拓也にプレゼントしてくる。いつもみなみから貰うプレゼントは食べ物に限定されている。拓也はそれはそれで嬉しかったがどうして形に残る物をみなみがプレゼントしてくれないのか最初はわからなかった。だけど、今なら大体の検討はつく。きっとみなみは形に残る物を渡せば将来それを見て拓也がいつまでもみなみの事を忘れられなくなると思っているのだろう。

みなみから形に残る物をプレゼントして貰いたいと思いつつもそれはきっとないのだろうという諦めの気持ちもあった。みなみから形に残る物を貰えないのならこちらから2人共に残るプレゼントを渡せば良い。そう考えて今回拓也はペアリングを買う事に決めた。


大切そうにプレゼントを持って相沢の家に戻ると相沢はすぐに「恋人にプレゼントか。」と気が付いた。

「どどどど、どうしてわかったんですか?」

「そのブランド有名だからな。ペアリングか何かか?」

「当たりです。俺の彼女…いつも俺にくれるプレゼントは食べ物なんです。俺、彼女から形に残る物貰った事ないんです。」

「…そうか。それでペアリング、か。」

「はい。それと、トオルさんがずっとひかりさんの指輪を身に付けてる印象が強くて。俺も良いなって思ってた部分もあって。」

「なんて言ったかな。眼鏡を掛けておく…」

「グラスホルダー。」

「そう、ひかりの指輪をそのグラスホルダー、にしているんだろうトオルは。」

「はい。」

「フンっ。いつまであいつはひかりの呪縛に縛られているんだか……ってそんな事言ったらひかりに叱られるか。しかし、次の恋にさっさと踏み出せよな。自分の年齢も考えろって話しだ。」

「ですね。でも、結婚は考えてなさそうですね。」

「呆れた。ひかりもトオルの幸せを願っているはずでトオルもわかってるはずなのに…いつまでも十字架を背負いやがって。」


この日の晩、拓也はホワイトピンクのライブを見る為に前回大阪に来た際にも行ったYELLOW DOORに相沢と共に訪れた。

相沢が店に入ると「サザンクロスの相沢裕紀だ!」という声が客席から聞こえ相沢はあっという間に観客達に囲まれていた。

前回相沢と共に行ったライブが反響を呼んで相沢は「ここに来る時はいつもこうだ。」と困った顔を浮かべながら呟いていた。

店内が暗闇となり、じわじわと明るくなっていく。そして、ホワイトピンク4人の姿が見えた。その瞬間、客席からは地響きの様な歓声が上がった。

(めちゃくちゃ人気者になってんじゃん。)

ホワイトピンクの特徴とも呼べる元気で勇気が出るような曲調の曲からライブは始まった。観客席では曲調に合わせてジャンプする者が現れ拓也も彼女達の曲を聴いていると勝手に体が動き始めた。そして、気が付いた時には拓也も観客達と一緒にジャンプをしていた。

ライブが終るまで相沢は一人静かに端にある席で酒を飲みながら彼女達の様子を見つめていた。そして、ライブが終わると拓也に聞いた。

「ホワイトピンクのライブ、どうだった?」

「めちゃくちゃ楽しかったです。元気な曲が特徴的で気分が上がる曲を歌わせたら彼女達に勝てる相手はいないんじゃないかって思いました。」

「そうか。他には?」

テンションが上がっている拓也とは正反対に相沢は落ち着いた様子でそう聞いてきたので拓也は首を捻って「他に?」と言った。そして、拓也が店の天井を見上げ考えていると相沢は「あの子達の演奏については?」と言葉を付け足した。

「演奏について…うーん。そうだなぁ…」

拓也が腕を組み困っていると相沢はまた言葉を付け足した。

「与田は本当に成長した。」

拓也はその言葉に、うん。うん。と深く頷いた。

「けど、他の3人はどうだ?」

「他の…3人……」

(確かに与田さんの成長は著しい。だけど…他の3人はどうだろう?)

拓也は少し考えてから正直に答えた。

「言いにくいんですけど…8月に会った時とそんなに変わりはないかな、と思います…」

「だよな?与田の才能に追いついてない。そう思うよな?」

「……はい。」

「あれでもそれぞれが教室に通ってたんだぜ。あんま成長しなかったけどな。このバンドは与田だけが一際目立っちまってる。3人のレベルが追いついてないから曲に調和も取れていない。だが、あの3人の可能性に掛けたいと俺は思う。」

「はい。」

「はい。じゃねーだろ。」

「えっ?」

「わかってんのか?ホワイトピンクは数日後には同じステージに立っていてライバルなんだよ。俺はお前達の動画も見てないしどんな感じなのかも知らねぇけど柴咲音楽祭で簡単に優勝出来るだなんて思うなよ。あの子達にはまだまだ可能性がある。」

「大丈夫です。簡単に優勝出来るだなんて思ってないです。それに彼女達だけじゃなく他にも強敵がいる事を知ってます。ま、俺はホワイトピンクが一番のライバルになる気はしてますけどね。」

相沢はしばらく拓也の顔をじっと見た後、ふっと笑った。

「なら良いだろう。」



2015年12月21日(月)


ボイストレーニングを終え拓也はホワイトピンクの4人と相沢と共に夕食を食べながら「ところで今回どうして俺を大阪に呼び出したんですか?」と相沢に質問した。相沢は「う〜ん。」と言った後に、

「弟子の様子が気になったからだ。もしかしてまた喉を痛めてるかもしれないと思ってな。」と素っ気なく答えた。

「で、弟子…俺が相沢さんの…」

「そりゃそーやろっ。私らは師匠の弟子やし。同期やし。」

与田が笑みを浮かべながらそう言う。拓也は顔を赤くなったのが自分でもわかるくらい照れた。与田は以前に相沢の事を師匠と呼んでいたが、拓也はまだ相沢を師匠とは呼んでいない。その理由は自分が相沢に弟子だと認められていないと思っていたからだ。

「…師匠。…相沢さんが…俺の師匠。」

「なんだ?嫌なら弟子とは呼ばないが。」

拓也は思いっきり首を横に振った。

「そ、そそそそ、そんな事ないですっ!光栄です!光栄すぎます!」

「そ、そうか…」

と相沢が思った以上に引いていたので拓也は軽く反省した。

「で、どうなんだ?喉の方は。」

「電話で大丈夫だって言いましたよね?」

「ああ、言ったな。だが、電話では大丈夫と言ってもそれが本当かどうかはわからない。会ってみるまでは安心出来ないんだよ。」

拓也はその言葉を聞いて真っ先にみなみの事を思い浮かべた。

「確かにそうですね。」

「喉を痛めてなくて安心したよ。」

「もう痛める事はないかもしれません。」

「それはわからないだろう?7種類もある歌い方をずっと続けていれば喉の負担は計り知れない。いつまた喉を痛めるかもわからない。声を変えて歌うのがお前の売りなんだろうが出来る事ならあまり声を変えて歌う事はお勧めしない。」

「ですよね。それはなんとなくわかってます。」

「それなら良い。あと3日、みっちりしごいてやるやるよ。」

「はい。お願いします。」


10


2015年12月24日(木) 17時20分


クリスマス・イブコンサート当日となった。佐倉みなみは鞄から今日のチケットを取り出し本日何度目かになる開演時間の確認をした。

(19時開演。開場時間は18時30分。そして、拓也君達が出演する時間は20時45分)

みなみはスマホで17時20分という時刻を確認した。

「開場の1時間と10分前、か。」

みなみはそう呟いてそろそろ家を出ようと思った。

「拓也君はちゃんと時間に間に合うのかな?」

拓也からは1時間程前に新横浜に着いたという連絡をもらった。今頃はタクシーに乗って柴咲市民ホールに向かっているのだろう。

柴咲交響楽団と合唱団は現在リハーサルを行っている時間だがThe Voiceが演奏する2曲のリハーサル時間は18時からだと聞いている。

「普段なら新横浜からタクシーで柴咲市民ホールまで40分も掛からない。だけど、今日はクリスマス・イブ。しかも――」

みなみは部屋のカーテンを開け真っ白に染まった街並みを眺めた。

「今日はホワイトクリスマスだ。」


11


2015年12月24日(木) 17時40分


橘拓也はタクシーの後部座席に座りながらスマホで今の時刻が17時40分である事を確認した時、ちょうど自分の家の前を通り過ぎた。

普段ならここから5分もあればタクシーで柴咲市民ホールには着く。しかし、今日はクリスマス・イブ。しかも雪が降り積もっている影響もあってもう少し時間が掛かりそうだ。新横浜駅からここまでも相当な時間が掛かってしまった。しかし18時までにはぎりぎり間に合いそうだ。その事を拓也はLINEで真希達に連絡しようとした時、それまでほとんど会話という会話をしてこなかったタクシーの運転手が突然「前方の歩道に人だかりが出来てますね。なんだろうな?」と左側の歩道を指差しながら言った。その言葉に拓也は窓越しに歩道を眺めていると確かに人だかりが出来ていた。タクシーは道が混んでいるのと雪が降り積もっているせいでゆっくりとその人だかりが出来ている場所に近づいて行く。

(こんな歩道に人だかり?)

拓也はじっとその人だかりを眺めていたが、どうしてこんな歩道に人だかりが出来ているのかはわからなかった。タクシーは少しずつ人だかりが出来た場所の横を通り過ぎてゆく。しばらく経つと前方から救急車のサイレンが聞こえ始め、あっという間に救急車は拓也の乗るタクシーの横を通り過ぎた。その後、すぐにサイレンの音が消える。拓也が後方を振り返ると案の定、先ほど人だかりが出来ていた歩道の前で救急車が止まっていた。

「誰か道端で倒れたりしたのかな?こんな雪の中で寒いだろうに。」

タクシーの運転手がミラーを見つめ言った。その言葉を聞いて拓也は去年の雪乃の事故の事を思い出していた。


12


2015年12月24日(木) 17時50分


雪が降りしきる中、姫川真希は龍司、春人、凛、亮の4人と共に柴咲市民ホール正面玄関で拓也の到着を待っていた。

全員が黒のスーツを身にまとい黒のネクタイを締めている。

「おいおいおい。あと5分しかねーぞリーダー!あいつ本当に近くまで来てんのかよ?」

真希は龍司を無視して今駐車場に入って来た車を目で追う。

「タクシーではないね。」

春人も真希と同じ車を目で追っていた様子でそう呟いた。

「雪、降り積もってるから早めに来たお客さんの車だね。」

凛がそう言うと龍司は、電話掛けてみるか。と言ってスーツのズボンからスマホを取り出した。

「待って、タクシーが入って来た。」

真希が言うと龍司は電話を掛けるのをやめタクシーの方を見つめた。タクシーは正面玄関目掛けてやって来る。

「拓也で間違いないわね。」

真希は呟いて腕時計を見た。

「17時55分。間に合ったわ。」

龍司は「ふぅ〜〜。」と長い息を吐きスマホをズボンに戻した。

タクシーを降りた瞬間、スーツ姿の拓也は「ごめん。ごめん。遅くなった。」と謝りながら真希達の元へやって来る。

「お前、いつからスーツ着て来たんだよ?」

「大阪出る時から。ネクタイはまだ締めてないけどな。龍司は?」

「俺は家から。バイクで来るつもりだったけどさすがにこの雪じゃ乗れねーしバスで来た。」

「2人ともそんな話しは後で良いから急いで。」


13


2015年12月24日(木) 18時20分


「随分と時間が掛かったがなんとか間に合って良かった。」

長谷川雪乃の父友一が車を運転をしながらそう言うと母蘭は「慣れない車で大変だったでしょう。」と友一に言った。雪乃の両親は今後必要になるだろうからと車椅子のまま乗れる車を購入してくれていた。蘭は車椅子のまま乗車している雪乃の方を振り向いて言った。

「体調は大丈夫?車酔いしてない?」

「うん。大丈夫。」

「開演は7時からよね?30分あれば楽屋に挨拶出来るよね?」

雪乃は雪が降り積もる綺麗な住宅街の景色を見ながら「うん。」と答えた。


14


2015年12月24日(木) 18時40分


無事リハーサルを終えた一ノ瀬凛達は柴咲交響楽団や合唱団と同じ広い楽屋で待機し、その時を待っていた。

凛はみんなの様子が気になって周りを見渡した。交響楽団や合唱団のメンバーは笑顔を見せ余裕があるが凛にはそんな余裕は全くなく椅子から立ち上がっては廊下を歩きまた座るを繰り返していた。拓也の方はどうかと様子を見てみると拓也は緊張しているのが一目でわかる程ただ一点だけを見つめじっと座ってコンサートが始まるのを待っている。

真希は緊張を隠しきれない様子でイヤホンを耳に付けて音楽を聴いている。おそらく今日発売されたばかりのLOVELESSの『君が好き』を何度も繰り返し聴いているのだろう。

春人は本を読み一見緊張している様子には見えないが何度もため息を吐いている事から緊張を紛らわす為に本を読んでいる事がわかる。亮は何度も立ち上がり5分おきにトイレに向かう。

緊張している様子がないのはThe Voiceのメンバーでは龍司ただ一人だけだった。今は楽屋に来た結衣と楽しそうに会話している。

「雪乃ちゃん久しぶり。」

突然、楽屋の外からそんな声がして凛はまた拓也達の顔を見渡したが凛以外その声に気付いた者はいなかった。

高瀬(たかせ)さん久しぶり。元気にしてた?」

廊下から雪乃の声が聞こえて凛は立ち上がった。

「師匠が来てくれたっ!」

凛が言うと一点だけを見つめていた拓也や大人しく座っていた真希や春人も顔を上げて凛を見た。

凛が勢いよく楽屋を出ようと走り出すと拓也達も立ち上がり凛の後に続いた。

凛が楽屋のドアを開ける前に反対側からドアが開き目の前には柴咲交響楽団の高瀬詩織(しおり)が楽屋に入って来るところだった。高瀬はドアを開けると凛達が目の前にいたので大変驚いていた。

「ちょうど良かった。雪乃ちゃんが来てくれたからみんなを呼ぼうと思ってたところ。さあ、雪乃ちゃん入って。」

蘭に車椅子を押されて雪乃の顔が見えた瞬間、雪乃は早口で話し出した。

「みんなぁ。調子はどう?演奏は完璧?私客席で見てるからねぇ。私の心はみんなと繋がっていて、みんなと一緒にステージに立っているから。去年、私が立てなかったステージに今年はみんなが立ってくれるのが本当に私は嬉しいの。だから、みんな私の分まで楽しんでねっ!じゃ、お母さん席まで連れて行って。」

雪乃は一方的に話し掛けて去って行った。

凛達6人は雪乃が去って行くのを見届けながら呆気に取られていた。

「なんだったんだ?」

龍司が不思議そうに真希に聞いた。真希は「私に聞かれてもわかんないわよ。」と答えて凛を見た。

「師匠ったらみんながいたから照れちゃったんだね。」

凛がそう言うと春人が「でも、雪乃らしいといえば雪乃らしいな。」と言って拓也は「だな。雪乃なりの応援だった。」と続いた。

「長谷川雪乃が客席で見てるのか…より緊張してきた。」

亮はそう言ってまたトイレに向かった。

「しっかし、サクラちゃんおっそいなぁ〜。拓也くん何も聞いてない?」

結衣がゆっくりと凛達の元に向かって来ながらスマホを片手にそう言った。

「え?みなみと連絡取れないのか?」

龍司が拓也を見ながら結衣に聞いた。

「うん。既読になんないよぉ。」

「フトダや相川はもう着いてるんだよな?」

「うん。五十嵐先輩と楓さんと紀子もいる。」

「じゃあ、みなみも一緒にいて話しでもしてるんじゃないのか?」

「紀子にLINEしてみたけど、サクラちゃんはまだ来てないって。」

拓也が急に不安そうな表情を浮かべたのを見て結衣はしまったと思ったのだろう。すぐに「あ、でもこの雪のせいで遅れてるのかも。」と拓也を不安にさせない様な言葉を選んでいた。

「じゃあ、そろそろ結衣も観客席に向かうよ。」

「…うん。」

「じゃあ、結衣また後でな。」

「うんっ!龍ちゃん。頑張ってね!」

凛が拓也の顔を見上げると拓也は不安一杯といった表情を浮かべながらみなみにLINEを送っていた。


15


2015年12月24日(木) 20時25分


The Voiceの出演時間20分前となった。

雪乃が作詞作曲した2曲はクリスマス・イブコンサートのトリを飾る。

タイトルは雪乃の希望通り5人で話し合って決めた。

1曲目に演奏する曲は『APOCALYPSE』

この曲は柴咲交響楽団と合唱団の迫力ある演奏が続き拓也が合唱団に負けないように歌い上げる。そして、曲の間奏部分では真希が一人でバイオリンを弾く場面もある。

2曲目に演奏する曲は『祈り-Inori-』

この曲は旋律の美しい曲で曲の最後になる程に盛り上がっていく。The Voiceのバンド演奏が特に引き立つ楽曲となっている。

この2曲にクリスマスらしさは全くない。しかし、去年雪乃の演奏を楽しみにしていてくれた人達やこのステージに立てなかった雪乃の為にも柴咲交響楽団や合唱団は雪乃がいたバンドThe Voiceと共にこの2曲を共に演奏したいと言ってくれた。


「じゃあ、そろそろ行こうか。」

真希の言葉に全員が立ち上がった。拓也はスマホを不安そうに見つめている。

結局、みなみからの返信はなく既読も付かなかった。拓也はみなみに電話を掛けたが電源が切れているらしく呼び出しが鳴らなかった。

「拓也、集中。」

拓也は真希の言葉に頷いた。

「よっしゃー!円陣組むぞ!」

龍司が叫び6人が円陣を組んだ。そして龍司は、リーダーから一言頼む。と言ったので全員がリーダーである真希の言葉を床を見つめながら待った。

「去年、雪乃が立てなかったステージに今日私達は立つ。その意味みんなちゃんとわかってるよね?」

「おぉ!」

「心の中で雪乃と一緒に演奏している事を意識して!」

「おぉー!!」

そして、次に龍司が全員の顔を見回して、「楽しもう!」と叫んだ。その言葉に全員が「おぉーー!!」と叫んだ。

龍司は気合いをもっと入れる為に顔をパンパンと叩き、春人は落ち着いた様子で眼鏡を拭き、真希は履いていたヒールと靴下を脱ぎ捨て、凛は急いだ様子で髪を手で整え、亮は声を出して気合いを入れた。そして、拓也は「俺には出来る。俺には出来る。」と魔法の言葉を唱え、真希を先頭に楽屋を出た。


16


2015年12月24日(木) 20時35分


姫川真希達はステージの袖に立って自分達の出番を待っていた。

「今演奏されている曲が終れば私達の出番?」

凛が首を捻りながら真希に聞いて来た。真希は「そうよ。」と言った後、ふぅ〜。と大きく息を吐いた。

(ここからステージを覗くだけで足が震える。交響楽団や合唱団の迫力に飲み込まれそう…

ステージに立てば大勢のお客さんが目の前にいる…私達はそんな大勢のお客さんの前で演奏をした事がない…)

真希は緊張と不安で押し潰されそうになっていた。春人も凛も亮も緊張をしている。拓也も緊張をしているが拓也はそれ以上に表情が硬い。

「みなみから連絡は?」

拓也は首を振った。今の拓也は緊張と不安だけではなく返信のないみなみの事も考えている。

「拓也、集中して。」

「…あぁ、わかってる…」

そう答える拓也の表情は相変わらず固い。

「みなみはもう客席にいてただ単にスマホの電源切ってるだけかもよ。そんな硬い表情でステージに立って格好悪い姿をみなみに見られていいのか?格好良い姿を見せて格好良くクリスマスプレゼント渡した方が良いんじゃねーのか?それとも何か?タクはこのコンサートが終った後に指輪をプレゼントする時の事を考えてっからそんなに不安そうな顔をしてんのか?」

龍司の言葉で拓也の表情が柔らかくなったのがわかった。この6人の中で龍司だけは相変わらず緊張している様子もなく余裕がある。

(こういう時だけはコイツ頼もしいな…)

龍司の様子を見て真希も少しだけ心に余裕を持つ事が出来た。そして、今演奏されている曲が終わり盛大な拍手が聞こえ始めた。

「曲が終ったわ。今からアナウンスが流れるからそれが終ったら私達の出番よ。みんな準備は良い?」

真希の言葉に5人は小さく返事をした。

「楽しもう!俺達が楽しむ姿をみなみも雪乃も結衣も、いや、ここに来ている人達全員が見たがってる。俺達が楽しめばここに来ているみんなが楽しんでくれる。」

龍司の言葉に真希達5人は小さく返事をした。

「楽しもう。去年雪乃の演奏が聴けなくて残念がってた人達の為にも俺達が雪乃の曲を雪乃の代わりに演奏するんだ。」

春人の言葉に真希達5人は小さく返事をした。

「楽しもう。演奏する側もそれを聴く側も一緒になれる。ここにいるみんなでこの瞬間を楽しもうよ。師匠もそれを望んでるよ。」

凛の言葉に真希達5人は小さく返事をした。

「楽しもう。この瞬間を楽しめなかったらきっと後悔する。後悔しない様に楽しもう。」

亮の言葉に真希達5人は小さく返事をした。

「楽しもう。今、この時を。俺達自身が楽しめなかったらみんなを楽しませる事なんて出来ないんんだから。」

拓也は自分に言い聞かせるように言ったその言葉に真希達5人は小さく返事をした。


急に会場が暗くなった。そして、柴咲交響楽団の控えめな演奏が始まりアナウンスが流れ始めた。

「昨年、一人の少女がこのステージに立てなかった事をご存知だろうか?

その少女は天才ピアニストと呼ばれ昨年のクリスマス・イブコンサートで柴咲交響楽団ならびに柴咲合唱団と共に演奏をする予定でした。

しかし、不慮の事故でこのステージに立つ事が出来なくなってしまいました。

少女はその事故により車椅子生活となり手足も上手く動かせなくなりました。

しかし、彼女は今でもその不自由な体でピアノを弾いています。

その少女の名前は長谷川雪乃。

今宵、これから披露する曲はそんな彼女が作詞・作曲した曲です。

この曲は彼女が一緒にバンド活動を行っていたThe Voiceというバンドの為に作った曲ですが、今夜は特別にそのThe Voiceのメンバーを迎え今から2曲、我々と共に演奏させて頂きます。

柴咲交響楽団、柴咲合唱団、The Voice、そして、長谷川雪乃による聖なる夜のオーケストラライブ開演です。」


「私達は6人だけど6人じゃない。忘れないで。今日は雪乃と一緒に演奏をする事を。そして、いつも通り楽しもう。さあ!みんな準備はいい?行くわよ!」

真希の言葉に全員が会場全体に響き渡る程の声を出して叫んだ。


17


2015年12月24日(木) 20時45分


橘拓也は柴咲市民ホールのステージ中央に立ち「ふぅっ」と勢いよく息を吐いた後、静かに目を閉じ演奏が始まるのを待った。みなみは本当にこの会場に来ているのだろうか?と心配だったが今は曲に集中する事を意識した。


今年の8月2日。花火大会当日の記憶が蘇る。

――私、事故に遭う前にバンド用に曲を作ってたの。この楽譜ずっと渡すの忘れてて。これでやっと私もみんなのバンドに入れたよね。

雪乃がThe Voiceの為に曲を用意してくれたその日が正式にバンドに加わってくれた日だった。雪乃が仲間に加わるまで本当に時間が掛かった。今後、同じステージで演奏する事はないのかもしれない。楽曲を提供されるのも今回限りかもしれない。

――雪乃。ありがとう。でも、これ…この歌詞は…英語?

――ううん。日本語だよ。じゃ、その曲を歌ってくれる日を楽しみに待ってるよ。あ、2曲あるからね。

――な、なんだよこれ…

――驚いた?その歌詞は言葉にはなってないから拓也君覚えるの大変だろうけど頑張ってね。

――は、はあ…

――じゃ、みんな。その曲を披露する時はぜっーたい私を呼んでよね。ぜーったい聴きに行くから。

――これ歌詞に意味はあるのかな?

――た、多分…意味はないと思います。


体全体に響き渡る程の演奏が始まった時、拓也はパッと目を開けた。


■■■■■


「APOCALYPSE」

[凛]Ah Ah Ah

[合唱団]

※ウォーセーミーヴォーダス ツェートーザーストービー

ツォーゼーミー

[拓&合唱団]

○バ ハ セ ホーラ  トォ ミ トォ セ ウィーガ

パ セ パラ ダーキ  ゾォ セ フィ ロ パーセ

ヌーバートォーティーロースセーティーゴ

パセ ドゥバ トゥミ ツゥセイ

ウィーガロゼーミーポロミー

[合唱団]

●ワーズィーヨーヴァー

ハッ

[拓&合唱団]

◎トゥセミミヨ ミニィヒィスィガロ

ディティガズィ ニヌストヴィン

トゥパッチツェ ニィリィラゼロン

トォペツォヅォ ティニィディガノン


※repeat

○repeat

●repeat

◎repeat


[凛]Ah Ah Ah


■■■■■


■■■■■


「祈り-Inori-」


エジ ドゥワイ タトゥ アミィ アーメス ホーミス アジス フトゥ

エラ サミ ミチ エイジャス エズ エヴォ ホーリス ティス

ジャリュ  ジェヴァ ハレェス シャミ マナ ハヴィス エヴィ ショシュ

ボジズ フト エジ ヴィラ ポリ タミス ブジィ タミス


トト ギバス トチス エイヴァス ファマトサシエイリティス

ディタ タバス リタ テティ ディミティエスラセズィリス


Oh-Oh-Oh-Oh-Ah-Ah-


ドーレス メレス  イヴァ トゥル イラ トゥレス ソミ ホオ

ツェヅェ イリ ティディ トゥラ メテ トレ ホゼ テーレス


パリツ フォレ イフォア イフォラ トゥレス ペラ フェイオレス 

パラ パーレス ハラ パーラス フェヌス ファス


ツォーゼーツェーガー

ツォーゼーパーラー

ツォーゼーツォーザー

ツォー ヌワイレイラライ

イェーラーパーレス


■■■■■


歌詞に意味はなくバンド用というよりオーケストラ用の楽曲。だけど、大切な仲間の大切な曲。それを大切な仲間の前で演奏が出来る喜び。

これ以上の喜びがあるだろうか。


18


2015年12月24日(木) 20時45分


吉田聡は疲れ果てた表情を浮かべながら会社を出ると壁に体重をかけ腕組みをし突っ立っていた男に「お疲れさまでしたぁ。」とのんきな声を掛けられた。吉田はその男の顔すら確認せずにその場を去った。しかし、その男は「ちょっと待って下さいよぉ。」と吉田の後に付いて来る。

今日発売の週刊誌にエルヴァンの記事が出て朝からずっとその対応に追われていた吉田は後ろに付いて来る男の相手をしている余裕などない程疲れきっていた。

「ちょっと。吉田さんってばぁ。待って下さいって。俺、俺っすよ。京っすよ。」

吉田はその名前を聞いて立ち止まった。

「…京…虎一…よく俺の目の前に現れる事が出来たな。お前ナメてんのか!?」

吉田が振り返ると京は嫌らしいほどニヤニヤと笑みを浮かべていた。

(コイツ…)

「うちの会社に記事を出さないよう圧力をかけてたみたいですけど記事出ちゃいましたねぇ。あ、今度圧力かけてきた事や金で揉み消そうとした事記事に出しますんで。そん時はまたよろしくです。」

吉田は勢いよく京に殴り掛かった。しかし、その拳はあと少しのところで京にかわされた。

「ちょっ…暴力反対っ!」

(次こそ当ててやる!その憎たらしい顔に!)

吉田は幾度となく京に殴り掛かった。しかし、吉田の拳を京は全て華麗に避け続けた。

(…どうなってんだ??どうして当たらない??)

「待て、待てってばぁ。今日は相棒がいないんすよっ!殴られてる写真撮れないんすよぉ。俺を殴るのは相棒がいる時だけにして下さいよぉ。」

いくら吉田が京に殴り掛かっても一向に当たらない事に吉田はイライラを募らせたが、それよりも疲れのピークを先に迎えてしまった。

吉田は膝に手をつき激しく肩で息をして京を殴る事を諦めた。

「ちくしょうがぁー!どうして当たらねぇ…どうして…どうして急にこんなに上手くいかなくなったんだ…」

「吉田さん。あんたはよく頑張ったよ。」

「うるせぇ!黙れっ!全部お前のせいだ!お前がエルヴァンの前に現れてから全て狂い始めた。」

「そんな事言うなよぉ。寂しくなっちまうじゃん。あんたよく頑張ったって俺は褒めてんだぜ。プロデューサーって器でもねぇし才能もなかったのによぉ。よくここまで持ったもんだよ。うん。」

「なん、だとっ!」

「だってそうだろう?あんたは運だけは良かった。エヴァの4人を見出だした間宮トオルや音楽の才能だけはあるエヴァの4人のおかげであんたは大物プロデューサーを気取れたわけだし。けど、あんたの運の良さもここまでだ。所詮あんたは間宮トオルの代わりだったんだよ。いや、代わりにもなれてねぇか。だってそうだろ?エヴァはあんたのおかげで売れたわけじゃねー。間宮トオルが彼らを見出だしプロデュースしたからあの4人が産まれた。そして、あんたがプロデューサーになった頃にはエヴァの4人は既にプロデューサーなんていなくても立派になっていた。あんたはただのお飾りだ。それを証拠に彼ら以外のプロデュースは全然ダメだもんな。自分に才能がない事に気が付かず大物気取り。あんたそれを早くに知るべきだったよな。教えるの遅くなってゴメンなっ。」

「……」

「なんだよ。反論しねぇって事はあんた自身もそれに気付いてたのかよ。さっきみたく悔しがれよ。しょーもねーな。」

「まだ終わりじゃねぇ。あんな記事でエルヴァンが終ってたまるかっ!」

「終わりだよ。エヴァもあんたも。ま、これからは新時代がやって来るんだろうよ。その中心となる人物が相沢裕紀の娘で良かったじゃねーか。」

「…相沢の…娘…?」

「あぁん!?吉田さぁん。あんた、相沢裕紀の娘と会ったんだろう?」

(相沢の娘??)

「…お前、何を言っている?」

「なぁーんだ。まさかあんた何も知らされずに相沢の娘と会ってたのかよっ!こりゃ傑作だ。」

「……」

「ああ、まだピンと来てない感じっすね。一人だけいるでしょう?相沢の娘だと言われて納得出来る子が。」

「ま、まさか…LOVELESSの?」

「あんた以外にまさかとは思わねーだろうけど、そのまさかの栗山ひなだよ。あんた、もしかしてヒナとしか名前聞かされてなかったのか?笑える。黒崎沙耶だったか。あんたの元恋人。そいつに教えてもらってねーってのはなかなかの傑作だ!あんたあの女に一泡吹かせられたなっ!はははっ。笑えるわぁ。」

吉田は栗山と聞いて相沢と結婚した栗山華の名前を思い出した。

「栗山……ひな…そうだったのか…。あの子が相沢の娘…どうりで…どうりで素人離れした歌唱力だったわけだ…」

「どうしてあんたに相沢の娘だって黒崎さんは教えなかったんでしょうねぇ?」

「……」

「きっとあんたが栗山ひなが相沢裕紀の娘だと知ったら才能もないのにプロデューサーになろうとするのが目に見えてたから教えなかったんじゃないですかねー。あんた最高の獲物を捕らえられなかったですねぇ。う〜ん。やっぱあんたはもう運から見放されてる感じがしますねぇ。どうです?そう思いません?」

「……」

(確かに…そうかもな…)

京の言葉を聞いて吉田はそう思った。

(京の言う通り俺は才能も何もなかったのに運だけは良かった。

トオルから自分の代わりにエルヴァンのプロデューサーになってほしいと頼まれた時、俺は断るべきだったんだ。俺にそんな才能はない、と。

最初はわかっていた。俺に音楽の才能がない事を。相沢やトオルがいたからプロになれた事を。俺なんてサザンクロスにいてもいなくても変わりがない事を。最初は自分の力量がわかっていた。

それなのに……

プロデューサーの才能もないくせにいつしか俺はまるで自分の力でエルヴァンを国民的ロックバンドに導いたと勘違いし始めてしまった。トオルの代わりのくせに。才能も何もないくせに。

俺は…それを忘れて自分自身才能がある人間だと勘違いしていた…

きっとあの時、沙耶がLOVELESSの4人を連れて来た時、あの時に栗山ひなが相沢の娘だと沙耶が俺に知らせていたら…俺は京が言うように彼女のプロデューサーになろうとしただろう…)

「運だけ良いあんたの運を最後に奪ったのは俺じゃねー。黒崎沙耶だよ。あんたに栗山ひなの正体を教えなかった事が運の尽きだったって思いません?」

(…そうか……もう……潮時、か…)


19


2015年12月24日(木) 17時30分


――3時間程前。


雪が降り積もる中、佐倉みなみは家を出てすぐ近くのバス停に向かった。

しかし、バスの到着時刻を過ぎても一向にバスが来なかった。それどころか雪の影響とクリスマス・イブという条件が重なって道は車で渋滞している。

(ふぅ。これは歩いた方が早いかも…)

みなみはバスに乗る事を諦めて歩き始めた。しかし、雪のせいで思う様に歩けなかったし、いつも以上に体力を消費した。柴咲市民ホールまではずっと上り坂が続く。急にみなみは不安になった。

(このまま歩き続けるのは危険だ。)

5分くらいが経過した時、みなみはどのくらい進んだのかを確認する為に後ろを振り返った。

(全然進んでない……やっぱり戻るべき?だけど次のバス停まで行くのと戻るのとは同じくらいの距離だ。とりあえず次のバス停までは歩いてみよう。)

みなみはまた歩き始めた。

雪が積もっているせいでいつもより足を上げないといけない。

それだけでみなみの体には負担が大きかった。

息が荒くなる。

額から汗が流れ始める。

少し休もう――みなみがそう思った時、目に映る景色が歪み始めた。

目眩がして体が左右に揺れ始めた。

そして、みなみは降り積もった雪の上に真っ正面から倒れ込んだ。


     *


間宮トオルが仕事を終え店を出るともうすぐ雪は降り止みそうだった。

「クリスマス・イブコンサートは無事終ったのかねぇ。」

短い階段を上りきるとオレンジがかった外灯の明かりに降り積もった雪が反射してとても綺麗だった。間宮は寒さに凍えながらもはらはらと舞い降りてくる粉雪を見上げ呟いた。

「ホワイトクリスマス、か。」


『ねぇ、見て見て。雪、降って来たよ。これって奇跡じゃない?』

『奇跡?』

『だって今日はクリスマスだよ。クリスマスに雪が降るなんて今までなかったよ。ホワイトクリスマス。これはもう奇跡だよ。』

ひかりはそう言ってくるくるとまわり出し嬉しさををダンスで表現した。その姿は妖艶で、その微笑みはとても悲しそうだった。

間宮が雪と一緒に舞うひかりの姿を見つめているとひかりは間宮の横に並び、左手を夜空にかざして「綺麗。」と言った。

ひかりの左手の薬指にはさっき2人で買いに行ったペアリングが嵌められている。

間宮はひかりの横顔を見つめた後、夜空を見上げた。

薄闇の中からふわふわと降って来る雪はオレンジがかった外灯の明かりを受けて反射する。

ひかりは夜空を見上げたまま間宮の肩に頭を乗せた。

『綺麗。幻想的だなぁ。』

間宮は夜空を見上げたままひかりの肩を抱き寄せた。

『ああ、これはもう奇跡だ。』


大学生活最後のクリスマス。

ひかりの最後のクリスマス。

それはとても綺麗で幻想的で奇跡的なホワイトクリスマスだった。



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今、想う


10月22日


みんなが私をバンドの一員と言ってくれた。

私なんかを仲間だと言ってくれた。

私、本当に嬉しかった。

カメラが壊れてなかったら、この可愛いキーホルダーを写真に撮ってここに貼るのになぁ。



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