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The Voice  作者: 幸-sachi-
The Voice vol.2
42/59

Episode 8 ―好きだからこそ―

(5月29日……俺達が4人でバンドを組んだ日。そして、俺と君が知り合った日。俺は今までそう思ってた。俺はこの日を境に君を意識し始めて、君もこの日を境に俺を意識し始めたと思ってた。

だけど…違ったんだね。君はもっと前から俺の存在を知っていて俺の事を好きでいてくれてたんだね。俺、この日記を読むまで知らなかったよ。この日記を…いや、君の声を俺に届けてくれてありがとう。)

この日の日記にはルナで撮った集合写真が貼られている。

男はそっと写真の中に映る彼女の笑顔に触れた。



2015年8月30日(日)


13時。橘拓也と龍司は新横浜に着いた。

「みなみにLINEしてみる。近くにいるはずなんだけどな。」

「ああ。頼む。みなみも結衣もわざわざここまで迎えに来なくてもいいのにな。」

「俺は嬉しいけどな。龍司は?結衣ちゃんがわざわざ迎えに来てくれて嬉しくないのか?」

「俺は別に。」

その言葉とは裏腹に一瞬だけ龍司が嬉しそうな笑みを浮かべたのを拓也は見逃さなかった。

数分後には拓也達の元にみなみと結衣がやって来て4人は合流した。

「おかえり。拓也君。」

「ただいま。」

拓也とみなみが言葉を交わすとすぐに龍司が、

「じゃあ、結衣。俺達はもう行こうか。」

と言って結衣と2人去って行こうとした。

「龍司。どうして別行動なんだよ。」

「はあ?俺と結衣はこれから用事があるんだよ。じゃあな。」

龍司の後ろ姿を見つめた後、みなみは拓也を見上げて微笑んだ。

「優しいよね。龍司君。」

「龍司の奴、俺達に気を使ってくれたのか?」

「かもね。でも、違うかもしれない。」

「どういう事?」

「さあ?」

「みなみは何か知ってるのか?」

「知らないよん。でも、結衣ちゃんの気持ちならわかる。きっと2人で帰りたがってた。」

「そう、か。」

拓也は遠くなった龍司の背中を見た後、反対方向に向きを変えて歩き始めた。

「みなみ昼は食べた?」

「ううん。食べてない。そうだ!お弁当作って来たんだ。どっかで食べない?」

「みなみの手作り!?最高!」

拓也とみなみは小さな公園を見つけてそこでお弁当を食べる事にした。

「俺達が到着するまで結衣ちゃんと何をして時間を潰してたの?」

「買い物。途中で結衣ちゃんがオシャレなカフェに入りたそうにしてたけど、私に気を使ってそういう店には入ろうとしなかった。なんか気を使わせてしまって申し訳ないよ。」

「申し訳ない、か。俺にはそんな事思わなくていいからな。」

「…うん。」

みなみは悲しそうに答えてから、そうだ。と言って鞄から水筒を取り出した。

「食後に特製コーヒーあるからね。」

「おおっ!最高っ!それよりみなみ。みなみのお弁当箱小さくないか?そんなので足りるのか?」

「うん。足りるから大丈夫だよ。」

「そっか。でも、朝早く起きてお弁当を用意してくれてたんだね。」

「そんなに早く起きてないから大丈夫だよ。」

「ありがとう。」

「改まらないでよ。恥ずかしいじゃん。」

みなみの作ったお弁当を食べ終わると、みなみは準備していたコップを取り出しコーヒーを注ぎながら言った。

「私ね。9月一杯でバイトを辞める事にした。」

「えっ!?」

拓也はみなみの顔を覗き込むとみなみは顔を見られない様に立ち上がった。

「ちょっとバイトするのも疲れが出て来ちゃったから。働けないわけじゃないんだよ。でも、迷惑掛ける前に辞めた方がいいかなって思って。」

「マスターには?」

「伝えた。」

「…そっか。みなみ。」

「うん?」

「バイト、しんどかっただろうによく頑張ったね。」

「……」

「ご苦労様でした。はい。これ、大阪のお土産。」

みなみは目を赤くしながら、

「やめてよ。まだ来月も2回だけだけどバイトするんだから。」

と言って拓也が買って来たお土産の袋を手に取り反対側を向いて袋から中身を取り出した。

「なにこれっ。手ぬぐいだ。可愛いなぁ。」

「お土産買う時間がなくてさ。そんなのでごめんな。」

「ううん。嬉しいよ。私の事を思いながらお土産を選んでくれてたんだと思ったら何だって嬉しいし。」

そう言ってみなみは振り向いた。みなみの目からは涙が流れていた。

「ありがとね。嬉しいよ。」

「……それなら、良かったよ。」

拓也は今日みなみと会ったら体調の事を聞こうと思っていた。しかし、拓也はみなみに体調の事を聞く事が出来なかった。なぜなら今まではみなみの体調が本当に大丈夫なのか大丈夫じゃないのか拓也には判断が出来なかったからだ。しかし、今、拓也はわかった。

間違いなくみなみの体調は悪化している。LINEで送ってくれた写真だって元気そうに映っている写真を送ってくれていたがそれはあくまでも、元気そう、な写真だった。

みなみは拓也に心配を掛けないようにと無理に笑顔を見せ、元気なフリをし、拓也に心配を掛けないようにしてくれていた。しかし拓也は大丈夫ではないのなら大丈夫じゃないと言葉で言ってくれるようになってほしいと思っていた。

(本当に体調が悪いなら悪いと言ってくれた方がいいと俺は今まで思っていた。だけど、それは違うんだ。

みなみは俺の事を好きだからこ元気なフリをして心配を掛けないようにしてくれていた。そんな事も気付かずに俺は本当の事を言ってくれなくて余計に心配をしてしまうと思ってしまっていた。みなみに体調が悪いなら悪いと言ってくれと言葉にするのではなく俺はみなみの事を好きだからこそ、みなみのその思いを尊重しなければならないんだ。

みなみが本当の事を言わなくても俺はみなみの事を理解して精一杯みなみの事を想い、心配して、そして愛し続ければいい。)


     *


「ねぇ、龍ちゃん。どこ行くのぉ!」

「あぁん!?帰るんだよ。」

「もう帰るの?」

「そうだよ。俺は疲れてんだ。」

「結衣と何か用事があったんじゃないのぉ!?」

「あるわけねーだろ。拓也とみなみを2人っきりにしてやったんだよ。」

咲坂結衣は少し期待していた。拓也とみなみを2人っきりにする為にではなく、龍司は結衣と2人っきりになりたくて用事があると言ってくれたのかもしれないと。

「…そっか。そうだよね…」

結衣は電車の中でみなみの言葉を聞いてから龍司と会うまで今日龍司に告白をしようと心に決めていた。しかし、今の会話で結衣は心が折れた。

(龍ちゃんは結衣の事を女として見ていない。きっと妹としか見ていない。

もし、ここで結衣がはっきりと龍ちゃんに気持ちを伝えたら今までの関係は終っちゃう。この関係を壊してまで告白なんてする勇気はない。

告白してフラれてしまったら…結衣は今まで通り龍ちゃんと接する事は出来なくなる。龍ちゃんだってきっとそうだ。

告白して失敗したら結衣は必ず告白した事を後悔しちゃう。

好きだからこそ。嫌われたくないからこそ。今の関係を壊したくないからこそ。

気持ちは伝えられないよ……

サクラちゃんはそれでも本当に好きなら告白出来ると言うのだろうか?

結衣は…気持ちを伝えなかった事をこれから先の人生で後悔しながら生きていくのだろうか?)

歩いている間も電車を待つ間も結衣は俯き、そんな事ばかりを考えていた。そんな結衣の気持ちを何も知らない龍司は「なんだよ。元気がねぇな。」と言いながら電車に乗り込んだ。結衣も龍司の後に続き電車に乗り込み心の中で、龍ちゃんのせいだから。と呟いた。

結衣は龍司の事が好きだからこそ告白する事を諦め、きっとこの決断は正しかったのだと自分に言い聞かせた。

(龍ちゃんはこれから凄くなっていく人なんだ。だから、今の結衣みたいな普通の一般人じゃダメなんだ。もっと結衣が成長したら…龍ちゃんは振り向いてくれるかな…)

龍司の隣の席に座った結衣が泣きそうになっている事も気付かずに龍司は鞄の中を探り何かを探していた。結衣は龍司と別れるまで涙を流さないようにする為に龍司が座る右側は見ない様にして何も考えずに左側の窓から見える外の景色を眺めた。すると龍司は、んっ。と言って今鞄から取り出した小さめの箱を結衣の膝の上に置いた。結衣は膝に置かれた箱を手に持ち「なに?」と聞いた。龍司は結衣の視線から目をそらして「待たせて、悪かったな。」と真剣な眼差しで結衣とは反対の方向を向いて言った。

「お土産?」

「まあ、そんなところだ。」

結衣が箱の中身も見ずに「そっか。嬉しい。」と囁くと龍司は「その言葉は中身を見てから言うんだよ。」と不機嫌そうに言った。お土産にしては小さすぎる気もする箱を開けていると龍司は何故か結衣が箱を開ける姿をチラチラと見ていた。

(龍ちゃん。さっき待たせて悪かったなって言った?結衣はそんなにお土産を待ってたように見えたのかな?)

龍司のその視線を受けて結衣は妙に緊張をしてしまって、なかなか箱を開けられなかった。

「貸してみろ。俺が開けてやるよ。」

そう言って龍司が結衣から箱を取り上げて中身を取り出した。

「えっ?えっ?え?時計?」

「そうだ。腕時計だ。どうだ?嬉しいか?」

「めちゃくちゃ嬉しい。けど、これ…大阪じゃなくても買えるんじゃ…」

「そうかもな。」

「どうして大阪土産が…腕時計だったの?」

「お前…本気で土産だと思ってんのか!?」

「えっ?だって龍ちゃんが…」

「バカかっ!大阪土産で腕時計なんか買って来るバカがどこにいるんだよっ!プレゼントに決まってんだろ!」

「どうして?どうしてお土産じゃなくてプレゼントを買って来てくれたの?」

「なんだよ?俺がプレゼントしたらおかしいのかよ?」

「おかしいよ。今まで結衣、龍ちゃんからプレゼントなんて貰った事ないもん!」

「失礼な奴だな…でも、そうか…土産はあってもプレゼントなんてした事なかったか。ま、これからはちゃんとプレゼント買う様にするわ。」

龍司はそう言って結衣の腕を持ち腕時計を嵌めた。

「それってどういう意味?」

「意味なんかねぇよ。」

「そっか…そうだよね。」

(少し期待してしまったけどこのプレゼントには意味なんかない。

そらそうだよね。だって龍ちゃんは結衣の事を妹のような存在としか見てないんだもん。)

「ただ、そうだな…記念日や誕生日はちゃんと出来ねぇかもしれねーけど、ま、よろしく頼むわ。」

「えっ!?」

(えっ!?えっ!?どういう事?どういう意味?誕生日はともかく記念日ってなに!?)

結衣は龍司の言葉の意味がわからなくて混乱した。そして、思考は停止して体は固まった。

「柴咲駅に着いた。おい結衣。何してんだ。さっさと降りんぞっ!」

結衣は龍司に肩を支えられながら電車を降りた。呆然とホームに立ちながら言った。

「龍ちゃん。どういう意味?ちゃんと言葉にして教えてよ。」

龍司は頭を激しく掻きながら叫ぶ様に言った。

「なんでわかんねーんだよ。今、俺と結衣は付き合ったんだよ。なんでそんな事もわかんねーんだよ。」

「えっ!?え?エッ?いつそんな話になったの!?」

「今だよっ!」

「今?今っ!?どのタイミングで??えっ?今、結衣は…龍ちゃんの恋人になったの!?」

「そうだよっ!」

「えっ!!い、いつ?」

「だから今だよっ!」

「い、ま?」

「そうだよっ!記憶力ねーのかよっ!」

「結衣…龍ちゃんから告白されたの?」

「そうだよっ!」

「龍ちゃんは…結衣の事を好きだから腕時計を買って来てくれたの?」

「そうだよっ!」

「結衣…龍ちゃんと付き合う事になっの?」

「だからぁ!そうだよっ!」

龍司がそう言った瞬間、結衣の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。

「そ、そっか。結衣、龍ちゃんと付き合えるんだ…今まで…今まで片思いと思ってたのに…もう、諦めようと思ったのに…龍ちゃんの恋人に…なれるんだ…嬉しい…嬉しいなぁ…生きてたら…こんなに良い事起こるんだねぇ…」

龍司は結衣の頭を持ち抱き寄せた。

「俺にはお前が必要みたいだ。」

「な、涙が…嬉しすぎて涙が止まんないよぉぉぉぉ…」

龍司がプレゼントを渡す時に言った『待たせて、悪かったな。』という言葉の意味を今になって理解する事ができた結衣は涙が枯れるまで泣き続けた。


     *


夜の11時30分。そろそろ結城春人が眠ろうとベッドに入った時スマホが鳴った。

(こんな時間に誰だ?)

春人は眼鏡を掛け、スマホを手に取った。

–ハルに頼みがある–

(龍司からか。ん?グループLINEじゃなくて俺個人に送ってきたのか。)

LINEにはそれだけ書かれていて続きの文章はまだ送られて来ていない。

(龍司が俺に頼み?)

数秒後、また龍司からのLINEが入った。

-大阪で俺達ライブをしてきた。その動画を配信してほしい-

(グループLINEだと思って龍司はLINEを送って来ているのか?)

-それは構わないがどうしてグループLINEじゃなくて俺だけに送ってるんだ?–

春人は龍司が今グループLINEで送っているつもりが春人個人に間違ってメッセージを送ってきているものだと思いそう聞いたのだが、また数秒後龍司からその返信が届いた。

--真希と凛には内緒で動画を配信してほしいからグループLINEは使ってねーんだ。-

(なるほど。そういう事か。)

続けて龍司からまたLINEが届いた。

-動画はハルのPCの方にさっき送っておいた。編集やらはハルに任せる。急ぎじゃないからゆっくりやってくれていいがくれぐれも真希達には内緒で頼む-

(タクと龍司に内緒で動画をアップしたその仕返しを龍司達も用意していたわけか。)

-わかった。動画を確認したらまた連絡する-

と返信をした後、春人はベッドから出てパソコンの前に座った。パソコンには龍司が言った通り動画が送られてきていたが、その動画は2時間近くもあり春人はため息をついた。

(2時間をせめて20分以内にしないとな。それより、まずは2時間全部動画を見ないといけないのか…)

春人はさっきよりも大きなため息をついた。

(動画の内容はタクと龍司が大阪で路上ライブでもやった動画を撮ったのだろう。)

春人はそう想像して動画を再生した。

(ん?ライブハウス?1、2、3、4…ステージ上に7人?まさか、まさかまさか…この真ん中に立って歌っているのは…サザンクロスの相沢裕紀!?)

春人は一時停止ボタンを押してすぐに龍司に電話を掛けた。

春人は電話で龍司から相沢裕紀と共にライブをした事、女性ガールズバンド『ホワイトピンク』の事、ホワイトピンクのボーカル与田は拓也と共に相沢からボイストレーニングを受けていた事、ドラムの遥はひなと以前バンドを組んでいた事、そして、彼女達ホワイトピンクは今年の柴咲音楽祭に出演する予定のライバルである事を聞いた。電話を切る際、龍司はこの動画はどの部分を使ってもいいと相沢やホワイトピンクからは許可をもらっている事を告げ、どういう風な形で配信するかは春人に一任する事を告げた。

電話を切った後、春人は真剣な眼差しでライブの様子を見始めた。動画の中で歌う相沢の歌声は拓也ですら圧倒する程だった。

(生で聴いたら相沢裕紀の歌声はこれ以上なんだろうな…タクもたった2週間で歌が上手くなってる。それにこの与田芽衣って子もタクや相沢裕紀と共に歌っても見劣りしないのは凄い事だ。)

2時間もある動画を全て見ないといけないのかとため息をついたはずなのに気が付けば春人は時間を忘れあっという間に動画を見終えていた。

(2時間の動画全てを配信したいところだ。だけど、見る側からすれば短い動画の方が見やすい。この2時間を最低でも20分以内にしないといけないのはもったいない気はするが見やすさを優先した方がいいだろうな。でも、どの部分を使う?

とりあえず、まず最初にタクや龍司の事、相沢裕紀やホワイトピンクの事を話しているところがあったからそこを使わないといけない。それからライブの最後にタクと龍司と相沢裕紀が3人でサザンクロスの『声』を披露した部分は必ず使おう。となるとあと1曲か2曲に収めた方がいいか。でも、どの曲も捨てがたいな。どこを使えばいい?)

春人は数時間どの曲を動画配信に使うかを悩んだ末、サザンクロスの『声』とThe Voiceの『太陽』とあともう一曲はホワイトピンクの曲を選んで動画の編集作業を始めた。



2015年8月31日(月)


「今日でもう夏休み最後かぁ〜。」

ルナへ向かう途中、龍司がそう言ったので白石凛は「夏休みあっという間だったね。」と答えた。

夏休み最後の今日、凛は真希のおばあさんとゆっくり過ごすつもりでいた。しかし、今朝になって急に真希からルナに集合する事と今晩路上ライブをする事をLINEで告げられた。ルナでの集合時間は13時だった。30分前に真希の祖母の家を出ると丁度ルナに向かう途中の龍司と出会って今共にルナに向かっている。

「そうだ。凛。俺と結衣な…」

「付き合う事になったんでしょ?昨日結衣ちゃんから電話あって聞いたよ。」

「そ、そうか。」

「今日、結衣ちゃんバイト入ってるから、真希達が先にルナに着いてたら、もう結衣ちゃんから聞いてるかもね。」

「そうだな。てか、凛。お前この2週間で敬語やめれたんだな。」

「そうだよ。敬語使うと真希、怒るし。」

「耳の特訓の方は?」

「そっちは相変わらず。どうしても演奏者の感情が入って来ちゃう。」

「そっか。」

「龍司君。私、どうしたらいいかな?」

「あん?俺に聞かれてもなぁ。」

「だよね。」

「耳栓でもしてろよ。」

「んっ?耳栓?」

「冗談だよ。」

「そっか!その手があった!」

「…だから、冗談だって…そんなもんで感情が入って来ないわけがねぇ。」

「ありがとう龍司君!良い事聞いた。私、百均寄ってからルナに向かうよ!」

「………そ、そか…わ、わかった。真希達には伝えておく。」

「うん!」


     *


「龍ちゃんとお付き合いする事になりました。」

姫川真希がルナに着くなり結衣がそう言って真希はぽかんと口を開けていた。続いて拓也がルナに到着すると結衣はまた拓也にも「龍ちゃんとお付き合いする事になりました。」と嬉しそうに伝えた。拓也も真希同様にぽかんとした顔を見せ口を開けたまま驚いていた。その後すぐに春人も店にやって来て結衣はまた同じ言葉を春人に言った。春人も真希と拓也同様口を開けて驚いた。春人が真希と拓也と違うかったのは「驚いたよ。おめでとう。」と感情はなかったが言葉を放った事だった。

「春人くん。本当に驚いてる?おめでとうって心から言ってくれてる?」

「ごめんごめん。昨日寝てなくて疲れてるんだ。だけど、本当に驚いてるしおめでとうって心から言ってるよ。」

「そっか。みんなもっと驚いてくれると思ったのにザンネン。」

「驚き過ぎてリアクションに困っただけよ。拓也も驚いてたけど結衣はまだみなみには付き合った事を言ってないの?」

「うん。サクラちゃんに言ったら結衣が発表する前に拓也くんに知られちゃうし。結衣は一人ずつ自分で伝えたかったから。」

「…そう。そんなに結衣はあのバカと付き合えた事が嬉しいの?」

「もちろん。ず〜っと片思いだったんだもん。」

そう言って結衣はスマホを取り出しバイト中にも関わらず誰かに電話を掛け始めた。電話の相手はみなみだった。

「あ、もしもしサクラちゃん。うん。バイト中だよ。ちょっと報告する事があって。」

結衣がみなみと電話をしている間、真希達は6人が座れる丸テーブルに腰を掛けて楽しそうに電話で話す結衣の姿を3人揃って見つめた。

「あのバカには結衣ちゃんはもったいない気がするわ。」

真希が肘を付き独り言を言うように呟くと拓也と春人は同時に深く頷きながら、確かに。と2人同じ言葉を呟いた。

しばらくすると龍司もルナにやって来て「凛とそこで会ったけど百均に寄ってから来るってよ。」と言った。

「おめでとう。」

拓也と春人が同時に龍司に言うと龍司は照れた様子もなく、ああ。と答えたので今のおめでとうという言葉が結衣と付き合った事に対しての言葉だと龍司はわかっていたのだろうかと真希は疑問に思った。

「で、凛はどうして百均に?」

龍司は真希の質問に答えずに、

「なんだよ。飲み物頼んでねぇーのかよ!?お前らアイスコーヒーでいいよな?」

と言って水を5人分用意し始めた。そして、電話している結衣に、

「おい結衣!アイスコーヒー5つな。」

と言うと結衣は満面の笑みを浮かべて手を上げた。真希は龍司が水を用意し始めたのでそれを手伝うと、

「凛は百均で耳栓を買って来るってよ。」

と龍司が告げた。真希はどうして凛が耳栓を買いに行ったのかわからなくて、耳栓?と聞き直した。

「ああ。どうしても演奏者の感情が入って来るって言ったから耳栓でもしてろって冗談で言ったら凛の奴本気にしちまった。」

「…そう。耳栓なんかしても変わらない気はするけど…」

「俺もまさか本気にするとは思ってなかったんだけどよ。」

水を持って席に着くと真希と龍司の会話を聞いていた春人が、

「でも、色々と試してみる価値はあるだろう。」

と言った。隣に座る拓也も深く頷いている。

「そうね。何もしないままじゃ凛の耳は変わらないものね。」

いつの間にか電話を終えていた結衣がアイスコーヒーを5人分持って来た時、タイミング良く凛も店に入って来た。凛は店に入るなり結衣に、おめでとう。と声を掛けた。結衣は照れながら、電話でも聞いたよぉ。と答えたが凛は直接もう一度言いたかった事を結衣に告げていた。そして、席に座るなり凛は龍司にも「おめでとう。」と言った。龍司はこの時も照れた様子もなく、ああ。と答えていた。

「それと、私、明日から名字を一ノ瀬に戻す事になりました。」

凛は名字が白石から一ノ瀬に戻る事を告げた。それは朱里と白石が離婚する事が決まったという事を同時に告げていた。真希は昨日の夜に祖母から凛と凛の母朱里が家にやって来た事を聞き、凛は9月中旬に祖母の家から出るという事を聞いていたので名字が一ノ瀬に戻る事を聞いても驚きはしなかったが、拓也と龍司と春人の3人は驚いていた。この時、結衣は驚いた表情を見せなかったので、昨日の電話で凛は結衣にその事を話していたのだろうと真希は思った。

「そっか。良かったね。凛。」

拓也が笑みを浮かべてそう言うと凛は嬉しそうに、うん。と頷いた。

「ところでヒメ。今日は路上ライブは休みのはずだったのに急にどうしたんだよ?」

「急に5人で楽器を使って路上ライブをしときたくなってね。それで呼び出した。どうせみんな今日は予定なかったんでしょ?」

「俺はなかったけど、タクも龍司も最後の夏休みの日なのに大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。龍司は予定外だったけど、みなみと拓也は今日会う予定してなかったものね。」

「なんで真希はそんな事を知ってんだよ。」

「あんたとみなみがデートだったら呼び出すのをやめようと思って先にみなみに連絡入れたの。今日みなみは調子悪いの?」

「調子悪いとは言われなかったけどゆっくりしたいって言われた。まあ、調子が悪いんだろうな。」

「そっか。もし心配ならこれからみなみの元に行ってもいいわ。」

「大丈夫。明日また会う予定してるから。」

「そう。あ、そうだ。今日、大田君に頼んでまた動画を撮ってもらう予定。今日の動画はメインチャンネルで更新しようと思ってる。」

アイスコーヒーをもう飲み終わった龍司が聞いた。

「今日の動画から本格的にメインチャンネルを更新していくって事か?」

「そのつもり。みんなはそれでいい?」

真希の問いに全員が頷いた。

「そうだ龍司。私達の楽器は今私の祖母の家に置いてるの。龍司はどうする?」

「路上ライブはスネアドラムだけでいいよな?」

「そうね。」

「なら別に家から運べるからいいよ。コーヒーも飲み終えた事だし俺、ちょっくら取りに行ってくるわ。」

龍司が店を出てから結衣が、

「もしよかったら楽器ここに置いていってもらってもいいですけど。」

と言ってくれたが真希はその申し出は断った。何故なら路上ライブをする時、楽器を祖母の家に置いていれば祖母と会う事が出来るからだ。9月に入って凛が家を出て行ってしまえば祖母は真希が出て行った時と同じ様に寂しがってしまうだろう。定期的に真希や凛が祖母の家に訪れば祖母も寂しくないし喜んでくれると考えて楽器は祖母の家に置いておきたいと真希は思っている。

その後、龍司がルナに戻って来たのと入れ違いに真希と凛と春人の3人が真希の祖母の家に行き楽器を取りに行った。3人がルナに戻ると太田と太田が誘った相川と五十嵐もルナに到着していた。

相川は龍司と結衣が付き合った事を聞き、やっとお前も俺に追いついたか。と言って大笑いをして龍司を挑発をしていたが龍司はその挑発に乗らなかった。その様子を見て真希は恋人が出来ると人間としての余裕も生まれるのねと心の中で呟いていた。


     *


路上ライブ開始6時前になって橘拓也達5人はいつもの様に円陣を組もうとしたが、龍司はスマホを操作していてなかなか円陣を組もうとしなかった。拓也は龍司が結衣とLINEでもしているのだろうと思った。

(結衣ちゃんと付き合い始めたのに、さっき龍司はあんまり結衣ちゃんと話してなかったもんな。こんな感じで龍司も今まで以上にスマホを見る回数が増えていくんだろうな。)

スマホを見終えた龍司は、よし。と言ってから「円陣を組むぞ。」と言った。真希も春人も凛も黙ってスマホを見ていた龍司には何も言わなかった。みんなは結衣とのLINEが終るまで待ってあげようと思っていたのだろう。しかし、この時、龍司は結衣とLINEをしていたわけではなかった。

拓也達が円陣を組み龍司を見つめ、いつもの言葉が出るのを待ったが龍司の言葉はいつもと違った。

「お前達The Voiceのサブチャンは今日見たか?」

「なによ急に。掛け声はどうしたの?」

「掛け声は後だ。真希はサブチャン見たか?」

「今日はまだよ。」

「凛は?」

「うん?まだだよ。」

「そうか。じゃあ、路上ライブが終ったら見ろよ。」

真希と凛は顔を見合わせた。拓也は春人の方を見ると春人は頷いた。

(ハル。もう大阪のライブを配信してくれたのか。そう言えばさっき昨日寝てないって言ってたのは動画の編集作業をしてくれていたからなのか。)

「まさか私達に内緒で何か動画配信したわけ?」

「仕返しだ。」

そう言って龍司はベロを出し「楽しもう!」と言った。拓也達4人はその言葉に出遅れていつもの様に力の入った返事をする事が出来ないまま円陣を解いた。

「変な動画配信してないでしょうねっ!」

「大丈夫だよ。ヒメ。見たらわかるよ。」

「フンっ。気になって集中できないわ。」

「休憩中にでも見ればいいだろう。45分は集中しろよ!」

「誰のせいよ!ライブ終ってから言えば気にならずに済むものをなんでライブ前に言うのよ!」

「まあまあ、落ち着けよ真希。そろそろ路上ライブ始めっぞ。」

「なんかその落ち着いた感も腹立つわ。」

真希は龍司を睨んだままバイオリンを構えた。

拓也はいつもの位置に立つと既に数人の人達が路上ライブ開始を待ってくれていた。

(この2週間真希達が路上ライブを続けてくれたおかげでライブ開始前に人が集まってくれている。楽器を使ったのは正解だったのかもな。でも、今日真希達は路上ライブをしない事を伝えていたはずなのにな…)

そう思っていると横にいる春人が拓也に、

「今日の動画の最後に路上ライブをする事を告知したんだ。それを見て来てくれた人達だと思う。」

と声を掛けて来た。

「なるほど。さすがハル。どうして今日路上ライブをするって言っていないはずなのに集まってくれたんだろうって思ってたんだよ。」

「あんた達、そういう事は休憩中に話してよ。さっさと始めるわよ。」

真希の鋭い睨みが龍司から拓也達に移ってきたので拓也は急いで、ごめん。と謝ってから歌う準備が出来た事を手を上げて4人に伝えた。


     *


佐倉みなみは真希から今日のライブは配信するからと聞いていたが、やっぱり生で見たいと思い今晩の路上ライブを見に行く事に決めた。

-もし今晩デートの予定がないのなら拓也を貸してほしいんだけど。-

そんなLINEが届いたのは今朝早くだった。拓也とは本当は今日会う予定をしていた。しかし、昨晩から体の調子が悪くて昨晩のうちに拓也にその事を伝えて今日会う予定をキャンセルしてもらった。

(拓也君には悪い事をしたし体調も良くなってきた、と思う。だから路上ライブを見に行ってみよう。)

着替えを済ませたみなみはカメラを持ち、ゆっくりと階段を降りた。

そこまでの記憶はあるのだが、その後の記憶はみなみにはない。

気が付けば真っ暗な病院のベッドの上で眠っていて目を開けた瞬間ここが病院だとわかった。横には椅子に座りながら眠っている父と母の姿がありレンズが割れて壊れてしまったカメラがベッドサイドテーブルに置かれていた。

(な、なに?なにが起こったの?)


     *


間宮トオルのスマホが鳴った。ディスプレイには黒崎沙耶の名前が浮かび上がっていた。

「ったく。何時だと思ってんだよ。」

午後11時58分。間宮は電話に出るか悩んだ末、舌打ちをしてから電話に出た。

「なんだ?」

『なによ。機嫌悪いわね。』

「もう寝ようと思ってたところで電話が鳴ったら機嫌も悪くなる。」

『無視すれば良かったのに。』

「そうか。じゃあ、切るぞ。」

『ちょっと。ちょっと待ってよ。』

「用件はなんだ?」

『今晩店行きたかったんだけど…』

「月曜は休みだ。じゃあな。」

『だから待てって!まだ話の途中なのっ!今晩店に行きたかったんだけど、月曜でブラー休みだし電話で済ませようと思って電話掛けたの。』

「だから、用件はなんだ?」

『なによっ!じゃあ、また今度店に行った時に話すわよっ!』

「今話せよっ!気になるだろう!」

『もうっ!どっちよっ!』

「ひな達の事で忙しくてここに来る余裕なんてないんだろ?」

『わかってるんなら話すわよ。』

「ああ。」

『長くなるかもよ。』

「別にいい。」

『話聞いたら眠れなくなるかもよ。』

「構わない。」

『そ、じゃあ話すわね。』

そう言ったにも関わらず黒崎はなかなか話し出さなかった。間宮はやっぱり電話に出なきゃ良かったなと後悔をした。

「さっさと話してくれ。さもないと切るぞ。」

『まず、そうね。今日配信されたThe Voiceの動画はもう見た?』

「拓也達の動画?」

『うん。』

「見てないが。」

『じゃあ、見て。』

「電話を切ったらな。」

『なによっ!』

「拓也達の動画がどうかしたのか?」

『ネタバレになるけどいい?』

(なんのネタバレだよっ!)

「ネタバレでも何でもいいから言えよ。」

『拓也君?と龍司君?がホワイトピンクっていうガールズバンドと一緒にライブをやってる動画を配信したのよ。』

「そうか。拓也と龍司は昨日まで大阪にいたからそのホワイトピンクっていうガールズバンドは知らないが大阪の子達だろうな。拓也の知り合いか裕紀の知り合いなんだろうよ。」

『あれ?トオル知ってたの?」

「知ってるも何も俺が裕紀に拓也のボイストレーニングをしてやってくれって頼んだんだ。」

『そうだったの。なんだぁ。じゃあ、相沢君がそのライブで歌うって事もトオルは知ってたのかぁ〜。』

「なにっ!?裕紀が歌ったのかっ!?その動画で歌っているのか?」

『えっ?知らないの?』

「ライブをした事すら聞いていない。」

『そう…そっか!じゃあ、驚くわよ。相沢君、全然声は衰えてないんだから。』

「…もう既に驚いてる…そうか…裕紀がライブを…もう、あいつは人前で歌わないものだと決めつけていたが…そうじゃなかったんだな…」

『拓也君達が相沢君の心を動かしたのかもね。ホワイトピンクのボーカル、与田ぁ〜…なんだったっけかなぁ名前…ちゃんと動画内で名前書いてくれてたんだけど忘れちゃった…まあ、その与田なんたら子ちゃんも歌がうまかったし。LOVELESSも動画サイト開設しなきゃって思ったよ。』

「そうか。じゃあ、動画を見てみる。わざわざ連絡すまなかったな。」

『ちょっと待て。話はこれだけじゃないのよ。』

「なんだ?まだあるのか?」

『そうよ。まだあるのよ。だから長くなるかもって言ったでしょ!』

「次はなんだ?」

『The Voiceの動画を編集しているのは誰?』

「確か真希、いや、今は春人か。」

『私、動画の編集やらを学びたいの。私の連絡先彼に教えておいてくれないかな。』

「それなら真希の方がいいかもな。」

『姫川さん?ま、教えてもらえるなら姫川さんでも春人君でもどっちでもいいんだけど。』

「一応、真希に言っておく。じゃあ、もういいか?」

『まだよっ!』

「まだ何かあるのか?」

『そうよ!まだあるのよ!』

「さっさと話せ。」

『ムカつくなぁ〜。』

「なら切るぞ。」

『この前、吉田と会ったわ。あとエヴァの4人にもね。』

「…そうか。そう言えばひな達をレディオに連れて行くって言ってたな。吉田は元気そうだったか?」

『ムカつくけどあいつは元気だったわ。ヒナを相沢君の娘と知らせずに会わせてやった。あいつヒナの歌声聴いて驚いてたわ。もちろんエヴァの4人もね。』

「だろうな。あいつらは元気なのか?」

『エヴァの4人?そうね。元気そうだったわ。でも、持田はトオルの事を急に逃げ出した臆病者と言っていた。』

「その通りだ。言い返す言葉もない。」

『…そう。でも、私はきっとトオルが突然プロデューサーを辞めたのには理由があると思ってるわ。』

「……」

それから黒崎はひな達LOVELESSがエルヴァンに喧嘩を売ってしまいデビューシングルをエルヴァンの新曲発売日と同じ日に発売して売り上げで勝負をする事になった事を間宮に告げた。間宮はどうしてそんな話になるんだと不思議だったが、話が長くなってきていたので詳しくは聞かない事にした。間宮がそろそろ電話を切る方向に話しを繰り出すと黒崎は間宮が電話を切りたがっている事を察知して、最後にトオルに伝えておきたい事があるの。と言った。

『レディオに行って何日かした後、吉田から電話があったの。トオルに伝えてやってほしい事があるんだって頼まれた。』

「なんだ?」

京虎一(かなどめとらひと)。奴がエルヴァンに接触して来たって伝えろって。』

「……」

『吉田の奴、それは誰なのかって聞いても教えてくんないのよ。トオルに言えばわかるからって言って。トオル知ってるの?』

「……ああ。でも、何故エヴァに…」

『誰なの京虎一って?』

「記者だ。」

『記者?』

「京虎一は…俺がエヴァのプロデューサーをしていた頃、突然やって来てこのままプロデューサーを続けるなら恋人を殺した事を記事に出す。その記事が出ればエヴァもお前も終ると言ってな。」

『それで…トオルはプロデューサーを辞めたの?』

「そうだ。記事を出さない約束をさせてな。」

『そんな…ひかりが死んだのはトオルのせいじゃ…』

「確かな情報じゃないか。」

『……確かな情報じゃないじゃない!

でも待って。一体誰がそんな事を記者に話したっていうの?ひかりの死を記者に話すような人は私達のまわりには一人もいなかったはず……』

「……」

『まさか…ゆい?』

「……そうだ。ひかりと一緒にルナでバイトをしていた今井唯(いまいゆい)。彼女から京は情報を聞き出した。」

『…そんな…』

「俺はその情報が出される事を恐れた。その記事が出る事でひかりの母や裕紀をまた傷つける事になると思った。そして、その記事が出る事によってエルヴァンという若き才能が潰されるとも思った。俺はあいつらに嫌われようが臆病者と言われようが構わなかった。俺はエヴァが…あいつらが好きだからこそプロデューサーを辞めた。」

『彼らの事が大事で好きだったなら続けるべきだったよ。』

「俺がプロデュースを続けていれば間違いなく今のエルヴァンはなかった。」

『……トオル…何言ってるのよ…あなたがひかりを殺したわけじゃないじゃない。それを証明する事は私達には出来た!私達を頼ってくれれば良かったのに…』

「俺がひかりを殺したんだ。それに間違いはないだろう。」


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今、想う


8月30日


高校最後の夏休み。

旅の記念に私の写真を撮りたいって君が言って来た。

旅の記念ってなに?

私はそう思ったし一人で撮られるのも慣れてない。

恥ずかしいけれど君に撮ってもらえるのは嬉しいなって思った。

私のカメラ、初めて持ったはずなのにとってもステキな写真を撮ってくれてありがとね。

自分で言うのもなんだけど、私、君の前でこんなステキな笑顔を見せてたんだって思うと嬉しくなったよ。

私史上最高の笑顔。このノートに貼っとくね。



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