Epilogue
1
2015年12月24日(木)
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「君が好き」
好きだよ
私だけは 君の味方だからね
自分で思ってる程 君は弱くなんかないよ
好きな気持ち 今すぐ伝えたいんだよ
でももし 好きな子がいるならどうしようかな?
ほんの少しだけでもいい こっち見てほしいと思う気持ち
伝わるはずないけど 気持ちは溢れてゆく
君が好き
世界に もう 君がいると思うだけで笑顔溢れ落ちちゃうの
見てるだけ
側に来てこんなに思っているのに私、まだ伝えられない…
どうして?
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LOVELESSのデビューシングルが発売される今日12月24日からLOVELESSのメンバーと黒崎沙耶の5人は大忙しのスケジュールとなっていた。CD発売日の今日から1週間47都道府県のレコードショップを訪れ握手会を行う予定だからだ。握手会初日にも関わらず動画で告知した甲斐もあり朝から予想以上の長蛇の列が店の前には出来ていた。
「ひょっとしてウチらって有名動画配信者?」
ひなの問いに黒崎は嬉しそうに答えた。
「そうね。間違いなさそう。ミュージックビデオもそれを4人で見ている動画もめちゃくちゃ再生数が伸びてるの。コメントもたっくさんよ。そろそろちゃんとしたマネージャー付けてもらわないとね。」
「えぇ〜!ウチらは沙耶さんとこれからも一緒にやっていきたいなぁ〜。」
そのひなの言葉は何よりも嬉しかったが、黒崎も慣れないプロデューサー業に力を入れたい気持ちが芽生えていた為、マネージャー業と掛け持ちはかなりしんどかった。
「無理言うなよ。沙耶さんにはもっとプロデューサーに専念して欲しいと俺は思ってる。」
「沙耶さん実は敏腕だしな。」
「確かに。こんなに俺達が有名になれるなんて沙耶さん抜きじゃ無理だった。」
「でも、ウチら続けられるんやろか?」
「きっと大丈夫よ。この光景を見たらあの代表取締役もさすがに続けさせるだろうしマネージャーだって付けるでしょ。オリコンで結果が出なかったとしても認めるべきものは認めてもらわないと。もし認められないって言うのなら、もうこんな事務所からは独立よ!独立!」
2
2015年12月28日(月)
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君だけは 私の味方でいてほしい
私、思ってる通り 弱いみたい
君を見ると話し掛ける事すら ためらってしまうの
君に会いたい そう毎日思っているのにね
一秒だけでも見つめ合いたくて 君をずっと見つめてしまう
ほんの少しだけでもいいの 私の願い叶えてよ
君が好き
世界に もう 君がいると思うだけで笑顔溢れ落ちちゃうの
見てるだけ
側に来てこんなに思っているのに私、まだ伝えられない…
どうして?
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代表取締役の緒方からオリコンランキングの結果と短く書かれたメールが届いた。黒崎は緊張のあまり手が振るえてスマホを落としてしまった。急いでスマホを拾い黒崎はメールを確認した。緒方のメールには画像が添付されている。その画像を震える手でタップし画像を拡大して順位を下から上にスクロールさせていく。
(まだLOVELESSの文字は出て来ない。)
順位はどんどん上位になっていくがまだLOVELESSの文字は出て来ない。
(まだよ。まだ名前が出ちゃダメ。)
ランキングがトップ10に入った。
(そもそも…ランキングにすら入ってないって事はないよね?)
急に黒崎は不安になってランキング5位のところでスクロールする手を止めてスマホを両手で握りしめ祈った。
(お願い。1位とまでは言わない。せめてトップ3には入ってて!)
黒崎は深呼吸をしてさっきよりも震える手でスマホを見ると先ほど握りしめたせいでスマホの画面が移動してしまっていた。
(画面が移動しちゃった…んっ?あれ?)
心の準備をする前にLOVELESSという文字が黒崎の目に飛び込んで来た。
(あ、ある…LOVELESSの文字はある。ランキングにはちゃんと入って………)
「え!?」
黒崎はその順位を見て驚きのあまり今度は派手にスマホを落としてしまい鈍い音が鳴った。
「うそ…うそうそうそ……」
床に両膝をついたまま急いで落としたスマホを拾うと予想していた通り液晶画面にはひびが入っていた。
「これは………マズいわ……ちゃんとしたマネージャーを付けてもらわないと……」
オリコンシングルランキング初登場1位 LOVELESS
デビュー以来15年間20作連続1位を獲得していたエルヴァンが21作目にして無名の新人に記録をストップさせられたという事実は各界に衝撃を与えた。しかもLOVELESSはオリコンランキングだけでなく各ストリーミングサイト及びダウンロードサイトでもエルヴァンを抑えランキング1位を獲得した。
3
2015年12月29日(火)
年末だというのに朝から芸能ニュースでは連日週刊誌に載ったエルヴァンの話題で持ち切りだった。
「エルヴァン様の女性問題ばかりで俺達の名前なんて一文字も出てこねぇな。」
エルヴァンのリーダー久保が週刊誌の記者の胸ぐらを掴む写真がテレビに映し出される。
「もうその写真見飽きたっつーの。」
郷田は事務所にあるテレビの電源を消した。
「CD発売日当日にエルヴァンの記事が出るなんて絶対この記事出した週刊誌はその日を狙ってたんだよな?」
「おそらくな。俺達もこれからは週刊誌やネット関連には気をつけないとな。」
「なんかこの記事が出たせいでエルヴァンの売り上げが伸びなかったって記事も見たし俺達実力でエルヴァンの売り上げを超えた感じがしねーわ。」
「ツー。そんな事ないさ。こんな記事出なくったって結果は一緒だった。」
「なんかスッキリしねーなぁ…」
「ツー。気にしない。気にしない。ヒロの言う通りやとウチも思うで。ほらここの記事見てみぃ。
音楽業界に激震!テレビ出演回数ゼロの新人がエルヴァンを抑え快挙!快挙の裏には動画サイトにあった!やってさ。それにほら、ここにはテレビよりも動画サイトの時代が来たって。そこで再生回数を稼いだからこそLOVELESSの快挙があったって書かれてる。
あ、ここ見てみぃ。来年音楽業界は世代交代の年になるか?やって。ほら、ケイも見てみーな。ほら、ここ。」
赤木は冷めた目でひなが渡してきた雑誌を読まずにそのままテーブルの上に置いた。
「本当に世代交代の年になるのなら、それに間に合えばいいな。あいつらも。」
「あいつら?」
赤木が言うあいつらとは一体誰の事を指すのかひなは一瞬考えたが次の瞬間にはもうその人物の名前が頭の中に浮かんでいた。
「拓也。さっさと上がって来い!」
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君の言葉一つも聞き逃さないで覚えててあげる Woo~Woo~
やっぱり 私ちょっとヘンかな? Ah~
人を好きになるっておかしくなる事?
あぁ、まだまだまだまだおかしくなりそう…
こんなはずじゃないのに…
出会ってから 景色が歪んでしまったの?
少し前まで あんなに綺麗だったのに?
今はもう 世界が小さくなっているのかも?
Ah~ 見つめているだけで
君が好き
世界に もう 君がいると思うだけで笑顔溢れ落ちちゃうの
見てるだけ
側に来てこんなに思っているのに私、まだ伝えられない…
どうして?
好きだよ Ah~ Ah~
Ah~
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番外編となるThe Voice vol.1.5 ~episode H.I.N.A~を最後まで読んで頂きありがとうございました。
The Voice vol.2は暫くしたら書き出そうかなと思っていますが、まだふわふわした感じでしか物語を考えていませんので時間が掛かるかもしれませんが気長に待って下さればと思います。
2020 夏
幸-sachi-




